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〈フレデリック/しろさん編〉
第六話 2
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『いつにもまして勇ましい彼の姿をみて、わしは思った。
こいつもまた、フラップのことで責任をいだいているんだなと。』
**************************************
「おいおい、なんか来たぞー!」ジュンがあわてふためいた。
そいつは長い首に、鳥のような細長いくちばしをもち、
小型飛行船のような長い翼で大空を滑空してきた。
プテラノドンだ。地球上でも最大級の翼竜の一種といわれていたやつだ。
頭と胴体は褐色ではなく、明るい黄色となっていたが。
そいつは、ブリーチをつかまえようと両脚を前につきだしている。
レンが叫ぶ。「フラップ、後ろ後ろぉ!」
ブリーチは、せまりくるプテラノドンの気配に気づかなかった。
暗い影が自分の背中をすっぽりとおおったのが分かった瞬間、
ようやく後ろをふりかえったが、時すでに遅し。
「「「あぶない!」」」
プテラノドンの前脚が、
巨大化したブリーチの両肩をがっしりと鷲づかみにするのを、わしらは目撃した。
ユカが両手で口をおさえる。
「えっ、ウソ!? つかまっちゃったんだけど!」
「運ばれてくよ! なんで? 重たいのに!」
タクの言うとおりだ。
プテラノドンは空を舞うために、体重はかなり軽く、骨もスカスカだ。
たいして、巨大化したドラギィは筋肉も脂肪ものっていて、どっしりと重たい。
なのに、あの翼竜はいま、じたばたと暴れるブリーチをつかんだまま、
風に乗って軽々と上空へ舞いあがり、来た道をUターンして、
赤々とした岩の谷のほうへと飛んでいくのだ。
「あのプテラノドン、そうとうの力持ちじゃな!」
わしは一瞬だけそう思ったが、すぐあごに指をあてて思考モードに入った。
「いや、そもそもここは裏側の世界じゃ。
太古の時代に実際に生きたやつとは、ステータスが根本的にちがうのかもしれん。
筋力とはまたべつの、特殊なエネルギーをもちいてドラギィを持ち上げたか――」
「フレディ! オレを乗せて! いっしょに追いかけよう!」
レンがよびかけ、フレディがうなずいた。
「あのプテラノドン、もしかしたらブリーチを群れのところに連れこんで、
みんなでブリーチをいじめる気かもしれない。
――あっ、しろさんはここで待機ね!」
突然、わしの小さな体はレンの両手につかまれてしまった。
「ユカちゃん、しろさんをその――お願い」
「えっ、わ、わたし?」
まるで大切な財布でも手わたしするみたいに、
わしの体はユカの両手の上にそっとあずけられた。
ユカは、いきなりのことで顔を真っ赤にそめていた。
「ユカちゃんって、ハムスターとか小さい生き物の面倒みるの、得意でしょ?
一番信頼できるしさ」
「レン君のたのみなら、引きうけるけど――」
「こりゃあ!」
わしはユカの手のひらの上でぴょんぴょん跳んで憤慨した。
「わしも連れていけ! ブリーチのことはわしが責任をもって――」
「恐竜を相手にするんだ。さすがに心配になるよ!」と、レンは言った。
「人間のお前も、心配なんだけどな」
不安げな笑みをうかべてそういったのは、ジュンだ。
「それは言わない! ブリーチの中でいまも眠ってるフラップの心は、
オレが一番目を覚まさせてあげたいんだ。もしかしたらこの土壇場で、
フラップが目を覚まして、元通りになってくれるかもしれない!」
レンはそういって、巨大化したフレディの背中に颯爽と乗りこんだ。
いつにもまして勇ましい彼の姿をみて、わしは思った。
こいつもまた、フラップのことで責任をいだいているんだなと。
そればかりか、小さな白ネズミの命までも気にかけて――。
成長している。レンはドラギィと暮らしはじめてからというもの、
めきめきと確実に成長をとげているのだ。
「それに、ブリーチのことが気になるんなら、
いまもドローンネズミが追って撮っている映像を、あとで見ればいいじゃない。
――フリーナ、みんなをしっかり守ってよね」
「ワォーン!? アタシがぁ~!?」
フリーナは、超難解な宿題でもまかされたかのような顔をした。
「フリーナ。ぼくらが帰ったら――」フレディは言った。
「レンくんがビッグサイズの『ぷるぷるプリン』を買ってきてくれるそうだ」
「え、オレそんなこと言ってな――うわっと!」
フレディは翼で土煙をまき上げながら、ブリーチを追って飛び立った。
*
レンの読みは、筋が通っているとはとてもいえなかった。
プテラノドンはたしかに群れで生活していたと考えられているが、
ドラギィみたいな半端ものをよってたかっていじめるような醜悪性があったかは、
今のところ明らかになっていないのだ。
わしのドローンネズミは、
巨大化したままプテラノドンにつかまったブリーチを追っていたが、
あとで撮影された記録をみれば、だれでも真実が分かるだろう。
「はーなーせーっ! このバサバサ野郎~! ガウ~、ガウガウ!」
ブリーチは叫びながらじたばたともがいていたが、
プテラノドンの両脚はちっともはなさなかった。
いまや白くま以上の体重があるはずの巨体を!
