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2.扇子がパキパキ
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ジェシカはリリアーナの腕を離しルーカスの所へ駆けていき胸に飛び込んだ。ルーカスはシクシクと泣き始めたジェシカの頭を撫でながら、
「用事があるならリリアーナではなく僕に言うようにって言っただろ? リリアーナと話す度に嫌な思いさせられてるんだからさ」
「だってぇ、ルーカスの為にリリアーナさんと仲良くしてあげなくちゃって思ったんだもん」
目をうるうるとさせ上目遣いにルーカスを見上げたジェシカと、顔を赤くしてデレデレしているルーカス。
「ジェシカは心配しなくて大丈夫だよ。優しいのはジェシカの良い所だけど、相手を選ばないと辛い思いをするのはジェシカなんだからね」
周りの冷たい視線に気付かずジェシカとルーカスは二人だけの世界を作っていたが、ここ最近あまりにも見慣れた三文芝居に教室の中にいた生徒達はあっという間に誰も居なくなっていた。
ーーーーーー
教室を出たリリアーナはマチルダと並び、その後ろをシエナとミリア・ソーントン子爵令嬢が歩いている。
食堂に向かう途中の渡り廊下で、シエナがリリアーナの左腕を見て声を上げた。
「リリアーナ大変! 腕赤くなってるわ。随分強く掴まれたのね、保健室に行きましょう」
リリアーナは自分の腕を見た後振り返って、シエナににっこりと笑いかけた。
「ありがとう、これくらいなら大丈夫だから先に食事を済ませてしまいましょう。遅くなってしまったもの。
いつもの席がなくなっちゃう」
食堂は大勢の生徒で賑わっていた。
リリアーナ達はランチセットを選んで窓際のお気に入りの四人テーブルに運ぶと、先程の不快な出来事などまるで気にした様子もなく食事を食べはじめた。
食後の紅茶を飲みながらミリアが、
「全く、エマーソンさんには困ったものね。最近どんどん酷くなってない?」
「本当に。さっきの話なんて突っ込みどころ満載過ぎて手が出そうだったもの。もう少しあの子の側にいたらお気に入りの扇子がまた折れちゃうとこだった。買ったばかりなのに」
今も悲鳴をあげているマチルダの扇子を横目で見ながら、ミリア・ソーントン子爵令嬢が笑っている。
「マチルダの扇子、バキバキいってたものね」
マチルダはグループの中では一番気が強く、口も達者なのでジェシカとは良く言い合いになっている。お陰でマチルダの扇子はここの所、頻繁に買い換えざるを得なくなっていた。
「ルーカスがあんな人だったなんて。昔はもうちょっとマシだったんだけど・・」
ドントジー侯爵家と昔交流のあったシエナが溜息をついた。
シエナの父ストレンジ侯爵の領地はドントジー侯爵家の領地と隣り合っており先々代の頃から家族ぐるみで親しく行き来していたが、十年近く前から疎遠になったと言っていた。
疎遠になった理由は分からないとシエナは言っているが、リリアーナはルーカスやドントジー侯爵夫妻の話から大凡の予測を立てていた。
十年前、ドントジー侯爵家で新しい鉱山が発見された。産出された銀鉱石は高品質で、傾きかけていた侯爵家は一気に持ち直し社交界でも大きな発言力を持った。
その反面ストレンジ侯爵家の主力産業は古くからの伝統を受け継いだ毛織物が主流。王都までの街道の整備や福祉に力を入れて堅実な領地経営を行なっている。
ドントジー侯爵はストレンジ侯爵の領地経営を古臭く将来性のないものと考えており、先見の明も運もない哀れな貴族だとカートレット伯爵に話しているのを聞いたことがある。
あちこちの夜会で煌びやかな装飾品を身につけたドントジー侯爵夫人が取り巻きと共に、優雅で気品あるストレンジ侯爵夫人に当て擦りを言うのは社交界の風物詩のようになっている。
ドントジー侯爵夫人は元子爵家の出で、ストレンジ侯爵夫人は公爵家から嫁いで来た事なども影響しているのだろう。
