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〈フレデリック/しろさん編〉
第七話 2
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『フリーナが両手を上にむかって開いた。
電力の弾が天高くうちだされ、空に白い亀裂のような光が走った。』
**************************************
「勇者!?」
わしの後ろ姿を見たジュンが、思うまま口にだした。
白い長そでスーツに、グレー色の厚手のベスト。
ピタッとした黒い長ズボンに、カーキ色の革製ブーツ。
洗い立てのシーツのように真っ白なマントが風にひるがえる。
そして右手には、あの銀色の『亜空でんでん丸』をにぎっていた。
刃のない芯が、マジックステッキのようにのびた瞬間、
芯が青白い電気の光をまとって、本当の魔法の武具のようなすごみを発した。
わしの姿は、そう――人間の男性へと変ぼうしていたのだ!
わしは電気をまとったでんでん丸を真一文字にふりはらい、
むかってきたディノニクスたちをけん制した。
ゲァ―――! ゲァーガァ―――!
ディノニクスたちが吠える。
いきなりの変身に面食らったのか、それともでんでん丸の電気がいやなのか、
二頭の恐竜はピタッと停止して、わしの目の前で二の足をふんでいた。
ユカがおどろきさけんだ。「だ、だれですか!?」
「――だれとは心外じゃなあ。わしに決まっておるじゃろう」
およそ二十代前半の成年へと姿を変えたわしは、
頭の白い髪の毛の、あのくるっとしたホイップヘアーの名残がすこし残っていた。
だがそれだけでは、白ネズミのフレデリック博士と同一人物だと、
すぐには納得できないだろう――仕方のないことだけれども。
「まさかと思うけど、しろさん!?」
カンのいいタクがそうたずねてきたが、
わしはその問いに答えないまま、ディノニクスたちと格闘をはじめた。
右からかみつき。さっと横っ飛び。今度は左から。後ろへとびのく。
でんでん丸をすばやく三回ふりはらう。ディノニクスたちが後ろへ引き下がる。
わしはそれまで見せたことのないようなさえた動作で、しばし戦った。
こんなトカゲたちなど、いままでの旅で出会った野獣にくらべれば、
どうってことはない。わしのネズミ流サバイバル剣技をおみまいしてやろう。
わしは、ディノニクスたちの一瞬をついて背後へまわり、
どこだどこだとやつらがあたりを見回しているすきに、
わしはやつらの合間からその首すじめがけてでんでん丸を食らわせた。
ゲァ―――――ッ!!
でんでん丸の特殊な電流が、ディノニクスたちの体じゅうをかけめぐる。
ただし、この電流は生き物の命までうばうものじゃない。
ディノニクスたちは、強力な用心棒の強さにまいったのか、
しっぽを巻くように回れ右をして、一目散にひきかえしていった。
「強くない!?」ジュンがさけんだ。
ともかく難は逃れたので、
わしは子どもたちにちゃんと説明しようと、でんでん丸の芯をしまってこう言った。
「おどろいたじゃろう。
これぞ、さすらいネズミのフレデリック博士がもつ、もう一つの姿なのじゃ」
「本当にしろさんなんだね」ユカがほっと胸をなでおろした。
「ブリーチみたいに、ぜんぜんちがうだれかになっちゃったかと思ったよ。
声もすっかり変わって低くなってるし。かっこいいね」
ジュンが、お前ずっとそんなかっこうになれるの隠してたのか?
と聞いてきたので、わしはちょっと申しわけない気分を表に出しながら、
こう答えた。
「いやあ、あの小さい白ネズミが、ある日急に人間の大人に変わったら、
おぬしたちもたまげてしまうじゃろう? ずっとタイミングを探っておったんじゃ。
いざというとき、この姿に変身しておぬしたちを守ってやれたらなあと――」
「すごいや!」
タクが瞳をらんらんとさせて、わしの目の前に急接近してきた。
体のあちこちをなめまわすように観察して、興奮している。
「どんなアイテム使ったの? 薬とか飲んだりした?
