【完結】期間限定聖女ですから、婚約なんて致しません

との

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108.なんてこった! あっという間にプチッとされちゃった

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「詳細を確認もせず、いい加減な話で許可証を出した公王に伝えなさい! 傲慢で欲深い商会が公王の許可証を盾に犯罪を犯しているが、今後の対応はお間違えにならないようにと。
正しい裁きを行う能力が公国にないのであれば、元聖女ロクサーナが魔導具持参で伺いましょう。
公国もマーベラス商会も、ダンゼリアム王国の二の舞にならぬよう、気をつけた方がよろしいかと存じます」

「何を偉そうな!」

「ぐだぐだ言ってんじゃねえよ! 伝えるか伝えねえかは、てめえの好きにしやがれ。さて、出航しようぜ」

「おう」

「もちろんよ」

「ん」

 ウルサ達が船に乗り込んだのを確認し、ロクサーナとジルベルトは空に飛び上がった。

 ジルベルトの結界に包まれると、船は朝日を受けて淡い金色に輝きはじめ⋯⋯錨が巻き上げられる鈍い音が聞こえて来た。

 呆然として見上げる狐目達の前で、ウルサ達の操縦する船が動きはじめると、空を指差したロクサーナの指から光が飛び出した。

 青い空に無数の光が飛び散り、光の筋を引きながら海に落ちていく。空から季節外れの雪が舞い、花びらが風に舞い上がった。

 海を疾走しはじめるまで⋯⋯雪と花びらが舞い続けた。




「凄え! ちびちゃん、マジもんじゃねえか」

「シーミアさんのイメージで出航のお祝いしてみたの~」

(よっしゃ! ここまで来れば大丈夫かな? んーと、なんかおかしな声が聞こえたような⋯⋯ギギギ⋯⋯イ、イカ焼きのおっちゃんが船に乗ってるぅぅぅ! ツルピカのおじさんを、うっかりお持ち帰りしちゃったぁぁ)



 魔法士が隠れているとか魔導具を隠し持っているとか⋯⋯そんな楽しいイベントもなく、奴等は間抜け面を晒していただけだった。

(ちょっとガッカリ。派手な攻撃してくれれば楽しめたのに⋯⋯やっぱり魔物とバトルする方がいいね~。奴等は全力で向ってくるもん)

「さ~て、これからはぁ、毎日パーヴォ君とラブラブできる! 超楽しみ~」



 その後のロクサーナは少しばかり忙しかった。

 ジルベルトとウルウルに船を任せて、ウルウサ達を倉庫に転移させて船へ逆戻り。ジルベルトが影に潜った後で船を収納して倉庫へ。

「んで、問題はおっちゃんだよね」

 いまだに転移酔いでキラキラを吐き出し続けているグラントだが、彼の馬車は港に置きっぱなしになっている。

グラたんイカ焼きのおっさん、いたい?」

「大丈夫よ、グラントさんはすぐに元氣になるからね」

「いたいのいたいの、とんでて~!」

 パーヴォはグラントを心配しているが、キラキラを吐くそばには寄れないらしく、母親の後ろから最強の呪文を唱えていた。

(ううっ! 何をしても可愛い⋯⋯もふもふと同じくらいの破壊力じゃん)



 転移門を使ってウルサ達と一緒に島に向かうのはジルベルトに任せ、ロクサーナは昼過ぎまで待ってからグラントを馬車の中に転移させた。

「ひょいひょいっと遠くへ行けるなんて想像もしてなかったが、転移ってのは凄えもんだな」

 ロクサーナに会うまでは⋯⋯大勢でかかっても『シーサーペントでさえやっつけられない』魔法など、大したことはないと思っていた。

「ちびすけを見て初めて魔法を凄いと実感した。んだけど、魔法を使える奴は減ってるんだろ? 帆立の貝殻を使った土壌改良の話をちびすけから聞いた時、これからの時代に必要なのはそう言う考え方だって思ったんだ」

 ごく少数の魔法使いを取り合うのではなく、自然から学び自然と共存する世界。

「あの町の商売は俺の肌には合わねえからよ、俺ら家族もリューズベイから引っ越すつもりでいるんだ。今日はその報告をしに来たんだが⋯⋯なあ、ガンツの仕事を手伝わせてくれねえか? んで、貝殻の土壌改良みたいなのを広める手伝いがしてえ」

 貴族や金持ちの相手をするのは興味が湧かないが、漁師や農民達の手助けになる事に参加出来れば嬉しいと言う。



 グラント一家は倉庫の近くに移り住み、主に野菜や果物などの生鮮食料品を、奥さんや娘と3人で担当した。ギルドや商人との交渉は奥さんのミネルバ、輸送や現地調査はグラント。娘のアリサは帳簿付けと仕入れや在庫管理。

 グラント達が参加すると、奥ちゃんとラブラブする時間ができたとガンツが大喜びした。お祝いに『朝まで頑張れる薬』を強請ってきたガンツは、奥ちゃんとジルベルトにお仕置きされていた。

『『子供に何を頼んでるんだ!』』

(ん? 私ってばもう18歳の成人だけど?)



 その頃公国の宮殿では⋯⋯。

 キャラベル船とシーミアをゲットし損ねたマーベラス商会の商会長は、渋々ながら遊覧船による観光事業延期の報告に来ていた。

『初期のキャラベル船は、其方の商会と既に契約済みだと申してあったはずじゃが?』

 商会長の説明に不審を抱いた公王達に問い詰められ、全てを白状せざるを得なくなり⋯⋯。

『元聖女ロクサーナ? ダンゼリアム王国のように⋯⋯?』

『まあ、単なる脅しだと思いますから、大し⋯⋯』

『き、貴様! 公国を潰すつもりかぁぁ! 宰相、すぐに通達を出すのじゃ! 王都だけでなく全ての町や他国にもに知らせよ!
リューズベイにおける遊覧船による観光事業は、マーベラス商会の不正発覚にて停止とし、王家への出入り差し止め。至急余罪の調査を行うと』

『な、な、何故でございますか!? たかがキャラベル船1艘、客寄せの目玉としてはおりましたが、替えはいくらでもございます』

『貴様は知らぬのか! それこそが商人として失格の証じゃ。ダンゼリアム王国の不正をただ一人で暴いたのは、貴様が口にした聖女ロクサーナじゃ。
世界随一の魔法使いとしての力を駆使した、徹底的な捜査と証拠集め。情け無用の断罪は国際司法裁判所を引っ張り出し、帝国の闇まで暴き出した』

『聖王国の崩壊はその余波なのです。女神ユースティティ様の神託では、度重なる教会の不正に正義の鉄槌を下したとありましたが、聖女ロクサーナ様を不当に扱い続けた事が最も大きな要因。
つまり、聖女ロクサーナ様がお知りになられた不正に目を瞑るのは、公国を潰すのと同じ意味になるのです』

 商会長は玉座の前で崩れ落ちた。



 即日で調査の手が入ったマーベラス商会は大量の不正が発覚し、加担していた者達は極刑・鉱山送り・罰金刑などに。その他の商会員達は商会長の個人資産から給与や退職金を貰い、次の職の斡旋まで受けた。

 手厚い庇護がロクサーナ対策だったのは言うまでもない。



 仕事の打ち合わせで何度か島を訪れたグラント一家が、2人の男性と女性をひとり引き連れて島に越して来たのは、それから半年後のこと。

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