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第42話 究極の2択
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ファビアンは、真剣な表情のアルトに歩み寄り、その肩を力強く叩いた。
「お前の覚悟はわかった。俺は全力でお前に協力をする」
その言葉に、アルトは救世主を見るような眼差しを向け、大声で叫んだ。
「ありがとうございます!」
アルトは深々と頭を下げた。だが、ファビアンはすぐに表情を引き締め、冷静な助言を始めた。
「だがな、アルト。俺とお前では、ルーナを救えるほどの財力も権力もない」
「え……」
ファビアンの言葉に、アルトは一瞬呆然とする。大金貨5枚という壁は、彼らの個人の財布でどうにかなる額ではない。
「だが、俺たちにはあのお方がいる。そう、ヴァレリウス様だ。お前も一度、あのお方にお会いしたことがあるだろう」
アルトは眉をひそめる。トビーを弾劾する殺伐とした場において、ヴァレリウスと対面したことはあるが、極度の緊張と恐怖で記憶が曖昧だった。その様子を見たファビアンは補足する。
「トビーを処刑したあの場所にいた、黒い仮面をつけていたお方だ」
「あ……っ!」
アルトの脳裏に、あの冷徹な支配者の姿が蘇る。絶対的な恐怖の象徴。
「あの人が……僕に力を貸してくれるのでしょうか」
「貸してくれるさ。お前のガラクタをお宝に変える力を、ヴァレリウス様は高く評価していた。未来の利益を担保にすれば、大金貨5枚くらいなら貸してくれるだろう」
「本当ですか!」
アルトは嬉しそうに声を上げた。希望の光が見えた気がした。しかし、ファビアンはそこで冷や水を浴びせるように、静かに諭した。
「だが、アルト。よく考えろ。お前はルーナをこの店から解放すると言ったが、ルーナはお金を稼ぐためにこの店で働く決心をしたのだろう?」
アルトはファビアンの意図をすぐには理解できず、ただ単純に頷いた。
「はい」
ファビアンは、子供に言い聞かせるように説明を続ける。
「ルーナは無理やりではなく、自分の意思で、家族を養うためにこの店に入店したのだ。お前が借金を肩代わりしてルーナをこの店から解放したところで、彼女には収入源がない。それではルーナは救われないのだ」
アルトはハッとした。
「そっか……。ルーナさんは王都で働く場所がないんだね。でも、泥底ならあるかも……」
そう言いかけて、アルトは言葉を飲み込んだ。泥底の現実。そこは暴力と貧困が支配する世界だ。女性がまともに働ける場所など、黄金の蜘蛛が管理している職業安定所の受付嬢くらいしかない。それ以外の場所では、女性は常に危険に晒される。アルトが言葉に詰まったことで、ファビアンは彼が理解したことに気づき、残酷な真実を語り始めた。
「そうだ。ハズレ職業の女性が金を稼ぐには、自分の体を売るしか方法は残されていない。以前は泥底でも働く女性はいたが、女性を襲う者が多くて女性の就労を限定的に禁止したのだ。そこでトビーが発案したのだ。王都の治安の良い場所で、富裕層相手に体を売って安全に稼げる場所を提供することに。以前はここは、高級個室料理店だったのだが、女性と男性が1対1で接客、料理そして、欲望の相手までする店へと様変わりしたのだ。そして、この店のオーナーはヴァレリウス様になる」
「な……」
アルトの表情が一気に険悪なものに変わる。トビーが作ったシステム。そしてヴァレリウスがオーナー。自分をこの店に連れてきたのは、ヴァレリウスの配下であるファビアン。
(……はめられた?)
アルトの直感が警鐘を鳴らす。自分は、ルーナを助けるように仕向けられたのではないか。ルーナと出会い、恋に落ち、借金を背負うことまで、すべてが彼らのシナリオ通りなのではないか。アルトは黙ってファビアンを睨みつけるが、ファビアンはその疑念すら手玉に取るように言葉を続ける。
「ヴァレリウス様なら、ルーナに体を売らなくても良い、まともな働き口を用意することもできるだろう。アルト、お前の望みを完全に叶えることができるのは、ヴァレリウス様だけだ。……今お前が心に浮かんだくだらない疑問は、捨て去ることが一番賢い判断だぞ」
しかし、アルトは我慢できずに口を開いた。
「……お前も、僕を騙したんだな」
アルトは鋭い眼光でファビアンを睨みつけた。
「僕を借金漬けにするために、わざとこの店に連れてきたんだ!」
「勘違いをするな」
ファビアンは冷ややかに言い返した。
「俺は、お前を楽しませるためにこの店に連れて来たんだ。お前が勝手に、店の女に惚れたのだろう?」
「うっ……」
アルトは図星を突かれて顔を歪める。確かに、ルーナを好きになったのは自分の心だ。だが、疑念は消えない。
「ルーナも……ぐるなのか?」
「さあな。俺が仕向けた女ではないと言ったら、お前は納得するのか?」
アルトは何も言い返せない。疑えばキリがないが、真実を知る術もない。ファビアンは、アルトを冷たく見下ろした。
「俺はどちらでも構わない。お前がこのまま店を出て、ルーナを見捨てるのを止めはしない。だが、お前が本気でルーナを救いたいなら、手段は1つしかない。……ヴァレリウス様に力を借りるか、それとも何もせず逃げるか。自分で考えろ」
