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〈フレデリック/しろさん編〉
第五話 4
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『ふりまわせば武器になるが、あまり戦いには使いたくない。
わしの発明は、そんなことのためにあるわけではないのだ。』
**************************************
「ハイハーイ! アタシが異界穴をひらきまあす! ワンワンワン!」
フリーナがパタパタ飛びまわりながら名乗りでたが、
わしは、まった! をかけてこう言った。
「ここは、わしにまかせるんじゃ。じつはのう、わがフレデリック・ラボでは、
独自に異界穴をひらくアイテムを開発しておったんじゃ」
みんなが注目するなか、わしは白衣の内ポケットから、あるものを取りだした。
「なにその、銀色のやつ?」タクがたずねてきた。
この銀の筒状のアイテムが、まさか夢を切りひらく世紀の大発明だとは、
さすがのレンたちも想像がつかないことだろう。
わしはそのアイテムの側面についた、小さな青いボタンを押した。
びゅん!
銀の筒は、マジックステッキのように先が伸びあがり、
細長い棒状のアイテムに変身した。
「なにそれ、ピック? もしかして、つまようじ?」
ジュンがひねりも面白味もないことを言いだした。
「ピックでも、つまようじでもなぁい。
レンよ、わしを手のひらに乗せて、前にさしだしてくれい」
レンは目をパチクリさせつつ、手のひらにわしを乗せて、
ティラノサウルスの両足のあいだにむかってさしだした。
そこは、レンたちが立ったままギリギリ通れるくらいのスペースがあった。
「よく見るんじゃ」
わしは、にわかに剣士のような抜刀のかまえをとる。
そして、ななめ上にむかって、銀色の棒で目の前をびゅっと切りはらった。
しゅぅぅっ! ティラノサウルスの足のあいだに、真っ白な亀裂が走った。
キラキラと光をとじこめた亀裂はみるみる広がり、やがて――
カァーッ!
虹色の不思議な光がうずまく、楕円形の穴がひらいたのである。
涼やかな、それでいてどこか温かな風を肌に感じる。
扇でゆったりとあおがれながらも、陽のぬくもりを体にうけているかのようだ。
「すっげーえ!」ジュンが大はしゃぎした。
「ほんとうに異界穴がひらいたぁ! いったいなんなの、それ!」
タクが興味津々でたずねてきたので、わしは鼻高々に説明した。
「こいつは、『亜空でんでん丸』といってのう。
目に見えない異界穴を切りひらくことができるんじゃ。
ごく最近、新たに開発したアイテムでのう、わしの大のお気にいりじゃあ」
剣でも、ヤリでもない。刃はどこにもないから、小魚もとれない。
ふりまわせば武器になるが、あまり戦いには使いたくない。
わしの発明は、そんなことのためにあるわけではないのだ。
それでも、わしはこの亜空でんでん丸を、りっぱな刀のように愛している。
こうして頬ずりしてやるくらいにな!
「なあんだ~。そんなことができるんなら、もっとはやくいってよネ~」
と、フリーナが笑いながら言った。
「ぼくも、びっくりしたぞ。ドラギィとおなじことができるのか!」
すこしそばをはなれていたフレディとブリーチが、
ものめずらしそうな目でわしのところへ飛んできた。
「ワォン! それはなんだぁ? オレにもよく見せてくれよ」
ブリーチが、銀の矛先を指でつんつんしてきたので、
わしはさっさとでんでん丸を白衣のポケットにしまいこんでしまった。
「オレさ」レンが口を開いた。
「今までいっしょに暮らしてきてはじめて、しろさんがカッコイイって思えたよ」
「こりゃ! それはいったいどういう意味じゃ」
わしらはみんなで笑った。こういう他愛のない時間が、
この長すぎるさすらいの人生に、心地よい光をそそいでくれることを、
わしは最近、強く強く実感している。
――しろさんという呼び名は、どうにかできないものかと思うが。
「おーい、こっちじゃあ!」
わしは穴へ入りしなに、
頭上で待機していた例のドローンネズミに呼びかけた。
ドローンネズミは、元気そうにぜんまいをくるくると巻いて反応し、
わしらにつづいて穴をくぐりぬけた。
*
――ジュラ紀。原始人のくらしていた頃よりもはるか昔。
そこは、強じんな肉体をもつ恐竜たちが支配する、壮大な世界だった。
うっそうとしたジャングルが大地をどこまでもおおいつくし、
頭から漆黒の煙をあげる活火山がマグマをこぼれさせ、
硬い皮膚をもつ恐竜の群れが地上にも空にもあふれていた。
だが、この裏世界も――はたしておなじように言えるだろうか?
