ハズレ職業【フリーター】を授かった少年は、王都で騙されて多額の借金を背負う。しかし、修復スキルでガラクタを修復して最下層の泥底から成り上がる

ninjin

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第59話 第4の可能性

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 長男フランツは上級職ではあるが、父グスタフの後継者として、エーデルマン商会をさらなる高みへ導く実務家であり、次男のリヒターは、その恵まれたレア職業の才能を生かし、黒き太陽ソル・ニゲル7つの支配座セプテム・ソリアまで瞬時に駆け上がった天才だ。

 一方、三男であるファビアンは、エーデルマン商会で5年ほど働いたが、たいした結果を出すことができず、組織の隅で燻る惨めな日々を過ごした末、黒き太陽ソル・ニゲル逃げるようにしてに入会した。だが、それもリヒターの弟という肩書を考慮されての入会であり、ファビアンの才能をかわれてのことではない。十の歯車ツェーン・ラーダーに選ばれたのも同様の理由だ。

 ファビアンにはもう後がない。エーデルマン家を名乗るには、小さな成果では許されない。圧倒的な、大きな結果を残さなければいけない宿命を背負っている。3日以内に杖を見つけるというこの大役を果たせば、ファビアンは初めてエーデルマン家の名に恥じない成果を残すことができるのだ。

 リヒターの冷たい狂気に満ちた言葉に、震えながらもファビアンは絞り出すように答えた。

 「……わかりました」

 彼は迷う時間すら惜しみ、即座に行動に移した。ファビアンは自分の裁量で動かせる末端の組織員を20名を掻き集め、ゴミ山へ向かうよう指示を出した。

 ファビアンが去り、会議室にはリヒターとローレンツだけが残された。リヒターは静かに話し出した。その声は先ほどまでファビアンに向けていた冷たさとは違い、知的な好奇心に満ちている。

「ローレンツ君、君は、ヴァレリウス様が我々に捜索を命じたあの杖が本当に存在すると思っていますか? 私には、尾ひれの付いた伝説だと思えるのですが」

 リヒターの問いに、ローレンツは静かに、淡々と答えた。

 「僕も眉唾ものだと思っています。しかし、初代国王が原初の王笏セプトルム・プリムムと呼ばれる秘宝を使ってレーベンフェルト王国を建国したという史実があります」

 ローレンツは淀みなく続けた。

 「初代国王は建国を成功させると、チートすぎる秘宝原初の王笏セプトルム・プリムムを破壊し、王城の地下室に封印したと言われています。しかし、現国王が地下室を調べたところ、封印は解かれていて、地下室の中には何もなかったそうです。原初の王笏セプトルム・プリムムは本当に存在したのか、それとも誰かが盗んだのか、真偽は不明となっていました」

 ローレンツは声を潜めた。

 「ですが、第3の推測として、原初の王笏セプトルム・プリムムはゴミと勘違いされて捨てられた、という説があります。この推測は、他ならぬトビーがヴァレリウス様に提言したものです。トビーは非常に頭の切れる人物です。もしかすると、ゴミ山にあるのかもしれません」

 リヒターはフッと鼻で笑った。

 「私もトビーの実力を買っていました。トビーとアルト、この2人を上手く利用すれば、原初の王笏セプトルム・プリムムの存在と真の在り処を明らかにできたのかもしれない。……トビーを処刑した判断は、やはり早計だったかもしれないな。非常に残念だ」

 リヒターの言葉に、ローレンツは静かに応じた。

 「原初の王笏セプトルム・プリムムは、ヴァレリウス様が野望を成し遂げるために絶対に必要なアイテムです。トビーを処刑するのは早計だと、僕も内心思っています」

 ローレンツは言葉を切った。

 「しかし、ヴァレリウス様は、トビーが提言した第3の可能性(ゴミ山説)よりも、あらたに浮上した第4の可能性を優先したのです」
 「シュペーアーの提言ですね」

 リヒターが確認するように問い返す。

 「はい。そうです」

 ローレンツの瞳が冷たく光る。「『地下にはなかった』という話は、実は国王が流した嘘だったということです。本当は、現国王が秘宝を密かに所持しているという説を、ヴァレリウス様は選んだ。ヴァレリウス様は、国王が秘宝を持っていることに焦り、シュペーアーの提言に全力を注いだのです」

 ローレンツはすぐに付け加えた。

 「ですが、僕はトビーの推測を信じています」
 「そうですね。私もトビーの推察を信じることにしましょう。しかし、時間がありませんね。もう時期、シュペーアーの情報では泥底の崩壊が始まってしまいます。私たちが自由にゴミ山を探索できるのは後3日、本当は私自ら探索をしたいのですが、7つの支配座セプテム・ソリア である私は、あまりに目立ち過ぎてしまいます。愚弟はあてにできませんが、アルト君に期待するしかないでしょう」

 リヒターは冷たい笑みを浮かべた。

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