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〈フレデリック/しろさん編〉
第九話 2
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『信じられないことが起きた。
ハッピーな奇跡は、まだ終わりではなかったのだ。』
**************************************
――フラップが元に戻れたのは、やはりフリーナの力のおかげだった。
ああ、解決の光は、ずっとわしらのそばでかがやき続けていたのだ。
わしはどうして、一度でも試してみようと提案しなかったのだろう。
フリーナのハッピー☆スパークを、完全に過小評価していた。
あの時、木に落ちた雷は、その前に彼女が発生させた雷雲から生まれたもの。
恐竜たちの激闘を見ていたわしらも、ちょうど撃たれるハメになったようだ。
ただ、そのおかげでフリーナは、多少のエネルギーをえることができたらしい。
大きくなった体でわしらの体をかかえて飛び、ユカたち三人と合流。
ボディガードをつとめつつ、みんなで異界穴から外に出た、というあらましだった。
ところで、なぜユカたちがこちらの世界に戻らず、
裏世界にとどまっていたかというと、これがまたあきれた話である。
ユカたちは、タクが見ていたふしぎレーダーアプリで異界穴をめざしていたものの、
途中でタクのスマホの電池が切れたらしい。
そしてなんと、ユカのスマホも電池切れをおこしていた。
ジュンはというと、そもそもスマホを家にわすれてきてしまったらしい。
薄暗いジャングルのど真ん中だったため、三人は道に迷い、途方に暮れていた。
しかしその時、偶然にもパキケファロサウルスの三兄弟? と出会った。
ユカが、かわいいねといって接近しても、おそってくる気配はなかったという。
異界穴へ連れていってほしいと、ダメもとでたのんでみたところ、
恐竜たちは不思議なことに、三人を背中に乗せてくれたようだ。
しかし、場所が分からないのか、ジャングルの中をあっちへこっちへ走りまわり、
いつまでたっても異界穴へたどり着けなかったようだ。
そんな時に、運悪くティラノサウルスに遭遇し、
ジャングルの外まで追い回されたということだった。
「すまんな。わしらがちゃんと送りとどけてやればよかったのに。
しかしまあ、よく生きていてくれたのう。わしはうれしいぞ」
わしは、ユカの手のひらからねぎらいの言葉をかけていた。
ジュンとタクは、スリルがあって面白かったというが、
ユカは正反対で、わしの言葉を聞くなり泣きだしてしまった。
よっぽど怖い思いをしていたのだろう。
「ほら、ユカちゃんこれ、つかう?」
レンがほほを赤らめながら、ハンカチをさしだしてきた。
黒いドラゴンのキャラクター刺繍が入った、レンのお気にいりのアイテムだ。
ユカは、はずかしそうに笑いながら、「ありがと」とうけとった。
今回のことで、わしはズシリと思い知った。裏世界を調査するときは、
何があっても、子どもたちはドラギィたちと別行動になってはいけないことを。
それと、これからはできるだけ、わし自身も裏世界の調査に
同行したほうがよいということをだ。
わしらが今いるのは、あの恐竜公園のなかにある、展望広場だった。
小高い段差の上にある場所で、ベンチから深夜の町を見わたすことができた。
はるか一億年の時をこえる調査から帰ってきて、
現代の冷たい夜風と、点々と光る町の街灯が、心地よいほど身にしみる。
「フラップ、本当に体はなんともないんだね?」
レンが、自分の右肩に乗っていたフラップの体調を気にかけていた。
「ワンッ! エネルギー切れなので、ちょっと力が入りませんけど、
このとおり、はい、健康そのものですよ」
「そっか。そんならよかったよ。ただ――」
フラップが戻ってきたかわりに、ブリーチがいなくなった。
彼は――消えてしまったのだ。さよならの言葉もかわせないまま。
「彼は、ぐすん……彼はちゃんと星に、ぐすん、なれたんだろうか。
結局ぼくは、彼のためになにも、うぅ、してあげられなかった」
宙をうかんでいたフレディはめそめそと泣きだして、レンの左肩にすがった。
そこへ、フリーナが心配そうに飛んできて、その背中に手を当てた。
「だいじょうぶだヨ。ブリーチはきっと、あの星空のどこかで、
アタシたちのことをずっと見下ろしてる。ニカニカ笑いながらネ……」
いきなり、しめっぽい空気になった。
フリーナとフレディは、またたく星空を遠い目で見上げ、
子どもたちは何も言わずにそれを見守っていた。
むろん、わしも一言も口をきかなかった。
あいつは大切な研究対象――いや、よいダチになりつつあったのだ。
一度くらい、人間の姿で相撲勝負でもしてやればよかった。
まあ、どちらが勝つかは予想するまでもないがな。
「そのことなんですけど――」
フラップがひょいと手を上げて、レンの肩からはなれた。
「じつはみなさんに、お話したいことがありまして。
あのう、なんていえばいいのか……自分でもよく分かんないんですけど、
その――アウ? えっ、なに?」
フラップは、急に視線を上にむけた。だれかに声をかけられたみたいに。
「自分で話す? え、でも、ここはぼくから話した方が――」
するとその時だ。フラップの体が白い光の渦につつまれた。
しぼりたてのミルクがかき混ぜられているような色の光だ。
その渦は一瞬のうちに消えさり、かわりに、べつのものがそこにいた。
わしらはだれもが目をうたがった。
信じられないことが起きた。ハッピーな奇跡は、まだ終わりではなかったのだ。
そこにいたのは――白いドラギィ。あの、ブリーチだった!
