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第二章 ミッドランド侯爵家に産まれて
09.犯人み〜っけ
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「おぱなちはミリーがちまつ! ソバのおりょうりより、おいちいおりょうりをちゅくってうるから、ソバはうれなくなりまちゅかなね! こりはてんてんふこくでちゅ! セオじい、おりょうりをだちて。アードルドをぎゃっぷんってちゅるから」
セオじいがバスケットをエランに渡し、セリナに作ってもらった料理をテーブルに並べてもらった。
「これは⋯⋯どれもソバ粉を使った料理じゃないか」
「トーマチュたん、こりはね、ぜーんぶとうもころちやこむぎをちゅかったの。ソバはいいこだけど、ソバのうじょーのアードルドがわるいこなから、ソバはちゅかわない。だーかーらー、ソバはうりなくなる」
小麦の代わりに栽培されたソバは様々な料理として利用されてきた。小麦の代わり⋯⋯つまり、小麦が安定供給されればソバの需要は激減する可能性を秘めているとも言える。ソバ粉で作っていた料理をとうもろこしで作れると広めれば、ソバを利用しなくなる人も出てくるはず。
「ソバはね、たびりないちとがいるんだ~。ゴホゴホちたり、へくちってくちゃみがでたり、かいかいがでちたり、げえってなったり、ぽんぽんいたいいたいになったり⋯⋯クラクラになっていちがでちなくなる。
きけんだよ~ってみんなにおちらてちて、とうもころしでちゅくろうって、み~んなにおちえてあげゆの」
間違ってはいないし危険を知らせるのは悪いことではない。ソバアレルギーの存在を知らず症状に悩まされてきた人には朗報だが⋯⋯今回のこれは単なる脅しである。
(いや~、そばアレルギーって怖いんだよ~。アナフィラキシーショックは命に関わるからね。アレルギーっていう概念がない世界なら知られてないだろうけど)
普段ならそば粉で作る粥のポレンタはとうもろこしの粉でつくり、風味付けにオリーブオイルやバターを入れた。
そば粉で作ったパスタに見えるが、小麦でパスタを作ってキャベツやじゃがいもを加えて、バターとチーズのソースを絡めている。
ソバ粉で作るのが定番のガレットを小麦で作り、その上にハム・卵・チーズを乗せた。
(ハムやチーズの為に、調理場に忍び込んだんだもの。高位貴族の調理場にある食材で料理上手のセリナが腕を振るったんだもん。美味しくないわけがないんだからね)
「ソバで咳やくしゃみ⋯⋯息ができなくなる? まさか⋯⋯いや、でも⋯⋯もしそれが本当なら⋯⋯告知するべきで⋯⋯」
アーノルドが小声でぶつぶつと呟いている。
(えーっと、アーノルドってそれほど悪い人じゃない?)
「セオドア殿⋯⋯その子供の話は本当ですか?」
「何を言ってるんだ。あんなガキの言うことなんてまともに聞く奴があるか!」
「しかし、叔父上。もしそれが本当なら、ソバを売る時に注意するべ⋯⋯」
「ここまで準備してきた事を全て水の泡にするつもりか! 貴様を蔑んできた奴らに仕返しをしたくはないのか! ようやく奴等に吠え面をかかせてやれる時が来たのに⋯⋯」
(ああ、こいつが⋯⋯)
「どうやら話が見えてきたようじゃ。そろそろその話し方をやめて、ちゃーんと説明してやったらええと思うんじゃがのう」
「セオじい⋯⋯私、頑張って話してたのにぃ」
「あの話し方は可愛いが、真面目な話をするにはちぃとまどろっこしいでのう」
「はぁ、アーノルドさん。初めに断っておきますがこれは私の勝手な想像だと承知の上でお聞きください」
舌ったらずな話し方で毒を吐いていたミリーが突然理路整然と話しだし、アーノルド達が目を大きく開いて絶句した。
「アーノルドさんは貴族の令息としてお産まれになり、貴族の中で育たれたと聞いています。
お兄様が爵位を継承された時、アーノルドさんは平民に。遺言で手に入れた土地は痩せた荒地だったのかもしれませんが、努力を重ねて大地主となり多くの富を蓄えるまでになられた。
アーノルドさんの努力を知っているくせに⋯⋯貴族顔負けの暮らしをしているが、所詮平民だと言われ続けているのではないでしょうか。成功すればするほど、金を手にすればするほど、陰口を言われておられる」
『偉そうにしても所詮は平民の戯言だよ。貴族にはなれん男の強がりでしかないんだから。なにしろ、私達とは住む世界が違うんだからね』
「プライドが高い方だから努力をされた。でも、プライドの高い方だからこそ、周囲のやっかみや妬みに怒りを覚えておられる。
長男だと言うだけで爵位を継承され、貴族社会に残る事が許されているお兄様に対し、思うところがおありなのかもしれない」
「ああ、その通りだとも! 俺は必死の思いでここまで登り詰めたのに、爵位がないだけで蔑まれるんだ。俺より成績が悪かったボンクラも、スクールから逃げ出してばかりだったクズも⋯⋯爵位を得た途端、踏ん反り返って俺を馬鹿にしやがる」
努力したこともない奴らが偉そうに見下してくるのが許せない。たまたま先に産まれただけで富と名誉を手に入れた、運が良かった。ただそれだけのくせに!