はぁ~、こんなにかっこよく変身できるなら、ぼくもやってみたいよ。
ぼくってほら、おなかがふっくらしてるからさ」
「あ、いやあこれは――」わしは苦笑いした。
「その、なんというか――べつにメカを使ったわけではないのじゃ。
それに、薬も飲んでおらん。そんなひまはなかったじゃろう?」
「えーっ!?」ユカがたまげて声をあげた。
「じゃあなんなの? もしかしてしろさんって、魔法使い?」
「ていうかさー」ジュンが口をはさんでくる。
「そのかっこうはなんなの? どっかの有名RPGっぽいよなー。
頭に銀のかぶとまでつけちゃってさ」
わしは答えた。こんなふうに姿を変えたいと念じれば、
人間の大人に変身すると同時に、どんなかっこうにもなれると。
今ちょうど、レンが昔のRPGのリメイク版をやっていて、
それをすぐそばで拝見していた結果、つい影響されてしまったのかもしれない。
「やっぱり魔法使いなんだ!」ユカがはしゃいだ。
「勇者さんで魔法使い。いいなあ、かっこいい。あこがれちゃう。
ねえ、ふたりで写真とらせてよ」
このセリフをレンが聞いたら、なんて思うことやら。
「あ、ユカちゃんずるい」タクが口をとがらせる。
「服装を自由に変えるのってさ、ネズミになっているあいだでもできるの?」
「いや、ネズミにもどっているあいだは、なぜかできなくてな。
人間モード限定のようじゃ。いろいろとルールがややこしくてのう」
「なあなあ」ジュンがかわいげに瞳をキラキラさせている。
「なんでそんなことができるのか教えて? マジですごいから」
わしもすぐに答えてやりたかったが、今はそんな場合ではなかった。
わしら四人の頭上で、フリーナがくやしそうな顔で憤怒していたのだから。
「し――ろ――ちゃ――ん―――っ!!」
とうとうフリーナがしびれを切らした。
目元にちょっと涙がたまっているように見えるのは、気づかないことにしよう。
「ガルルル! そんな人間みたいなかっこうを隠してたなんて。
フレディがアタシに勉強を教えられないとき、
しろちゃんの鬼みたいな先生ぶりに毎度ガマンできてたのは、
しろちゃんがちっちゃなネズミだって信じてたからなのに~!」
「いやいや、本当のわしはネズミの方じゃぞ。これはかりそめの姿なんじゃから」
フリーナは、うまく電力をコントロールできないドラギィだが、
頭をよくして知識をふやすことでそれを改善できることが分かっていた。
その勉強を教える役は、最初はわしがつとめていたが、
フレディが来てからは、だいたい彼にまかせているのだ。
まあ、フレディにも修行があるので、
それにあたっている日はわしがかわりに勉強を教えているわけだが。
そのわしの教え方に、フリーナはたいそう不満をいだいていたようだ。
フリーナはわしの目の前に降りてきて、次から次へとまくしたてた。
「アタシなんて、フラップやフレディにも隠し事したことないのに、
しろちゃんはあんなんやこんなんやのわざとらしい秘密だらけでサ!
こないだだって、天竺チーズはどうやって作るのって聞いたら、
それを教えるわけにはいかんなあ、なんてえらそうに言ってごまかしてサ!
好きなヒトとか、何才とか聞いても、なーんにも教えてくれないもんネ。
研究とか、研究とか、研究とかでいそがしいからって言って!
あげくのはてには、なに? 人間のすがた隠してました?
ジョーダンもたいがいにしてヨ! ウソでしょ、あんまりだヨ!
アタシだって変身できるなら、でっかくてきれいな胴長の竜になりたいヨ。
世界中をハッピーにできるスパークの名人になりたいヨ。
アタシのこのくやしい気持ちをどうしろっていうワケ?
いつもえらそうにしてたネズミが、じつはおっかない人間なんだって分かって、
そんなアンタにこれからも勉強を教わるアタシの気分をどうしろっていうワケ?
これからアタシが勉強中にヘマしたとき、
さっきの光る棒でアタシをたたこうっていうなら、ちゃんと覚えておいてよネ!
アタシだって、ドラギィだってものすごく強いから! 怒るとコワいんだから!
見てな、これがアタシの全力だヨ!」
フリーナは突然、小型ミサイルのように空へと飛び上がった。
それから、百メートルほどの高度を確保してから、
むくむくと白くまサイズの体へと変化して、
にぎりしめた両手に虹色の大量の電気をあつめた。
フリーナが両手を上にむかって開いた。
電力の弾が天高くうちだされ、空に白い亀裂のような光が走った。
雲行きがすこしずつ怪しくなり、ピンク色の甘い空が灰色にそまっていく。
ゴロゴロゴロ……!
