DRAGGY!ードラギィ!ー【フラップ編(リライト)2/18連載開始!】

Sirocos(シロコス)

文字の大きさ
94 / 116
〈フレデリック/しろさん編〉

第五話 4

しおりを挟む
    『ふりまわせば武器ぶきになるが、あまりたたかいには使つかいたくない。
     わしの発明はつめいは、そんなことのためにあるわけではないのだ。』

**************************************


「ハイハーイ! アタシが異界穴いかいあなをひらきまあす! ワンワンワン!」

 フリーナがパタパタ飛びまわりながら名乗りでたが、
わしは、まった! をかけてこう言った。

「ここは、わしにまかせるんじゃ。じつはのう、わがフレデリック・ラボでは、
独自どくじに異界穴をひらくアイテムを開発しておったんじゃ」

 みんなが注目ちゅうもくするなか、わしは白衣はくいの内ポケットから、あるものをりだした。


「なにその、銀色ぎんいろのやつ?」タクがたずねてきた。


 この銀の筒状つつじょうのアイテムが、まさか夢を切りひらく世紀せいき大発明だいはつめいだとは、
さすがのレンたちも想像そうぞうがつかないことだろう。

 わしはそのアイテムの側面そくめんについた、小さな青いボタンをした。


 びゅん!


 銀の筒は、マジックステッキのように先がびあがり、
細長い棒状ぼうじょうのアイテムに変身へんしんした。


「なにそれ、ピック? もしかして、つまようじ?」

 ジュンがひねりも面白味もないことを言いだした。

「ピックでも、つまようじでもなぁい。
レンよ、わしを手のひらに乗せて、前にさしだしてくれい」

 レンは目をパチクリさせつつ、手のひらにわしを乗せて、
ティラノサウルスの両足のあいだにむかってさしだした。
そこは、レンたちが立ったままギリギリとおれるくらいのスペースがあった。

「よく見るんじゃ」

 わしは、にわかに剣士けんしのような抜刀ばっとうのかまえをとる。
そして、ななめ上にむかって、銀色の棒で目の前をびゅっと切りはらった。

 しゅぅぅっ! ティラノサウルスの足のあいだに、っ白な亀裂きれつはしった。
キラキラと光をとじこめた亀裂はみるみる広がり、やがて――


 カァーッ!


 虹色にじいろの不思議な光がうずまく、楕円形だえんけいの穴がひらいたのである。

 すずやかな、それでいてどこか温かな風をはだに感じる。
おうぎでゆったりとあおがれながらも、のぬくもりを体にうけているかのようだ。


「すっげーえ!」ジュンが大はしゃぎした。

「ほんとうに異界穴がひらいたぁ! いったいなんなの、それ!」

 タクが興味津々きょうみしんしんでたずねてきたので、わしは鼻高々はなたかだか説明せつめいした。

「こいつは、『亜空あくうでんでんまる』といってのう。
目に見えない異界穴を切りひらくことができるんじゃ。
ごく最近、新たに開発したアイテムでのう、わしの大のお気にいりじゃあ」

 けんでも、ヤリでもない。はどこにもないから、小魚こざかなもとれない。

 ふりまわせば武器ぶきになるが、あまりたたかいには使つかいたくない。
わしの発明はつめいは、そんなことのためにあるわけではないのだ。
それでも、わしはこの亜空でんでん丸を、りっぱな刀のようにあいしている。
こうして頬ずりしてやるくらいにな!

「なあんだ~。そんなことができるんなら、もっとはやくいってよネ~」
と、フリーナが笑いながら言った。

「ぼくも、びっくりしたぞ。ドラギィとおなじことができるのか!」

 すこしそばをはなれていたフレディとブリーチが、
ものめずらしそうな目でわしのところへ飛んできた。

「ワォン! それはなんだぁ? オレにもよく見せてくれよ」

 ブリーチが、銀の矛先ほこさきゆびでつんつんしてきたので、
わしはさっさとでんでん丸を白衣のポケットにしまいこんでしまった。

「オレさ」レンが口を開いた。
「今までいっしょに暮らしてきてはじめて、しろさんがカッコイイって思えたよ」

「こりゃ! それはいったいどういう意味いみじゃ」

 わしらはみんなで笑った。こういう他愛たあいのない時間が、
この長すぎるさすらいの人生に、心地ここちよい光をそそいでくれることを、
わしは最近、強く強く実感じっかんしている。
――というび名は、どうにかできないものかと思うが。