「なんていうか……」ユカが、ポカンとしてつぶやいた。
「すごく、個性的なところだよね」
真っ昼間だ。温かい風をたしかに感じる。すこしジメジメしているくらいだ。
土のにおいも、ジャングルの植物のにおいも、本物らしいとは思う。
それなのに、ここは――なにかがおかしかった。
木が、植物が――どうみてもヘンだった。
葉の表面がやけにつるつるしていて、ごつごつした木の幹も舞台のセットのよう。
そうだ。目にうつるすべての質感が奇妙にやわらかく、カラフルな色味だ。
子どもが読む絵本の中みたいに、どこか現実味にかけている。
まるで、すべてが作りもの――
テーマパークのジャングルへと迷いこんだかのようだった。
「みてみて、あの空! ワンワン!」フリーナが上をさして吠えた。
わしらは空を見上げて、目をまるくした。
青空じゃない。あれは――ピンク色の空だ。ピンク一色の空だ。
昼夜をわかつ夕日の光でも、ここまであざやかなピンク色にはそめられない。
どすん。どすん。バキバキバキ……!
すこし近くで、なにか大きなものが邪魔な木々をへしおりながら、
重たい足取りでやってくる気配があった。
「おいおい、このかんじ……もしかして?」
ジュンは、ちょっとぎこちない顔で危機をさっした。
「クンクン……におう。におうぞぉ……。
ものすごく強そうな生き物のにおいがする!」
ブリーチが鼻をひくひくさせて、興奮しきった顔をした。
彼の白い体毛が、みるみるうちに、燃えるような赤色にそまっていった。
わしの発明は、そんなことのためにあるわけではないのだ。』
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「ハイハーイ! アタシが異界穴をひらきまあす! ワンワンワン!」
フリーナがパタパタ飛びまわりながら名乗りでたが、
わしは、まった! をかけてこう言った。
「ここは、わしにまかせるんじゃ。じつはのう、わがフレデリック・ラボでは、
独自に異界穴をひらくアイテムを開発しておったんじゃ」
みんなが注目するなか、わしは白衣の内ポケットから、あるものを取りだした。
「なにその、銀色のやつ?」タクがたずねてきた。
この銀の筒状のアイテムが、まさか夢を切りひらく世紀の大発明だとは、
さすがのレンたちも想像がつかないことだろう。
わしはそのアイテムの側面についた、小さな青いボタンを押した。
びゅん!
銀の筒は、マジックステッキのように先が伸びあがり、
細長い棒状のアイテムに変身した。
「なにそれ、ピック? もしかして、つまようじ?」
ジュンがひねりも面白味もないことを言いだした。
「ピックでも、つまようじでもなぁい。
レンよ、わしを手のひらに乗せて、前にさしだしてくれい」
レンは目をパチクリさせつつ、手のひらにわしを乗せて、
ティラノサウルスの両足のあいだにむかってさしだした。
そこは、レンたちが立ったままギリギリ通れるくらいのスペースがあった。
「よく見るんじゃ」
わしは、にわかに剣士のような抜刀のかまえをとる。
そして、ななめ上にむかって、銀色の棒で目の前をびゅっと切りはらった。
しゅぅぅっ! ティラノサウルスの足のあいだに、真っ白な亀裂が走った。
キラキラと光をとじこめた亀裂はみるみる広がり、やがて――
カァーッ!
