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〈フレデリック/しろさん編〉
第四話 3
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『彼らに自分の秘密を明かす日は、もうそれほど遠くない気がする。』
**************************************
わしは自分の部屋のデスクにあるモニターの前で、
カップからゆうゆうと豆スープをいただきながら、
一連の入手映像にたいして思いをめぐらせていた。
――ルドルフめ、あんなところにアジトをかまえていたとは。
ひさしぶりに再会するときが、近づきつつあるようだ。
しかも、耳よりの情報が手に入った。
とうとう異界穴をひらく技術を、独自につくりあげてしまうとは。
ビオラ博士、あいかわらず隅におけないレディキャットだ。
「まあでも、このわしにはまだまだとうてい、追いついておらんがのう」
来るなら来い。そうしたら、わしのとっておきの新発明で、
おぬしらを迎え撃ってやろう――などと思っていたら、
部屋のドアがすっと開いて、部下のこまつ君がてくてくと入ってきた。
「フレデリック博士、そろそろ懇親会へむかわれるお時間では?」
「おおっと、そうじゃったな! こんなところでのんびりしていられん」
わしはモニターの電源を切り、イスからぴょんと飛びおりると、
今日の懇親会で会う人間たちの顔を思いうかべた。
いつも天竺チーズに必要なあんな素材、こんな素材を提供してくれる、
化学製品メーカーの取引担当者たちだ。
わしはその筋ではけっこう顔が知られている方なので、取引のお相手から
各メーカー同士の親ぼくを深めるための集まりにさそわれることがあるのだ。
――とはいえ、わしのチーズ研究は人間のために行っているものではない。
なので、たとえラボについてあれこれ詮索されても、
ろらりくらりとテキトーなウソを返すだけなのだが。
「いやあ、博士もブリーチ様の件でおいそがしいのに、よく行かれますね。
ぼくもたくさんの人間とおしゃべりしてみたいものです。見聞を広めるためにね」
「人間を相手にする以上、つきあいが肝心じゃからのう。
さあてと、また変身しなければいかんなあ」
「直接会う必要がないときは、
映像改ざんソフトで人間のふりをして、モニターごしで取引しますからね。
それでは、お気をつけていってらっしゃいませ」
*
どうしてネズミのわしが、
なんでも調査隊の子どもたち以外の人間と直接会うことができるのか。
すくなくとも、ドラギィたちには分かりにくいものがあるだろう。
子どもたちなら、ラボが開発したメカか薬をつかって人間に化けるのだろうと、
推理することくらいはできるかもしれない。
だが、はっきり言わせてもらいたいのだが、けしてそうではない。
これはそんなに単純な話なんかじゃないのだ。
この小さな体に秘められた謎は、濃く、深く、そしてとてもフクザツなのである。
わしは夕陽に照らされた大通りの歩道を、駅にむかって歩いていた。
懇親会の会場がある、都会のみらい町へと移動するためだ。
白とグレーのストライプ柄の蝶ネクタイに、白くまぶしいようなパーティースーツ。
奇異の目にさらされないよう、
くるっとした白い髪はいつもどおりに目立たない程度にセット。
片手の革製バッグには、だれにも見せられない秘密アイテムを数種類。
こんなに堅苦しく、男前なかっこうなど、特段の用事がなければまずはしない。
(わしがネズミであることは、まだだれにも秘密じゃ)
人知れずニヤリとわらうわしの脳裏に、レンとドラギィたちの姿がうかんだ。
彼らの自分の秘密を明かす日は、もうそれほど遠くない気がする。
わしらはかなり親しくなった。そろそろ真実を話してもいい頃合いだろう。
今まさに、夕陽の光を背にして歩くわしの後ろ姿は、
人間のそれとまったく変わらない。
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わしは自分の部屋のデスクにあるモニターの前で、
カップからゆうゆうと豆スープをいただきながら、
一連の入手映像にたいして思いをめぐらせていた。
――ルドルフめ、あんなところにアジトをかまえていたとは。
ひさしぶりに再会するときが、近づきつつあるようだ。
しかも、耳よりの情報が手に入った。
とうとう異界穴をひらく技術を、独自につくりあげてしまうとは。
ビオラ博士、あいかわらず隅におけないレディキャットだ。
「まあでも、このわしにはまだまだとうてい、追いついておらんがのう」
来るなら来い。そうしたら、わしのとっておきの新発明で、
おぬしらを迎え撃ってやろう――などと思っていたら、
部屋のドアがすっと開いて、部下のこまつ君がてくてくと入ってきた。
「フレデリック博士、そろそろ懇親会へむかわれるお時間では?」
「おおっと、そうじゃったな! こんなところでのんびりしていられん」
わしはモニターの電源を切り、イスからぴょんと飛びおりると、
今日の懇親会で会う人間たちの顔を思いうかべた。
いつも天竺チーズに必要なあんな素材、こんな素材を提供してくれる、
化学製品メーカーの取引担当者たちだ。
わしはその筋ではけっこう顔が知られている方なので、取引のお相手から
各メーカー同士の親ぼくを深めるための集まりにさそわれることがあるのだ。
――とはいえ、わしのチーズ研究は人間のために行っているものではない。
なので、たとえラボについてあれこれ詮索されても、
ろらりくらりとテキトーなウソを返すだけなのだが。
「いやあ、博士もブリーチ様の件でおいそがしいのに、よく行かれますね。
ぼくもたくさんの人間とおしゃべりしてみたいものです。見聞を広めるためにね」
「人間を相手にする以上、つきあいが肝心じゃからのう。
さあてと、また変身しなければいかんなあ」
「直接会う必要がないときは、
映像改ざんソフトで人間のふりをして、モニターごしで取引しますからね。
それでは、お気をつけていってらっしゃいませ」
*
どうしてネズミのわしが、
なんでも調査隊の子どもたち以外の人間と直接会うことができるのか。
すくなくとも、ドラギィたちには分かりにくいものがあるだろう。
子どもたちなら、ラボが開発したメカか薬をつかって人間に化けるのだろうと、
推理することくらいはできるかもしれない。
だが、はっきり言わせてもらいたいのだが、けしてそうではない。
これはそんなに単純な話なんかじゃないのだ。
この小さな体に秘められた謎は、濃く、深く、そしてとてもフクザツなのである。
わしは夕陽に照らされた大通りの歩道を、駅にむかって歩いていた。
懇親会の会場がある、都会のみらい町へと移動するためだ。
白とグレーのストライプ柄の蝶ネクタイに、白くまぶしいようなパーティースーツ。
奇異の目にさらされないよう、
くるっとした白い髪はいつもどおりに目立たない程度にセット。
片手の革製バッグには、だれにも見せられない秘密アイテムを数種類。
こんなに堅苦しく、男前なかっこうなど、特段の用事がなければまずはしない。
(わしがネズミであることは、まだだれにも秘密じゃ)
人知れずニヤリとわらうわしの脳裏に、レンとドラギィたちの姿がうかんだ。
彼らの自分の秘密を明かす日は、もうそれほど遠くない気がする。
わしらはかなり親しくなった。そろそろ真実を話してもいい頃合いだろう。
今まさに、夕陽の光を背にして歩くわしの後ろ姿は、
人間のそれとまったく変わらない。
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