「おーい、こっちじゃあ!」

 わしは穴へ入りしなに、
頭上で待機たいきしていたれいのドローンネズミにびかけた。
ドローンネズミは、元気そうにぜんまいをくるくるといて反応はんのうし、
わしらにつづいて穴をくぐりぬけた。

 *

 ――ジュラ原始人げんしじんのくらしていたころよりもはるか昔。
そこは、きょうじんな肉体にくたいをもつ恐竜きょうりゅうたちが支配しはいする、壮大そうだいな世界だった。
うっそうとしたジャングルが大地をどこまでもおおいつくし、
頭から漆黒しっこくの煙をあげる活火山かっかざんがマグマをこぼれさせ、
かた皮膚ひふをもつ恐竜のれが地上にも空にもあふれていた。


 だが、この裏世界も――はたしておなじように言えるだろうか?


「なんていうか……」ユカが、ポカンとしてつぶやいた。
「すごく、個性的こせいてきなところだよね」


 昼間ぴるまだ。温かい風をたしかに感じる。すこしジメジメしているくらいだ。
土のにおいも、ジャングルの植物しょくぶつのにおいも、本物ほんものらしいとは思う。

 それなのに、ここは――なにかがおかしかった。

 木が、植物が――どうみてもヘンだった。
表面ひょうめんがやけにつるつるしていて、ごつごつした木のみき舞台ぶたいのセットのよう。
そうだ。目にうつるすべての質感しつかん奇妙きみょうにやわらかく、カラフルな色味いろみだ。
子どもが読む絵本えほんの中みたいに、どこか現実味げんじつみにかけている。

 まるで、すべてが作りもの――
テーマパークのジャングルへとまよいこんだかのようだった。

「みてみて、あの空! ワンワン!」フリーナが上をさしてえた。

 わしらは空を見上げて、目をまるくした。

 青空じゃない。あれは――ピンク色の空だ。ピンク一色の空だ。
昼夜ちゅうやをわかつ夕日の光でも、ここまであざやかなピンク色にはそめられない。


 どすん。どすん。バキバキバキ……!


 すこし近くで、なにか大きなものが邪魔じゃまな木々をへしおりながら、
おもたい足取あしどりでやってくる気配けはいがあった。

「おいおい、このかんじ……もしかして?」

 ジュンは、ちょっとぎこちない顔で危機ききをさっした。


「クンクン……におう。におうぞぉ……。
ものすごく強そうな生き物のにおいがする!」

 ブリーチがはなをひくひくさせて、興奮こうふんしきった顔をした。


 彼の白い体毛たいもうが、みるみるうちに、えるような赤色にそまっていった。
 
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート

谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。 “スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。 そして14歳で、まさかの《定年》。 6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。 だけど、定年まで残された時間はわずか8年……! ――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。 だが、そんな幸弘の前に現れたのは、 「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。 これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。 描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。

異世界転移が決まってる僕、あと十年で生き抜く力を全部そろえる

谷川 雅
児童書・童話
【第3回きずな児童書大賞 読者賞受賞作品】 「君は25歳の誕生日に異世界へ飛ばされる――準備、しておけよ」 そんなリアルすぎる夢を見たのは、中学3年・15歳の誕生日。 しかも、転移先は「魔法もあるけど生活水準は中世並み」、しかも「チート能力一切なし」!? 死ぬ気で学べ。鍛えろ。生き抜け。 目指すのは、剣道×農業×経営×工学を修めた“自己完結型万能人間”! 剣道部に転部、進学先は国立農業高校。大学では、園芸、畜産・農業経営・バイオエネルギーまで学び、最終的には油が採れるジャガイモを発見して学内ベンチャーの社長に―― そう、全部は「異世界で生きるため」! そしてついに25歳の誕生日。目を覚ますと、そこは剣と魔法の異世界。 武器は竹刀、知識はリアル、金は……時計を売った。 ここから始まるのは、“計画された異世界成り上がり”! 「魔法がなくても、俺には農業と剣がある――」 未来を知る少年が、10年かけて“最強の一般人”になり、異世界を生き抜く! ※「準備型転移」×「ノンチートリアル系」×「農業×剣術×起業」異色の成長譚!

