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〈フレデリック/しろさん編〉
第八話 4
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『彼は――笑っていた。
自分の生を、これ以上ないほど実感しているかのように。』
**************************************
「そ、そんなこけおどし! いけいけ! いったれぇー!」
と、ルドルフが岩の上からあわててさけぶのが聞こえた。
トリケラトプスが角をつき出しながら、どとうの勢いで突進する。
それを、ブリーチは両腕でがっしりとうけとめ、全力でふんばった。
恐竜とドラギィの、壮絶な取っ組みあい。
わしは小さくなったフリーナをかかえながら、
十メートルほどはなれた場所に避難して、
ブリーチの戦いを片時も見逃すまいとしていた。
「もしもし、そこのヒトー!」
上空からフレディがすべるように降りてきて、すぐそばに着地した。
レンがすばやくその背中をおりて、わしのもとへやってくる。
「えっと、すみません。この世界のヒトですか?」
と、レンがたずねてきた。
わしは、レンの鈍感ぶりに笑いをうかべながら、こう返した。
「ちがう、ちがう。分からんのか、わしじゃ。フレデリック博士じゃ」
「ハァ!?」案の定、レンは目をまるくしていた。
「ちょっとまった! しろさん? え、しろさんなの!?
いやいやいや、冗談よしてよ。そのかっこう――勇者じゃん!」
「ふふん、いかすじゃろ? ずっとだまっておったが、
わしは人間に変身できるのじゃ。道具もなしにな」
ドォ――ン! バキバキバキ!
ものすごい音がして、
トリケラトプスが木々を押し倒しながら地面に転がる光景が見えた。
ブリーチが猛烈に気張って投げ飛ばしたのだろう。
「ワゥ! フリーナ! ああ、フリーナまで!」
フレディがフリーナの容態に気づいておどろき、どしどしと接近してきた。
「ああもう、どいつもこいつも、ぼくを心配させてばかり!
ぐすっ、ケガはないようだけど、ぐすっ、キミまでどうかしてしまったのか」
「くぅ~ん、おなかへったヨウ~……」フリーナの小声が聞こえた。
「安心せい」わしは落ちつきはらっていた。
「急激にエネルギーを使いはたして、ぐったりしておるだけじゃ。
じきにまた飛べるようになるだろうが、もう大きくはなれないのう」
「じゃあ、谷を飛んでるあいだ、空が急にくもってきたのも――」
レンは、いまだ暗くのしかかるような雲を見上げながら言った。
「すごい雷の音が聞こえてきたのも、やっぱりフリーナのしわざだったんだね」
「ぐすん、そうか。それは、よかった――ところで、ぐすっ、
あなたは、フレデリック博士だね。においで、分かったよ。
世の中、不思議なことが、ぐすん、多いな。ほかの子たちはどうしたんだ?」
「みんな表世界へ帰した。あの子たちもわしの姿におどろいておったよ。
それはさておき、よくぞブリーチを連れもどしてくれたな。
あいつになにかあったら、研究どころでは、あ、いや――
もとの姿を取りもどさせるどころではないからのう」
ドドォ――ン!
今度はブリーチが、ちょっと犬っぽい痛そうな声をあげて押し倒された。
土煙がもうもうと舞い上がるなか、ハァハァというブリーチの息づかいが聞こえる。
「じ、じつはさ」レンが砂塵をふりはらいながらいった。
「ブリーチの心の中で、フラップが目を覚ましたんだって。
でも、フラップはまだ、自分の体をブリーチに貸してあげるつもりみたい」
「それでは、いつでもフラップはあの体を取りもどす準備ができている、
ということなのか?」
「うーん、よく分かんないけど、そういうことなんじゃないかな」
「な、なるほどのう。
なら、もうあいつのために薬を作ってやる必要はないということか。
それはじつに残念――あっいや! じつによかったのう、ウン!」
「しろさんさあ――」レンががっくりと首をたれた。
ブリーチがのっそりと巨体を起こして立ち上がった。
もうかなりのエネルギーを消耗しているはずなのに、まだ巨大化が続いている。
彼は――笑っていた。
自分の生を、これ以上ないほど実感しているかのように。
トリケラトプスがまた角をつき出してむかってくる。
するとブリーチは、今度は両脚に力をこめ、その場でどっと跳びはねた。
そして、トリケラトプスの背中へと、腹からうまい具合にのしかかったのだ。
ギャオオオ―――!