アルトは、究極の二択を迫られた。これは罠かもしれない。しかし、罠だとしても、ルーナが苦しんでいる現実は変わらない。彼女を救うには、悪魔の手を取るしかないのか。アルトは苦悶の表情で、拳を握りしめた。
「お前の覚悟はわかった。俺は全力でお前に協力をする」
その言葉に、アルトは救世主を見るような眼差しを向け、大声で叫んだ。
「ありがとうございます!」
アルトは深々と頭を下げた。だが、ファビアンはすぐに表情を引き締め、冷静な助言を始めた。
「だがな、アルト。俺とお前では、ルーナを救えるほどの財力も権力もない」
「え……」
ファビアンの言葉に、アルトは一瞬呆然とする。大金貨5枚という壁は、彼らの個人の財布でどうにかなる額ではない。
「だが、俺たちにはあのお方がいる。そう、ヴァレリウス様だ。お前も一度、あのお方にお会いしたことがあるだろう」
アルトは眉をひそめる。トビーを弾劾する殺伐とした場において、ヴァレリウスと対面したことはあるが、極度の緊張と恐怖で記憶が曖昧だった。その様子を見たファビアンは補足する。
「トビーを処刑したあの場所にいた、黒い仮面をつけていたお方だ」
「あ……っ!」
アルトの脳裏に、あの冷徹な支配者の姿が蘇る。絶対的な恐怖の象徴。
「あの人が……僕に力を貸してくれるのでしょうか」
「貸してくれるさ。お前のガラクタをお宝に変える力を、ヴァレリウス様は高く評価していた。未来の利益を担保にすれば、大金貨5枚くらいなら貸してくれるだろう」
「本当ですか!」
アルトは嬉しそうに声を上げた。希望の光が見えた気がした。しかし、ファビアンはそこで冷や水を浴びせるように、静かに諭した。
「だが、アルト。よく考えろ。お前はルーナをこの店から解放すると言ったが、ルーナはお金を稼ぐためにこの店で働く決心をしたのだろう?」
アルトはファビアンの意図をすぐには理解できず、ただ単純に頷いた。
「はい」
ファビアンは、子供に言い聞かせるように説明を続ける。
「ルーナは無理やりではなく、自分の意思で、家族を養うためにこの店に入店したのだ。お前が借金を肩代わりしてルーナをこの店から解放したところで、彼女には収入源がない。それではルーナは救われないのだ」
アルトはハッとした。
「そっか……。ルーナさんは王都で働く場所がないんだね。でも、泥底ならあるかも……」
そう言いかけて、アルトは言葉を飲み込んだ。泥底の現実。そこは暴力と貧困が支配する世界だ。女性がまともに働ける場所など、黄金の蜘蛛が管理している職業安定所の受付嬢くらいしかない。それ以外の場所では、女性は常に危険に晒される。アルトが言葉に詰まったことで、ファビアンは彼が理解したことに気づき、残酷な真実を語り始めた。
「そうだ。ハズレ職業の女性が金を稼ぐには、自分の体を売るしか方法は残されていない。以前は泥底でも働く女性はいたが、女性を襲う者が多くて女性の就労を限定的に禁止したのだ。そこでトビーが発案したのだ。王都の治安の良い場所で、富裕層相手に体を売って安全に稼げる場所を提供することに。以前はここは、高級個室料理店だったのだが、女性と男性が1対1で接客、料理そして、欲望の相手までする店へと様変わりしたのだ。そして、この店のオーナーはヴァレリウス様になる」
「な……」
アルトの表情が一気に険悪なものに変わる。トビーが作ったシステム。そしてヴァレリウスがオーナー。自分をこの店に連れてきたのは、ヴァレリウスの配下であるファビアン。
(……はめられた?)
アルトの直感が警鐘を鳴らす。自分は、ルーナを助けるように仕向けられたのではないか。ルーナと出会い、恋に落ち、借金を背負うことまで、すべてが彼らのシナリオ通りなのではないか。アルトは黙ってファビアンを睨みつけるが、ファビアンはその疑念すら手玉に取るように言葉を続ける。
「ヴァレリウス様なら、ルーナに体を売らなくても良い、まともな働き口を用意することもできるだろう。アルト、お前の望みを完全に叶えることができるのは、ヴァレリウス様だけだ。……今お前が心に浮かんだくだらない疑問は、捨て去ることが一番賢い判断だぞ」
しかし、アルトは我慢できずに口を開いた。
「……お前も、僕を騙したんだな」
アルトは鋭い眼光でファビアンを睨みつけた。
「僕を借金漬けにするために、わざとこの店に連れてきたんだ!」
「勘違いをするな」
ファビアンは冷ややかに言い返した。
「俺は、お前を楽しませるためにこの店に連れて来たんだ。お前が勝手に、店の女に惚れたのだろう?」
「うっ……」
アルトは図星を突かれて顔を歪める。確かに、ルーナを好きになったのは自分の心だ。だが、疑念は消えない。
「ルーナも……ぐるなのか?」
「さあな。俺が仕向けた女ではないと言ったら、お前は納得するのか?」
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「俺はどちらでも構わない。お前がこのまま店を出て、ルーナを見捨てるのを止めはしない。だが、お前が本気でルーナを救いたいなら、手段は1つしかない。……ヴァレリウス様に力を借りるか、それとも何もせず逃げるか。自分で考えろ」
アルトは、究極の二択を迫られた。これは罠かもしれない。しかし、罠だとしても、ルーナが苦しんでいる現実は変わらない。彼女を救うには、悪魔の手を取るしかないのか。アルトは苦悶の表情で、拳を握りしめた。
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