DRAGGY!ードラギィ!ー【フラップ編(リライト)2/18連載開始!】

Sirocos(シロコス)

文字の大きさ
95 / 116
〈フレデリック/しろさん編〉

第六話『小さな瞳に』 1

しおりを挟む
   『すぐれた研究者とは、謎めいたものほど解き明かしたくなるものだ。
        たとえこの先十年、五十年かかるとしても。』

**************************************

 くらい木々のあいだからあらわれたのは、かなり大きな四足獣しそくじゅうの、
奇妙きみょうにつきでた口と、象牙ぞうげのような三本の白い角。
の光をうけて、ゴツゴツとした茶色ちゃいろい皮ふが全身ぜんしんをおおっている様子ようすが見えた。
おうぎのようなりっぱな形の頭が、まるでぞうの大きな耳のようだ。

「や、やばい」タクが興奮こうふんした。
「トリケラトプスだ! で、でっかい。動いてるし!」

 どうやらこちらに気づいたらしい。ゆっくりと近づいてくるようだ。
全長ぜんちょう九メートルもの大型恐竜おおがたきょうりゅうが、のしのしと。

 四人の子どもたちは、おもわずあとずさりした。
あまりの図体ずうたいに、恐ろしいという感情かんじょうはあっただろうが、
それと同時に、感激かんげきで気持ちが高ぶっているようでもあった。
だって、そりゃあそうだろう。生きて動いている恐竜だ。本物ほんものだ。
アニマトロ二クスや、着ぐるみでもない。頭や四肢しし動作どうさが、やたらとリアルだ。


「あ、ユ、ユカちゃん……」

 レンが急にほほを赤らめた。
ユカが、レンの片手かたてをおもわずつかんでいたのだ。

「あ、レンくん! これは、その……」

 ユカは、パッと手をはなした。彼女かのじょのほほもになっている。


「で、でもよう」ジュンがふるえるような声で言った。
「こいつ、体の色がやたらと明るいよな。よくあるおもちゃみたいな」

「そ、そうだね」タクが答える。
最新さいしん図鑑ずかんにのってるのは、あんなに明るい茶色じゃないよ。
あちこちにオレンジ色のすじもはいっているみたいだし。人形、だったりして?」

「そういえば、そうじゃのう。目もきれいな青色じゃな」

 わしも二人の見解につづいた。大型の恐竜なのに、どこか愛らしい。
この特徴的とくちょうてきなジャングルの風景ふうけいと、なにか関係かんけいがあるのだろうか。


「ガルルル! オレさまにむかってくるとは、いい度胸どきょうだぜ」


 背中せなかの毛を真っ赤にそめたブリーチは、鼻息はないきをふかして奮起ふんきすると、
むくむくっと大熊サイズにかわり、トリケラトプスの前で啖呵たんかをきった。

「おい、そこのでっかいの! オレさまと勝負だ、勝負! バウバウッ!」

「ねえ、どうして急に赤色になったの?」

 ユカがブリーチの様子ようすを見て、不思議ふしぎそうにたずねた。

「オレにもよく分からないんだ」レンが答える。
興奮こうふんすると、背中せなかが赤くなるみたい。フラップよりも熱そうな赤色にね」


「それをき明かすためにも、
わしらはブリーチのデータを集めなければならんのじゃ」


 わしは、レンのかたの上でネズミパッドを取りだし、カメラ撮影さつえいをはじめた。

「さあ、どう力くらべをする? おぬしとトリケラ、どちらが強いかのう?」



 ボオォォォ―――!



 ブリーチが、天にむかってごうごうと火炎放射かえんほうしゃした。
トリケラトプスは、たじろいで二、三歩ほど後ろへと下がった。
相手にも、これがほかにも見ない異様いよう光景こうけいだと分かるらしい。

