DRAGGY!ードラギィ!ー【フラップ編(リライト)2/18連載開始!】

Sirocos(シロコス)

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〈フレデリック/しろさん編〉

第八話『時をこえた再会』 1

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       『ついに、とっておきの秘密ひみつかすときが来た。』

**************************************

 ――フリーナは、三匹のドラギィの中でもとくに目立つドラギィだ。
かみなりをあやつる力、さわがしい声、目立ちたがり性格せいかく
おつむをきたえるやくとして、彼女とのつきあいが多いから、余計よけいにそう感じる。

「ビオラ博士はかせが見えるぞ。進行方向しんこうほうこうたきも見える。もうもなくじゃな」

 近づいてくる目的地もくてきちと、
粘土ねんどのやわらかさになったビオラ博士がバッタのように姿すがたを、
わしはフリーナの背中せなかの上から見下ろしていた。

 フリーナは、わしを背中に乗せるのがあまり気が進まなかったようだ。
ワシの手が逆立さかだつ背中の毛にれたことで、それがなんとなく分かった。

「――アタシ、もうしろちゃんなんからないモン」

「そんなことを言ってくれるな。フリーナはいつもよくやっておる。
まあ、週一しゅういちぬきうちテストでもうすこしいいてんってくれれば、
もっとほめてやれるんじゃがなあ」

「――いつもとちがう声で言われると、なんだかビミョーなんですケド」

 やっぱり、わしが人間の姿なのがお気にさないらしい。
ドラギィたちの故郷ふるさとでは、人間はおそろしい生き物だと言われているが、
レンのようにやさしいこころをもつ人間にんげんには、をゆるしている。
わしは人間ではなくネズミなのだが、フリーナはまだ分からないのだろうか。

「よし、あそこじゃ。ジャングルの中、広い平坦へいたんきしが見えるぞ。降下こうかじゃ」

「ガウ~! 分かってるよ、もう」

 フリーナはらせんをえがくようにりていった。
岸辺きしべ様子ようすがよく分かるようになってくると、
岸にそびえるいわの上にくろいなにかがいるのが見えた。
そのそばに、すこしサイズの大きいあの黒猫型くろねこがたのドローンが、
ブリーチとフレディの二匹をひかりおりにとらえているのが、ハッキリと見えてきた。

(やはりあいつだったか。まったく、昔から面倒めんどうばかりこすやつじゃな)

 フリーナが地面じめん着陸ちゃくりく風圧ふうあつ砂煙すなけむりがもわっとい上がる。
わしはかろやかなのこなしで背中からびおりると、
高い岩の上に二本足で立っている一匹の黒い猫を見上げた。
となりでつかまっているドラギィたちは、まだぐったりとしている。
もしかすると、意識いしきうしなっているのだろう。
あるいは――わしの推測すいそくどおりのことになっているのかもしれない。

 ふしぎな恐竜世界きょうりゅうせかい上空じょうくうを、ぶあつい雷雲らいうんがすっぽりとおおい、
うすぐらさと緊迫感きんぱくかんのなかにあった。
いまもまた遠雷えんらいがとどろき、しめったかぜ木々きぎ合間あいまをふきぬける。

 ルドルフが、しっぽをゆうらりとゆらしながら口をひらいた。

「――よう、フレデリック! 直接会ちょくせつおうのは、いったいいつ以来いらいやろなあ。
人間のすがたでも、大胆不敵だいたんふてきみはわらんのう」

「ふふん。ルドルフではないか。ひさしぶりじゃのう。
その黒いコート、ずーっと着ておるのう。いい加減かげん新調しんちょうしたらどうじゃ」

 わしらは、長い時をへてふたたび言葉ことばをかわした。
この、おたがいの最初さいしょ二言三言ふたことみことの中に、
いったいどれほどの風情ふぜいがふくまれていることやら。
以前、レンからこいつと遭遇そうぐうしたことの知らせをうけてから、
そのうちいやでもかおをあわせることになるだろうなあ、とは思っていた。
まあ、わしはちっとも歓迎かんげいしたくなかったけれどな。

 わしとルドルフはその昔、因縁いんねんまみれの長い長いつきあいだったのだ。

「月なみでもうしわけないが、ドラギィたちをかえしてくれ。
その子たちは、フリーナの親友しんゆうたちなんじゃからな。
それに、まだまだその子たちについて研究けんきゅうりないしのう」

