DRAGGY!ードラギィ!ー【フラップ編(リライト)2/18連載開始!】

Sirocos(シロコス)

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〈フレデリック/しろさん編〉

第一話 4

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         『「彼らは、ドラギィという生物である。 
    犬と竜、両方りょうほう特徴とくちょうをもった、じつに摩訶まかふしぎな生物じゃ」』

**************************************
 
 わがフレデリック・ラボは、広大こうだいかつ、複雑ふくざつ構造こうぞうになっている。
ビルのようにおおくの階層かいそうがかさなっているのではなく、
それぞれの部屋が、あみだくじのようにのびる通路をつうじて、
四方バラバラにちらばりながらつながっているのだ。
まあ、かなり大きなネズミの巣穴すあな想像そうぞうできると、イメージがつかみやすいかな。
おかげで、中の構造をおぼえられず、いまでも迷子まいごになる研究員がいる。
わしか? ――一流いちりゅうのさすらいネズミの土地とちカンを、あまくみないでいただきたい。

 ラボない移動手段いどうしゅだんは、歩くことが多いが、
移動距離いどうきょりが長くなる場合には、エレベーターをつかう手もある。
このエレベーターだが、とにかくすぐれもので、
上下だけでなく、前後左右ぜんごさゆうどこにでも移動できるようにできているのだ。
子猫を数匹、移送できるくらいの大型エレベーターも設置せっちされている。
わがフレデリック・ラボの技術ぎじゅつをもってすれば、このくらいじょの口だ。


 さて、ラボはおもに、三つの部門ぶもんに分かれている。どの部門でも、わしが
長い時間をかけてみかさねてきたふしぎ現象げんしょう研究成果けんきゅうせいかが、もちいられている。


 第一の部門は、〈アイテム部門〉。べんりな道具どうぐ開発かいはつする部門である。
近頃ちかごろ、ここで開発したものといえば、たとえば『チヂミバンド』。
ある人間の子どもたちのために開発したもので、うでにまいてボタンをすだけで、
わしらネズミとおなじような小人こびとのサイズになれる。じつに気のきいたアイテムだ。

それから、『雲隠くもがくれチョーカー』。
首にまいて、おなじくボタンを押すだけで、きりのように姿すがたせるすぐれものだ。
といっても、一度にかなりみじかい時間しかきめがもたないので、ここ最近では、
このチョーカーアイテムの持続時間をのばすべく、さらに改良中かいりょうちゅうである。
これはいま現在、重大じゅうだい研究対象けんきゅうたいしょうとしているものたちへの、
れいしなとしてつくったものなのだ。


 第二の部門は、〈薬品やくひん部門〉。
瞬時しゅんじにエネルギーがみなぎるドリンクや、体に特殊とくしゅ効果こうかあをもたらす錠剤じょうざいなど、
ありとあらゆるチャレンジングな薬品を開発しているのだ。
この部門では、管理かんりのむずかしいくすり原料げんりょうをしこたまりあつかっているから、
まあとにかく、メンドーな開発事故じこがよく起こる。
わしも部下たちの事後処理じごしゅり指揮しきするために、かけつける日はすくなくない。

――ここでは最近、新しい薬品をまたひとつ発明することができた。といっても、
これはわしらネズミ用で、しかもラボ内でつかうことを想定そうていしたシロモノだから、
のため人のため、とはちょっとちがうな。
まあ、このラボではそういう品を発明することのほうが多いのだが。


 そして第三の部門が、〈ふしぎ研究部門〉。
ドッペルゲンガー現象げんしょうや、生物の神隠かみかくし現象などなど、
現代げんだい科学かがくでは証明しょうめいできないようなまぞめいたできごとも、
このふしぎ研究部門がもつ技術力ぎじゅつりょくをもってすれば、おちゃの子さいさい!
あらゆるふしぎ現象のメカニズムを、すみずみまであばくことができる。

――が、どれほどふしぎ現象の研究を行ってきたとしても、
いまだ解明かいめいしきれていないものがどうしてもある。
まさにいま現在げんざい、この部門で研究をおこなっている生物がそれだ。


 わしは今、新人研究員たちをとある多目的たもくてきルームに案内あんないし、
その生物にまつわる映像資料しりょうえいぞう大型おおがたモニターにうつしだしながら、
くわしく説明せつめいをはじめたところだった。

