DRAGGY!ードラギィ!ー【フラップ編(リライト)2/18連載開始!】

Sirocos(シロコス)

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〈フレデリック/しろさん編〉

第二話 3

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        『「これは、新たな不思議ふしぎ幕開まくあけというやつじゃ。
       研究者の目を、じっくりとむけてかかるべきじゃな」』

**************************************

「お、起きた!?」

 わしの目の前で、フラップのいきなりのお目覚め。
正直、こんなに早く目をさますとは思わなかった。

 フラップは、すぅっとすばやく上半身じょうはんしんをおこし、
右手で両目りょうめをこすりながら、あたりを見回した。


「ん、ん~? ここ、どこだ~?」


 開口一番かいこういちばん、フラップがそんな言葉をぼそっとつぶやいた。

「フ、フラップ! 体はどう? 気分は?」

 レンが声をかけると、フラップはまだぼけているのか、
目を細め、眉間みけんにしわをよせながら、レンの顔を見上げた。
とくにおかしなことを言ったわけでもないのに、だ。

「フラップ~! よかった、気がついて~」

 フリーナが、いきおいよくフラップの体に飛びつき、思いきりだきしめた。

「アタシ、もう二度とフラップが起きないんじゃないかと――」

 すると、フラップの口が奇妙きみょうにゆがんで、
白いがニイッと、いたずらっぽい光をちらつかせた。

 それからフラップは、こんな返事へんじをかえした。


「おいおい、どうしたんだフリーナ。オレがんだとか思ったのかぁ?
バッカだなぁ、お前。それにオレは、!」


「……へ?」


 次の瞬間しゅんかん、白いフラップはぴょんと空中に跳び上がり、
わしやレンたちが見上げる中、
部屋の天井近くをぐるぐる、ぐるぐると、猛烈なスピードで飛びはじめた。



「イエーーイ! オレ様、だーいふっかーつ!」



 高速飛行しながらでんぐり返し、きりもみ回転、キックにパンチ。
今までのフラップからは想像もつかない、やんちゃぶりだ。



「ほらほら、お前らもこっちこいよー! いっしょに修行しゅぎょうしようぜー!」

 フラップは、下にいたフリーナとフレディにむかって言ったのだろう。

 しかし、当の二匹は、ただただポカンとして立ちつくすばかり。
ハトが豆鉄砲でも食らったように、口をあんぐりとさせていた。

「あ、あの、フラップぅ~? 体は大丈夫ナノぉ~?
それにサ、えっと、その……しゃべり方――」

「なんだ~? 聞こえないぞ! こっち飛んできてから、しゃべってくれよー!」

 と、言いつつ、フラップはしゅうっと矢のようにこちらに降りてくると、
小さな手でレンの頭を、ぱーん! とひっぱたいた。

「いてっ!」

 それからフラップは、レンのベッドへと移動いどうすると、
ふとんのはしを両手でつかみ、それを空中でバッとほうり上げた。
レンの青いタオルケットが、天井てんじょうあかりを一瞬おおい、
つくえにいたわしたちの頭にバサリとおおいかぶさった。
――レンがタオルケットを引っぺがしたころ、フラップは本棚ほんだなにとびかかり、
しまわれていたマンガ本を次から次へと引っぱり出しては、
ゆかにむかってばらまきはじめた。

 フラップがなぜ、こんなにも素行そこうの悪い行動こうどうをとったのか、
わしらにはさっぱり分からない。

「やーめーろー! オレの部屋へやをちらかすなって!」

 レンは、タオルケットをベッドの上に放りこんでから、
大暴おおあばれするフラップをつかまえようと手をのばした。
しかしフラップは、ひょい、ひょいっと体をひるがえし、
目にもとまらぬスピードでげまわる。
つかみたくてもつかめないけむりでも相手あいてにしているかのようだ。

「し、しろさん! これって、どういうこと?!」

 すっかり混乱こんらんしたレンが、わしに聞いてきた。

「うーむ。やはり、わしの薬の効果こうかがあらわれていると見て、間違まちがいいない」

 わしは、悪いとも思ったが、すこぶる平静へいせいだった。

「やる気と熱意ねついにみちあふれておる」

「やる気と熱意って!」フレディがふんがいした。
「ただのキカンボウになっちまっただけじゃないか!」

「あーん、もう!」フリーナがまたまたわめく。
「はやくフラップをもとにもどしてヨ。アタシ、こんなフラップなんて、ヤダ!」

「そうだ! ぼくだって願い下げだぞ」フレディも同意見どういけんだ。

「心配はいらん。ガッチュリン022の効果は、一時的なものじゃ。
あと数時間もすれば、元のフラップにもどるじゃろう。あ、でも――」

「でも、なに?」フリーナがおそるおそるたずねる。

「中には、なかなか元の人格じんかくに戻らない研究員もおってのう。
一週間ほどたてば、たいていの者は元通りになるのじゃが、
中には、その……かれこれ一か月たっても人格が戻らないやつもおる」

「「一か月もぉー!?」」フリーナとフレディが絶叫ぜっきょうした。

「もしかすると、フラップも元に戻るのに、最大さいだいでもそれくらいかかるやも。
ヘタをすれば、永久えいきゅうに――」

「永久に戻れないとか、ぜったいに言わないでくれ!」
と、フレディがぴしゃりと言った。
 
「それにのう……フラップの毛が白くなってしまったのも気にかかる。
まさか、ドラギィにあんな作用さようを起こすとは想像そうぞうもつかんかった。
これは、新たな不思議ふしぎ幕開まくあけというやつじゃ。
研究者の目を、じっくりとむけてかかるべきじゃな」

 わしは――笑っていた。自分でも気づかないうちに。

「あんた! もしかして、いまの状況じょうきょう面白おもしろがってるのか?」

 フレディが食い入るような目で、わしのほうへ歩みよってきた、その時だ。
レンがまたもや「いってーっ!」とさけぶ声がして、
次の瞬間、彼が床にむかってたおれこむ音がひびいた。

「やられた……。フラップが、オレのおでこにぶつかって……」

 そうこうしているうちに、
レンと白いフラップは、一方的いっぽうてき攻防こうぼうを続けていたようだ。
白いフラップは、空中で勝ちほこった顔をして、
ボクサーのように両手をつきだしている。

「へへん。やっぱり人間なんて、てきじゃないなあ。
そんなんじゃ、オレの修行相手なんて、到底とうていつとまらないぜ」

 すっかり変わり果ててしまったフラップだったが、
じつを言うと、わしはこのフラップのほうが好きだったりする。
ありあまる|活力《ルビかつりょく》が全身ぜんしんににじみだしていて、
しかも、モッツァレラチーズのようにうつくしい真っ白な毛が、
たまらないほどわしの目を引きつけるからだ。
 
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