「こいつめ、火をふいてやろうか! オレさまを荷物あつかいしやがって~!
ガウガウガウ、ガルルル!」
ブリーチはそうして悪態をついていたが、
しばらくすると、何かに気がついたようにハッとして、何も言わなくなった。
プテラノドンに、悪意も殺気もないことに気がついたのだろうか。
ブリーチは、かわいた風の吹きぬける雄大な谷をながめた。
自分がこれからどこへ連れていかれるのか、冷静に考えるようになったのだ。
「お前、力持ちだよな。こんなにでっかくなったオレを余裕ではこんでるしさ」
ブリーチが、つと口をひらいた。
「オレに用があるんだろうけど、お前たちしゃべれないもんなあ。
くんくん……お前の体から魚のいいにおい……。
もしかして、オレに魚の丸焼きでも焼いてほしいのか?」
べつになれ合おうとしているわけでもなさそうだった。
ブリーチは、まだ不機嫌そうな顔をしている。
修行のためにここまできたのに邪魔だてするな、
なんて言いたげな表情だ。
「でもやっぱり」ブリーチはしみじみと両腕をくみながら言った。
「キョーリューってやつはすごいよなあ。あのでっかいやつの長いしっぽ、
持ち上げるのにそうとう力を使ったぜ。おかげでエネルギーが――おっと」
プテラノドンが、急降下してゆく。
目的地に到着したのだ。
こいつもまた、フラップのことで責任をいだいているんだなと。』
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「おいおい、なんか来たぞー!」ジュンがあわてふためいた。
そいつは長い首に、鳥のような細長いくちばしをもち、
小型飛行船のような長い翼で大空を滑空してきた。
プテラノドンだ。地球上でも最大級の翼竜の一種といわれていたやつだ。
頭と胴体は褐色ではなく、明るい黄色となっていたが。
そいつは、ブリーチをつかまえようと両脚を前につきだしている。
レンが叫ぶ。「フラップ、後ろ後ろぉ!」
ブリーチは、せまりくるプテラノドンの気配に気づかなかった。
暗い影が自分の背中をすっぽりとおおったのが分かった瞬間、
ようやく後ろをふりかえったが、時すでに遅し。
「「「あぶない!」」」
プテラノドンの前脚が、
巨大化したブリーチの両肩をがっしりと鷲づかみにするのを、わしらは目撃した。
ユカが両手で口をおさえる。
「えっ、ウソ!? つかまっちゃったんだけど!」
「運ばれてくよ! なんで? 重たいのに!」
タクの言うとおりだ。
プテラノドンは空を舞うために、体重はかなり軽く、骨もスカスカだ。
たいして、巨大化したドラギィは筋肉も脂肪ものっていて、どっしりと重たい。
なのに、あの翼竜はいま、じたばたと暴れるブリーチをつかんだまま、
風に乗って軽々と上空へ舞いあがり、来た道をUターンして、
赤々とした岩の谷のほうへと飛んでいくのだ。
「あのプテラノドン、そうとうの力持ちじゃな!」
わしは一瞬だけそう思ったが、すぐあごに指をあてて思考モードに入った。
「いや、そもそもここは裏側の世界じゃ。
太古の時代に実際に生きたやつとは、ステータスが根本的にちがうのかもしれん。
筋力とはまたべつの、特殊なエネルギーをもちいてドラギィを持ち上げたか――」
「フレディ! オレを乗せて! いっしょに追いかけよう!」
レンがよびかけ、フレディがうなずいた。
「あのプテラノドン、もしかしたらブリーチを群れのところに連れこんで、
みんなでブリーチをいじめる気かもしれない。
――あっ、しろさんはここで待機ね!」
突然、わしの小さな体はレンの両手につかまれてしまった。
「ユカちゃん、しろさんをその――お願い」
「えっ、わ、わたし?」
まるで大切な財布でも手わたしするみたいに、
わしの体はユカの両手の上にそっとあずけられた。
ユカは、いきなりのことで顔を真っ赤にそめていた。
「ユカちゃんって、ハムスターとか小さい生き物の面倒みるの、得意でしょ?