「ふっふっ。彼らは、ドラギィという生物である。
犬と竜、両方りょうほう特徴とくちょうをもった、じつに摩訶まかふしぎな生物じゃ」

 モニターに映しだしたのは、全身をケモノのような赤と白の毛におおわれた、
背中せなかにコウモリのはねをはやした、三匹のドラギィ。
わしみずからラボのデータベースよりチョイスした、ドラギィの記録映像きろくえいぞうだ。

 とある人物じんぶつの部屋をんでいる様子ようすや、火をふく様子、
体内から電気でんきをほとばしらせている様子に、
手のひらから水鉄砲みずでっぽうを飛ばしている様子などなど――。

裏側うらがわの世界にあるという、スカイランドなる空にうかぶしまから、
世界のカベをこえてやってきた生物なのじゃ!」

「フレデリック博士~!」
「『裏側の世界』って、なんですか?」

 新人研究員たちは、どうやらまだ裏側の世界を知らないようだった。
ラボに入りたてで、ふしぎ研究の基本について心得こころえのないネズミは、
たいしてめずらしくないのだ。

「うむ。裏側の世界とは、現実げんじつの世界――つまり、今わしたちがいる世界から、
ふつうには見ることもかなわぬ空間くうかんのことじゃ。
この世界のいたるところにバラバラに点在てんざいしていて、
その入り口――すなわち『異界穴』は、つねにじられた状態じょうたいをたもっておる。
裏側の世界は、場所によってさまざまに変化へんかする。
なかには、かぞえきれない本数ほんすう電車でんしゃ空中くうちゅうを走っているような、
常識じょうしきをはるかにこえたデタラメみたいな世界もある」

「でもフレデリック博士~。ふつうには見ることもできないんですよね?」
「どうしてそんなにくわしく分かるんですか?」

「ふふん。わがフレデリック・ラボがもつ技術ぎじゅつの目を、なめてはいかんぞ。
ちなみにこのドラギィ、その裏側の世界からやってきたといったが、
じつは、その手で異界穴いかいあなを開き、裏世界に出入ではいりするちからをもっておるのじゃ。
裏世界で生まれた生物のようじゃから、当然とうぜんといえば当然かもしれん。
まあ彼らは、おなじ方法ほうほうでこちら側の世界に来たわけでは、ないそうじゃが」

「「……?」」

「――話をもどすが、よいかの?
このドラギィじゃが、どうやら複数ふくすう種類しゅるいがおるようでな。
現在、ラボで確認かくにんが取れているのは、ぜんぶで四種類よんしゅるいじゃ。

 まずは、赤い毛をもつレッド種。火をふける種族しゅぞくじゃ。
次に、黄色い毛をもつイエロー種。電気や雷を発生はっせいさせる。
さらに、青い毛をもつブルー種。水を自在じざいにあやつれる。
そして、最後の四種類目じゃが――うーむ。
こいつはまだ出会ったばかりで、有力ゆうりょくなデータも存在そんざいしないが、
シカのような角をもつ、じつにうつくしい見た目をした種族じゃ。
これはわしのカンじゃが、こいつはなにか特別とくべつな力をもっている予感よかんがする。
いつかかならず、こいつの秘密を解明してやりたいのう!」

 ドラギィの情報じょうほうをひととおり聞きおわった新人研究員たちは、
ふたりしてつぶらな目をキラキラとかがやかせていた。

「博士! そのドラギィを直接みてみたいです!」
「もふもふな体の毛にも、さわってみたいです! ピンクの肉球とかも!」

「うむ。おぬしたちにも、そのうちかならずふれる機会きかいはやってくる。
なにせ、おぬしたちの配属先はいぞくさきは、〈ふしぎ研究部門〉じゃからな。
そこでは今、このドラギィのことを鋭意えいい研究中なのじゃ!」

「「オオーーーッ!!」」

 新人研究員たちは、飛び上がるようにせきから立ちあがった。
子どもは元気げんきがあって、じつによいことだ。
彼らのような若者わかものを見ると、ちょっと胸がこそばゆいが、むかしの自分を思い出す。
わしにもこんなに無邪気むじゃきで、世の中の不思議をほとんど知らない時期じきがあった。

 ――わしも体は子どもだが、なんだかんだいってもう、からなあ。
 
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