DRAGGY!ードラギィ!ー【フラップ編(リライト)2/18連載開始!】

Sirocos(シロコス)

文字の大きさ
100 / 116
〈フレデリック/しろさん編〉

第七話 2

しおりを挟む
         『フリーナが両手りょうてを上にむかってひらいた。
    電力でんりょくたま天高てんたかくうちだされ、空に白い亀裂きれつのようなひかりはしった。』

**************************************

勇者ゆうしゃ!?」

 わしの後ろ姿すがたを見たジュンが、思うまま口にだした。

 白い長そでスーツに、グレー色の厚手あつでのベスト。
ピタッとした黒い長ズボンに、カーキ色の革製かわせいブーツ。
あらい立てのシーツのように真っ白なマントが風にひるがえる。

 そして右手には、あの銀色ぎんいろの『亜空あくうでんでんまる』をにぎっていた。
のないしんが、マジックステッキのようにのびた瞬間しゅんかん
しんが青白い電気でんきの光をまとって、本当の魔法まほう武具ぶぐのようなすごみをはっした。


 わしの姿すがたは、そう――人間の男性だんせいへとへんぼうしていたのだ!


 わしは電気でんきをまとったでんでん丸を真一文字まいちもんじにふりはらい、
むかってきたディノニクスたちをけんせいした。

 ゲァ―――! ゲァーガァ―――!

 ディノニクスたちがえる。
いきなりの変身へんしん面食めんくらったのか、それともでんでん丸の電気がいやなのか、
二頭の恐竜はピタッと停止ていしして、わしの目の前で二の足をふんでいた。

 ユカがおどろきさけんだ。「だ、だれですか!?」

「――だれとは心外しんがいじゃなあ。わしに決まっておるじゃろう」

 およそ二十代前半にじゅうだいぜんはん成年せいねんへと姿すがたえたわしは、
頭の白い髪の毛の、あのくるっとしたホイップヘアーの名残なごりがすこし残っていた。
だがそれだけでは、白ネズミのフレデリック博士と同一人物どういつじんぶつだと、
すぐには納得なっとくできないだろう――仕方しかたのないことだけれども。

「まさかと思うけど、しろさん!?」

 カンのいいタクがそうたずねてきたが、
わしはその問いに答えないまま、ディノニクスたちと格闘かくとうをはじめた。

 右からかみつき。さっと横っ飛び。今度は左から。後ろへとびのく。
でんでん丸をすばやく三回ふりはらう。ディノニクスたちが後ろへ引き下がる。
わしはそれまで見せたことのないようなさえた動作どうさで、しばしたたかった。
こんなトカゲたちなど、いままでの旅で出会った野獣やじゅうにくらべれば、
どうってことはない。わしのネズミりゅうサバイバル剣技けんじゅつをおみまいしてやろう。

 わしは、ディノニクスたちの一瞬いっしゅんをついて背後はいごへまわり、
どこだどこだとやつらがあたりを見回しているすきに、
わしはやつらの合間あいまからそのくびすじめがけてでんでん丸を食らわせた。

 ゲァ―――――ッ!!

 でんでん丸の特殊とくしゅ電流でんりゅうが、ディノニクスたちの体じゅうをかけめぐる。
ただし、この電流は生き物のいのちまでうばうものじゃない。
ディノニクスたちは、強力きょうりょく用心棒ようじんぼうの強さにまいったのか、
しっぽをくようにまわれ右をして、一目散いちもくさんにひきかえしていった。

「強くない!?」ジュンがさけんだ。

 ともかくなんのがれたので、
わしは子どもたちにちゃんと説明せつめいしようと、でんでん丸の芯をしまってこう言った。

「おどろいたじゃろう。
これぞ、さすらいネズミのフレデリック博士がもつ、もう一つの姿すがたなのじゃ」

「本当にしろさんなんだね」ユカがほっと胸をなでおろした。
「ブリーチみたいに、ぜんぜんちがうだれかになっちゃったかと思ったよ。
声もすっかり変わってひくくなってるし。かっこいいね」