「コラコラ、ほのお禁止きんしじゃ! 恐竜は火をふけないのじゃから」

 声の小さいわしの言葉を、レンがかわりに大声でブリーチに伝えた。

「なんだよこいつ~。火もふけないのか? 
じゃあ、相撲すもうだ、相撲! オレは地面じめんにおりてやるから」

 ブリーチは着地ちゃくちすると、どっしりと両脚りょうあしをついたまま、
さらにむくむくと巨大化きょだいかしていった。

「がうぅ~! さあ、かかってこおい!」

 いまやブリーチは、トリケラトプスとおなじサイズにかわって、
両腕りょううでをひろげてトリケラトプスに立ちふさがった。

「本当に恐竜サイズだあ!」

「いいぞー、やれやれ~!」

 タクとジュンが大興奮だいこうふんでその姿を見上げた――が、その時だ。


 ザワザワッ! トリケラトプスの後ろのしげみがゆれて、
なにか小さな生き物たちが飛び出してきた。


「あ、子どもがいる――」レンがつぶやいた。


 林の中からやってきたのは、三匹のトリケラトプスの子ども。
犬のようなかろやかな足どりで親のそばにあつまり、心配しんぱいそうに様子をみている。
体の色合いは、やはり親とおなじで、明るい茶色にオレンジの筋だった。

「かわいい!」

 わずか三メートルほどしかないトリケラトプスの子どもたちを見て、
ユカが目をキラキラさせた。

 ブリーチは、無事ぶじたしかめあう恐竜の親子を、呆然ぼうぜんと見つめていた。
すると、彼は急にやる気をなくして、みるみる小さなサイズにもどっていった。

「なあんだ、子連こづれだったのか。なんか、その――悪いことしちまったぜ。
散歩さんぽ途中とちゅうだったのをさ」

 ブリーチは、やれやれといった調子ちょうしうでをくんだまま、
レンたちの頭上ずじょう待機たいきしていたフリーナとフレディのもとへむかった。
背中せなかの色が、すこしずつ白色にもどっていく。

「力くらべはいいのか?」フレディが笑ってそう聞いた。

「だって、オレの前にやられちまったブザマな親のかっこうを、
あんな小さな子どもたちに見せられないだろ?」

「へぇ~、やさしいネ。いいとこあるじゃん。ワンッ!」

 フリーナは、ブリーチの体をひじでドンとついた。

「いってえなあ、このぉ。オレだって優しい時は優しいんだぜ」

「「どうだか」」フリーナとフレディが、またも声をそろえた。

 トリケラトプスの親子は、わしらにおそいかかるでもなく、
すこしのあいだそばにいて、体をさわるのを許してくれた。
トリケラトプスの皮ふはカチカチにかたかったが、ふしぎな温かみがあった。

 それから、トリケラトプスの親子は、また森のおくへと去っていった。

 *

 わしらは、異界穴の入り口からすこしはなれ、広大こうだい草原地帯そうげんちたいに出た。

 ピンク色のふしぎな空の下にひろがるジュラの世界は、
本当に大型版おおがたばん絵本えほんをそっくりひらいてながめるような光景だった。
森や野原の植物から、とおくのおか岩々いわいわまで、
すべての色味いろみがシンプルで、どこかジオラマふうというか。
まあ、川を流れる水は、さすがに本物でちゃんと透明とうめいだったが。

 ここは風もおだやかで、
大小さまざまな恐竜を見られる、心地よい空間だ。
れをなして草原を歩く、五頭ごとうのパキケファロサウルス。
水場みずばでのどをうるおす、七頭ななとうのイグアノドンの群れ。
葉っぱのような形の骨盤こつばんで野を歩く、二頭のステゴサウルス。
そして、キリンのように長い首をもつ、巨大なブラキオサウルスが一頭。

 丘にそびえる大きな木の下でながめるだけで、
それだけではない数多かずおおくの恐竜たちを見ることができた。
まあ、みんなおもちゃのフィギュアみたいにカラフルな色なので、
本当に本物なのかどうかはハッキリしないがな。

