DRAGGY!ードラギィ!ー【フラップ編(リライト)2/18連載開始!】

Sirocos(シロコス)

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〈フレデリック/しろさん編〉

第十話『ネズミの千年物語』 1 

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          『「いろんな世界せかいたびしておるとな、
      そのがさまざまな異変いへん見舞みまわれるものなのじゃ。」』

**************************************

 次の日、ドラギィたちと調査隊ちょうさたいの子どもたちが、
わがフレデリック・ラボへやってきた。というのも、わしがかれらをまねいたのだ。
わしはみんなを、多目的たもくてきルームに案内あんないし、テーブルのイスにすわらせ、
ひとり長いしっぽをSのにくねらせながら、両手りょうてうしろにくんでいた。

「――それじゃあさ」レンが口をひらいた。

約束やくそくどおり説明せつめいしてくれないかな。しろさんが何者なにものなのかをさ。
ただのネズミじゃないって分かってたけど、まさか、人間に変身へんしんできるなんてさ。
ねえ? みんなも分かんなかったよね」

 一同いちどう、レンの言葉ことばにうなずいた。
フラップは、ひときわ強くうなずいた。
こころの中でねむりこけているブリーチの分までうなずこうとしたのだ。

「うむ。それについてはちゃんとつたえておかねばと思っておった。
あ、テーブルの上のチーズ菓子がしきに食べてもかまわんぞ。
心配しんぱいせんでも、へんなくすりはまざっておらんからのう」

 レンたちは、思い思いにチーズ菓子の山に手をのばし、
小さいのを口にほうったり、大きいのをむしったり、長いのをほそいたりした。
フリーナはやはり、いろんな菓子を次から次へと見境みさかいなくパクついていた。
これから小難こむずしい話がはじまると分かって、気分きぶんをまぎわらせたいのだろう。

「――さて、すでにいているものもいるだろうが、
わしは、この世界のネズミではない。そと世界せかいからきたネズミなのだ」

「へぇ~、ホントにいるんだなー。そういうやつが、むぐむぐ」

 ジュンがチーズしケーキをむしゃむしゃやりながら、
それほど大きくないリアクションを見せた。
ほかの子どもたちも、おなじような調子ちょうしだった。

「なんじゃ、そのうすい反応はんのうは~。
一年生の児童じどうでも、もっとリアクションは大きいと思うがの?」

「一年生より心がよごれてるって言われた~」と、タクがもらした。

「外の世界とは、いったいどういうことなんだ?」フレディがふみこんできた。
裏側うらがわの世界とはちがうのか? いまいちハッキリしないんだが」

「うむ。いまからをうつして説明せつめいしてやろう」

 ピッ、ピピピ。わしはリモコンを操作そうさして、部屋へやくらくし、
天井てんじょう投影機とうえいきからスクリーン上にスライド資料しりょうをうつしだした。
ぼうには、白衣はくいのポケットから出したあの亜空あくうでんでんまるをつかった。

「おぬしらがらしていたスカイランド、すなわち裏側の世界は、
ここ人間界にんげんかい、つまり表側おもてがわの世界をつつむ形作かたちづくられた場所ばしょ
この力が何なのかはまだ解明かいめいできておらんが、いまはいておこう。
表と裏、これら二つの世界は、たがいに異界穴いかいあなというふとい糸でヒモづけられておる。
そしてなおかつ、それらすべては、ある大きなの中でひとくくりにされておる。
その輪とは宇宙うちゅうの輪――つまり、わしらとおぬしらドラギィの世界は、
この〈宇宙〉のなかに存在そんざいするというわけじゃ」

「さっぱりですよう……」フラップが早くもを上げた。

「あ、このヒモみたいなチーズ菓子、オイシー!」フリーナは論外ろんがいだった。

「しかしじゃ――宇宙はほかにもかぞえきれぬほど存在しておる。
すなわち、外の世界とは、ここ人間界が存在する宇宙の外側そとがわ、という意味いみになる」

「世界、宇宙、外側――」フレディはあごにゆびをあてて思案しあんモードに入った。

「外の世界も、ここ人間界とにたような風景ふうけいおおい。
時代背景じだいはいけい世界情勢せかいじょうせいもさまざまじゃ。
世界によっては人間も暮らしているが、これが面白おもしろいことになっておるぞ。
ある世界では、あたまいぬねこみみをつけた人間もおるし、
またある世界では、背中せなかとりはねやした人間もおる。
わしはこれらの世界で研究けんきゅうをつみかさね、
異世界いせかいの人間や、世界の構造こうぞうにまつわるさまざまなふしぎをかしてきた。
宇宙のカベ――世界のカベを幾度いくどとなくとおりぬけながらな」