トリケラトプスがうめくような声を上げて地面にくずれた。
ボボォ――ッ!
まるで勝ちほこったかのように、ブリーチが高らかに炎をふいた。
一瞬、白い背中が真っ赤にそまる。熱い血潮が喜びにうちふるえているのか。
「今じゃ! トリケラトプスの黒い覆面を取るのじゃ。
あれさえ取り外せば、やつらの支配から逃れられる!」
だが、ブリーチはちょうど反対むきにのしかかっていたから、
トリケラトプスの頭に両手が回らなかった。
「ぼくがやろう!」
涙を晴らしたフレディが飛びだした。
彼はトリケラトプスの頭の後ろに回りこみ、覆面についた猫の耳をつかんだ。
フレディも大きくなっていたが、やはりブリーチの方が何回りもサイズがでかい。
「フラップ! そのまま動かないでくれよ!」
「オレは、ブリーチだってば!」
しかし、覆面はすぐには取れなかった。
簡単に外れたりしないよう、皮ふに吸着する機能が備わっているのだ。
フレディはわけもわからず、最初はただ力まかせに覆面をひっぱっていた。
「フレディ! その覆面に水をかけるのじゃ! そうすればすぐに外せる!」
フレディは、はなした両手をパーの形にした。
そして、その両手から大量の水を覆面めがけて噴射した。
ドババババ――ッ!
トリケラトプスは、自分が何をされているか見当もつかず。
頭が滝にうたれたかのようにびしょぬれになったが、暴れはしなかった。
フレディはあらためて覆面を取り外しにかかった。
「さあ、これでおそらく大丈夫だ」
スポーン!
覆面は、さほど力を入れるまでもなく外された。
「やっぱりか!」フレディはなにかに気づいたようだった。
「あなたは、最初にぼくらの前に姿を見せた、あのトリケラトプスだ。
ニオイだけでもすぐに合点がいったんだがね。
小さいケモノにあやつられるなんて、憤まんやるかたなかったろう?」
自分の生を、これ以上ないほど実感しているかのように。』
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「そ、そんなこけおどし! いけいけ! いったれぇー!」
と、ルドルフが岩の上からあわててさけぶのが聞こえた。
トリケラトプスが角をつき出しながら、どとうの勢いで突進する。
それを、ブリーチは両腕でがっしりとうけとめ、全力でふんばった。
恐竜とドラギィの、壮絶な取っ組みあい。
わしは小さくなったフリーナをかかえながら、
十メートルほどはなれた場所に避難して、
ブリーチの戦いを片時も見逃すまいとしていた。
「もしもし、そこのヒトー!」
上空からフレディがすべるように降りてきて、すぐそばに着地した。
レンがすばやくその背中をおりて、わしのもとへやってくる。
「えっと、すみません。この世界のヒトですか?」
と、レンがたずねてきた。
わしは、レンの鈍感ぶりに笑いをうかべながら、こう返した。
「ちがう、ちがう。分からんのか、わしじゃ。フレデリック博士じゃ」
「ハァ!?」案の定、レンは目をまるくしていた。
「ちょっとまった! しろさん? え、しろさんなの!?
いやいやいや、冗談よしてよ。そのかっこう――勇者じゃん!」
「ふふん、いかすじゃろ? ずっとだまっておったが、
わしは人間に変身できるのじゃ。道具もなしにな」
ドォ――ン! バキバキバキ!
ものすごい音がして、
トリケラトプスが木々を押し倒しながら地面に転がる光景が見えた。
ブリーチが猛烈に気張って投げ飛ばしたのだろう。
「ワゥ! フリーナ! ああ、フリーナまで!」
フレディがフリーナの容態に気づいておどろき、どしどしと接近してきた。
「ああもう、どいつもこいつも、ぼくを心配させてばかり!
