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第15話 報酬の理由
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「アルト、よく聞け。お前の取り分は、銅貨5枚だ」
あまりにも残酷なトビーの言葉に、アルトの理性が完全に吹き飛んだ。全身の血が頭に上り、怒りの熱で目の前が赤く染まる。
「ふ、ふざけるな!」
アルトは怒りの形相でそう言い放とうとしたが、トビーはそれより一瞬早く動き、素早くテーブルの上からアルトの口を掌で塞いだ。
「静かにしろ!アルト、王都の店で大声を出すな。礼儀をわきまえろ」
トビーの声は静かだが、殺気が籠もっており、アルトは一瞬怯んだ。しかし、小金貨6枚が銅貨5枚に化けたという事実に、アルトは再び怒りの声を上げようと身を捩る。
トビーは食事の前の水を一口飲み、さらに言葉を続けた。
「落ち着けアルト。お前はTPO(時と場所と場合)をわきまえていない。だから、お前の報酬は銅貨5枚なのだ」
アルトは、立派なお店で大声を出すのはいけないことだと、本能的に理解した。この王都の優雅な空間は、泥底の喧騒とは異質なのだ。アルトは怒りを抑えきれないものの、全身の力を抜いてトビーの手から解放され、トーンを抑えて話し出した。
「小金貨6枚で売れただろ?どうして僕の報酬は銅貨5枚なのだ!」
アルトは精一杯気持ちを抑えてトビーに問う。トビーは運ばれてきたハンバーグ定食には目もくれず、真剣な眼差しでアルトを見返した。
「お前は、俺がいなければ、あの交渉の場に立つことさえできなかった。それは理解しているよな」
アルトは、悔しさを滲ませながら小さく頷いた。
「お前は、クライヴ・カーライルが『銀貨1枚が妥当だ』と言った時、一瞬、喜んだだろ」
アルトは反論できなかった。確かに、銀貨1枚という金額でも、売れるならそれで良いと思ってしまった。
「あれがダメなんだ、アルト。あの時、お前は銀貨1枚でも売ると決断したのだ。あのあと、クライヴはあれこれと難癖をつけて、銅貨5枚程度まで値を下げただろう。でも、お前は銅貨5枚でも売っていただろう」
アルトは何も言い返すことができない。トビーの言う通り、借金返済の重圧から、銀貨1枚、あるいは銅貨5枚でも、アルトは売っていた。
「いいか。銅貨5枚というのは、お前があのペンダントにつけた値段だ。だから、お前には銅貨5枚の報酬しか与えない。銅貨5枚の価値を、俺が小金貨6枚の価値に変えたのだ」
トビーはさらに言葉を継いだ。
「それに、俺はあの場に適した高価な服を用意して着用し、一見の我々でも交渉してもらえるように店員たちに賄賂を渡したのだ。交渉には、交渉のテーブルに立つための準備金も必要だ。お前は何もわかっていないのだ。だが、お前には、ボロボロになった物を綺麗に仕上げる才能はある。しかし、その才能は、ハズレ職業フリーターである所以のスキルだ。それだけではたいした価値はない。いくら綺麗に修復できたところで、足元を見られ、安く買い叩かれて終わりだ」
アルトは、トビーのあまりにも論理的で冷酷な言い分に、言葉を失い、納得するしかなかった。トビーはさらに続ける。
「しかし、俺なら、正当な価値以上の付加価値を、話術で付け足すことができるのだ。そして、俺はお前には最低限の報酬しか与えない。なぜならお前は俺を正当な仲間ではないと決めた。お前が『借金を返済すれば俺を捨てる』と言ったのだからな」
アルトは過去に自分が発した軽率な言葉によって、トビーに自己の首を絞められるという残酷な現実を初めて理解した。アルトは唇を噛みしめ、何も言い返すことができない。全身に広がるのは、激しい怒りよりも、自分の浅はかさに対する深い悔しさだった。大声で泣き叫びたい衝動に駆られたが、王都の店で騒ぎを起こすことは、先ほどトビーに厳しく止められたばかりだ。アルトは歯を食いしばり、顔を伏せて静かに涙を流した。それは、泥底でただ怒鳴り散らしていた頃のアルトとは違う、わずかだが確かな成長の証だったのかもしれない。
「それでよい」
トビーはアルトの肩越しに給仕の動きを確認しながら、静かに言った。
「すぐに感情を殺すことはできないかもしれんが、少しずつ成長しろ」
トビーの言葉は、褒めているようにも聞こえたが、アルトの意地がそれを素直に受け入れることを許さなかった。「ありがとう」と言いたくはなかった。だが、アルトは自分の意思と、トビーの圧倒的な支配を認め、小さく頷いた。
トビーはアルトのその複雑な、屈辱と諦めが混じった思いを瞬時に察したが、容赦なく言葉を続けた。
「俺はお前に言ったよな。お前には知識と仲間が足りないと。お前はこれから多くのことを学び、成長をするだろう。しかし、残念ながら、お前のハズレスキルには成長がない。だからそれを補う知恵と仲間が必要なのだ」
トビーは、アルトが涙を流しているにもかかわらず、その事実は無視して、まるで取引の条件を読み上げるかのように冷徹な言葉を告げた。