ハッピーな奇跡は、まだ終わりではなかったのだ。』
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――フラップが元に戻れたのは、やはりフリーナの力のおかげだった。
ああ、解決の光は、ずっとわしらのそばでかがやき続けていたのだ。
わしはどうして、一度でも試してみようと提案しなかったのだろう。
フリーナのハッピー☆スパークを、完全に過小評価していた。
あの時、木に落ちた雷は、その前に彼女が発生させた雷雲から生まれたもの。
恐竜たちの激闘を見ていたわしらも、ちょうど撃たれるハメになったようだ。
ただ、そのおかげでフリーナは、多少のエネルギーをえることができたらしい。
大きくなった体でわしらの体をかかえて飛び、ユカたち三人と合流。
ボディガードをつとめつつ、みんなで異界穴から外に出た、というあらましだった。
ところで、なぜユカたちがこちらの世界に戻らず、
裏世界にとどまっていたかというと、これがまたあきれた話である。
ユカたちは、タクが見ていたふしぎレーダーアプリで異界穴をめざしていたものの、
途中でタクのスマホの電池が切れたらしい。
そしてなんと、ユカのスマホも電池切れをおこしていた。
ジュンはというと、そもそもスマホを家にわすれてきてしまったらしい。
薄暗いジャングルのど真ん中だったため、三人は道に迷い、途方に暮れていた。
しかしその時、偶然にもパキケファロサウルスの三兄弟? と出会った。
ユカが、かわいいねといって接近しても、おそってくる気配はなかったという。
異界穴へ連れていってほしいと、ダメもとでたのんでみたところ、
恐竜たちは不思議なことに、三人を背中に乗せてくれたようだ。
しかし、場所が分からないのか、ジャングルの中をあっちへこっちへ走りまわり、
いつまでたっても異界穴へたどり着けなかったようだ。
そんな時に、運悪くティラノサウルスに遭遇し、
ジャングルの外まで追い回されたということだった。
「すまんな。わしらがちゃんと送りとどけてやればよかったのに。
しかしまあ、よく生きていてくれたのう。わしはうれしいぞ」
わしは、ユカの手のひらからねぎらいの言葉をかけていた。
ジュンとタクは、スリルがあって面白かったというが、
ユカは正反対で、わしの言葉を聞くなり泣きだしてしまった。
よっぽど怖い思いをしていたのだろう。
「ほら、ユカちゃんこれ、つかう?」
レンがほほを赤らめながら、ハンカチをさしだしてきた。
黒いドラゴンのキャラクター刺繍が入った、レンのお気にいりのアイテムだ。
ユカは、はずかしそうに笑いながら、「ありがと」とうけとった。
今回のことで、わしはズシリと思い知った。裏世界を調査するときは、
何があっても、子どもたちはドラギィたちと別行動になってはいけないことを。
それと、これからはできるだけ、わし自身も裏世界の調査に
同行したほうがよいということをだ。
わしらが今いるのは、あの恐竜公園のなかにある、展望広場だった。
小高い段差の上にある場所で、ベンチから深夜の町を見わたすことができた。
はるか一億年の時をこえる調査から帰ってきて、
現代の冷たい夜風と、点々と光る町の街灯が、心地よいほど身にしみる。
「フラップ、本当に体はなんともないんだね?」
レンが、自分の右肩に乗っていたフラップの体調を気にかけていた。
「ワンッ! エネルギー切れなので、ちょっと力が入りませんけど、
このとおり、はい、健康そのものですよ」
「そっか。そんならよかったよ。ただ――」
フラップが戻ってきたかわりに、ブリーチがいなくなった。
彼は――消えてしまったのだ。さよならの言葉もかわせないまま。
「彼は、ぐすん……彼はちゃんと星に、ぐすん、なれたんだろうか。
結局ぼくは、彼のためになにも、うぅ、してあげられなかった」
宙をうかんでいたフレディはめそめそと泣きだして、レンの左肩にすがった。
そこへ、フリーナが心配そうに飛んできて、その背中に手を当てた。
「だいじょうぶだヨ。ブリーチはきっと、あの星空のどこかで、
アタシたちのことをずっと見下ろしてる。ニカニカ笑いながらネ……」
いきなり、しめっぽい空気になった。
フリーナとフレディは、またたく星空を遠い目で見上げ、
子どもたちは何も言わずにそれを見守っていた。
むろん、わしも一言も口をきかなかった。
あいつは大切な研究対象――いや、よいダチになりつつあったのだ。
一度くらい、人間の姿で相撲勝負でもしてやればよかった。
まあ、どちらが勝つかは予想するまでもないがな。
「そのことなんですけど――」
フラップがひょいと手を上げて、レンの肩からはなれた。
「じつはみなさんに、お話したいことがありまして。
あのう、なんていえばいいのか……自分でもよく分かんないんですけど、
その――アウ? えっ、なに?」
フラップは、急に視線を上にむけた。だれかに声をかけられたみたいに。
「自分で話す? え、でも、ここはぼくから話した方が――」
するとその時だ。フラップの体が白い光の渦につつまれた。
しぼりたてのミルクがかき混ぜられているような色の光だ。
その渦は一瞬のうちに消えさり、かわりに、べつのものがそこにいた。
わしらはだれもが目をうたがった。
信じられないことが起きた。ハッピーな奇跡は、まだ終わりではなかったのだ。
そこにいたのは――白いドラギィ。あの、ブリーチだった!
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