DRAGGY!ードラギィ!ー【フラップ編(リライト)2/18連載開始!】

Sirocos(シロコス)

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〈フレデリック/しろさん編〉

第二話 2

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       『奇妙きみょうなことに、あわてふためきはしなかった。
   こんなことは、ふしぎ研究を続けてきて、はじめての経験けいけんだった。』

**************************************

 そのあとは、もうてんやわんやだった。
みょうなむなさわぎをおぼえ、もとの部屋へやにもどったわしは、部屋の惨事さんじと、
ゆかたおれていたフラップの容態ようだいを見て、おもわず自分のひたいに手を当てた。

(しまったあ! おそかったか)

 わしは部下ぶかを何匹もよびよせて、みんなと協力きょうりょくしながら、
意識いしきをうしなったフラップを特別医療室とくべついりょうしつへとはこびこんだ。

 フラップは、広い大きなイスにまたたく間にすわらされ、
研究員たちの手によって無数むすう器具きぐをとりつけられて、
体のすみからすみまで検査けんさされるはこびとなった。

 その間、わしはレンたちかられいの緑色のケースをけとり
散乱さんらんしていたくすりは、ちゃんとひとつ残らずもどされていた)、
めんとむかって頭を下げながらこういった。


「すまん! これは、わしのミスじゃ」


 レンたちは、むしろ自分たちのほうが悪いのに、とでもいいたげな、
複雑ふくざつ表情ひょうじょうでわしを見ていた。わしがいつものように罵倒ばとうすることなく、
こうもあやまちをくいて謝罪しゃざいしたのが、意外いがいだったようだ。

「ちがうヨ! アタシがそれを食べたいなんて、言い出しちゃったから……」

「フ、フラップは、うっ……うっ……んでしまう、のか?」

 フレディは不安ふあんのあまり、ポロポロとなみだを流していた。

「わしの作った薬じゃ。死んでしまうようなことはありえんと思うが――」


「あ、あのさ、しろさん」レンがたずねてきた。

「その薬ってさ、いったいなに? フラップがあんなになっちゃうなんて」


「この薬は、その名も『ガッチュリン022ダブルツー』といっての、
んだ者に、違う人格じんかくえつける効果こうかがあるのじゃ」

「じ、人格を植えつけるだって!?」フレディがきょうがくした。
「そんなことが、か、可能かのうなのか……?
いや、そもそも、くぅん……なんの、ために、わざわざそんな薬を?」

最近さいきん、ラボではたらく者たちのサボりぐせが目立っておってのう。
そいつらに、一時的いちじてきに〈やる気と熱意ねついにみちた人格〉をあたえてやることで、
仕事への熱心ねっしんな思いを、メラメラとえ上がらせることができるのじゃ!」

「あいかわらず、ジョーダンみたいな科学力かがくりょくだなあ」
と、レンはぎこちなく笑った。

「そういうわけじゃから」わしは説明せつめいをつづけた。
「この薬は、ラボの研究員用、つまりネズミ用に開発したものなんじゃ。
研究員たちがのんでも、倒れたり、白目しろめをむいて意識をなくしたりはせん」

「それじゃあ、ドラギィがのめるようにできてないってこと?」

「うむ……ドラギィがのめば、どんな副作用ふくさようこるか想像そうぞうがつかん」

「そんなあぶないものを、オレたちのそばにきわすれるなんて」

「だから、さっきあやまったじゃろうが。
フラップのことは、わしが責任せきにんをもってなんとかするから、心配しんぱいするな」

 そこへ、フラップを診察しんさつしていた研究員の一匹が、
大あわてでわしのところへかけこんできた。

「は、博士! フラップさんの体に、異変いへんがぁ……!」

 *

 わしたちは、急いでフラップのもとへかけつけた。

 奇怪きっかいな光景だった。フラップの背中の毛が、どういうわけか赤色から、
真っ白な白色へと脱色だっしょくしていたのだ。
フラップは、あいかわらず意識いしきがもどらないままで、
こんこん、こんこんとまどろんでいた。

「おおお……。なんなんじゃ、これは……」



 奇妙きみょうなことに、あわてふためきはしなかった。
こんなことは、ふしぎ研究を続けてきて、はじめての経験けいけんだった。



 どうしようもない、強い好奇心こうきしんとわくわくが、
わしの小さなむねの中でさざめくような音を立てて、のうのずいまでゆさぶっていた。



「「「フラップ~!」」」

 レンとドラギィたちは、当然とうぜんながら声を上げていた。

 しかし、研究員たちの検査結果けんさけっかによると、
フラップはこれといって命に別条べつじょうはなく、
体の変化へんかについても、色がぬけたこと以外いがいはとくに問題ないとのことだった。

「じゃが、油断ゆだんはできんな」

 わしはこの事件と、徹底的てっていてきにむきあってやろうと決意けついをかためた。

「レンよ。一度、おぬしの部屋にフラップをうつしてみんか?
こんなネズミの穴ぐらのようなラボに閉じこめては、彼の体に毒じゃ。
むろん、わしもつきっきりで彼の状態じょうたい観察かんさつする。四六時中しろくじじゅうじゃ」

「あ、うん……しろさんがそういうなら」

 *

 夜の八時をすぎたころ。

 フラップは、レンの部屋の机の上で、
何枚なんまいもかさねてしかれたタオルにかされていた。

 わしは、フリーナとフレディといっしょに、フラップのそばについていた。
ネズミパッドという小さな端末をつうじて、ラボ内と連絡れんらくをとりながら、
このあと、どんな事態じたいが起こるかと予測よそくを立てていたのだ。

「大丈夫だよ、フリーナ、フレディ。フラップはきっと目を覚ますから」

 机のイスに座って見下ろしていたレンが、そう声をかけた。
フリーナとフレディが、心労しんろうのせいかひとつも声をだしていなかったからだ。
無理ムリもない。三匹は、あの道路の信号機しんごうきのように、
切っても切れない友情ゆうじょうでつながっているのだから。

「くぅ~ん。フラップ……」フリーナが、フラップの体にそっとよりそった。

「アタシが、また元気にしてあげるからね。よぉし、ハッピー――」

「おいおい、待つんだ! わぅっ!」

 フレディが、フリーナの体を両手でぐいっと引きもどした。

「フリーナ、『ハッピー☆スパーク』、よしてくれ」

 ハッピー☆スパークとは、フリーナがつかう雷のじゅつのひとつ――
なのかどうかはべつとして、フリーナが持つふしぎな力である。
七色にはじける電気の光で相手をつつみこみ、つかれや病気びょうき回復かいふくするのだ。
以前いぜん、レンがひどい風邪かぜでフラフラだった朝に、
フリーナがこの力をつかって、レンの病気を一発で治したこともあった。
――その結果、レンはちがう理由でフラフラになってしまったが。
フリーナのスパークは、とても強烈きょうれつな電気を放つのだ。

「ワォ~ン! アタシのスパークは、なんだモン!
だから、アタシがびりびり~ってやれば、きっとフラップも――」


 フリーナがそうきわめいた時だった。



 ねむっていたフラップのまぶたが、パチッと開かれた。
 

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