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〈フレデリック/しろさん編〉
第七話『もうひとつの顔』 1
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『少しずつ大きさをます白い光のシルエット。
その光が消えた時、もうひとりの見知らぬ人物が現れた。』
**************************************
フリーナは全力で気ばっていた。
ジュンのやつが、フリーナだけじゃ心もとないと言いだし、
ブリーチみたいに恐竜サイズになれるかどうかやってみろと、
フリーナを焚きつけたのだ。
「ほらほら、もっと気合を入れろー!」
「アウゥゥゥ~!」
わしとユカとタクが見守るなか、
フリーナは両手をにぎりしめ、うなり声を上げながらりきんでいたが、
まるでトイレでもするかのようなポーズだった。
「あ~ん! もうだめぇぇ~……」
フリーナはしおしおと小さくなっていった。
あんなに力をこめたのに、いつもの白くまサイズからちっとも大きくならなかった。
「やはり、素質がものを言うのかのう」わしは腕をくんでいた。
「おぬしは、ブリーチのほかにも巨獣サイズになったドラギィを
見たことはあるのか?」
「ない~。ムリ~」フリーナはジュンの手のひらでダウンしていた。
「できたら、みんな大さわぎってところカナ。天才の証だから。
でも、ブリーチが天才ドラギィだなんて、ナットクできない~……」
さらわれたブリーチを追ってレンとフレディが飛び立ってから、
もうかれこれ三十分をすぎようとしていた。
いくらなんでも遅すぎるブリーチたちの帰りに、
子どもたちは不安をつのらせていた。――むろん、わしもだ。
「やっぱり、レンたちになんかあったんじゃねえ?」
と、ジュンが言った。
「もしかして、さらわれたブリーチがまだ見つからないとか」
と、ユカが推測した。
「アタシにいわせれば、探しても見つからないからって、
フレディがわんわん泣き出して、空から墜落しちゃったってとこカナ」
フリーナは、エネルギー補給のために、
ユカのチョコマシュマロをまたもりもりと口に入れていた。
「アォン。コレ、ほんとにおいしいネ。ユカちゃん、おかわり!」
「え~! まだ食べるの? フリーナったら食べすぎ。
チョコマシュマロ、もう全部なくなっちゃったよ」
「ええ~?」フリーナがなげいた。
「え~、ではないわい」わしはユカの手のひらから、顔をしかめて言った。
「ブリーチとフレディがエネルギー切れを起こしていたらどうする。
おぬしが全部食べてしまったら、いざという時に補給できないじゃろう」
「レンくんたちの居場所、分からないかな」と、ユカがたずねた。
「それなら大丈夫」自信たっぷりに答えたのは、タクだった。
「今、ふしぎレーダーで調べてみたけど、
ブリーチとフレディの反応はあるよ。ふたりともレンのそばにいるみたい」
わしの作ったふしぎレーダーアプリは、
表世界の地図データしかインプットしていないから、
画面に表示されるのは裏世界に属する生物の生体反応だけ。
それにしても、ブリーチが見つかったのなら早くもどってくればいいものを、
フレディは何をもたもたとしているのか。
「しろさん、ネズミパッドでドローンの映像を見れないの?」
「それが、撮影した映像はラボでしか見られないのじゃ。
ラボと交信して報告をうけたいが、それにはいったん表世界に戻らねば。
わしもずっとそばで見守るつもりじゃったので、よもやこうなるとは」
「らしくないなあ」タクがにんまりとした。
「もしかして、ネズミパッドで映像を見られるようにする設定を、
わすれてきちゃったとか?」
ドキッ! 図星をさされて、わしはぶるっと身ぶるいした。
「アタシ、レンたちを探してくるヨ!」
フリーナが、ジュンの手から飛び上がった。
「おいおい! 行くなよ、ボディガード!」
「あ」フリーナはピタリと止まった。
わしはフリーナに、
うっかりと物わすれ以外に得意なことはないのかとたずねた。
「ワゥワゥ! その言いかたー!」
フリーナは空中でプンスカと腹を立てて、わしの目の前に飛んできた。
「なんだかよくわかんない研究しかできないしろさんに、
あれこれ言われたくないヨ」
「なんじゃと! 食料を全部食べておいて、なーにをえらそうに!