「ホントに返してちょうだいヨ!」フリーナがプンプンしながら言った。

「お前、ほんまにフリーナか! 光っとるのう。なんかのじゅつかいな」

 ルドルフも、フリーナのこの術を見るのははじめてのようだ。

「まあ、どんな術を使つこおうが、ムダムダやで。じきに分かるわ。
それより、ワイはそこの男に用があんねん」

 と、そこへ、粘土になってこちらにむかっていたビオラ博士が追いついて、
ルドルフのいる岩の上にぴょんぴょんと跳び上がってきた。

「あらあら、これはまいりましたわ。先導せんどうしていたのにぬかされてしまうなんて」

 ビオラ博士は、すずしげな顔でまったくいきが上がっていなかった。
おそらく、彼女のネコンドローンリングの効果こうかだろう。

「ビオラ・レディ~! 来るの遅かったのお」ルドルフがにんまりしながら言った。

「ジャングルの中をすすむのに、手間取てまどってしまいまして。
――でもこれで、昔の顔ぶれがそろいましたわね。
わたくしとルドルフ様、そしてフレデリック様。
昔、長きにわたってつづいた――
ネズミ側の失踪しっそうによって一度いちどは終わった戦いが、またはじまりますわねえ」

 彼女かのじょの言葉に、フリーナがよく分からないような顔をした。

「え、えっ? ねえ、しろちゃん、なんのこと?」

「じつをいうとな、フリーナ」

 ついに、とっておきの秘密ひみつかすときが来た。
わしは一度だけ目をじ――いまから話す真実しんじつにじっと思いをこめた。
そしてまぶたをひらき、こう言ったのだ。



「わしはのう、かれこれ千年以上せんねんいじょう生きているネズミなのじゃ」



「――アゥ?」

 フリーナは、しんじられないことをみみにしたようなキョトン顔をした。



「というのもわしは、ここ地球ちきゅうだけでなく、さまざまな世界をたびしてきた。
そうするうちに、この小さな体に、あらゆる変化へんかが起きた。
その変化のひとつが、『年老としおいる時間のはるかなおくれ』じゃった。
そう、わしはのう、フリーナ……この世界のネズミではないのじゃ!」



「あ、言うておくけどな」ルドルフも口をひらいた。
「ワイらふたりもこの世界の猫やないで」

 さらりと言ってのけるルドルフのとなりで、ビオラ博士がふふふっ、と笑った。 

「そんでもってなあ、そいつとおなじく長生き猫どうしなんや。
見た目こそ、そこらのわかい猫と変わらんけども、
中身なかはまあ、あれや――かるく五百歳ごひゃくさいえとるかもなあ。
ワイらの経歴けいれきはごっつ複雑ふくざつやさかい、
おつむのよわいうちは、あんまほりほりしないほうがええで。

――そういうわけやから、フレデリック博士!
三匹目のドラギィ、今すぐこっちにわたしてもらおか」


 わしはその時、フリーナの様子がおかしいことに気がついた。

 おどろいたことに、彼女は、目を回していた。あたまをすっぽりかかえて。
整理せいりのむずかしい情報じょうほうなみを、次つぎとのうみそにねじこまれたせいだろう。
わしの正体しょうたいがじつは人間だった、という誤解ごかいをしてしまったばかりだというのも、
原因げんいんのひとつと言えなくもないが。


 わずかのあいだよそ見しているうちに、事態じたい急変きゅうへんした。
ジャングルの木々の中から、何頭なんとうもの小型恐竜こがたきょうりゅうたちが出てきたのだ。
ヴェロキラプトルたちだ。柿色かきいろふにおおわれている。
その背中せなかにはくらがつけられ、そこに子分猫こぶんねこたちが乗っていた。
よく見ると、ラプトルたちの頭には黒い覆面ふくめんがかけられていた。黒い猫耳つきだ。

「おほほっ! わたくしの『あやつりキャット覆面ふくめん』ですわ。
これでどんな生物も思いのまま。なつかしいアイテムでしょう?
あなたとの再会さいかい記念きねんに、ひさしぶりに使ってみましたのよ!」


 わしとフリーナは、六頭のどうもうなラプトルたちにかこまれてしまった。
 
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