ぐすっ、ケガはないようだけど、ぐすっ、キミまでどうかしてしまったのか」
「くぅ~ん、おなかへったヨウ~……」フリーナの小声が聞こえた。
「安心せい」わしは落ちつきはらっていた。
「急激にエネルギーを使いはたして、ぐったりしておるだけじゃ。
じきにまた飛べるようになるだろうが、もう大きくはなれないのう」
「じゃあ、谷を飛んでるあいだ、空が急にくもってきたのも――」
レンは、いまだ暗くのしかかるような雲を見上げながら言った。
「すごい雷の音が聞こえてきたのも、やっぱりフリーナのしわざだったんだね」
「ぐすん、そうか。それは、よかった――ところで、ぐすっ、
あなたは、フレデリック博士だね。においで、分かったよ。
世の中、不思議なことが、ぐすん、多いな。ほかの子たちはどうしたんだ?」
「みんな表世界へ帰した。あの子たちもわしの姿におどろいておったよ。
それはさておき、よくぞブリーチを連れもどしてくれたな。
あいつになにかあったら、研究どころでは、あ、いや――
もとの姿を取りもどさせるどころではないからのう」
ドドォ――ン!
今度はブリーチが、ちょっと犬っぽい痛そうな声をあげて押し倒された。
土煙がもうもうと舞い上がるなか、ハァハァというブリーチの息づかいが聞こえる。
「じ、じつはさ」レンが砂塵をふりはらいながらいった。
「ブリーチの心の中で、フラップが目を覚ましたんだって。
でも、フラップはまだ、自分の体をブリーチに貸してあげるつもりみたい」
「それでは、いつでもフラップはあの体を取りもどす準備ができている、
ということなのか?」
「うーん、よく分かんないけど、そういうことなんじゃないかな」
「な、なるほどのう。
なら、もうあいつのために薬を作ってやる必要はないということか。
それはじつに残念――あっいや! じつによかったのう、ウン!」
「しろさんさあ――」レンががっくりと首をたれた。
ブリーチがのっそりと巨体を起こして立ち上がった。
もうかなりのエネルギーを消耗しているはずなのに、まだ巨大化が続いている。
彼は――笑っていた。
自分の生を、これ以上ないほど実感しているかのように。
トリケラトプスがまた角をつき出してむかってくる。
するとブリーチは、今度は両脚に力をこめ、その場でどっと跳びはねた。
そして、トリケラトプスの背中へと、腹からうまい具合にのしかかったのだ。
ギャオオオ―――!
トリケラトプスがうめくような声を上げて地面にくずれた。
ボボォ――ッ!
まるで勝ちほこったかのように、ブリーチが高らかに炎をふいた。
一瞬、白い背中が真っ赤にそまる。熱い血潮が喜びにうちふるえているのか。
「今じゃ! トリケラトプスの黒い覆面を取るのじゃ。
あれさえ取り外せば、やつらの支配から逃れられる!」
だが、ブリーチはちょうど反対むきにのしかかっていたから、
トリケラトプスの頭に両手が回らなかった。
「ぼくがやろう!」
涙を晴らしたフレディが飛びだした。
彼はトリケラトプスの頭の後ろに回りこみ、覆面についた猫の耳をつかんだ。
フレディも大きくなっていたが、やはりブリーチの方が何回りもサイズがでかい。
「フラップ! そのまま動かないでくれよ!」
「オレは、ブリーチだってば!」
しかし、覆面はすぐには取れなかった。
簡単に外れたりしないよう、皮ふに吸着する機能が備わっているのだ。
フレディはわけもわからず、最初はただ力まかせに覆面をひっぱっていた。
「フレディ! その覆面に水をかけるのじゃ! そうすればすぐに外せる!」
フレディは、はなした両手をパーの形にした。
そして、その両手から大量の水を覆面めがけて噴射した。
ドババババ――ッ!
トリケラトプスは、自分が何をされているか見当もつかず。
頭が滝にうたれたかのようにびしょぬれになったが、暴れはしなかった。
フレディはあらためて覆面を取り外しにかかった。
「さあ、これでおそらく大丈夫だ」
スポーン!
覆面は、さほど力を入れるまでもなく外された。
「やっぱりか!」フレディはなにかに気づいたようだった。
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