病弱設定されているようです

との

文字の大きさ
139 / 145
第九章 なんでやねん

06.ヤ◯ザな実里の迫力に惚れそうな予感

しおりを挟む
「もし仮に甘やかされたことがあったとしても、兄さんや姉さんほどじゃないよ?
私、家族旅行に行った事ないよね。突然ばあちゃんちに行かされて、帰って来たら『旅行行って来た~』って毎回言われてた。
外食も毎回理由をつけて私だけ連れてかなかったし。テストの点がとか宿題がとか⋯⋯一番笑ったのは『人が尋ねてくるかもしれないから留守番しといて』だったよ。尋ねてくるんじゃなくて『かも』だったからね。
全員で出かけなきゃいけなくなった時は、私だけ先に電車で行っといてって言われた。
親戚とか近所の人が来た時、私だけ部屋に戻れって言われてたし。
そんなに私と一緒にいるのを人に見られたくなかった? 家族の中に私がいるのが嫌だった? 恥ずかしかった?
父さんと母さんは時々姉さんと旅行に行くよね。姉さんがお金を出してるって言うけど、帰る前に父さんか母さんが必ずお金を渡してる。あれじゃあ、姉さんはお金を出したんじゃなくて建て替えてたって言うんじゃない?
父さん達は兄さんの子供をちょくちょく預かるけど、その度に私に帰ってきて手伝えって言うよね? で、2人は出かけちゃう。食事もお風呂も寝る支度も全部私に丸投げで、お土産は子供達の分だけ。
姉さんの時もそう。姉さんは子供を置いて父さん達と出かけて、私に子供の面倒を見させてる。
誰にも一度も『ありがとう』も『助かった』も言われた事がない。
これ、全部忘れたって言う? 言ってもいいけど私は認めないから。だって、私は忘れてないもん」

(ミリーと実里は同じだったから引き寄せられた⋯⋯家族からいらない子だと思われてたから)



「そこまでじゃなかったと思うけど⋯⋯実里は色々、その、あれじゃったけん⋯⋯連れて出るのは人様の迷惑になりそうな⋯⋯あの頃は仕方がなかったんよね」

(でたでた、母さんの必殺技。都合が悪くなったら『仕方なかったんよね』で誤魔化す癖)

 実里が幼い頃、出かけるのに邪魔だからと、腰紐で柱に縛り付けて出かけていた。

 用事が進まないからと言っては押入れに閉じ込める。

 いつも『あの時は仕方なかったんよね』と言って母は笑っていた。



 実里達の話し合いが不穏なものだと分かっているのだろう。

 恐る恐る近付いてきた女性店員が、実里の母親に睨みつけられて顔を引き攣らせたが、顔色を伺うようにしながら声をかけてきた。

「あのぉ、お食事がお済みでしたらお皿を運んでもよろしいでしょうか?」

「はい、お願いします。さっきは連れが少し大きな声を出して申し訳ありませんでした」

「とんでもありません。どうぞごゆっくり」

 実里の返答にホッと胸を撫で下ろした女性店員が、ペコリと頭を下げて席を離れた。



「あの頃は? 今もじゃん。結婚して家族がいるから? 2人とも旅行に行ったり遊びに行ったりして、父さん達はお土産を貰ったって私に自慢してくるよね。なら、無理矢理私を呼び出さなくても、手伝いをする時間は作れるじゃん。
兄さんも姉さんも趣味に旅行に遊びに使うお金があるよね。洋服や鞄なんかもブランドで揃えてるし。なら、親に貸すお金くらいあるじゃん。わざわざ私に連絡して振り込めって言わなくても。
父さんと母さんだって、本当はお金に困ってなんかないよね? 家賃収入がっつりあるじゃん。だから2人で外食するし旅行に行くし。
私が気付いてないと思ってたとか言わないでね。確定申告の手伝いしてたのは私なんだから」

