DRAGGY!ードラギィ!ー【フラップ編(リライト)2/18連載開始!】

Sirocos(シロコス)

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〈フレデリック/しろさん編〉

第二話『ガッチュリン022』 1

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    『びくん! フラップの体の中で、何かがはげしく鼓動こどうした。
      彼のくりくりした丸いひとみが、たちまち白目しろめをむいた。』 

**************************************

「わざわざ出向でむいてくれたところすまんが、まだピザの用意よういはできとらんぞ」

 わしは、いまの状況じょうきょうをつつみかくさず、レンとドラギィたちにつたえた。

「えー、まだできてないのぉ!? アタシ、もうおなかペコペコだよう!」

 どんな時も子どもっぽいしゃべり方をするイエローしゅのフリーナは、
とにかく一声一声ひとこえひとこえが大きい。まるで、小さなかみなりに足がついているかのようだ。
しかし、それでいて見た目は美人系びじんけいときた。ネズミのわしでもそれが分かる。
少々しょうしょう声がうるさくてもゆるしてやりたくなってしまうから、こまったものだ。

 困るといえば、ブルー種のフレディもそうだ。
彼はふだんこそ落ちついていて、しかも知性ちせいを感じさせるドラギィである。
きわめて頭がよいから、人間界にんげんかい知識ちしきをどんどん吸収きゅうしゅうしてしまう。
ただし、些細ささいなことですぐにきべそをかいてしまうのが、たまにキズだ。

「まさか……ぐすっ、ぼくらに内緒ないしょで、先に、ぐすっ、食べてしまったのか?」

 やはり、フレディもそうとう楽しみにしていたようだ。
クールな顔して、かわいいやつだ。
以前いぜん、わしの天竺てんじくチーズをトロトロにとかしたのを、
レンの実家特製じっかとくせい辛口からくちカレーにそそいで食べてからというもの、
天竺チーズの熱狂的ねっきょうてきなファンになったのだっけ。

「フレディ、そんなわけないよ。くんくん――
まだこの部屋、チーズのにおいもしないから」

 フレディにかわって、
冷静れいせいに部屋のにおいをかいでいたのは、レッド種のフラップだ。
温厚おんこう性格せいかくぬしだが、時々ときどきあわてんぼうなやつだ。

そのせいなのかどうかはべつとして、
こいつはレッド種でありながら、満足まんぞくに火をふけないのである。
まともなレッド種の火力を十として、彼のふく火は、せいぜい三ぐらいだという。
いつか十の火力を発揮はっきできるようになるために、フラップは修行中しゅぎょうちゅうなのだ。

「しろさん、急いそぎでなくて大丈夫だいじょうぶですから、
しっかりといてくださいね。ワフッ!」

「べつに、作るのはわしではない。ラボの厨房ちゅうぼうにいるネズミたちじゃ。
むろん全員、体じゅうを徹底的てっていてきせいけつにしておるから、衛生面えいせいめん心配しんぱいいらんぞ」

 レンいわく、ドラギィたちの中でもっとも会話かいわがしやすいとのことだ。
そこはわしも同様どうようの意見である。思いかえせば、フラップとは一番つきあいが長い。
最初さいしょにレンの部屋にみついたのも、このドラギィである。

「あのさぁ、しろさん」

 ふいに声をかけてきたのは、レン少年だ。

「昨日の夜中よなかにやったさぁ、飛行能力ひこうのうりょく検査けんさ――アレやっぱ、きつかったよ」

「おうおう、あらためてご苦労くろうじゃった!
今回の有力ゆうりょくデータは、おぬしの協力きょうりょくがあったからこそ手に入ったのじゃ」


 飛行能力の検査とは、わしが時々ときどきドラギィたちにリクエストしているものだ。
さまざまな側面そくめんからデータをとらせてもらっている。

昨日は、三匹にレンを背中せなかに乗せた状態じょうたいで、
空中をぐるんぐるんと宙返ちゅうがえりしまくってもらった。
ちょうど、ジェットコースターのルーピングのマネをするような具合ぐあいだ。
種族しゅぞくごとのデータのみでなく、サイズごとのちがいもよい参考さんこうになるから、
普段の子犬サイズと、大型の白くまサイズとに分けて、けい六回の検査を行った。


「べつにオレばっかり乗せなくても、よかったような気もするけどなあ。
おかげでヘトヘトだったんだけど」

「レンくんは、ぼくらの背中に一番乗りなれているからな」

 フレディの意見いけん率直そっちょくなものだった。

「まあ、昨日のあれが、博士の研究にどう役立つかは、知らないがね」

「アタシたち、だれが一番多く宙返りできるかで、競争きょうそうしたよネ」

 フリーナがニコニコしながら言う。

「でも、やっぱり一番は、フラップだったなあ。さっすが、フライトの王子おうじサマ」

「わふふふ。あんなにいっぱい宙返ちゅうがえりしたの、生まれてはじめてだったよ」

 フラップは同族相手どうぞくあいてと、わしやレンのようなほかの生き物相手とでは、
はっきりと言葉づかいを変えている。まあ、同族は同族でも、
フリーナやフレディとは気心きごころの知れたなか――親友しんゆうらしいからな。