「荒地を開拓し成功を納められた。ソバを流通させた事は、この国の食糧事情に大きく貢献したに違いありません。それだけの功績を残されたアーノルドさんは男爵位を授爵されてもおかしくないはず。
それが叶わないのはトーマスさん、あなたの仕業ですね」
セオじいがバスケットをエランに渡し、セリナに作ってもらった料理をテーブルに並べてもらった。
「これは⋯⋯どれもソバ粉を使った料理じゃないか」
「トーマチュたん、こりはね、ぜーんぶとうもころちやこむぎをちゅかったの。ソバはいいこだけど、ソバのうじょーのアードルドがわるいこなから、ソバはちゅかわない。だーかーらー、ソバはうりなくなる」
小麦の代わりに栽培されたソバは様々な料理として利用されてきた。小麦の代わり⋯⋯つまり、小麦が安定供給されればソバの需要は激減する可能性を秘めているとも言える。ソバ粉で作っていた料理をとうもろこしで作れると広めれば、ソバを利用しなくなる人も出てくるはず。
「ソバはね、たびりないちとがいるんだ~。ゴホゴホちたり、へくちってくちゃみがでたり、かいかいがでちたり、げえってなったり、ぽんぽんいたいいたいになったり⋯⋯クラクラになっていちがでちなくなる。
きけんだよ~ってみんなにおちらてちて、とうもころしでちゅくろうって、み~んなにおちえてあげゆの」
間違ってはいないし危険を知らせるのは悪いことではない。ソバアレルギーの存在を知らず症状に悩まされてきた人には朗報だが⋯⋯今回のこれは単なる脅しである。
(いや~、そばアレルギーって怖いんだよ~。アナフィラキシーショックは命に関わるからね。アレルギーっていう概念がない世界なら知られてないだろうけど)
普段ならそば粉で作る粥のポレンタはとうもろこしの粉でつくり、風味付けにオリーブオイルやバターを入れた。
そば粉で作ったパスタに見えるが、小麦でパスタを作ってキャベツやじゃがいもを加えて、バターとチーズのソースを絡めている。
ソバ粉で作るのが定番のガレットを小麦で作り、その上にハム・卵・チーズを乗せた。
(ハムやチーズの為に、調理場に忍び込んだんだもの。高位貴族の調理場にある食材で料理上手のセリナが腕を振るったんだもん。美味しくないわけがないんだからね)
「ソバで咳やくしゃみ⋯⋯息ができなくなる? まさか⋯⋯いや、でも⋯⋯もしそれが本当なら⋯⋯告知するべきで⋯⋯」
アーノルドが小声でぶつぶつと呟いている。
(えーっと、アーノルドってそれほど悪い人じゃない?)
「セオドア殿⋯⋯その子供の話は本当ですか?」
「何を言ってるんだ。あんなガキの言うことなんてまともに聞く奴があるか!」
「しかし、叔父上。もしそれが本当なら、ソバを売る時に注意するべ⋯⋯」
「ここまで準備してきた事を全て水の泡にするつもりか! 貴様を蔑んできた奴らに仕返しをしたくはないのか! ようやく奴等に吠え面をかかせてやれる時が来たのに⋯⋯」
(ああ、こいつが⋯⋯)
「どうやら話が見えてきたようじゃ。そろそろその話し方をやめて、ちゃーんと説明してやったらええと思うんじゃがのう」
「セオじい⋯⋯私、頑張って話してたのにぃ」
「あの話し方は可愛いが、真面目な話をするにはちぃとまどろっこしいでのう」
「はぁ、アーノルドさん。初めに断っておきますがこれは私の勝手な想像だと承知の上でお聞きください」
舌ったらずな話し方で毒を吐いていたミリーが突然理路整然と話しだし、アーノルド達が目を大きく開いて絶句した。
「アーノルドさんは貴族の令息としてお産まれになり、貴族の中で育たれたと聞いています。
お兄様が爵位を継承された時、アーノルドさんは平民に。遺言で手に入れた土地は痩せた荒地だったのかもしれませんが、努力を重ねて大地主となり多くの富を蓄えるまでになられた。
アーノルドさんの努力を知っているくせに⋯⋯貴族顔負けの暮らしをしているが、所詮平民だと言われ続けているのではないでしょうか。成功すればするほど、金を手にすればするほど、陰口を言われておられる」
『偉そうにしても所詮は平民の戯言だよ。貴族にはなれん男の強がりでしかないんだから。なにしろ、私達とは住む世界が違うんだからね』
「プライドが高い方だから努力をされた。でも、プライドの高い方だからこそ、周囲のやっかみや妬みに怒りを覚えておられる。
長男だと言うだけで爵位を継承され、貴族社会に残る事が許されているお兄様に対し、思うところがおありなのかもしれない」
「ああ、その通りだとも! 俺は必死の思いでここまで登り詰めたのに、爵位がないだけで蔑まれるんだ。俺より成績が悪かったボンクラも、スクールから逃げ出してばかりだったクズも⋯⋯爵位を得た途端、踏ん反り返って俺を馬鹿にしやがる」
努力したこともない奴らが偉そうに見下してくるのが許せない。たまたま先に産まれただけで富と名誉を手に入れた、運が良かった。ただそれだけのくせに!
「荒地を開拓し成功を納められた。ソバを流通させた事は、この国の食糧事情に大きく貢献したに違いありません。それだけの功績を残されたアーノルドさんは男爵位を授爵されてもおかしくないはず。
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