 ジュンが、お前ずっとそんなかっこうになれるの隠してたのか?
と聞いてきたので、わしはちょっともうしわけない気分きぶんを表に出しながら、
こう答えた。

「いやあ、あの小さい白ネズミが、ある日急に人間の大人に変わったら、
おぬしたちもたまげてしまうじゃろう? ずっとタイミングをさぐっておったんじゃ。
いざというとき、この姿に変身へんしんしておぬしたちを守ってやれたらなあと――」

「すごいや!」

 タクがひとみをらんらんとさせて、わしの目の前に急接近きゅうせっきんしてきた。
体のあちこちをなめまわすように観察かんさつして、興奮こうふんしている。

「どんなアイテム使つかったの? くすりとかんだりした?
はぁ~、こんなにかっこよく変身できるなら、ぼくもやってみたいよ。
ぼくってほら、おなかがふっくらしてるからさ」

「あ、いやあこれは――」わしは苦笑にがわらいした。
「その、なんというか――べつにメカを使ったわけではないのじゃ。
それに、薬も飲んでおらん。そんなひまはなかったじゃろう?」

「えーっ!?」ユカがたまげて声をあげた。
「じゃあなんなの? もしかしてしろさんって、魔法使い?」

「ていうかさー」ジュンが口をはさんでくる。
「そのかっこうはなんなの? どっかの有名RPGゆうめいアールピージーっぽいよなー。
頭に銀のかぶとまでつけちゃってさ」

 わしは答えた。こんなふうに姿を変えたいとねんじれば、
人間の大人に変身すると同時どうじに、どんなかっこうにもなれると。
今ちょうど、レンが昔のRPGのリメイクばんをやっていて、
それをすぐそばで拝見はいけんしていた結果けっか、つい影響えいきょうされてしまったのかもしれない。

「やっぱり魔法使いなんだ!」ユカがはしゃいだ。
「勇者さんで魔法使い。いいなあ、かっこいい。あこがれちゃう。
ねえ、ふたりで写真しゃしんとらせてよ」

 このセリフをレンが聞いたら、なんて思うことやら。

「あ、ユカちゃんずるい」タクが口をとがらせる。
服装ふくそう自由じゆうに変えるのってさ、ネズミになっているあいだでもできるの?」

「いや、ネズミにもどっているあいだは、なぜかできなくてな。
人間モード限定げんていのようじゃ。いろいろとルールがややこしくてのう」

「なあなあ」ジュンがかわいげにひとみをキラキラさせている。
「なんでそんなことができるのか教えて? マジですごいから」

 わしもすぐに答えてやりたかったが、今はそんな場合ばあいではなかった。
わしら四人の頭上で、フリーナがくやしそうな顔で憤怒ふんどしていたのだから。


「し――ろ――ちゃ――ん―――っ!!」


 とうとうフリーナがしびれを切らした。
目元にちょっとなみだがたまっているように見えるのは、気づかないことにしよう。

「ガルルル! そんな人間みたいなかっこうをかくしてたなんて。
フレディがアタシに勉強べんきょうおしえられないとき、
しろちゃんのおにみたいな先生ぶりに毎度まいどガマンできてたのは、
しろちゃんがちっちゃなネズミだってしんじてたからなのに~!」

「いやいや、本当のわしはネズミの方じゃぞ。これはかりそめの姿なんじゃから」

 フリーナは、うまく電力でんりょくをコントロールできないドラギィだが、
頭をよくして知識ちしきをふやすことでそれを改善かいぜんできることが分かっていた。
その勉強を教えるやくは、最初さいしょはわしがつとめていたが、
フレディが来てからは、だいたい彼にまかせているのだ。
まあ、フレディにも修行しゅぎょうがあるので、
それにあたっている日はわしがかわりに勉強を教えているわけだが。
そのわしの教え方に、フリーナはたいそう不満ふまんをいだいていたようだ。

 フリーナはわしの目の前にりてきて、次から次へとまくしたてた。

「アタシなんて、フラップやフレディにも隠し事したことないのに、
しろちゃんはあんなんやこんなんやのわざとらしい秘密ひみつだらけでサ!
こないだだって、天竺チーズはどうやって作るのって聞いたら、
それを教えるわけにはいかんなあ、なんてえらそうに言ってごまかしてサ!