「俺はお前を利用するだけ利用するつもりだ。お前の修復の才能は金になる。だが、お前もまた、俺の話術と知識を利用して、この泥底の螺旋から成り上がれ」
アルトは、ただトビーの冷たい言葉を聞くことしかできなかった。彼の人生は、トビーという圧倒的なペテン師によって、絶望的な支配下に置かれたのだ。しかし、その支配下でのみ、泥底からの唯一の脱出の道が開けているという現実をアルトは悟り始めていた。
あまりにも残酷なトビーの言葉に、アルトの理性が完全に吹き飛んだ。全身の血が頭に上り、怒りの熱で目の前が赤く染まる。
「ふ、ふざけるな!」
アルトは怒りの形相でそう言い放とうとしたが、トビーはそれより一瞬早く動き、素早くテーブルの上からアルトの口を掌で塞いだ。
「静かにしろ!アルト、王都の店で大声を出すな。礼儀をわきまえろ」
トビーの声は静かだが、殺気が籠もっており、アルトは一瞬怯んだ。しかし、小金貨6枚が銅貨5枚に化けたという事実に、アルトは再び怒りの声を上げようと身を捩る。
トビーは食事の前の水を一口飲み、さらに言葉を続けた。
「落ち着けアルト。お前はTPO(時と場所と場合)をわきまえていない。だから、お前の報酬は銅貨5枚なのだ」
アルトは、立派なお店で大声を出すのはいけないことだと、本能的に理解した。この王都の優雅な空間は、泥底の喧騒とは異質なのだ。アルトは怒りを抑えきれないものの、全身の力を抜いてトビーの手から解放され、トーンを抑えて話し出した。
「小金貨6枚で売れただろ?どうして僕の報酬は銅貨5枚なのだ!」
アルトは精一杯気持ちを抑えてトビーに問う。トビーは運ばれてきたハンバーグ定食には目もくれず、真剣な眼差しでアルトを見返した。
「お前は、俺がいなければ、あの交渉の場に立つことさえできなかった。それは理解しているよな」
アルトは、悔しさを滲ませながら小さく頷いた。
「お前は、クライヴ・カーライルが『銀貨1枚が妥当だ』と言った時、一瞬、喜んだだろ」
アルトは反論できなかった。確かに、銀貨1枚という金額でも、売れるならそれで良いと思ってしまった。
「あれがダメなんだ、アルト。あの時、お前は銀貨1枚でも売ると決断したのだ。あのあと、クライヴはあれこれと難癖をつけて、銅貨5枚程度まで値を下げただろう。でも、お前は銅貨5枚でも売っていただろう」
アルトは何も言い返すことができない。トビーの言う通り、借金返済の重圧から、銀貨1枚、あるいは銅貨5枚でも、アルトは売っていた。
「いいか。銅貨5枚というのは、お前があのペンダントにつけた値段だ。だから、お前には銅貨5枚の報酬しか与えない。銅貨5枚の価値を、俺が小金貨6枚の価値に変えたのだ」
トビーはさらに言葉を継いだ。
「それに、俺はあの場に適した高価な服を用意して着用し、一見の我々でも交渉してもらえるように店員たちに賄賂を渡したのだ。交渉には、交渉のテーブルに立つための準備金も必要だ。お前は何もわかっていないのだ。だが、お前には、ボロボロになった物を綺麗に仕上げる才能はある。しかし、その才能は、ハズレ職業フリーターである所以のスキルだ。それだけではたいした価値はない。いくら綺麗に修復できたところで、足元を見られ、安く買い叩かれて終わりだ」
アルトは、トビーのあまりにも論理的で冷酷な言い分に、言葉を失い、納得するしかなかった。トビーはさらに続ける。
「しかし、俺なら、正当な価値以上の付加価値を、話術で付け足すことができるのだ。そして、俺はお前には最低限の報酬しか与えない。なぜならお前は俺を正当な仲間ではないと決めた。お前が『借金を返済すれば俺を捨てる』と言ったのだからな」
アルトは過去に自分が発した軽率な言葉によって、トビーに自己の首を絞められるという残酷な現実を初めて理解した。アルトは唇を噛みしめ、何も言い返すことができない。全身に広がるのは、激しい怒りよりも、自分の浅はかさに対する深い悔しさだった。大声で泣き叫びたい衝動に駆られたが、王都の店で騒ぎを起こすことは、先ほどトビーに厳しく止められたばかりだ。アルトは歯を食いしばり、顔を伏せて静かに涙を流した。それは、泥底でただ怒鳴り散らしていた頃のアルトとは違う、わずかだが確かな成長の証だったのかもしれない。
「それでよい」
トビーはアルトの肩越しに給仕の動きを確認しながら、静かに言った。
「すぐに感情を殺すことはできないかもしれんが、少しずつ成長しろ」
トビーの言葉は、褒めているようにも聞こえたが、アルトの意地がそれを素直に受け入れることを許さなかった。「ありがとう」と言いたくはなかった。だが、アルトは自分の意思と、トビーの圧倒的な支配を認め、小さく頷いた。
トビーはアルトのその複雑な、屈辱と諦めが混じった思いを瞬時に察したが、容赦なく言葉を続けた。
「俺はお前に言ったよな。お前には知識と仲間が足りないと。お前はこれから多くのことを学び、成長をするだろう。しかし、残念ながら、お前のハズレスキルには成長がない。だからそれを補う知恵と仲間が必要なのだ」
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