虹色の不思議な光がうずまく、楕円形の穴がひらいたのである。
涼やかな、それでいてどこか温かな風を肌に感じる。
扇でゆったりとあおがれながらも、陽のぬくもりを体にうけているかのようだ。
「すっげーえ!」ジュンが大はしゃぎした。
「ほんとうに異界穴がひらいたぁ! いったいなんなの、それ!」
タクが興味津々でたずねてきたので、わしは鼻高々に説明した。
「こいつは、『亜空でんでん丸』といってのう。
目に見えない異界穴を切りひらくことができるんじゃ。
ごく最近、新たに開発したアイテムでのう、わしの大のお気にいりじゃあ」
剣でも、ヤリでもない。刃はどこにもないから、小魚もとれない。
ふりまわせば武器になるが、あまり戦いには使いたくない。
わしの発明は、そんなことのためにあるわけではないのだ。
それでも、わしはこの亜空でんでん丸を、りっぱな刀のように愛している。
こうして頬ずりしてやるくらいにな!
「なあんだ~。そんなことができるんなら、もっとはやくいってよネ~」
と、フリーナが笑いながら言った。
「ぼくも、びっくりしたぞ。ドラギィとおなじことができるのか!」
すこしそばをはなれていたフレディとブリーチが、
ものめずらしそうな目でわしのところへ飛んできた。
「ワォン! それはなんだぁ? オレにもよく見せてくれよ」
ブリーチが、銀の矛先を指でつんつんしてきたので、
わしはさっさとでんでん丸を白衣のポケットにしまいこんでしまった。
「オレさ」レンが口を開いた。
「今までいっしょに暮らしてきてはじめて、しろさんがカッコイイって思えたよ」
「こりゃ! それはいったいどういう意味じゃ」
わしらはみんなで笑った。こういう他愛のない時間が、
この長すぎるさすらいの人生に、心地よい光をそそいでくれることを、
わしは最近、強く強く実感している。
――しろさんという呼び名は、どうにかできないものかと思うが。
「おーい、こっちじゃあ!」
わしは穴へ入りしなに、
頭上で待機していた例のドローンネズミに呼びかけた。
ドローンネズミは、元気そうにぜんまいをくるくると巻いて反応し、
わしらにつづいて穴をくぐりぬけた。
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――ジュラ紀。原始人のくらしていた頃よりもはるか昔。
そこは、強じんな肉体をもつ恐竜たちが支配する、壮大な世界だった。
うっそうとしたジャングルが大地をどこまでもおおいつくし、
頭から漆黒の煙をあげる活火山がマグマをこぼれさせ、
硬い皮膚をもつ恐竜の群れが地上にも空にもあふれていた。
だが、この裏世界も――はたしておなじように言えるだろうか?
「なんていうか……」ユカが、ポカンとしてつぶやいた。
「すごく、個性的なところだよね」
真っ昼間だ。温かい風をたしかに感じる。すこしジメジメしているくらいだ。
土のにおいも、ジャングルの植物のにおいも、本物らしいとは思う。
それなのに、ここは――なにかがおかしかった。
木が、植物が――どうみてもヘンだった。
葉の表面がやけにつるつるしていて、ごつごつした木の幹も舞台のセットのよう。
そうだ。目にうつるすべての質感が奇妙にやわらかく、カラフルな色味だ。
子どもが読む絵本の中みたいに、どこか現実味にかけている。
まるで、すべてが作りもの――
テーマパークのジャングルへと迷いこんだかのようだった。
「みてみて、あの空! ワンワン!」フリーナが上をさして吠えた。
わしらは空を見上げて、目をまるくした。
青空じゃない。あれは――ピンク色の空だ。ピンク一色の空だ。
昼夜をわかつ夕日の光でも、ここまであざやかなピンク色にはそめられない。
どすん。どすん。バキバキバキ……!
すこし近くで、なにか大きなものが邪魔な木々をへしおりながら、
重たい足取りでやってくる気配があった。
「おいおい、このかんじ……もしかして?」
ジュンは、ちょっとぎこちない顔で危機をさっした。
「クンクン……におう。におうぞぉ……。
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ブリーチが鼻をひくひくさせて、興奮しきった顔をした。
彼の白い体毛が、みるみるうちに、燃えるような赤色にそまっていった。
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