「でも、実里は言えばすぐ手伝いに帰ってくるし、振り込んでくれるけん。上の2人は忙しいとか手持ちがないとか⋯⋯」

「文句を言わなかったから、いいように利用してたって事だね」

「今まで言わんかったくせに。不満があるなら言やあ良かったじゃろうが」

「今まで言わなかったのは、家族になりたかったから。家族の輪に入れて欲しかったから。やり方は間違いだらけだったかもだけど、なんとか父さんや母さんに私の方を向いて欲しかったから。
おかしいなって思っても、言ったらますます嫌われるって思ったから。
でも、もう無理。今回の騒動が起きて気が付いたんだけど何をやっても私は家族には入れない。家族に入れる方法は私には見つけられないし、これ以上探す気にもなれない。
だって、携帯で母さんと話した時も今日会ってからも、誰も一度も言わなかった。大丈夫って」

「そんとうなことは、言わんでも分かるはずじゃろ。いい年して甘えた事を⋯⋯」

 これが父親の反応。

「ほうよね、心配じゃ言うたじゃろ? あれはそう言う意味じゃって、分からんのかねえ」

 これが母親の意見。

「死んでないし怪我もしてない。なら、大丈夫かなんて聞く必要ないじゃないか」

 これが兄の反論。

「いつまで経ってもかまってちゃんとか、気持ち悪いって思われるわよ?」

 これが姉の本音。



「とにかく、もう二度と連絡して来ないで。私に家族はいないし、あなた達は昔も今もこれからも4人家族のまま。
姉さんから渡されたレシートだけど、返すから。来て欲しいって頼んだ覚えはないから、来ようと思った人が払うべき」

 単品で頼んだドリンクバーの金額は見ていないので、千円札を2枚テーブルに置いて席を立った。

「ファミレスに行こうと言ったのは私だから、全員のドリンクバーの費用は置いてくけど、勝手に頼んだ料理の分は割り勘でもなんでも相談して払ってね」

 席を立った実里が店を出ようとすると、一番近くの席に座っていた兄がガシッと実里の手首を掴んだ。

「痛えよ! 掴むんじゃねえ」

 爆発しそうなほどの怒りで頭に血が上っている実里は、兄の目を見ながら蔑むような顔でチッと舌打ちをした。

(兄さんは文句を言われるよりこの方が効くんだよね。大嫌いな先輩の癖だって。それ以来、胸糞悪くなるようになったって)

 兄の目を覗き込んでからわざとらしく掴まれている自分の手首を見て、もう一度兄の目を覗き込んだ。

「ふ~ん、へえ~」

「あっ!」

 掴んでいた実里の手を離した兄が一歩下がって椅子にぶつかり、崩れるように座り込んだ。

「その、まだ話が⋯⋯冷静になって話し合おう。気持ちがすれ違ったまま終わらせるのは間違ってる。お互いの気持ちをもっとだな⋯⋯理解し合えるまで、話し合わないと」

「そうよ! こんな終わり方って絶対良くないもの。次の旅行には実里も連れてってあげるわ」

「私が腹を痛めて産んだんじゃけ、大切に決まっとるじゃろうがね」

「まあ、座りんさい。話はまだ終わっとらんけん」


(この態度⋯⋯なんかありそう。まさかと思うけど)



「さっき結論は出たと思うけど?」

「勝手な事を言いおってからに」

「お父さん! 今はほら⋯⋯ゴニョゴニョ⋯⋯ほら、座りんさい。実里もなんか食べんさい。お腹が減ったんじゃろ?」

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯要件は何? わざわざ私のアパートを突き止めて、新幹線に乗ってまで会いに来た理由は?」

「それは⋯⋯妹が心配⋯⋯」

「私からはもう話す事は何もないし、誤魔化すなら帰るから」



「ねえ、ちょっとどうすんのよ。兄さん、なんとかしてよね」

「お前こそなんとかしろよ。言い出したのはお前なんだからな」

「ええ!? 言い出したのは母さんよ! 電話では埒が明かなかったから、なんとかしろって」

「私のせいにせんでくれる? 大体あんたらが⋯⋯」

「ええ加減にせんか!」

(お! 同意見です~)

