DRAGGY!ードラギィ!ー【フラップ編(リライト)2/18連載開始!】

Sirocos(シロコス)

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〈フレデリック/しろさん編〉

第七話 3

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        『わしには、こいつの気持ちがいたいほど分かる。
    この手の情緒じょうちょにはくわしい。長生きゆえの、としこうというやつだ。』

**************************************

 ――時間はほんのすこしだけさかのぼる。

 空から墜落ついらくしたレンとブリーチとフレディは、
うんよく大きないけのなかへ水没すいぼつしていた。
フレディは水をあやつるブルーしゅなので、
水にちてもすぐにレンとブリーチをきしへはこぶことができた。
でも、レッド種のフラップの変身へんしんした姿すがたであるブリーチは水に弱いので、
岸に上げられても水にぬれたせいでグッタリしていた。

「――くぅ~ん。なんてことしてくれるんだよ、このむしめぇ……」

 ブリーチはレンの両手りょうてのうえで不平ふへいをもらした。

「わぅ~。本当に、ぐすん、ごめんなさい。
ぼくとしたことが、ぐすっ、かっこわるいミスを――」

 はずかしさのあまりあふれだす涙を両手で隠すフレディの姿を、
ぜんまいドローンネズミのカメラが物言ものいわずにとらえていた。
フレディはいったん仔犬こいぬサイズの体に戻って、くさの上にぺったりすわっていた。

「あのさ」レンがたずねる。
「どうしてキミは、飛んでいる最中さいちゅうに泣くと落っこちちゃうんだっけ?」

「ブルー種の、特性とくせいなんだとさ」

 こたえたのはブリーチだった。
かれは、力もまだ戻らないままちゅうにうかびあがりながらこう言った。

「まあ、オレさまもよく分かんないんだけど、
ブルー種の飛行機能ひこうきのうはちょっと繊細センサイでさ、なみだ影響えいきょうされやすいんだと……。
いい笑顔してるときだとよく飛ぶし、泣いてると逆に飛べないんだぜ……。
おかしな話だろ? 同じドラギィなのに、気持ちのせいで苦労してやんの……。
こいつも、フラップのやつも」

 ブリーチは、ちょっとはなれたところまでぶと、
力をふりしぼって白い毛を赤色にそめた。れいえるような赤色にだ。
それから、自分の体にほのおきかけて、ぬれた体をかわかしはじめた。
器用きようなものだ。フラップにはとてもマネできない芸当げいとうだろう。

「ぼくにも、よく分からないところが、ぐすっ、あるよ」

 フレディがめそめそしながら聞きかえしてきた。

「キミは、興奮こうふんしたり、そうやってほのおをはくとき、ぐすっ、体が赤くなる。
それも、フラップとはべつの、赤色にだ。その、ぐすん、赤色は――」

「その赤色は、なに?」レンが興味きょうみしめしているようだ。

「その赤色は――レッド種本来しゅほんらいの赤だ。
炎のねつかんじさせる、ぐすっ、オレンジのような赤。
フラップの毛の色は、すこし、その――ピンクがかった優しい赤色だったのに。
どういうわけなのか、キミには、ぐすっ、説明せつめいできるかい?」



 火をふくブリーチの口が、止まった。答え方に迷いがあるのだと、わしは見た。

「そんなの――そんなの、オレが知るわけないだろ。想像そうぞうにまかせるぜ」

 ブリーチはまた火をふきはじめた。
どうやら、フラップだったころから隠している秘密ひみつがあるらしい。
レンたちは、深ぼりする気がなかったようだ。それ以降いこうは口をざしていた。

 熱でだいぶ体が乾いてきたのか、すこし元気げんきりもどしたブリーチは、
まだ嬉しいやらはずかしいやらで涙を流しているブリーチに、
こんなことを聞き返してきた。

「ところでお前たちさ、オレさまをむかえに来るつもりだったんだろ?
にしてはおそすぎだったんじゃないか? いったいなにやってたんだよ」

「それがさあ」レンがため息まじりに答えた。
「キミをってたにまで来たはよかったけど、
フレディはすこし風邪かぜぎみみたいだったから、
風のにおいでキミの居場所いばしょさぐれなかったし、なにより――
プテラノドンとはべつの種類しゅるい翼竜よくりゅうたちにでくわしちゃったんだ。
体の姿かたちからしてさ――なんていったっけ、
ケツアル――うーん、名前なまえわすれちゃった。
そいつら緑色の体でさ、オレたちとじゃれあうつもりだったのかな。
右からも左からもさんざんまわされちゃって」

