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18.吐いていただきましょう
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「で?、いつリアム王子殿下と知り合ったの?」
「ずいぶん昔のことだから覚えてないの」
卒業パーティーの翌日、ゆっくりと朝寝坊して元気を取り戻した四人組は今日もカートレット家のバラ園に集合した。
紅茶と共に準備されたのは、アイスクリームを乗せて果物とチョコレートソースをたっぷりとかけたゴーフル。
塩味の効いたエショデはルイ15世の公妾ポンパドール夫人お気に入りの菓子職人が考案したもので、それにアニスで香り付けしている。
「美味しいけど、ゴーフルでは誤魔化されないわよ」
✳︎✳︎ リアムの思い出 ✳︎✳︎
「そのこはだれですか?」
カートレット伯爵はその日、二歳のリリアーナを腕に抱き夫人と共に内廷にある陛下の私室に向かっていた。
今日は公には私的な訪問となっている為、秘書ではなく従者と侍女を一人ずつ連れている。
リリアーナはふわふわのブロンドに若草色のリボンを結び、白い絹のドレスの裾には同じ若草色で刺繍が入っている。ウエストに巻かれたやや濃いめのリボンは後ろで大きな蝶結びになっていた。
「はくしゃくどの、そのこはだれですか?」
伯爵一家の前に突然走り込んできた少年は、当時五歳のリアム第二王子殿下。
「リアム王子殿下。お久しぶりでございます廊下を走っては危険ではありませんか?」
膝をおり目線をリアムに合わせたカートレット伯爵はやんわりと注意した。
リアムの後ろでメイドが申し訳なさそうに頭を下げている。
「てんしがいたので、いそいでいました。いつもだったらはしりません。
そのこはだれですか?」
「お初にお目にかかります。これは私の娘でリリアーナと申します」
「りりあーな・・。はくしゃくどの、ぼくにりりあーなをください」
「これは、その。リリアーナはまだ赤ちゃんなのでリアム王子殿下のお友達には相応しくないと思います」
「ちゃんとおせわするのでだいじょうぶです。ちちうえにおねがいしてまいります」
向きを変え元気よく走り出したリアムの後をメイドが追いかけて行く。
立ち上がり夫人と目を合わせたカートレット伯爵は苦笑いを浮かべて、
「何やらややこしい事になったな」
と、呟いた。
カートレット伯爵達が陛下の私室に案内されると、苦虫を噛み潰した陛下の前にリアムが立っている。
「カートレット伯爵よく来てくれた。リアム、お前は部屋に下がっていなさい」
「おねがいをきいてくださるまでさがりません」
「リアム、其方の願いは聞けぬと申したであろう?」
「いっぱいべんきょうがんばります。おせわもします。だからりりあーなをください」
「はぁ、全く。こればかりは叶えてやる事は出来ん。下がりなさい」
涙を浮かべ振り返ったリアムはカートレット伯爵の前にやってきて、
「はくしゃくどの。ぼくがもっとおおきくなったら、りりあーなをおよめさんにください」
伯爵の返事を待たずに、リアムは走り出して行った。
「はっ? あの・・ええっ?」
二度目の出会いはリアムが八歳、リリアーナが五歳の時。
その日は九歳になった第一王子殿下の婚約者を選ぶ為のお茶会が王宮で開かれていた。
お茶会に参加している令嬢は八歳と九歳ばかりだったが、その中にちょこんと一人リリアーナが参加させられていた。
カートレット伯爵家は当時から国内有数の資産を持ち、建国以来の由緒正しい家柄で母方の祖母は王家から降嫁した元王女殿下。
些か年齢は離れるものの、母が側妃であり後ろ盾のない第一王子殿下の婚約者候補の一人に選ばれてしまった。
「ここは赤ちゃんの来るところではなくてよ」
「おうちでお人形遊びしていらっしゃいませ」
婚約者候補の令嬢達に虐められたリリアーナはその場を逃げ出し、母親に抱きついて泣き出した。
カートレット伯爵夫人は側妃と相談し、その場を辞す事に決めた。
お茶会の喧騒から離れ母親に手を引かれながら歩くリリアーナ。
サイドを緩く編みキラキラ光る髪飾り。白とピンクを重ねたドレスは少し皺が寄っているものの、真っ赤な目で背筋を伸ばし前を向いて歩く姿は周りの人達の注目を一心に集めていた。
側妃から連絡を受けてやってきた父親を見つけたリリアーナは、父親の元に駆け出した。
「リリアーナ!」
父親と反対側から名前を呼ぶ大声が聞こえた。真っ赤な顔で走ってきた少年を見たリリアーナは、必死になって父親に飛びついた。
「リリアーナ、大丈夫?」
リアムも兄上から連絡を受けやってきたのだが、リリアーナにとっては知らない男の子がものすごい形相で走ってきたとしか思えなかった。
「リリアーナ?」
げし! リリアーナは手を伸ばしてきたリアムに反射的にキック。