しおりを挟む
感想 25

あなたにおすすめの小説

はっきり言ってカケラも興味はございません

みおな
恋愛
 私の婚約者様は、王女殿下の騎士をしている。  病弱でお美しい王女殿下に常に付き従い、婚約者としての交流も、マトモにしたことがない。  まぁ、好きになさればよろしいわ。 私には関係ないことですから。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

あなたなんて大嫌い

みおな
恋愛
 私の婚約者の侯爵子息は、義妹のことばかり優先して、私はいつも我慢ばかり強いられていました。  そんなある日、彼が幼馴染だと言い張る伯爵令嬢を抱きしめて愛を囁いているのを聞いてしまいます。  そうですか。 私の婚約者は、私以外の人ばかりが大切なのですね。  私はあなたのお財布ではありません。 あなたなんて大嫌い。

拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら

みおな
恋愛
 子爵令嬢のクロエ・ルーベンスは今日も《おひとり様》で夜会に参加する。 公爵家を継ぐ予定の婚約者がいながら、だ。  クロエの婚約者、クライヴ・コンラッド公爵令息は、婚約が決まった時から一度も婚約者としての義務を果たしていない。  クライヴは、ずっと義妹のファンティーヌを優先するからだ。 「ファンティーヌが熱を出したから、出かけられない」 「ファンティーヌが行きたいと言っているから、エスコートは出来ない」 「ファンティーヌが」 「ファンティーヌが」  だからクロエは、学園卒業式のパーティーで顔を合わせたクライヴに、にっこりと微笑んで伝える。 「私のことはお気になさらず」

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

兄のお嫁さんに嫌がらせをされるので、全てを暴露しようと思います

きんもくせい
恋愛
リルベール侯爵家に嫁いできた子爵令嬢、ナタリーは、最初は純朴そうな少女だった。積極的に雑事をこなし、兄と仲睦まじく話す彼女は、徐々に家族に受け入れられ、気に入られていく。しかし、主人公のソフィアに対しては冷たく、嫌がらせばかりをしてくる。初めは些細なものだったが、それらのいじめは日々悪化していき、痺れを切らしたソフィアは、両家の食事会で……

結婚十年目の夫から「結婚契約更新書」なるものが届いた。彼は「送り間違えた」というけれど、それはそれで問題なのでは?

ぽんた
恋愛
レミ・マカリスター侯爵夫人は、夫と政略結婚をして十周年。侯爵夫人として、義父母の介護や領地経営その他もろもろを完ぺきにこなしている。そんなある日、王都に住む夫から「結婚契約更新書」なるものが届いた。義弟を通じ、夫を追求するも夫は「送り間違えた。ほんとうは金を送れというメモを送りたかった」という。レミは、心から思った。「それはそれで問題なのでは?」、と。そして、彼女の夫にたいするざまぁがはじまる。 ※ハッピーエンド確約。ざまぁあり。ご都合主義のゆるゆる設定はご容赦願います。

私はあなたの正妻にはなりません。どうぞ愛する人とお幸せに。

火野村志紀
恋愛
王家の血を引くラクール公爵家。両家の取り決めにより、男爵令嬢のアリシアは、ラクール公爵子息のダミアンと婚約した。 しかし、この国では一夫多妻制が認められている。ある伯爵令嬢に一目惚れしたダミアンは、彼女とも結婚すると言い出した。公爵の忠告に聞く耳を持たず、ダミアンは伯爵令嬢を正妻として迎える。そしてアリシアは、側室という扱いを受けることになった。 数年後、公爵が病で亡くなり、生前書き残していた遺言書が開封された。そこに書かれていたのは、ダミアンにとって信じられない内容だった。

処理中です...