「なんだか、異世界授業いせかいじゅぎょうみたいになっちゃったね」と、ユカが小さく笑った。

「それでさ、どうやってその――世界のカベをえてきたのさ?」

 レンがたずねてきた。――この質問しつもんをずっとまっていた。

「ふっふっふ……、りたいのなら見せてやろう」

 わしはいつもの不敵ふてきみをうかべた。スイッチで部屋をまた明るくすると、
白衣の内ポケットの中から、手のひらサイズのあるものをりだし、
それを上にかかげてみんなに見せてやった。

「なにそれ、バッチ?」

 ん中に宝珠ほうじゅをあしらった、かがやかしい金細工きんざいくのバッチ。
子どもたちは、興味津々きょうみしんしんでわしのバッチを見つめていた。

「これはのう、『ディスカバリーバッチ』というものじゃ。
真ん中についている宝珠は、世界のカベをえるエネルギーをためるもの。
いまは、真っ黒になっておるから、エネルギーはほぼゼロじゃな」

「たまるとどうなるのさ?」と、タクがたずねてきた。

「七色の光にみちあふれるのじゃ。エネルギーがたまる早さは、
世界によってまちまちでな。ここ地球ちきゅうでは、長い年月ねんげつをまつことになる」

「大変そう――」ユカが心配しんぱいそうなかおをする。

「いやいや、この地球には何度なんどておるのじゃが、
いやーなかなかどうして、ここはわしをきさせない魅力的みりょくてきな世界でのう。
十年でも二十年でも滞在たいざいしてやるつもりじゃ」

「二十年!?」レンが目をまるくした。
「いや、無理むりでしょ! だってネズミだし、オレたちよりずっと――ねえ?」

 ほかの子どもたちが、をさっしてうなずいた。

「まさにそこじゃ! 今日、わしが本当に話したいのは」

 わしはでんでん丸で、ズバリとレンの顔をさした。
それから、ディスカバリーバッチをしまいこむと、
両手をにまわし、横向よこむきになってものうげな人物じんぶつのふりをした。

「――わしはこれまで、幾度いくどとなく世界のカベをえてきたと話したな。
いろんな世界をたびしておるとな、
そのがさまざまな異変いへん見舞みまわれるものなのじゃ」

、です?」フラップがをかしげた。

「この世界にも、あらゆる時空的じくうてきなルールが存在そんざいするように、
外の世界にも、それぞれことなる時空的ルールがある。
しかし、たくさんのルールの異なる世界を旅しておるとな、
体が知らず知らずのうちにマヒしてしまうようなのじゃ。
たとえば、ほとんどとしをとらない状態じょうたいになってしまったり。
あるいは、本来ほんらいとはちがう姿すがたに変身できるようになったり――」

としをとらない!?」レンがさけんだ。

「じゃあいったい、しろさんって、その……何年くらい生きてるわけ?」

「うむ、もう二度目になるが――かれこれ、千年は生きておるかのう」


「「「千年!!」」」一同が同時にさけぶ。


「そうか、分かった!」ジュンはポンッと手をたたいた。
「つまり、しろの体は、風邪かぜひいてるようなもんなんだ」

「か、風邪ぇ――っ!?」

 わしはついつい、ずっこけそうになった。頭がおかしくなりそうだ。

「そんな解釈かいしゃくのしかたをするやつ、はじめてじゃわい。
これはそれほど単純たんじゅんなハナシではないんじゃがのう。
だがまあ――この体になってこまらされたことはほぼないし、
わしはずっとこのままでいいと思っておる。心配しんぱい無用むようじゃ」

 わしはテーブルの上にある、ヒモじょうのチーズ菓子がしを一本手にとり、
下のほうからチュルリとすって食べた。
パスタみたいな食感しょっかん特徴とくちょうな、わしの意欲作いよくさくだ。

「しろちゃん、それおいしいよネ! アタシ、気に入っちゃったヨ」

 フリーナが親しげに話しかけてきたので、わしはみょうに思った。

「おぬし、わしにたいしておこってたんじゃ、むぐむぐ、なかったのか?」

「アフッ。あれはあれ、いまはいまだヨ~」

 フリーナは笑顔えがおで首をかしげた。
乙女心おとめごころあきの空は、どうやらドラギィにも適応てきおうすることわざらしい。
わしはとりあえず、彼女かのじょのことはかんがえすぎないようにして、
部屋の天井を見上げながら、こう言った。

「かので生をうけて、かれこれ千年――
いきなりじゃが、これからわしの自分語りをはじめてゆこうと思う。
あ、もし退屈たいくつじゃったらふつうに聞きながしてもらってもかまわんからの。
千年だけに、わしの小話こばなしは長ったらしいとよく言われてしまうから」


※次回が最後の更新となります!
二話+あとがきをUPする予定です! (1/28 水)
 
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