「ねぇリリアーナ、二人があそこまで酷くなったのってやっぱりあの噂が関係してるの?」
「用事があるならリリアーナではなく僕に言うようにって言っただろ? リリアーナと話す度に嫌な思いさせられてるんだからさ」
「だってぇ、ルーカスの為にリリアーナさんと仲良くしてあげなくちゃって思ったんだもん」
目をうるうるとさせ上目遣いにルーカスを見上げたジェシカと、顔を赤くしてデレデレしているルーカス。
「ジェシカは心配しなくて大丈夫だよ。優しいのはジェシカの良い所だけど、相手を選ばないと辛い思いをするのはジェシカなんだからね」
周りの冷たい視線に気付かずジェシカとルーカスは二人だけの世界を作っていたが、ここ最近あまりにも見慣れた三文芝居に教室の中にいた生徒達はあっという間に誰も居なくなっていた。
ーーーーーー
教室を出たリリアーナはマチルダと並び、その後ろをシエナとミリア・ソーントン子爵令嬢が歩いている。
食堂に向かう途中の渡り廊下で、シエナがリリアーナの左腕を見て声を上げた。
「リリアーナ大変! 腕赤くなってるわ。随分強く掴まれたのね、保健室に行きましょう」
リリアーナは自分の腕を見た後振り返って、シエナににっこりと笑いかけた。
「ありがとう、これくらいなら大丈夫だから先に食事を済ませてしまいましょう。遅くなってしまったもの。
いつもの席がなくなっちゃう」
食堂は大勢の生徒で賑わっていた。
リリアーナ達はランチセットを選んで窓際のお気に入りの四人テーブルに運ぶと、先程の不快な出来事などまるで気にした様子もなく食事を食べはじめた。
食後の紅茶を飲みながらミリアが、
「全く、エマーソンさんには困ったものね。最近どんどん酷くなってない?」
「本当に。さっきの話なんて突っ込みどころ満載過ぎて手が出そうだったもの。もう少しあの子の側にいたらお気に入りの扇子がまた折れちゃうとこだった。買ったばかりなのに」
今も悲鳴をあげているマチルダの扇子を横目で見ながら、ミリア・ソーントン子爵令嬢が笑っている。
「マチルダの扇子、バキバキいってたものね」
マチルダはグループの中では一番気が強く、口も達者なのでジェシカとは良く言い合いになっている。お陰でマチルダの扇子はここの所、頻繁に買い換えざるを得なくなっていた。
「ルーカスがあんな人だったなんて。昔はもうちょっとマシだったんだけど・・」
ドントジー侯爵家と昔交流のあったシエナが溜息をついた。
シエナの父ストレンジ侯爵の領地はドントジー侯爵家の領地と隣り合っており先々代の頃から家族ぐるみで親しく行き来していたが、十年近く前から疎遠になったと言っていた。
疎遠になった理由は分からないとシエナは言っているが、リリアーナはルーカスやドントジー侯爵夫妻の話から大凡の予測を立てていた。
十年前、ドントジー侯爵家で新しい鉱山が発見された。産出された銀鉱石は高品質で、傾きかけていた侯爵家は一気に持ち直し社交界でも大きな発言力を持った。
その反面ストレンジ侯爵家の主力産業は古くからの伝統を受け継いだ毛織物が主流。王都までの街道の整備や福祉に力を入れて堅実な領地経営を行なっている。
ドントジー侯爵はストレンジ侯爵の領地経営を古臭く将来性のないものと考えており、先見の明も運もない哀れな貴族だとカートレット伯爵に話しているのを聞いたことがある。
あちこちの夜会で煌びやかな装飾品を身につけたドントジー侯爵夫人が取り巻きと共に、優雅で気品あるストレンジ侯爵夫人に当て擦りを言うのは社交界の風物詩のようになっている。
ドントジー侯爵夫人は元子爵家の出で、ストレンジ侯爵夫人は公爵家から嫁いで来た事なども影響しているのだろう。
「ねぇリリアーナ、二人があそこまで酷くなったのってやっぱりあの噂が関係してるの?」
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