わしだって、長いさすらいの旅のなかで、
あらゆるスキルを身につけてきたんじゃぞ。
なかでも、護身術には自信があるのじゃ。
いたずら猫とか、狂暴な鳥とか、天敵はわんさかおったからのう」
「じゃあ、証拠みせてヨ。
そんな小さい体じゃ、どうせなんにもできないでしょうけども!」
「あ、あのさ」ユカが口をはさんできた。
「取りこみ中のとこ悪いんだけど、なんか危なそうな恐竜がこっちに――」
見ると、草原のむこうからこちらめがけて走ってくる、
二頭の肉食恐竜の姿があった。大型ではないが、
手足のするどいかぎ爪とすばやい脚が、その危険性を物語っている。
赤い体に、緑と白のすじや斑点があって、どこか野蛮そうだ。
「ディノニクスだ!」タクがさけんだ。
「やばい、やばい! フリーナ、なんとかして!」
「ふふん、いまこそアタシのハッピー☆スパークの出番だネ。
見てな、ドラギィの電撃はすごいんだから」
フリーナは軽くストレッチをしてから、
両手をにぎりしめて巨大化しようとした。
だがそのとき、わしはすでにユカの手のひらから飛び出していた。
そして、わしはなんの前ぶれもなく、一瞬の白い光に体がつつみこまれた。
フリーナと子どもたちは、目を見張ったことだろう。
すこしずつ大きさをます、わしの白い光のシルエット。
その光が消えた時、もうひとりの見知らぬ人物が現れた。
二頭のディノニクスに向かっていくその人物は、まさしくわしだった。
けれど、わしであってわしでない者だったのである。
その光が消えた時、もうひとりの見知らぬ人物が現れた。』
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フリーナは全力で気ばっていた。
ジュンのやつが、フリーナだけじゃ心もとないと言いだし、
ブリーチみたいに恐竜サイズになれるかどうかやってみろと、
フリーナを焚きつけたのだ。
「ほらほら、もっと気合を入れろー!」
「アウゥゥゥ~!」
わしとユカとタクが見守るなか、
フリーナは両手をにぎりしめ、うなり声を上げながらりきんでいたが、
まるでトイレでもするかのようなポーズだった。
「あ~ん! もうだめぇぇ~……」
フリーナはしおしおと小さくなっていった。
あんなに力をこめたのに、いつもの白くまサイズからちっとも大きくならなかった。
「やはり、素質がものを言うのかのう」わしは腕をくんでいた。
「おぬしは、ブリーチのほかにも巨獣サイズになったドラギィを
見たことはあるのか?」
「ない~。ムリ~」フリーナはジュンの手のひらでダウンしていた。
「できたら、みんな大さわぎってところカナ。天才の証だから。
でも、ブリーチが天才ドラギィだなんて、ナットクできない~……」
さらわれたブリーチを追ってレンとフレディが飛び立ってから、
もうかれこれ三十分をすぎようとしていた。
いくらなんでも遅すぎるブリーチたちの帰りに、
子どもたちは不安をつのらせていた。――むろん、わしもだ。
「やっぱり、レンたちになんかあったんじゃねえ?」
と、ジュンが言った。
「もしかして、さらわれたブリーチがまだ見つからないとか」
と、ユカが推測した。
「アタシにいわせれば、探しても見つからないからって、
フレディがわんわん泣き出して、空から墜落しちゃったってとこカナ」
フリーナは、エネルギー補給のために、
ユカのチョコマシュマロをまたもりもりと口に入れていた。
「アォン。コレ、ほんとにおいしいネ。ユカちゃん、おかわり!」
「え~! まだ食べるの? フリーナったら食べすぎ。
チョコマシュマロ、もう全部なくなっちゃったよ」
