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第九章 なんでやねん

05.ほ〜、とうとう言いやがりましたねえ

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 卓上のタブレットに料理が届くというメッセージが表示され、話は一旦小休止になった。

 店の奥から◯型配膳ロボットのベラ◇ットがスイスイとやってきて、テーブルの横で向きを変えた。

「へえ、ネットで見たけど結構スムーズに動くんだな」

(耳を触ったら喋るんだよね。やってみたいな~、今日はやらんけど)

 実里にとってはファミレスも贅沢のひとつだから、二度とお目にかかれないかも。


 届いた料理をどんどんテーブルに乗せていく。

「誰がどれを頼んだのか知らないから、適当に乗せるね」

(そう言えば私は何も頼んでないじゃん。ドリンクバーだけでも頼まないと)

 カトラリーがないと文句を言う母親に箸やスプーンの場所を教え、おしぼりを探す姉の代わりにドリンクバーのコーナーへ向かった。

 料理の感想を言い合いながら、予想より楽しそうに食事をする4人の横でドリンクバーを頼み、5人分の飲み物を運んでくる。

(当たり前のように頼んでくる4人もあれだけど、普通に給仕してる私もどうかしてるね)

 ほとんどの皿が空になり、それぞれの前に頼まれた飲み物を並べて話を再開した。



「父さんや母さんはネットの情報は知らなかったかもだけど、兄さんや姉さんは知っててもおかしくないよね。テレビや新聞は実名報道しなかったけど、ネットには私の名前と顔写真が晒されたんだから。
知らないなんて言わせないよ。何も知らないんなら私が慰謝料をもらった事も知らないはずだもん。
母さんだってそう。電話で『あんたがまとまったお金を持った』ってはっきり言ってた。兄さんか姉さんに聞いてないと、そんな事言えないもんね」

「だからどうした? お前が隙を見せたけえ冤罪なんかかけられたんじゃろうが」

「結局は大金をせしめてるんだから、アンタからしたら結果オーライってやつじゃない?」

「結果? 結果はね、仕事をなくしてすむ場所からも逃げ出すしかなくて、ようやく見つけたアパートでコソコソしながら生活してるの! 隙を見せた? ちゃんと調べて言ってる? 私はね、問題を起こした高野と松井に利用されたの! アリバイがなければそのまま損害賠償させられそうになってたんだから!
ネットにはそれも出てたのに、兄さんと姉さんは忘れた? 慰謝料の話を聞いて、頭から飛んだ? それとも私の身に起こった事なんてどうでもいい?」

「はぁ、これだから実里は⋯⋯。まったく、冷静に話す事も出来ないのかしら。別に私達はアンタのお金目当てで話しをしてるんじゃないわよ。いくら貰ったのか知らないけど、それを当てにしなくても私も旦那も高収入だもの。兄さんだってそうだし、父さんや母さんだって娘のお金を狙ったりしないわよ。
私達はアンタがまた騙されるんじゃないかって心配してるだけ。そうよね、兄さん」

「ああ、父さんがさっき言ってたじゃないか。お前は昔っからトロかったからこんな目に遭ったんだ。まともな仕事にもつけてないなら、ちょうどいいじゃないか。実家に帰って親の手伝いをすれば」




「母さん、屋根の修理は終わったの?」

「え? えーっと⋯⋯ま、まあなんとか」

 どうやら実里に屋根を修理するお金をせびっていた事自体忘れていたらしい。

「どこに頼んだの? 直したとことか修理費用とか大体でいいけど教えてくれる?」

「忘れたわよ、そんな事!」

「父さんなら覚えてるよね。修理業者を選んだり、現場に立ち会って修理する箇所を確認したりするのはいつも父さんだもん」

「⋯⋯忘れた。多分だが、たいした事なかったんじゃろう」




「話にならないね。心配だから帰って来い? 今まで一度も言われた事ないんだけど。帰って来て手伝えとは言われたことがあるけどね。心配だからってのはなかったし、普段どうしてるのか聞かれた事もないから、今更感が半端ないんだけど?
家に帰るとしても決まった食費しか出さないし、手伝いもしない。その条件なら考えてみてもいいかも。
今までみたいにちょっと貸してって言われても貸さない。返してもらった事は一度もないし、最近は『振込んどいて』って言うだけだよね。
手伝ってって言われても断る可能性の方が大きい。それでもいい?」

「巫山戯るな! それが親に対して言うことか!! 育ててもらった恩を忘れて、何様のつもりか」

 父親の大声で店中が静まり返った。

「育ててもらった分はもう返してる気がしてる。仕事をはじめてから⋯⋯高校生でアルバイトしてた時からかなりの額をきたもん。生活費とは別でね。
私なんかより大事にされてた兄さんや姉さんに頼めばいいじゃん。2人には社会人になってからも小遣いを渡してたけど、生活費は1回も貰ってなかったの知ってるよ? 父さんや母さんが兄さんや姉さんに貸すことはあっても借りた事もないよね。
2人だけでやってけないなら、兄さんか姉さんと暮らせば? 2人とも二世帯住宅を建てるって言って父さん達から援助してもらってたじゃん」

「そりゃ、いずれはそうしようと思って二世帯住宅にしたけど、実里は独身じゃない。ひとりで暮らすのって寂しいでしょ? だから遠慮してあげてるの。兄さんは奥さんが母さんと仲が悪いし」

 近所でチヤホヤされてきた実里の母親と、事あるごとに高学歴を鼻にかける兄の妻は水と油。年末年始の挨拶にさえやって来ない。

「じゃあ、二世帯住宅建てる時に、兄さんが援助してもらったお金を返せば父さん達の老後資金に使えるね」

「そんな事出来るわけないじゃないか」

「確かに、500万だから流石の兄さんでも一括は無理だよね。分割にすればいいじゃん。イタリアの高級ブランドのスーツをちょっと我慢すれば払えるかもよ?
姉さんだって毎年行く海外旅行の数をちょっと減らせば、親に援助するのは楽勝だよ」

「ねえ、なんで私達がアンタのために我慢しなくちゃなんないの? 私達の生活に口を挟まないでくれない?」

「同じ事を言ってあげるね。なんで私が兄さんや姉さんのために我慢しなくちゃなんないの? 私の生活に口を挟まないでくれない? でもまあ、姉さん達がちょっと我慢するのは私の為じゃなくて父さん達の為だけどね」

「末っ子だからって、私らが甘やかしたからかねえ。こんなに自分勝手に育って」

(カッチーン! とうとう言っちゃったね)

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