「それでサ、まだ来ないノ? チョービッグなピザ。アタシ、おなかペコペコ!」

「さっきも聞いたわい。あとちょっとで来るはずじゃから、もうすこしっとけ」


 すると、部屋のドアが、しゅっと開いた。


「は、博士はかせ! フレデリック博士~!」

 大あわてでかけこんできたのは、厨房ちゅうぼうではたらいていた部下ぶかのひとりだ。

「どうした、こだいら君。そんなにみみをぴょこぴょこさせて」

「ピザを焼くのに使用しようしていたオーブンの中で、大量たいりょう火花ひばなが~!」

「ひ、火花じゃと!? まさか、生地きじにつかっていた材料ざいりょう問題もんだいが――
とにかく、すぐに厨房へむかおう! こまつ君、おぬしも来るんじゃ!」

「りょ、了解りょうかいです! みなさんは、ここでっていてくださいね!」


 わしらネズミは、レンとドラギィたちをのこして部屋を飛び出していった。

 *

 ――ここからは、のちに監視かんしカメラを見て知ったハナシになる。
待機たいきするようわれたレンとドラギィたちは、最初、
きつねにつままれたような面持おももちで、それぞれの顔を見合みあっていた。


「ピザを焼くのって、そんなに大変たいへんなんですか、レンくん?」

「いや、オレに聞かれてもこまるし!」

「ワォーン! おーなーかーすーいーたー!
アタシもう、待てないってばぁ!」

「ハァ……たのむからしずかにしてくれないか、フリーナ……」


 その時だ。フラップがテーブルの上に、ある物を見つけた。

「んん? レンくん、こんなところにおかしなものがありますよ」


 半透明はんとうめいのケースだ。先ほど、わしが研究員たちにあたえた薬が入っている。
ふたが開かれ、中身が白いネズミ顔の錠剤じょうざいなのも知られた。
見た目はただの――白いネズミ顔の形をした、おやつだ。


「それってさ、しろさんがいてったんじゃないかな。
小腹こばらがすいたときに、ちょこっとずつべてるとか」

 レンは、そう推理すいりした。三分の一だけ当たっている。
そいつは、わしの置きわすれだ。

「食べもの!」フリーナが、ハッハッといきをはずませた。
「なあんだ~。しろちゃんったら、アタシたちに気をきかせてくれたんだネ!」

「それは――たしかラムネといったか? 見た感じがそれに近いな。
前にキミに食べさせてもらったことがあった。においは、ちょっとちがうがね」

「でも、しろさんに食べていいよって、ぼくたち言われてないよ。
勝手かってに食べたのがバレちゃったら、きっとおこられちゃう」

 フラップは、やはり利口りこうなやつだ。たしかにわしは、許可きょかはしていない。
そもそも、味も分からないものをむやみに口に入れたがるなんて、
赤ちゃんドブネズミとおなじようなもんだぞ。

「でもアタシ! もうおなかペッコペコ! がぅーっ!」

 がまんも限界げんかいに近いフリーナが、突然とつぜん
フラップの手から錠剤の入ったケースをもぎろうとした。

「だ、だめだよう!」フラップはひょいっと手をかわした。
「これは、しろさんが戻ってくるまでおあずけ」

「アタシ……おなかがすきすぎると、ランボーになっちゃうんだからネ!」

 そこからは、もう目も当てられない。
必死にケースを死守ししゅしようとするフラップと、ケモノと化したフリーナの、
しばしの追いかけっこが続いた。
跳んで、はねて、あたりをぐるぐるまわって――
こんな映像えいぞうが、ラボの監視カメラに記録きろくされることになろうとは。
まあ、ある意味いみ貴重きちょうといえば貴重かもしれない。

「ふたりとも、そろそろそのへんにして――」

 しばらくのち、レンがそう声をかけた時には、
ケースをにぎっていたフラップの手が、フリーナの両手につかまれていた。
ドラギィ同士による、薬の入ったケースの引っぱりあい。
おたがいがちからのかぎりにきそい合っていた……次の瞬間しゅんかん


 バァ―――ン!!


 限界げんかいまでひきのばしたゴムいとが、ブチンと切れたかのようだった。
二匹の手が、ふたの取れてしまった拍子に引きはがされ、
中に入っていたいくつもの薬が――フレデリックじるし新薬しんやくがまきらされた。
 

「「うわあっ!!」」


 二匹は背中からゆかにたおれこんだ。
さらにその時。不運ふうんにも、ぱっくりと開かれたフラップの口に、
その白い新薬が一錠だけ、ひゅうっと入りこんでしまったのだ。


 ごくり。フラップが新薬をのみこんだ。


 ――びくん! フラップの体の中で、何かがはげしく鼓動こどうした。
彼のくりくりした丸いひとみが、たちまち白目しろめをむいた。


「ワンワン! おい、フラップどうした!?」

「フラップ、ダイジョウブ!?」

 フレディとフリーナが血相けそうを変えた。


 フラップの体が、けいれんを起こしたようにぶるぶるとふるえだす。


「えっ……えっ? なにこれ。なにが起こってるんだよ!」

 レンの顔色かおいろが、真っ青になった。
 
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