「ええ~?」フリーナがなげいた。
「え~、ではないわい」わしはユカの手のひらから、顔をしかめて言った。
「ブリーチとフレディがエネルギー切れを起こしていたらどうする。
おぬしが全部食べてしまったら、いざという時に補給できないじゃろう」
「レンくんたちの居場所、分からないかな」と、ユカがたずねた。
「それなら大丈夫」自信たっぷりに答えたのは、タクだった。
「今、ふしぎレーダーで調べてみたけど、
ブリーチとフレディの反応はあるよ。ふたりともレンのそばにいるみたい」
わしの作ったふしぎレーダーアプリは、
表世界の地図データしかインプットしていないから、
画面に表示されるのは裏世界に属する生物の生体反応だけ。
それにしても、ブリーチが見つかったのなら早くもどってくればいいものを、
フレディは何をもたもたとしているのか。
「しろさん、ネズミパッドでドローンの映像を見れないの?」
「それが、撮影した映像はラボでしか見られないのじゃ。
ラボと交信して報告をうけたいが、それにはいったん表世界に戻らねば。
わしもずっとそばで見守るつもりじゃったので、よもやこうなるとは」
「らしくないなあ」タクがにんまりとした。
「もしかして、ネズミパッドで映像を見られるようにする設定を、
わすれてきちゃったとか?」
ドキッ! 図星をさされて、わしはぶるっと身ぶるいした。
「アタシ、レンたちを探してくるヨ!」
フリーナが、ジュンの手から飛び上がった。
「おいおい! 行くなよ、ボディガード!」
「あ」フリーナはピタリと止まった。
わしはフリーナに、
うっかりと物わすれ以外に得意なことはないのかとたずねた。
「ワゥワゥ! その言いかたー!」
フリーナは空中でプンスカと腹を立てて、わしの目の前に飛んできた。
「なんだかよくわかんない研究しかできないしろさんに、
あれこれ言われたくないヨ」
「なんじゃと! 食料を全部食べておいて、なーにをえらそうに!
わしだって、長いさすらいの旅のなかで、
あらゆるスキルを身につけてきたんじゃぞ。
なかでも、護身術には自信があるのじゃ。
いたずら猫とか、狂暴な鳥とか、天敵はわんさかおったからのう」
「じゃあ、証拠みせてヨ。
そんな小さい体じゃ、どうせなんにもできないでしょうけども!」
「あ、あのさ」ユカが口をはさんできた。
「取りこみ中のとこ悪いんだけど、なんか危なそうな恐竜がこっちに――」
見ると、草原のむこうからこちらめがけて走ってくる、
二頭の肉食恐竜の姿があった。大型ではないが、
手足のするどいかぎ爪とすばやい脚が、その危険性を物語っている。
赤い体に、緑と白のすじや斑点があって、どこか野蛮そうだ。
「ディノニクスだ!」タクがさけんだ。
「やばい、やばい! フリーナ、なんとかして!」
「ふふん、いまこそアタシのハッピー☆スパークの出番だネ。
見てな、ドラギィの電撃はすごいんだから」
フリーナは軽くストレッチをしてから、
両手をにぎりしめて巨大化しようとした。
だがそのとき、わしはすでにユカの手のひらから飛び出していた。
そして、わしはなんの前ぶれもなく、一瞬の白い光に体がつつみこまれた。
フリーナと子どもたちは、目を見張ったことだろう。
すこしずつ大きさをます、わしの白い光のシルエット。
その光が消えた時、もうひとりの見知らぬ人物が現れた。
二頭のディノニクスに向かっていくその人物は、まさしくわしだった。
けれど、わしであってわしでない者だったのである。
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