「オレ、ちょっと胸焼むねやけしそうだな」

「レンくん、こういう風景ってキライ?」と、ユカが聞いた。

「レンはもっとリアルなカンジの恐竜が好きだよな」

 横からそう言ったのは、ジュンだった。

「しろさん、どうしてこんな世界ができたのかな。
ここ最近になって急に」と、タクがたずねてきた。

「裏側の世界については――」

 わしはレンの肩の上で腕をくみ、考えこみながら答えた。

「わしもまだハッキリと断定だんていできないのじゃが、
どうやら、表側の世界にあるものと関係がありそうじゃ」

「たしかに、入り口は恐竜公園にできてたもんね」と、レンはいった。

「異界穴は、周辺しゅうへんにあるものの影響えいきょうをうけて発生はっせいし、
それにひもづいた環境かんきょう、または光景などを内側に形づくる。
それがわしのなかで定説化ていせつかしつつある。
いつ生まれたかも分からん穴もあれば、新たに生まれてくる穴もあるが、
なぜ裏側の世界が生まれるのか、そのメカニズムはなんなのか――。
わしはまだ、それを解明かいめいできておらん」


 すぐれた研究者けんきゅうしゃとは、なぞめいたものほどき明かしたくなるものだ。
たとえこの先十年、五十年かかるとしても。
わしもただのネズミとしては、あまりに長生きな方なのだが、
長すぎる生に疲れをかんじたことはない。
なぜなら、わしは大きな謎からさらなる大きな謎へと、
研究テーマを次々に乗りかえながら、退屈たいくつしない生を生きてきたのだから。


「そういえば、ドラギィも裏世界の住人じゅうにんなんだよね?」

 ユカは、そばにうかんでいたフリーナとフレディにきいた。

「まあネ~」フリーナがピースサインをした。

「ぼくとしても、ドラギィ誕生たんじょうのルーツは知りたいところだ。
それが、ドラギィとして生きるよろこびにつながると、しんじているから」

 二匹は、エネルギー補給ほきゅうのためにユカがってきたチョコマシュマロを、
ふくろからだしてモグモグとやっていた。

 わしと四人の子どもたちは、ふっと笑みをうかべた。

「そういえば、ブリーチはどこ? 見当みあたらないけど」

 タクの言葉に、わしらはみんなでブリーチの姿をさがした。
あいつはおやつを食べた後、強そうな恐竜をさがすといって、
周辺しゅうへんをチョロチョロと飛びまわっていたのだが。

 と、フリーナがぴゅうっと飛び上がって、水場のほうを指さした。

「あー! あそこにいたー! ブリーチ、でっかくなってる!」


 ブリーチは、たった今むくむくと七メートルほどのサイズになって、
水の中を歩くデュプロドクスの背後はいごをとっていた。
そいつは、全長二十五メートルを越える、最大級さいだいきゅう草食恐竜そうきょくきょうりゅうだった。
どうやら、わしとおなじく長いムチのようなしっぽを生やしたそいつに、
興味きょうみをしめしたらしい。

 それから、両腕りょううででデュプロドクスの長いしっぽをつかみ、
ぐっと上にひっぱって、そのふとい後ろあし水面すいめんから上がるのを楽しんでいた。
わしのぜんまいドローンネズミが、しっかりと横から撮影さつえいをつづけている。

「いたずらされる方も、たいがい心の広いやつじゃのう」

 わしは遠巻とうまきにその光景をみて、クスリと笑った。

「ちっとも抵抗ていこうしておらんわ。ちょっとは仕置しおきしてやればよいじゃろうに」


 だがその時、わしらは見た。
ブリーチの背後から、さらなる恐竜のかげつばさを広げて、風に乗って飛んでくるのを!

しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート

谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。 “スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。 そして14歳で、まさかの《定年》。 6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。 だけど、定年まで残された時間はわずか8年……! ――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。 だが、そんな幸弘の前に現れたのは、 「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。 これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。 描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。