遠雷がとどろきはじめ、ひやりとした風が緊張感を連れてきた。
これは、フリーナの怒りのあらわれにちがいない。
わしと子どもたちは、フリーナの行動の意図がわからないので、
地上から彼女の様子をじっと見守ることしかできなかった。
草原を歩いていたあらゆる恐竜たちが、
この急激な天候の変化に顔をあげて、
フリーナのいる方向をじっと見上げていた。
電力の弾が天高くうちだされ、空に白い亀裂のような光が走った。』
**************************************
「勇者!?」
わしの後ろ姿を見たジュンが、思うまま口にだした。
白い長そでスーツに、グレー色の厚手のベスト。
ピタッとした黒い長ズボンに、カーキ色の革製ブーツ。
洗い立てのシーツのように真っ白なマントが風にひるがえる。
そして右手には、あの銀色の『亜空でんでん丸』をにぎっていた。
刃のない芯が、マジックステッキのようにのびた瞬間、
芯が青白い電気の光をまとって、本当の魔法の武具のようなすごみを発した。
わしの姿は、そう――人間の男性へと変ぼうしていたのだ!
わしは電気をまとったでんでん丸を真一文字にふりはらい、
むかってきたディノニクスたちをけん制した。
ゲァ―――! ゲァーガァ―――!
ディノニクスたちが吠える。
いきなりの変身に面食らったのか、それともでんでん丸の電気がいやなのか、
二頭の恐竜はピタッと停止して、わしの目の前で二の足をふんでいた。
ユカがおどろきさけんだ。「だ、だれですか!?」
「――だれとは心外じゃなあ。わしに決まっておるじゃろう」
およそ二十代前半の成年へと姿を変えたわしは、
頭の白い髪の毛の、あのくるっとしたホイップヘアーの名残がすこし残っていた。
だがそれだけでは、白ネズミのフレデリック博士と同一人物だと、
すぐには納得できないだろう――仕方のないことだけれども。
「まさかと思うけど、しろさん!?」
カンのいいタクがそうたずねてきたが、
わしはその問いに答えないまま、ディノニクスたちと格闘をはじめた。
右からかみつき。さっと横っ飛び。今度は左から。後ろへとびのく。
でんでん丸をすばやく三回ふりはらう。ディノニクスたちが後ろへ引き下がる。
わしはそれまで見せたことのないようなさえた動作で、しばし戦った。
こんなトカゲたちなど、いままでの旅で出会った野獣にくらべれば、
どうってことはない。わしのネズミ流サバイバル剣技をおみまいしてやろう。
わしは、ディノニクスたちの一瞬をついて背後へまわり、
どこだどこだとやつらがあたりを見回しているすきに、
わしはやつらの合間からその首すじめがけてでんでん丸を食らわせた。
ゲァ―――――ッ!!
でんでん丸の特殊な電流が、ディノニクスたちの体じゅうをかけめぐる。
ただし、この電流は生き物の命までうばうものじゃない。
ディノニクスたちは、強力な用心棒の強さにまいったのか、
しっぽを巻くように回れ右をして、一目散にひきかえしていった。
「強くない!?」ジュンがさけんだ。
ともかく難は逃れたので、
わしは子どもたちにちゃんと説明しようと、でんでん丸の芯をしまってこう言った。
「おどろいたじゃろう。
これぞ、さすらいネズミのフレデリック博士がもつ、もう一つの姿なのじゃ」
「本当にしろさんなんだね」ユカがほっと胸をなでおろした。
「ブリーチみたいに、ぜんぜんちがうだれかになっちゃったかと思ったよ。
声もすっかり変わって低くなってるし。かっこいいね」
ジュンが、お前ずっとそんなかっこうになれるの隠してたのか?
と聞いてきたので、わしはちょっと申しわけない気分を表に出しながら、
こう答えた。
「いやあ、あの小さい白ネズミが、ある日急に人間の大人に変わったら、
おぬしたちもたまげてしまうじゃろう? ずっとタイミングを探っておったんじゃ。
いざというとき、この姿に変身しておぬしたちを守ってやれたらなあと――」
「すごいや!」
タクが瞳をらんらんとさせて、わしの目の前に急接近してきた。
体のあちこちをなめまわすように観察して、興奮している。
「どんなアイテム使ったの? 薬とか飲んだりした?