 レンが言おうとした名前なまえは、おそらくケツァルコアトルスだろう。
最大級さいだいきゅう飛行生物ひこうせいぶつの一種で、たけはキリンなみ。
そんな彼らは、空中でハンティングをするというよりも、
地上ちじょうでわしのような小動物や死肉しにく捕食ほしょくする、冷静れいせいなハンターだといわれている。
それなのに、レンたちをいじわる目的もくてきで追い回したのは、
この裏世界うらせかいそだったしゅならではのおこないなのかもしれない。

「なんでもいいけどよう」

 ブリーチは、まだ乾ききっていない体でうでをくみ、こう言った。

「オレはべつに、れいなんて言わないからな。
むかえに来てくれってたのんだおぼえなんてないし、
ひとりでもお前たちのところに帰ってこられたんだぜ。
まったく、お節介せっかいにもほどがあるよ」

「くぅぅぅ~ん」

 フレディがきずついた仔犬みたいな声できはじめた。
別人格べつじんかくとはいえ、親友しんゆうからこんな根性こんじょうまがりなことを言われたら、
だれでも傷つくに決まっている。

「あのさ、ブリーチ。さっきから何だよ」

 レンがカチンときたようだ。

「もしかしてさ、いらだってる?
かくしてることがあるんなら、ハッキリ言ってくれる?」

「そうかい。じゃあ、エンリョなく言わせてもらうぜ」

 そういうと、ブリーチはしゅうっと空をすべって、
ブリーチの目の前にやってくると、すぅ~っと深くいきをすいこんだ。


「泣くなーっ!!」


 するどいエコーが起きた――気がした。

 フレディはぴたっとなみだをとめて、ブリーチをキョトン顔で見上げた。

「あのなあ、泣きたいのはオレの方なんだ。
まあ、お前のは半分はんぶんほどウレシ泣きなんだろうけど。
――じつをいうと、さっき、ひょんなことがきっかけで、
こころの中でねむっていたフラップが、起きちまったんだよ」

 レンとフレディの顔色かおいろわった。

「そ、それホント!?」

「あいつ、いますぐにこの体を取りかえしたい気分きぶんでいっぱいだ。
それなのに、もうしばらくオレにこの体をしてやるって言ってた。
オレ、フラップと心の中ではなしをしたんだよ。
ウゥ~、なめてたぜ。あいつは、いいドラギィだ。
体を取りもどすことより、オレが自分の気持ちに整理せいりをつけられるように、
時間じかんをあたえる方を優先ゆうせんしたんだからな。アウゥ、さすがはオレの――」

 本体、というべきだろうな。フラップはモテるタイプだろう。

「いや、でも! あいつはいつか絶対ぜったいに出てくる。
そしたらオレは――跡形あとかたもなくえちまう。
しかも、いつ消えることになるかも分からない。
オレはそれが――それがこわくてしょうがないんだよ」

 ブリーチの目に、ひとしずくの涙がたまっていたのを、
ドローンネズミのカメラは見逃さなかった。

「こういうのも、ってやつなのかな。
オレ、死んじまったらどこにいくんだろ。ドラギィの心って、消えたらどうなる?
悩んだって答えは出ないって分かってるけどさ!
でも、生まれてまだひと月もたってないから――くぅ~ん――
よけい考えちまうんだよなぁ」

 ブリーチは、右へ左へ行ったり来たりしながら、かなしみにれていた。
まるで、どこにも自分のがなく動揺どうようしているみたいに。

 わしには、こいつの気持きもちがいたいほど分かる。
この手の情緒じょうちょにはくわしい。長生ながいきゆえの、としこうというやつだ。
いまのブリーチの様子ようすを、べつの場所ばしょにいるわしがもし見ていたら、
きっと困窮こんきゅうしていたことだろう。だってこのとき、わしはまさに、
ブリーチから無理むりやりフラップを取りかえすくすりを作ろうとしているのだから。
まずは、こいつのこころをケアすることをかんがえるべきだったのだ。
完全かんぜんにうかつだった、といわざるをえない――。

「なあ、フラップ。いや、ブリーチくん」

 フレディが、必死ひっし言葉ことばを探すような顔で口をひらいた。

「ぼくは――ぼくはいま、なやんでる。どうしたらいいかなやんでる。
ぼくはずっと、キミとはいい友達ともだちになれないって思ってた。
だけど、ひとつだけ言わせてほしい。あれだ、その……ぼくがキミの――」


 フレディがそこまで口にしたときだ。


 すぐそばのひくがけのうえから、なにかがびおりてきた。
そのくろかげは、暴走車ぼうそうしゃのようないきおいで地面じめんをかけぬけ、
レンたちのもとへせまってきた――。
 
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