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〈フレデリック/しろさん編〉
第二話 3
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『「これは、新たな不思議の幕開けというやつじゃ。
研究者の目を、じっくりとむけてかかるべきじゃな」』
**************************************
「お、起きた!?」
わしの目の前で、フラップのいきなりのお目覚め。
正直、こんなに早く目をさますとは思わなかった。
フラップは、すぅっとすばやく上半身をおこし、
右手で両目をこすりながら、あたりを見回した。
「ん、ん~? ここ、どこだ~?」
開口一番、フラップがそんな言葉をぼそっとつぶやいた。
「フ、フラップ! 体はどう? 気分は?」
レンが声をかけると、フラップはまだ寝ぼけているのか、
目を細め、眉間にしわをよせながら、レンの顔を見上げた。
とくにおかしなことを言ったわけでもないのに、だ。
「フラップ~! よかった、気がついて~」
フリーナが、勢いよくフラップの体に飛びつき、思いきりだきしめた。
「アタシ、もう二度とフラップが起きないんじゃないかと――」
すると、フラップの口が奇妙にゆがんで、
白い歯がニイッと、いたずらっぽい光をちらつかせた。
それからフラップは、こんな返事をかえした。
「おいおい、どうしたんだフリーナ。オレが死んだとか思ったのかぁ?
バッカだなぁ、お前。それにオレは、フラップじゃないぜ!」
「……へ?」
次の瞬間、白いフラップはぴょんと空中に跳び上がり、
わしやレンたちが見上げる中、
部屋の天井近くをぐるぐる、ぐるぐると、猛烈なスピードで飛びはじめた。
「イエーーイ! オレ様、だーいふっかーつ!」
高速飛行しながらでんぐり返し、きりもみ回転、キックにパンチ。
今までのフラップからは想像もつかない、やんちゃぶりだ。
「ほらほら、お前らもこっちこいよー! いっしょに修行しようぜー!」
フラップは、下にいたフリーナとフレディにむかって言ったのだろう。
しかし、当の二匹は、ただただポカンとして立ちつくすばかり。
ハトが豆鉄砲でも食らったように、口をあんぐりとさせていた。
「あ、あの、フラップぅ~? 体は大丈夫ナノぉ~?
それにサ、えっと、その……しゃべり方――」
「なんだ~? 聞こえないぞ! こっち飛んできてから、しゃべってくれよー!」
と、言いつつ、フラップはしゅうっと矢のようにこちらに降りてくると、
小さな手でレンの頭を、ぱーん! とひっぱたいた。
「いてっ!」
それからフラップは、レンのベッドへと移動すると、
ふとんの端を両手でつかみ、それを空中でバッと放り上げた。
レンの青いタオルケットが、天井の灯りを一瞬おおい、
机にいたわしたちの頭にバサリとおおいかぶさった。
――レンがタオルケットを引っぺがしたころ、フラップは本棚にとびかかり、
しまわれていたマンガ本を次から次へと引っぱり出しては、
床にむかってばらまきはじめた。
フラップがなぜ、こんなにも素行の悪い行動をとったのか、
わしらにはさっぱり分からない。
「やーめーろー! オレの部屋をちらかすなって!」
レンは、タオルケットをベッドの上に放りこんでから、
大暴れするフラップをつかまえようと手をのばした。
しかしフラップは、ひょい、ひょいっと体をひるがえし、
目にもとまらぬスピードで逃げまわる。
つかみたくてもつかめない煙でも相手にしているかのようだ。
「し、しろさん! これって、どういうこと?!」
すっかり混乱したレンが、わしに聞いてきた。
「うーむ。やはり、わしの薬の効果があらわれていると見て、間違いない」
わしは、悪いとも思ったが、すこぶる平静だった。
「やる気と熱意にみちあふれておる」
「やる気と熱意って!」フレディが憤がいした。
「ただのキカンボウになっちまっただけじゃないか!」
「あーん、もう!」フリーナがまたまたわめく。
「はやくフラップを元にもどしてヨ。アタシ、こんなフラップなんて、ヤダ!」
