DRAGGY!ードラギィ!ー【フラップ編(リライト)2/18連載開始!】

Sirocos(シロコス)

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〈フレデリック/しろさん編〉

第五話『全員出動』 1

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     『わしは、けしてラッキーで生きのびてきたネズミじゃない。
    頭脳ずのう仲間なかまと、そして大きな秘密ひみつが、つねにここにあるからだ。』

**************************************

「ふしぎれーだーあぷりぃ? なんだそれ、食べるとうまいのか?」

 ブリーチが、くびをかしげながらそんなことを言ってきた。

「うまいのならば、キミにとっては理想的りそうてきだろうが、残念ざんねんながらちがうね。
ぼくらのように、裏側うらがわ世界せかいぞくするものを探知たんちする、特別なものさ」

「そうそう! 異界穴だってバッチリ見つけられちゃうんだってサ。
ついでに、おいしいかみなりも見つけてくれたらいいんだけどなあ」

 フレディとフリーナがそばにいて、そんなふうに話していた。


 わしはその日ドラギィたちに、
レンの留守中るすちゅうに、なんでも調査隊ちょうさたいの新しい計画けいかくをうちけていた。
手にはネズミパッドをもって、れいのレーダーアプリの画面がめんを見せていた。
ブリーチは、レンが秘密裏ひみつりかくしもっていたポテトチップス(チリソースあじ)を、
小さなネズミサイズの手でつかんでは、ベッド上でもりもりと食べていたが、
ちゃんとわしの話に耳をかたむけていた。
わしが、強いやつをさがしている、とわざわざ説明せつめいしてやったおかげだ。


 じつを言うと、ふしぎレーダーアプリはつい最近さいきん
バージョンアップをほどこして、とある新機能しんきのう追加ついかしたばかりなのだ。
それは、探知たんちした異界穴の中に広がる世界を、
ある程度ていどサーチして、事前じぜん解析かいせきテキストで知ることができる機能きのうである。
その名も、『裏世界さきどりサポート』だ!


「そんなふうに話されても、結局けっきょくおれにはよく分かんないや。パリパリッ!」

「キミは、フラップだったころの記憶きおくがあいまいのようだから、
ふしぎレーダーアプリの存在そんざいもわすれてしまっているんだな。
ぼくらは以前いぜん、このアプリの力で手助てだすけしてもらったこともあるんだぞ。
おい、チップスを食いちらかすんじゃない」

 フレディは、ブリーチの態度たいどに、あいかわらずいらだっていた。

 フリーナも、いつになったらフラップにもどるのかと、何度も何度もごねている。
つい昨日きのうも、ブリーチにハッピー☆スパークをしようとしたが、
またもやフレディにはばまれてやりそこなっていた。
わしに言わせれば、フリーナのハッピー☆スパークは、たしかに気分がいいし、
疲れや病気にたいして治癒ちゆ機能きのうがあるが、
そのかわり、あびた後にくるあたまのクラクラ感が厄介やっかいきわまりないのだ。
おまけにフリーナは加減かげんを知らないから、まわりの者みんなが巻きぞえを食らう。

 そもそも、あのスパークでフラップがもとに戻るとはとても思えない。

「みんな、おぬしのために行動こうどうしておるのじゃ。分かるかの、ブリーチ?」

「なんかよく知らないけど、悪いなあ、みんな!
オレのために、強いやつのいそうな場所をバッチリ探してくれよ」

 陽気ようきな笑い声をたてるブリーチに、
フリーナとフレディは、やっぱり深いためいきをついていた。

「そういえば、しろさん」レンがふとたずねてきた。

「ラボのネズミたちに聞いたんだけど、
キミって時おり、ラボを留守るすにすることがあるみたいだね。
この部屋に来るでもなく。いったいさ、どこにいってるの?」

「なんじゃ、レン。そんなことを聞いてどうする」

 わしは、昨日の懇親会へ出かけたことを思いうかべた。
まだくわしいことを話すべき時ではないだろう。

「わしはさすらいネズミでもあるのじゃ。
ただよそへ散策さんさくに出かけるのは、それほど悪いことではあるまい?
ラボドアは複数ふくすうあってのう。わしがよそへ出かける日に、
おぬしたちにも目撃もくげきされないのはそのせいじゃな」



 ――そして、レーダーアプリを使っての探索たんさくをはじめてから三日後のこと。
ついに、わしのレーダーアプリが、めぼしい裏世界の入り口を探知たんちした。

『あふれるような大自然の中を、
強い生命力せいめいりょくをもった大型生物おおがたせいぶつがひしめく世界。

                   備考びこう:まだ誕生たんじょうしてがない』

 解析かいせきテキストを読んだところ、どうやら、ごく最近新しくできた裏世界らしい。
どんな生物がいるのかは不明ふめいだったが、行ってみる価値かち十分じゅうぶんにありそうだ。



「レン、調査当日ちょうさとうじつはわしもついていくからの」

 わしはレンにそうもうし出た。
まあ、ブリーチをつねに観察かんさつしていたかったし、
わしには彼を元にもどす薬を作るべく、彼のデータを収集しゅうしゅうするという義務ぎむがある。

「あんま無茶むちゃはしないようにね。しろさん、ちっこいんだしさ」

「安心せい。わしはく子もだまる、一流いちりゅうのさすらいネズミじゃぞ」

 わしにたいするレンの言葉には、いつもながら配慮はいりょを感じられなかったが、
調査隊の活動かつどうにわしみずから同行するのは、じつを言えばはつのこころみだ。
人間の子どもからのほど知らずだと思われても、しょうがない。