はぁ~、こんなにかっこよく変身できるなら、ぼくもやってみたいよ。
ぼくってほら、おなかがふっくらしてるからさ」
「あ、いやあこれは――」わしは苦笑いした。
「その、なんというか――べつにメカを使ったわけではないのじゃ。
それに、薬も飲んでおらん。そんなひまはなかったじゃろう?」
「えーっ!?」ユカがたまげて声をあげた。
「じゃあなんなの? もしかしてしろさんって、魔法使い?」
「ていうかさー」ジュンが口をはさんでくる。
「そのかっこうはなんなの? どっかの有名RPGっぽいよなー。
頭に銀のかぶとまでつけちゃってさ」
わしは答えた。こんなふうに姿を変えたいと念じれば、
人間の大人に変身すると同時に、どんなかっこうにもなれると。
今ちょうど、レンが昔のRPGのリメイク版をやっていて、
それをすぐそばで拝見していた結果、つい影響されてしまったのかもしれない。
「やっぱり魔法使いなんだ!」ユカがはしゃいだ。
「勇者さんで魔法使い。いいなあ、かっこいい。あこがれちゃう。
ねえ、ふたりで写真とらせてよ」
このセリフをレンが聞いたら、なんて思うことやら。
「あ、ユカちゃんずるい」タクが口をとがらせる。
「服装を自由に変えるのってさ、ネズミになっているあいだでもできるの?」
「いや、ネズミにもどっているあいだは、なぜかできなくてな。
人間モード限定のようじゃ。いろいろとルールがややこしくてのう」
「なあなあ」ジュンがかわいげに瞳をキラキラさせている。
「なんでそんなことができるのか教えて? マジですごいから」
わしもすぐに答えてやりたかったが、今はそんな場合ではなかった。
わしら四人の頭上で、フリーナがくやしそうな顔で憤怒していたのだから。
「し――ろ――ちゃ――ん―――っ!!」
とうとうフリーナがしびれを切らした。
目元にちょっと涙がたまっているように見えるのは、気づかないことにしよう。
「ガルルル! そんな人間みたいなかっこうを隠してたなんて。
フレディがアタシに勉強を教えられないとき、
しろちゃんの鬼みたいな先生ぶりに毎度ガマンできてたのは、
しろちゃんがちっちゃなネズミだって信じてたからなのに~!」
「いやいや、本当のわしはネズミの方じゃぞ。これはかりそめの姿なんじゃから」
フリーナは、うまく電力をコントロールできないドラギィだが、
頭をよくして知識をふやすことでそれを改善できることが分かっていた。
その勉強を教える役は、最初はわしがつとめていたが、
フレディが来てからは、だいたい彼にまかせているのだ。
まあ、フレディにも修行があるので、
それにあたっている日はわしがかわりに勉強を教えているわけだが。
そのわしの教え方に、フリーナはたいそう不満をいだいていたようだ。
フリーナはわしの目の前に降りてきて、次から次へとまくしたてた。
「アタシなんて、フラップやフレディにも隠し事したことないのに、
しろちゃんはあんなんやこんなんやのわざとらしい秘密だらけでサ!
こないだだって、天竺チーズはどうやって作るのって聞いたら、
それを教えるわけにはいかんなあ、なんてえらそうに言ってごまかしてサ!
好きなヒトとか、何才とか聞いても、なーんにも教えてくれないもんネ。
研究とか、研究とか、研究とかでいそがしいからって言って!
あげくのはてには、なに? 人間のすがた隠してました?
ジョーダンもたいがいにしてヨ! ウソでしょ、あんまりだヨ!
アタシだって変身できるなら、でっかくてきれいな胴長の竜になりたいヨ。
世界中をハッピーにできるスパークの名人になりたいヨ。
アタシのこのくやしい気持ちをどうしろっていうワケ?
いつもえらそうにしてたネズミが、じつはおっかない人間なんだって分かって、
そんなアンタにこれからも勉強を教わるアタシの気分をどうしろっていうワケ?
これからアタシが勉強中にヘマしたとき、
さっきの光る棒でアタシをたたこうっていうなら、ちゃんと覚えておいてよネ!
アタシだって、ドラギィだってものすごく強いから! 怒るとコワいんだから!
見てな、これがアタシの全力だヨ!」
フリーナは突然、小型ミサイルのように空へと飛び上がった。
それから、百メートルほどの高度を確保してから、
むくむくと白くまサイズの体へと変化して、
にぎりしめた両手に虹色の大量の電気をあつめた。
フリーナが両手を上にむかって開いた。
電力の弾が天高くうちだされ、空に白い亀裂のような光が走った。
雲行きがすこしずつ怪しくなり、ピンク色の甘い空が灰色にそまっていく。
ゴロゴロゴロ……!
遠雷がとどろきはじめ、ひやりとした風が緊張感を連れてきた。
これは、フリーナの怒りのあらわれにちがいない。
わしと子どもたちは、フリーナの行動の意図がわからないので、
地上から彼女の様子をじっと見守ることしかできなかった。
草原を歩いていたあらゆる恐竜たちが、
この急激な天候の変化に顔をあげて、
フリーナのいる方向をじっと見上げていた。
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