「そうだ! ぼくだって願い下げだぞ」フレディも同意見だ。
「心配はいらん。ガッチュリン022の効果は、一時的なものじゃ。
あと数時間もすれば、元のフラップに戻るじゃろう。あ、でも――」
「でも、なに?」フリーナがおそるおそるたずねる。
「中には、なかなか元の人格に戻らない研究員もおってのう。
一週間ほどたてば、たいていの者は元通りになるのじゃが、
中には、その……かれこれ一か月たっても人格が戻らないやつもおる」
「「一か月もぉー!?」」フリーナとフレディが絶叫した。
「もしかすると、フラップも元に戻るのに、最大でもそれくらいかかるやも。
ヘタをすれば、永久に――」
「永久に戻れないとか、ぜったいに言わないでくれ!」
と、フレディがぴしゃりと言った。
「それにのう……フラップの毛が白くなってしまったのも気にかかる。
まさか、ドラギィにあんな作用を起こすとは想像もつかんかった。
これは、新たな不思議の幕開けというやつじゃ。
研究者の目を、じっくりとむけてかかるべきじゃな」
わしは――笑っていた。自分でも気づかないうちに。
「あんた! もしかして、いまの状況を面白がってるのか?」
フレディが食い入るような目で、わしのほうへ歩みよってきた、その時だ。
レンがまたもや「いってーっ!」とさけぶ声がして、
次の瞬間、彼が床にむかって倒れこむ音がひびいた。
「やられた……。フラップが、オレのおでこにぶつかって……」
そうこうしているうちに、
レンと白いフラップは、一方的な攻防を続けていたようだ。
白いフラップは、空中で勝ちほこった顔をして、
ボクサーのように両手をつきだしている。
「へへん。やっぱり人間なんて、敵じゃないなあ。
そんなんじゃ、オレの修行相手なんて、到底つとまらないぜ」
すっかり変わり果ててしまったフラップだったが、
じつを言うと、わしはこのフラップのほうが好きだったりする。
ありあまる|活力《ルビ》が全身ににじみだしていて、
しかも、モッツァレラチーズのように美しい真っ白な毛が、
たまらないほどわしの目を引きつけるからだ。
研究者の目を、じっくりとむけてかかるべきじゃな」』
**************************************
「お、起きた!?」
わしの目の前で、フラップのいきなりのお目覚め。
正直、こんなに早く目をさますとは思わなかった。
フラップは、すぅっとすばやく上半身をおこし、
右手で両目をこすりながら、あたりを見回した。
「ん、ん~? ここ、どこだ~?」
開口一番、フラップがそんな言葉をぼそっとつぶやいた。
「フ、フラップ! 体はどう? 気分は?」
レンが声をかけると、フラップはまだ寝ぼけているのか、
目を細め、眉間にしわをよせながら、レンの顔を見上げた。
とくにおかしなことを言ったわけでもないのに、だ。
「フラップ~! よかった、気がついて~」
フリーナが、勢いよくフラップの体に飛びつき、思いきりだきしめた。
「アタシ、もう二度とフラップが起きないんじゃないかと――」
すると、フラップの口が奇妙にゆがんで、
白い歯がニイッと、いたずらっぽい光をちらつかせた。
それからフラップは、こんな返事をかえした。
「おいおい、どうしたんだフリーナ。オレが死んだとか思ったのかぁ?
バッカだなぁ、お前。それにオレは、フラップじゃないぜ!」
「……へ?」
次の瞬間、白いフラップはぴょんと空中に跳び上がり、
わしやレンたちが見上げる中、
部屋の天井近くをぐるぐる、ぐるぐると、猛烈なスピードで飛びはじめた。
「イエーーイ! オレ様、だーいふっかーつ!」
高速飛行しながらでんぐり返し、きりもみ回転、キックにパンチ。
今までのフラップからは想像もつかない、やんちゃぶりだ。
「ほらほら、お前らもこっちこいよー! いっしょに修行しようぜー!」
フラップは、下にいたフリーナとフレディにむかって言ったのだろう。
しかし、当の二匹は、ただただポカンとして立ちつくすばかり。
ハトが豆鉄砲でも食らったように、口をあんぐりとさせていた。
「あ、あの、フラップぅ~? 体は大丈夫ナノぉ~?
