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4.待ち焦がれたお茶会
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ここ暫く続いている好天に恵まれ、カートレット家の庭は初夏の花々で溢れかえっていた。
玄関から庭へ続く道には、古代ギリシャの羊飼い達が枝の髄の部分をくりぬいて笛を作っていたと言うライラックが紫色・薄紫色・ピンク色・白色などの一重や八重の花を今を盛りにと咲き乱れさせている。
今日は庭の東側、家族がバラ園と呼んでいる場所にテーブルを準備した。
一番手前には前年に接ぎ木して1年間養成した木立ち性のピンクのブッシュ・ローズが咲きほころび、甘い香りを漂わせている。
少し離れた場所に見える半つる性のシュラブローズは白と黄色、その向こうにはつるバラの赤いクライミング・ローズが見えている。
三人とも約束の時間よりも早く到着した。申し訳なさそうな顔をしたシエナが、
「礼儀知らずでごめんなさいね。話が聞きたくて待ちきれなくって・・」
くすくすと笑うリリアーナは、
「もう準備出来てたから大丈夫。私が逆の立場だったらもっと早く着いてるかも、だから気にしないで」
リリアーナが丸いテーブルの隣の席をシエナに勧めると、マチルダとミリアも席についた。
テーブルにお茶や様々なお菓子を並べてメイドが下がって行くと直ぐに、気の早いマチルダが話を切り出した。
「で?」
「えーっと、何から話したら良いのか沢山ありすぎて昨日から悩んでるの」
「みんな聞きたいことが沢山あるから順番に一つずつ聞くのはどう?」
ミリアの提案にみんなが頷くと、
「ではミリア・シエナ、私の順で聞くのはどうかしら? 今回の事って一番の被害者はリリアーナで、その次はミリアでしょう? シエナはルーカスの幼馴染だし」
四人は顔を見合わせて頷いた。
「ありがとうマチルダ。じゃあ私からの質問ね。リリアーナはこのままで良いの? この間ルーカスがあの子を引き取ってくれたら嬉しいなんて言ったけど、そしたらリリアーナは婚約破棄になっちゃうでしょう? 私すごく勝手な事を言ったって反省してるの。ごめんなさい」
「心配してくれてありがとう。ルーカスと婚約破棄するのはもう決めてるの。お父様やお母様の許可も頂いてるし。
決まってないのはどういうやり方をするかだけなの」
「あの様子だとルーカス達はまだ知らないのよね」
「ええ、ルーカス有責で婚約破棄する為に準備してるからもう少し時間がかかると思うわ」
三人はリリアーナの事を心配していたようで「良かった」と口々に言いながら漸くお菓子に手を出しはじめた。
暫く和やかな時間が過ぎた後マチルダが本題に切り込んできた。
「あの噂って本当なの? ほら、ルーカスが次期侯爵になるって」
リリアーナはチラッとシエナに目をやった後おもむろに口を開いた。
「長男のエリオット様がね侯爵家を継がないって仰ってるの。それでルーカスは次男の自分が継げるって張り切ってるんだけど、まだ何もはっきり決まったわけじゃないのに」
「三男のアーロン様はすごく優秀よね。ルーカスの成績は下から数えた方が早いし、あの子もだけど」
姉御肌のマチルダはリリアーナやミリアを傷つけたジェシカの事が許せないようで、極力名前を呼ばないようにしている。
リリアーナはシエナの様子を伺いながら次の言葉を口にした。
「エリオット様は・・修道士になると仰って、ドントジー侯爵夫妻が大反対してる」
身を乗り出すようにして話を聞くマチルダやミリアと違い、シエナは持っていた紅茶のカップを取り落とし真っ青になって固まってしまった。
「「シエナ大丈夫?」」
「・・どっどうしよう。わた、私のせいだわ」
リリアーナは震えているシエナの手を握り優しく話しかけた。
「シエナ、良かったら私達に話してみない?」
しんと静まりかえったお茶会の席には、それまで以上に薔薇の芳香が漂ってきたように感じられた。