 しかしわしは、そうやすやすと危険生物きけんせいぶつわれるようなタマではない。

 わしは、けしてラッキーで生きのびてきたネズミじゃない。
頭脳ずのう仲間なかまと、そして大きな秘密ひみつが、つねにここにあるからだ。

 *

 目的の異界穴は、もえぎちょうにあった。電車なら、うさみ町から四十分はかかる。
だが、暗い夜空をドラギィに乗って飛んでいけば、ほんの十五分で到着できる。

 ブリーチはレンを、フリーナはユカを、フレディはジュンとタクを乗せた。
わしはというと、レンの上着うわぎむねポケットでじっとブリーチの頭を見ていた。
こうしてメンバー全員ぜんいんで空をぶのは、なかなかいい気分だった。
昼間ひるまならもっと気持ちいいフライトになるだろうが、だれも文句もんくはいうまい。
裏世界がらみの調査ちょうさは、よるにおこなったほうが都合つごうがいいのだ。

 もしもの時のため、ドラギィたちは全員、
わしが開発した『雲隠くもがれチョーカー』を首にまいてきていた。
以前にも、調査隊の活動につかったことのあるアイテムだ。

 ひゅうぅぅ~~。

 耳の奥まできぬける、さむいくらいはだにしみる夜の風。
バラバラとあばれるふくかみ。ドラギィたちのつばさが風をる音。
ついでに、突風とっぷうにのたうち回るわしのホイップヘアー――。

「さっきから気になってるんだけど」

 レンがふいに口を開いた。

「オレたちのすぐそばを飛んでるあのちっこいの、いったいなに?」

 ブリーチの右翼側うよくがわを、ドラギィの速度そくどにまけじと飛んでいる、
白いネズミ型の飛行物体ひこうぶったいのことをいっているのだ。

「なんじゃ、レン。あれが気になっておるのか。
あれはわがフレデリック・ラボがほこる最新鋭さいしんえい撮影さつえいドローンじゃぞ」

 四つの足にはハイパワーの超小型ちょうこがたジェットエンジンを搭載とうさい
両目には4K解像度かいぞうどカメラを内蔵ないぞう。一本のプロペラで完璧かんぺき安定飛行あんていひこう
背中のぜんまいが月明かりににぶくかがやく、マウスサイズのにくいやつ。

 その名も、『ぜんまいドローンネズミ』だ。

 先に開発した、オートマチックぜんまいネズミの進化版しんかばんといえよう。

「ブリーチの行動記録こうどうきろくをしっかりとっておきたいからのう。
今日から運用をスタートしたのじゃ。ふふん、どこまでも追跡ついせきしてかくりじゃぞ」

 わしは鼻高々はなたかだかにそう言ったが、レンはどこか複雑ふくざつな顔をしていた。

撮影さつえいドローンをつけるんだったらさ、
わざわざしろさんがついてくる必要ひつようないんじゃない?
ブリーチの様子ようすなら、ラボで映像を見ればすむハナシだし」

「たまには現場げんば雰囲気ふんいきあじわってもよいじゃろう?
それに、ブリーチのことは徹底てっていして真剣しんけんむと決めたのじゃ」

 決めたはよかったが、さすがにあきの上空はかなり肌寒はだざむい。
ドラギィたちの体温たいおんまもられていなければ、とっくにこごえているところだ。

「はぁ~、フレディの背中って、わりとあったかいから寒くても快適かいてきだよ!」

 タクが、フレディのつやつやな毛並みをなでながら言った。
ジュンはタクの背後からしがみつくように座っていた。

「こうして飛んでてようー、急に元の姿にもどったらどーなるんだぁ?」
 と、ジュンがブリーチにむかって話しかけた。

「そうだなあ、たぶん元に戻ったショックで、
オレ、ぐーるぐる回りながら墜落ついらくしちまうだろうなあ、ハッハッハッ!」

 ブリーチは冗談めかして大笑いした。

「やめろよ、縁起えんぎでもない!」レンがぶるいする。
「オレ、前にキミの背中せなかからっこちて以来いらい、トラウマになってるんだから!」

「へぇ~、そうなのかあ。まあ、安心あんしんしろよい。
オレさまがフラップに戻るようなことなんて、絶対ぜったいにないからなあ!」

 ユカが不思議ふしぎそうにたずねた。「なんで、そう言いきれるの?」

「なんでって、そりゃあ、オレさまには分かるからさ。
あいつの心はいま、この胸のずっとおくねむっちまってるってことがな。
オレのこころが強くゆさぶられでもしないかぎり、あいつは起きないさ。
そして、おれの心がゆさぶられることは、万に一つもありえないってな!」


「「どうだか!」」フリーナとフレディが、天をあおいで声をそろえた。



 れい裏世界うらせかいへの入り口は、もえぎちょうにある、
もえぎの丘公園おかこうえんというちょっと大きな公園にかくれている。

 この公園、恐竜きょうりゅうをモチーフにしたあいらしい遊具ゆうぐがいくつもあって、
小さい子どもたちに大人気のようだ。地元じもとでは、『恐竜公園』とよばれている。
ティラノサウルスのすべだいに、ブラキオサウルスのブランコ、
トリケラトプスのスプリング遊具に、パラサウロロフスのシーソー。


 だが、わしらが公園へとおり立った時――
そこにはこの公園ににつかわしくない人間どもがたむろしていた。


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