異世界転移が決まってる僕、あと十年で生き抜く力を全部そろえる

谷川 雅
児童書・童話
【第3回きずな児童書大賞 読者賞受賞作品】 「君は25歳の誕生日に異世界へ飛ばされる――準備、しておけよ」 そんなリアルすぎる夢を見たのは、中学3年・15歳の誕生日。 しかも、転移先は「魔法もあるけど生活水準は中世並み」、しかも「チート能力一切なし」!? 死ぬ気で学べ。鍛えろ。生き抜け。 目指すのは、剣道×農業×経営×工学を修めた“自己完結型万能人間”! 剣道部に転部、進学先は国立農業高校。大学では、園芸、畜産・農業経営・バイオエネルギーまで学び、最終的には油が採れるジャガイモを発見して学内ベンチャーの社長に―― そう、全部は「異世界で生きるため」! そしてついに25歳の誕生日。目を覚ますと、そこは剣と魔法の異世界。 武器は竹刀、知識はリアル、金は……時計を売った。 ここから始まるのは、“計画された異世界成り上がり”! 「魔法がなくても、俺には農業と剣がある――」 未来を知る少年が、10年かけて“最強の一般人”になり、異世界を生き抜く! ※「準備型転移」×「ノンチートリアル系」×「農業×剣術×起業」異色の成長譚!

星降る夜に落ちた子

千東風子
児童書・童話
 あたしは、いらなかった?  ねえ、お父さん、お母さん。  ずっと心で泣いている女の子がいました。  名前は世羅。  いつもいつも弟ばかり。  何か買うのも出かけるのも、弟の言うことを聞いて。  ハイキングなんて、来たくなかった!  世羅が怒りながら歩いていると、急に体が浮きました。足を滑らせたのです。その先は、とても急な坂。  世羅は滑るように落ち、気を失いました。  そして、目が覚めたらそこは。  住んでいた所とはまるで違う、見知らぬ世界だったのです。  気が強いけれど寂しがり屋の女の子と、ワケ有りでいつも諦めることに慣れてしまった綺麗な男の子。  二人がお互いの心に寄り添い、成長するお話です。  全年齢ですが、けがをしたり、命を狙われたりする描写と「死」の表現があります。  苦手な方は回れ右をお願いいたします。  よろしくお願いいたします。  私が子どもの頃から温めてきたお話のひとつで、小説家になろうの冬の童話際2022に参加した作品です。  石河 翠さまが開催されている個人アワード『石河翠プレゼンツ勝手に冬童話大賞2022』で大賞をいただきまして、イラストはその副賞に相内 充希さまよりいただいたファンアートです。ありがとうございます(^-^)!  こちらは他サイトにも掲載しています。

豆腐メンタルな私を、おバカな私が励ますよ(*´ー`*)

やまくる実
絵本
私の頭の中のネガティブな部分をポジティブな私が励ます、エッセイ? 小話? ただの落書き帳です(*´ー`*) 過去作品です。 内容的には本当に短い文章で、詩というかリズムで読む読み物。 見方によっては大人の絵本という感じです。 私と同じで創作する事が好きな方や生きる事に不器用な方の止まり木みたいな場所になれたらな......なんて思い、こちらにも掲載してみました。 カクヨムにも掲載しています。 表紙画像は chat gptに作成してもらいました(*'▽'*)

きたいの悪女は処刑されました

トネリコ
児童書・童話
 悪女は処刑されました。  国は益々栄えました。  おめでとう。おめでとう。  おしまい。

魔法使いアルル

かのん
児童書・童話
 今年で10歳になるアルルは、月夜の晩、自分の誕生日に納屋の中でこっそりとパンを食べながら歌を歌っていた。  これまで自分以外に誰にも祝われる事のなかった日。  だが、偉大な大魔法使いに出会うことでアルルの世界は色を変えていく。  孤独な少女アルルが、魔法使いになって奮闘する物語。  ありがたいことに書籍化が進行中です!ありがとうございます。

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
児童書・童話
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

生まれたばかりですが、早速赤ちゃんセラピー?始めます!

mabu
児童書・童話
超ラッキーな環境での転生と思っていたのにママさんの体調が危ないんじゃぁないの? ママさんが大好きそうなパパさんを闇落ちさせない様に赤ちゃんセラピーで頑張ります。 力を使って魔力を増やして大きくなったらチートになる! ちょっと赤ちゃん系に挑戦してみたくてチャレンジしてみました。 読みにくいかもしれませんが宜しくお願いします。 誤字や意味がわからない時は皆様の感性で受け捉えてもらえると助かります。 流れでどうなるかは未定なので一応R15にしております。 現在投稿中の作品と共に地道にマイペースで進めていきますので宜しくお願いします🙇 此方でも感想やご指摘等への返答は致しませんので宜しくお願いします。

処理中です...