シエナは震える手でリリアーナの手を握り返し、優しく覗き込むリリアーナに小声で聞き返した。
「リリアーナ、もしかして・・知ってた?」
玄関から庭へ続く道には、古代ギリシャの羊飼い達が枝の髄の部分をくりぬいて笛を作っていたと言うライラックが紫色・薄紫色・ピンク色・白色などの一重や八重の花を今を盛りにと咲き乱れさせている。
今日は庭の東側、家族がバラ園と呼んでいる場所にテーブルを準備した。
一番手前には前年に接ぎ木して1年間養成した木立ち性のピンクのブッシュ・ローズが咲きほころび、甘い香りを漂わせている。
少し離れた場所に見える半つる性のシュラブローズは白と黄色、その向こうにはつるバラの赤いクライミング・ローズが見えている。
三人とも約束の時間よりも早く到着した。申し訳なさそうな顔をしたシエナが、
「礼儀知らずでごめんなさいね。話が聞きたくて待ちきれなくって・・」
くすくすと笑うリリアーナは、
「もう準備出来てたから大丈夫。私が逆の立場だったらもっと早く着いてるかも、だから気にしないで」
リリアーナが丸いテーブルの隣の席をシエナに勧めると、マチルダとミリアも席についた。
テーブルにお茶や様々なお菓子を並べてメイドが下がって行くと直ぐに、気の早いマチルダが話を切り出した。
「で?」
「えーっと、何から話したら良いのか沢山ありすぎて昨日から悩んでるの」
「みんな聞きたいことが沢山あるから順番に一つずつ聞くのはどう?」
ミリアの提案にみんなが頷くと、
「ではミリア・シエナ、私の順で聞くのはどうかしら? 今回の事って一番の被害者はリリアーナで、その次はミリアでしょう? シエナはルーカスの幼馴染だし」
四人は顔を見合わせて頷いた。
「ありがとうマチルダ。じゃあ私からの質問ね。リリアーナはこのままで良いの? この間ルーカスがあの子を引き取ってくれたら嬉しいなんて言ったけど、そしたらリリアーナは婚約破棄になっちゃうでしょう? 私すごく勝手な事を言ったって反省してるの。ごめんなさい」
「心配してくれてありがとう。ルーカスと婚約破棄するのはもう決めてるの。お父様やお母様の許可も頂いてるし。
決まってないのはどういうやり方をするかだけなの」
「あの様子だとルーカス達はまだ知らないのよね」
「ええ、ルーカス有責で婚約破棄する為に準備してるからもう少し時間がかかると思うわ」
三人はリリアーナの事を心配していたようで「良かった」と口々に言いながら漸くお菓子に手を出しはじめた。
暫く和やかな時間が過ぎた後マチルダが本題に切り込んできた。
「あの噂って本当なの? ほら、ルーカスが次期侯爵になるって」
リリアーナはチラッとシエナに目をやった後おもむろに口を開いた。
「長男のエリオット様がね侯爵家を継がないって仰ってるの。それでルーカスは次男の自分が継げるって張り切ってるんだけど、まだ何もはっきり決まったわけじゃないのに」
「三男のアーロン様はすごく優秀よね。ルーカスの成績は下から数えた方が早いし、あの子もだけど」
姉御肌のマチルダはリリアーナやミリアを傷つけたジェシカの事が許せないようで、極力名前を呼ばないようにしている。
リリアーナはシエナの様子を伺いながら次の言葉を口にした。
「エリオット様は・・修道士になると仰って、ドントジー侯爵夫妻が大反対してる」
身を乗り出すようにして話を聞くマチルダやミリアと違い、シエナは持っていた紅茶のカップを取り落とし真っ青になって固まってしまった。
「「シエナ大丈夫?」」
「・・どっどうしよう。わた、私のせいだわ」
リリアーナは震えているシエナの手を握り優しく話しかけた。
「シエナ、良かったら私達に話してみない?」
しんと静まりかえったお茶会の席には、それまで以上に薔薇の芳香が漂ってきたように感じられた。
シエナは震える手でリリアーナの手を握り返し、優しく覗き込むリリアーナに小声で聞き返した。
「リリアーナ、もしかして・・知ってた?」
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