父親に抱かれていたリリアーナは、リアムの顎に見事な一撃を喰らわせた。
「ずいぶん昔のことだから覚えてないの」
卒業パーティーの翌日、ゆっくりと朝寝坊して元気を取り戻した四人組は今日もカートレット家のバラ園に集合した。
紅茶と共に準備されたのは、アイスクリームを乗せて果物とチョコレートソースをたっぷりとかけたゴーフル。
塩味の効いたエショデはルイ15世の公妾ポンパドール夫人お気に入りの菓子職人が考案したもので、それにアニスで香り付けしている。
「美味しいけど、ゴーフルでは誤魔化されないわよ」
✳︎✳︎ リアムの思い出 ✳︎✳︎
「そのこはだれですか?」
カートレット伯爵はその日、二歳のリリアーナを腕に抱き夫人と共に内廷にある陛下の私室に向かっていた。
今日は公には私的な訪問となっている為、秘書ではなく従者と侍女を一人ずつ連れている。
リリアーナはふわふわのブロンドに若草色のリボンを結び、白い絹のドレスの裾には同じ若草色で刺繍が入っている。ウエストに巻かれたやや濃いめのリボンは後ろで大きな蝶結びになっていた。
「はくしゃくどの、そのこはだれですか?」
伯爵一家の前に突然走り込んできた少年は、当時五歳のリアム第二王子殿下。
「リアム王子殿下。お久しぶりでございます廊下を走っては危険ではありませんか?」
膝をおり目線をリアムに合わせたカートレット伯爵はやんわりと注意した。
リアムの後ろでメイドが申し訳なさそうに頭を下げている。
「てんしがいたので、いそいでいました。いつもだったらはしりません。
そのこはだれですか?」
「お初にお目にかかります。これは私の娘でリリアーナと申します」
「りりあーな・・。はくしゃくどの、ぼくにりりあーなをください」
「これは、その。リリアーナはまだ赤ちゃんなのでリアム王子殿下のお友達には相応しくないと思います」
「ちゃんとおせわするのでだいじょうぶです。ちちうえにおねがいしてまいります」
向きを変え元気よく走り出したリアムの後をメイドが追いかけて行く。
立ち上がり夫人と目を合わせたカートレット伯爵は苦笑いを浮かべて、
「何やらややこしい事になったな」
と、呟いた。
カートレット伯爵達が陛下の私室に案内されると、苦虫を噛み潰した陛下の前にリアムが立っている。
「カートレット伯爵よく来てくれた。リアム、お前は部屋に下がっていなさい」
「おねがいをきいてくださるまでさがりません」
「リアム、其方の願いは聞けぬと申したであろう?」
「いっぱいべんきょうがんばります。おせわもします。だからりりあーなをください」
「はぁ、全く。こればかりは叶えてやる事は出来ん。下がりなさい」
涙を浮かべ振り返ったリアムはカートレット伯爵の前にやってきて、
「はくしゃくどの。ぼくがもっとおおきくなったら、りりあーなをおよめさんにください」
伯爵の返事を待たずに、リアムは走り出して行った。
「はっ? あの・・ええっ?」
二度目の出会いはリアムが八歳、リリアーナが五歳の時。
その日は九歳になった第一王子殿下の婚約者を選ぶ為のお茶会が王宮で開かれていた。
お茶会に参加している令嬢は八歳と九歳ばかりだったが、その中にちょこんと一人リリアーナが参加させられていた。
カートレット伯爵家は当時から国内有数の資産を持ち、建国以来の由緒正しい家柄で母方の祖母は王家から降嫁した元王女殿下。
些か年齢は離れるものの、母が側妃であり後ろ盾のない第一王子殿下の婚約者候補の一人に選ばれてしまった。
「ここは赤ちゃんの来るところではなくてよ」
「おうちでお人形遊びしていらっしゃいませ」
婚約者候補の令嬢達に虐められたリリアーナはその場を逃げ出し、母親に抱きついて泣き出した。
カートレット伯爵夫人は側妃と相談し、その場を辞す事に決めた。
お茶会の喧騒から離れ母親に手を引かれながら歩くリリアーナ。
サイドを緩く編みキラキラ光る髪飾り。白とピンクを重ねたドレスは少し皺が寄っているものの、真っ赤な目で背筋を伸ばし前を向いて歩く姿は周りの人達の注目を一心に集めていた。
側妃から連絡を受けてやってきた父親を見つけたリリアーナは、父親の元に駆け出した。
「リリアーナ!」
父親と反対側から名前を呼ぶ大声が聞こえた。真っ赤な顔で走ってきた少年を見たリリアーナは、必死になって父親に飛びついた。
「リリアーナ、大丈夫?」
リアムも兄上から連絡を受けやってきたのだが、リリアーナにとっては知らない男の子がものすごい形相で走ってきたとしか思えなかった。
「リリアーナ?」
げし! リリアーナは手を伸ばしてきたリアムに反射的にキック。
父親に抱かれていたリリアーナは、リアムの顎に見事な一撃を喰らわせた。
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