好きなヒトとか、何才なんさいとか聞いても、なーんにも教えてくれないもんネ。
研究とか、研究とか、研究とかでいそがしいからって言って!
あげくのはてには、なに? 人間のすがた隠してました?
ジョーダンもたいがいにしてヨ! ウソでしょ、あんまりだヨ!

アタシだって変身できるなら、でっかくてきれいな胴長どうながの竜になりたいヨ。
世界中をハッピーにできるスパークの名人めいじんになりたいヨ。
アタシのこのくやしい気持ちをどうしろっていうワケ?
いつもえらそうにしてたネズミが、じつはおっかない人間なんだって分かって、
そんなアンタにこれからも勉強を教わるアタシの気分をどうしろっていうワケ?

これからアタシが勉強中べんきょうちゅうにヘマしたとき、
さっきの光るぼうでアタシをたたこうっていうなら、ちゃんとおぼえておいてよネ!
アタシだって、ドラギィだってものすごく強いから! おこるとコワいんだから!
見てな、これがアタシの全力ぜんりょくだヨ!」

 フリーナは突然、小型ミサイルのように空へと飛び上がった。
それから、ひゃくメートルほどの高度こうど確保かくほしてから、
むくむくと白くまサイズの体へと変化して、
にぎりしめた両手に虹色にじいろ大量たいりょうの電気をあつめた。

 フリーナが両手を上にむかって開いた。
電力のたまが天高くうちだされ、空に白い亀裂きれつのようなひかりはしった。
雲行くもゆきがすこしずつあやしくなり、ピンク色のあまい空が灰色はいいろにそまっていく。

 ゴロゴロゴロ……!

 遠雷えんらいがとどろきはじめ、ひやりとした風が緊張感きんちょうかんれてきた。
これは、フリーナの怒りのあらわれにちがいない。
わしと子どもたちは、フリーナの行動こうどう意図いとがわからないので、
地上から彼女の様子ようすをじっと見守ることしかできなかった。

 草原そうげんを歩いていたあらゆる恐竜たちが、
この急激きゅうげき天候てんこう変化へんかかおをあげて、
フリーナのいる方向ほうこうをじっと見上げていた。
 
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート

谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。 “スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。 そして14歳で、まさかの《定年》。 6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。 だけど、定年まで残された時間はわずか8年……! ――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。 だが、そんな幸弘の前に現れたのは、 「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。 これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。 描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。

異世界転移が決まってる僕、あと十年で生き抜く力を全部そろえる

谷川 雅
児童書・童話
【第3回きずな児童書大賞 読者賞受賞作品】 「君は25歳の誕生日に異世界へ飛ばされる――準備、しておけよ」 そんなリアルすぎる夢を見たのは、中学3年・15歳の誕生日。 しかも、転移先は「魔法もあるけど生活水準は中世並み」、しかも「チート能力一切なし」!? 死ぬ気で学べ。鍛えろ。生き抜け。 目指すのは、剣道×農業×経営×工学を修めた“自己完結型万能人間”! 剣道部に転部、進学先は国立農業高校。大学では、園芸、畜産・農業経営・バイオエネルギーまで学び、最終的には油が採れるジャガイモを発見して学内ベンチャーの社長に―― そう、全部は「異世界で生きるため」! そしてついに25歳の誕生日。目を覚ますと、そこは剣と魔法の異世界。 武器は竹刀、知識はリアル、金は……時計を売った。 ここから始まるのは、“計画された異世界成り上がり”! 「魔法がなくても、俺には農業と剣がある――」 未来を知る少年が、10年かけて“最強の一般人”になり、異世界を生き抜く! ※「準備型転移」×「ノンチートリアル系」×「農業×剣術×起業」異色の成長譚!

