ハズレ職業【フリーター】を授かった少年は、王都で騙されて多額の借金を背負う。しかし、修復スキルでガラクタを修復して最下層の泥底から成り上がる

ninjin

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第22話 トビーの策略

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 トビーはアルトが仕上げた品々を確認する。それらは、銀のナイフやフォーク、研ぎ澄まされた包丁、そして銀の食器などだ。

 トビーは、その仕上がりに感服した。包丁は刃こぼれが消え去り、刀身は鏡のように光を反射し、名工の手によるものかと錯覚するほどの鋭さと美しさを取り戻している。さらに、銀の食器には、泥の下に隠されていた精巧で美しい細工が施されており、アルトの修復によってその銀本来の輝きが引き出されていた。アルトの修復は、単に錆や汚れを落とすだけでなく、品の本来の価値を完全に引き出していた。また、トビーはアルトがガラクタを綺麗にする力だけでなく、ガラクタの状態でも価値のあるものと判断する目利きの力を持っていることを改めて理解した。そして同時に、アルトが綺麗にした品々の市場価値までは理解していないことにも気づく。それは、昨日のペンダントの交渉の場でも感じていた、アルトの致命的な弱点であった。

 「トビー、これらは高く売れそうかな」

 アルトは自分が綺麗にしたお宝の価値を理解していない。そんなアルトの弱点を突くようにトビーは厳しい現実を突きつける。

 「アルト、君は良い仕事をしてくれた。しかし、昨日のペンダントと比べれば、格段に価値は落ちるだろう。あまり期待はしない方が良いぞ」

 アルトはトビーの言葉を聞いて、少しがっかりし、表情を曇らせた。トビーはアルトの肩に力強く手を置き、その瞳を真っ直ぐに見つめた。

 「そう、落ち込むなアルト。お前が大事に磨き上げた宝物を、価値以上の値段にするのが俺の仕事だ。後は俺に任せてくれ」

 その言葉は、トビーが昨日見せた常識を覆す交渉術を知っているアルトにとって、この上なく心強かった。トビーの力強い言葉と、その熱い視線に、アルトはトビーに対する警戒心を解き、彼に身を委ね、信頼へと傾き始めるのであった。

 アルトは、トビーに希望を託し、純粋な眼差しで懇願した。

 「トビー、お願いするよ。君だけが頼りなんだ」

 トビーは、アルトの肩に置いた手に力を込め、満足げに微笑んだ。

 「それはお互い様だ。お前がガラクタを再生させて、俺がお宝に変えてやる。一緒に借金を返済して、自由を手に入れよう」

 トビーの言葉は、まるで泥底から脱出するための魔法の呪文のように、アルトの心に響いた。アルトは嬉しそうに「うん」と頷き、アルトの心には確かな共闘意識が生まれた。

 「もう、夜も遅くなってきた。俺は明日の準備をするから、お前は食事を取って宿屋に戻れ」

 トビーはそう指示した。

 「わかったよ」

 アルトは素直に頷き、トビーに「明日も頑張るよ」と手を振って休憩所を出て行った。アルトはトビーの言葉により、明日への活力に満ちていた。アルトの姿が見えなくなると、トビーはすぐに笑顔を消し、休憩室の椅子に深く腰掛けた。彼はアルトが残していった修復品を再び検分し、その販売戦略を頭の中で組み立てていた。

 トビーがしばらく休憩室に座っていると、静かに休憩室の扉が開いた。

 「エドワード様、あのガキはどうでしたか」

 休憩室に姿を見せたのは、額に蜘蛛の入れ墨があるゴミ山の監視員、ゲイルだった。彼は周囲を警戒するように素早く扉を閉めた。休憩室の薄暗い片隅、ゲイルは緊張した面持ちでトビーの前に立つ。トビーはどこか冷酷な光を宿した目でゲイルを見上げていた。

 「アイツは使える。今までの中で最高の金のなる木だ」

 トビーは、先ほどまでの人当たりの良い少年とはまるで別人かのように、顔いっぱいにゲスい笑みを浮かべた。その笑みは、まるで獲物を品定めする肉食獣のようで、ゲイルはゴクリと唾を飲んだ。

 「私は明日からどうしましょうか」

 ゲイルの声には、微かな震えが混じっていた。トビーは肘掛けに頬杖をつき、無造作に流れるダークブラウンの髪の間から、琥珀色の瞳をギラつかせた。

 「そうだな、アイツは単純なバカだ。少し愛想よくして最低限の昼飯でも用意しろ。そうすれば俺の信用も上がり、俺への忠誠心も上がるだろう。それとこの汚い休憩室は改善しろ。アイツが作業しやすいように片付けて、俺から大事にしてもらえていると思わせるのだ」

 トビーの言葉には、有無を言わせぬ絶対的な命令が込められていた。ゲイルは即座に頭を下げた。

 「わかりました。休憩室は綺麗に片付けます」
 「ほら、これが追加の報酬だ」

 トビーは懐から取り出した銀貨2枚を、わざと音を立てて床に落とした。 ゲイルの目が、一瞬にして貪欲な光を宿す。彼は慌てて膝を突き、銀貨を拾い上げた。その焦燥ぶりを見て、トビーはケタケタと下品に笑った。

 「ありがとうございます!」

 ゲイルは、文字通り床に頭を擦り付けるようにお礼を言った。その姿は、忠実な犬のようだった。

 「くれぐれも他のヤツにアルトの邪魔をさせるなよ」
 「はい!」

 トビーは満足げに頷くと、椅子からゆっくりと立ち上がり休憩室から去っていった。彼の背中が暗闇に消えるのを確認すると、ゲイルはすぐさま顔を上げ、床に散らばるゴミや道具類に目を向けた。その表情には、銀貨を手に入れた満足と、新たな任務への意欲が入り混じっていた。ゲイルはすぐさま休憩室の掃除に取りかかった。

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