一番信頼できるしさ」
「レン君のたのみなら、引きうけるけど――」
「こりゃあ!」
わしはユカの手のひらの上でぴょんぴょん跳んで憤慨した。
「わしも連れていけ! ブリーチのことはわしが責任をもって――」
「恐竜を相手にするんだ。さすがに心配になるよ!」と、レンは言った。
「人間のお前も、心配なんだけどな」
不安げな笑みをうかべてそういったのは、ジュンだ。
「それは言わない! ブリーチの中でいまも眠ってるフラップの心は、
オレが一番目を覚まさせてあげたいんだ。もしかしたらこの土壇場で、
フラップが目を覚まして、元通りになってくれるかもしれない!」
レンはそういって、巨大化したフレディの背中に颯爽と乗りこんだ。
いつにもまして勇ましい彼の姿をみて、わしは思った。
こいつもまた、フラップのことで責任をいだいているんだなと。
そればかりか、小さな白ネズミの命までも気にかけて――。
成長している。レンはドラギィと暮らしはじめてからというもの、
めきめきと確実に成長をとげているのだ。
「それに、ブリーチのことが気になるんなら、
いまもドローンネズミが追って撮っている映像を、あとで見ればいいじゃない。
――フリーナ、みんなをしっかり守ってよね」
「ワォーン!? アタシがぁ~!?」
フリーナは、超難解な宿題でもまかされたかのような顔をした。
「フリーナ。ぼくらが帰ったら――」フレディは言った。
「レンくんがビッグサイズの『ぷるぷるプリン』を買ってきてくれるそうだ」
「え、オレそんなこと言ってな――うわっと!」
フレディは翼で土煙をまき上げながら、ブリーチを追って飛び立った。
*
レンの読みは、筋が通っているとはとてもいえなかった。
プテラノドンはたしかに群れで生活していたと考えられているが、
ドラギィみたいな半端ものをよってたかっていじめるような醜悪性があったかは、
今のところ明らかになっていないのだ。
わしのドローンネズミは、
巨大化したままプテラノドンにつかまったブリーチを追っていたが、
あとで撮影された記録をみれば、だれでも真実が分かるだろう。
「はーなーせーっ! このバサバサ野郎~! ガウ~、ガウガウ!」
ブリーチは叫びながらじたばたともがいていたが、
プテラノドンの両脚はちっともはなさなかった。
いまや白くま以上の体重があるはずの巨体を!
「こいつめ、火をふいてやろうか! オレさまを荷物あつかいしやがって~!
ガウガウガウ、ガルルル!」
ブリーチはそうして悪態をついていたが、
しばらくすると、何かに気がついたようにハッとして、何も言わなくなった。
プテラノドンに、悪意も殺気もないことに気がついたのだろうか。
ブリーチは、かわいた風の吹きぬける雄大な谷をながめた。
自分がこれからどこへ連れていかれるのか、冷静に考えるようになったのだ。
「お前、力持ちだよな。こんなにでっかくなったオレを余裕ではこんでるしさ」
ブリーチが、つと口をひらいた。
「オレに用があるんだろうけど、お前たちしゃべれないもんなあ。
くんくん……お前の体から魚のいいにおい……。
もしかして、オレに魚の丸焼きでも焼いてほしいのか?」
べつになれ合おうとしているわけでもなさそうだった。
ブリーチは、まだ不機嫌そうな顔をしている。
修行のためにここまできたのに邪魔だてするな、
なんて言いたげな表情だ。
「でもやっぱり」ブリーチはしみじみと両腕をくみながら言った。
「キョーリューってやつはすごいよなあ。あのでっかいやつの長いしっぽ、
持ち上げるのにそうとう力を使ったぜ。おかげでエネルギーが――おっと」
プテラノドンが、急降下してゆく。
目的地に到着したのだ。
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