星降る夜に落ちた子

千東風子
児童書・童話
 あたしは、いらなかった?  ねえ、お父さん、お母さん。  ずっと心で泣いている女の子がいました。  名前は世羅。  いつもいつも弟ばかり。  何か買うのも出かけるのも、弟の言うことを聞いて。  ハイキングなんて、来たくなかった!  世羅が怒りながら歩いていると、急に体が浮きました。足を滑らせたのです。その先は、とても急な坂。  世羅は滑るように落ち、気を失いました。  そして、目が覚めたらそこは。  住んでいた所とはまるで違う、見知らぬ世界だったのです。  気が強いけれど寂しがり屋の女の子と、ワケ有りでいつも諦めることに慣れてしまった綺麗な男の子。  二人がお互いの心に寄り添い、成長するお話です。  全年齢ですが、けがをしたり、命を狙われたりする描写と「死」の表現があります。  苦手な方は回れ右をお願いいたします。  よろしくお願いいたします。  私が子どもの頃から温めてきたお話のひとつで、小説家になろうの冬の童話際2022に参加した作品です。  石河 翠さまが開催されている個人アワード『石河翠プレゼンツ勝手に冬童話大賞2022』で大賞をいただきまして、イラストはその副賞に相内 充希さまよりいただいたファンアートです。ありがとうございます(^-^)!  こちらは他サイトにも掲載しています。

豆腐メンタルな私を、おバカな私が励ますよ(*´ー`*)

やまくる実
絵本
私の頭の中のネガティブな部分をポジティブな私が励ます、エッセイ? 小話? ただの落書き帳です(*´ー`*) 過去作品です。 内容的には本当に短い文章で、詩というかリズムで読む読み物。 見方によっては大人の絵本という感じです。 私と同じで創作する事が好きな方や生きる事に不器用な方の止まり木みたいな場所になれたらな......なんて思い、こちらにも掲載してみました。 カクヨムにも掲載しています。 表紙画像は chat gptに作成してもらいました(*'▽'*)

きたいの悪女は処刑されました

トネリコ
児童書・童話
 悪女は処刑されました。  国は益々栄えました。  おめでとう。おめでとう。  おしまい。

魔法使いアルル

かのん
児童書・童話
 今年で10歳になるアルルは、月夜の晩、自分の誕生日に納屋の中でこっそりとパンを食べながら歌を歌っていた。  これまで自分以外に誰にも祝われる事のなかった日。  だが、偉大な大魔法使いに出会うことでアルルの世界は色を変えていく。  孤独な少女アルルが、魔法使いになって奮闘する物語。  ありがたいことに書籍化が進行中です!ありがとうございます。

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
児童書・童話
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

生まれたばかりですが、早速赤ちゃんセラピー?始めます!

mabu
児童書・童話
超ラッキーな環境での転生と思っていたのにママさんの体調が危ないんじゃぁないの? ママさんが大好きそうなパパさんを闇落ちさせない様に赤ちゃんセラピーで頑張ります。 力を使って魔力を増やして大きくなったらチートになる! ちょっと赤ちゃん系に挑戦してみたくてチャレンジしてみました。 読みにくいかもしれませんが宜しくお願いします。 誤字や意味がわからない時は皆様の感性で受け捉えてもらえると助かります。 流れでどうなるかは未定なので一応R15にしております。 現在投稿中の作品と共に地道にマイペースで進めていきますので宜しくお願いします🙇 此方でも感想やご指摘等への返答は致しませんので宜しくお願いします。

処理中です...