それにサ、えっと、その……しゃべり方――」
「なんだ~? 聞こえないぞ! こっち飛んできてから、しゃべってくれよー!」
と、言いつつ、フラップはしゅうっと矢のようにこちらに降りてくると、
小さな手でレンの頭を、ぱーん! とひっぱたいた。
「いてっ!」
それからフラップは、レンのベッドへと移動すると、
ふとんの端を両手でつかみ、それを空中でバッと放り上げた。
レンの青いタオルケットが、天井の灯りを一瞬おおい、
机にいたわしたちの頭にバサリとおおいかぶさった。
――レンがタオルケットを引っぺがしたころ、フラップは本棚にとびかかり、
しまわれていたマンガ本を次から次へと引っぱり出しては、
床にむかってばらまきはじめた。
フラップがなぜ、こんなにも素行の悪い行動をとったのか、
わしらにはさっぱり分からない。
「やーめーろー! オレの部屋をちらかすなって!」
レンは、タオルケットをベッドの上に放りこんでから、
大暴れするフラップをつかまえようと手をのばした。
しかしフラップは、ひょい、ひょいっと体をひるがえし、
目にもとまらぬスピードで逃げまわる。
つかみたくてもつかめない煙でも相手にしているかのようだ。
「し、しろさん! これって、どういうこと?!」
すっかり混乱したレンが、わしに聞いてきた。
「うーむ。やはり、わしの薬の効果があらわれていると見て、間違いない」
わしは、悪いとも思ったが、すこぶる平静だった。
「やる気と熱意にみちあふれておる」
「やる気と熱意って!」フレディが憤がいした。
「ただのキカンボウになっちまっただけじゃないか!」
「あーん、もう!」フリーナがまたまたわめく。
「はやくフラップを元にもどしてヨ。アタシ、こんなフラップなんて、ヤダ!」
「そうだ! ぼくだって願い下げだぞ」フレディも同意見だ。
「心配はいらん。ガッチュリン022の効果は、一時的なものじゃ。
あと数時間もすれば、元のフラップに戻るじゃろう。あ、でも――」
「でも、なに?」フリーナがおそるおそるたずねる。
「中には、なかなか元の人格に戻らない研究員もおってのう。
一週間ほどたてば、たいていの者は元通りになるのじゃが、
中には、その……かれこれ一か月たっても人格が戻らないやつもおる」
「「一か月もぉー!?」」フリーナとフレディが絶叫した。
「もしかすると、フラップも元に戻るのに、最大でもそれくらいかかるやも。
ヘタをすれば、永久に――」
「永久に戻れないとか、ぜったいに言わないでくれ!」
と、フレディがぴしゃりと言った。
「それにのう……フラップの毛が白くなってしまったのも気にかかる。
まさか、ドラギィにあんな作用を起こすとは想像もつかんかった。
これは、新たな不思議の幕開けというやつじゃ。
研究者の目を、じっくりとむけてかかるべきじゃな」
わしは――笑っていた。自分でも気づかないうちに。
「あんた! もしかして、いまの状況を面白がってるのか?」
フレディが食い入るような目で、わしのほうへ歩みよってきた、その時だ。
レンがまたもや「いってーっ!」とさけぶ声がして、
次の瞬間、彼が床にむかって倒れこむ音がひびいた。
「やられた……。フラップが、オレのおでこにぶつかって……」
そうこうしているうちに、
レンと白いフラップは、一方的な攻防を続けていたようだ。
白いフラップは、空中で勝ちほこった顔をして、
ボクサーのように両手をつきだしている。
「へへん。やっぱり人間なんて、敵じゃないなあ。
そんなんじゃ、オレの修行相手なんて、到底つとまらないぜ」
すっかり変わり果ててしまったフラップだったが、
じつを言うと、わしはこのフラップのほうが好きだったりする。
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