星降る夜に落ちた子

千東風子
児童書・童話
 あたしは、いらなかった?  ねえ、お父さん、お母さん。  ずっと心で泣いている女の子がいました。  名前は世羅。  いつもいつも弟ばかり。  何か買うのも出かけるのも、弟の言うことを聞いて。  ハイキングなんて、来たくなかった!  世羅が怒りながら歩いていると、急に体が浮きました。足を滑らせたのです。その先は、とても急な坂。  世羅は滑るように落ち、気を失いました。  そして、目が覚めたらそこは。  住んでいた所とはまるで違う、見知らぬ世界だったのです。  気が強いけれど寂しがり屋の女の子と、ワケ有りでいつも諦めることに慣れてしまった綺麗な男の子。  二人がお互いの心に寄り添い、成長するお話です。  全年齢ですが、けがをしたり、命を狙われたりする描写と「死」の表現があります。  苦手な方は回れ右をお願いいたします。  よろしくお願いいたします。  私が子どもの頃から温めてきたお話のひとつで、小説家になろうの冬の童話際2022に参加した作品です。  石河 翠さまが開催されている個人アワード『石河翠プレゼンツ勝手に冬童話大賞2022』で大賞をいただきまして、イラストはその副賞に相内 充希さまよりいただいたファンアートです。ありがとうございます(^-^)!  こちらは他サイトにも掲載しています。

豆腐メンタルな私を、おバカな私が励ますよ(*´ー`*)

やまくる実
絵本
私の頭の中のネガティブな部分をポジティブな私が励ます、エッセイ? 小話? ただの落書き帳です(*´ー`*) 過去作品です。 内容的には本当に短い文章で、詩というかリズムで読む読み物。 見方によっては大人の絵本という感じです。 私と同じで創作する事が好きな方や生きる事に不器用な方の止まり木みたいな場所になれたらな......なんて思い、こちらにも掲載してみました。 カクヨムにも掲載しています。 表紙画像は chat gptに作成してもらいました(*'▽'*)

きたいの悪女は処刑されました

トネリコ
児童書・童話
 悪女は処刑されました。  国は益々栄えました。  おめでとう。おめでとう。  おしまい。

魔法使いアルル

かのん
児童書・童話
 今年で10歳になるアルルは、月夜の晩、自分の誕生日に納屋の中でこっそりとパンを食べながら歌を歌っていた。  これまで自分以外に誰にも祝われる事のなかった日。  だが、偉大な大魔法使いに出会うことでアルルの世界は色を変えていく。  孤独な少女アルルが、魔法使いになって奮闘する物語。  ありがたいことに書籍化が進行中です!ありがとうございます。

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
児童書・童話
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

生まれたばかりですが、早速赤ちゃんセラピー?始めます!

mabu
児童書・童話
超ラッキーな環境での転生と思っていたのにママさんの体調が危ないんじゃぁないの? ママさんが大好きそうなパパさんを闇落ちさせない様に赤ちゃんセラピーで頑張ります。 力を使って魔力を増やして大きくなったらチートになる! ちょっと赤ちゃん系に挑戦してみたくてチャレンジしてみました。 読みにくいかもしれませんが宜しくお願いします。 誤字や意味がわからない時は皆様の感性で受け捉えてもらえると助かります。 流れでどうなるかは未定なので一応R15にしております。 現在投稿中の作品と共に地道にマイペースで進めていきますので宜しくお願いします🙇 此方でも感想やご指摘等への返答は致しませんので宜しくお願いします。

処理中です...