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〈フレデリック/しろさん編〉
第十話 2
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『「あの鳥が何者だったのかはいまだに分からんが、
いつかきっと、その正体をつきとめたいと思っておる。」』
**************************************
わしは、コホンとせきばらいをしてから、
客人たちにむかってこんなふうに語りはじめた――。
「――はるか時空のかなた、とある平和な世界。
野生の大家族の一員として生まれたわしは、とても頭のよい父親をもった。
父は巣の外からガラクタなどを持ちこんできては、
大家族の暮らしをよくするためのからくり作りにはげんでおったのじゃ。
幼かったわしは、そんな父の影響をうけて、自分も物づくりの道に入った。
しかし、どうやらわしの中にねむっていた才能は、
そこで大輪の花を咲かせてしまったらしい。
わしはまたたく間に父をこえ、ネズミ界にその名をとどろかす大発明家となった。
それからわしは、物づくりだけでなく、
さまざまな科学的分野にも興味を持つようになったのじゃ。
エネルギー工学、物理学、薬学、素材工学――まあ、いろいろじゃな。
――しかし、わしはそれだけで飽きたらなかった。
純粋無垢な心をもっていたわしは、もっともっと外の分野――
生き物の手では触れられない世界の不思議に興味をもつようになった。
たとえば、目に見ることのできない世界――異世界というものに。
ああ、いま思えば、青二才のあわい幻想じゃったわ。
いまこうして見ている世界、ひげ先で感じている世界は、はたしてこれだけか。
あの夜空のむこう側に、星の数ほどの別世界が広がっているのなら、
ぼくはそのすべてに足をふみ入れてみたい。
そこで、まだだれも知らない光景や、神秘的なパワーの存在を見つけたい。
そして、世界のどんな秘密も解き明かせる、ふしぎ研究家として旅をしてみたい。
――天は、わしの切なる願いをかなえてくれたにちがいない。
ある日のこと、わしのもとに一羽の白い鳥が舞いおりてきた。
その鳥は、首の根元に美しい首かざりをつけておった。
首かざりには、目にもあざやかな七色にかがやく宝珠が――」
『あなたの願いを聞いて、やってきました。
この首かざりの宝珠を取ってください。
この宝珠には、世界のカベを越える力があります』
「その鳥から宝珠をうけとった後、鳥はかがやかしい翼を広げて飛び上がり、
霧のように消えうせてしもうた。
――わしは確信した。あの鳥の言うことは本当で、
この世界の外には、無限のかなたに散らばる未知の数々があるのだと。
そして、わしがこの手にさずかった宝珠には……!
わしはいてもたってもいられず、
家族に別れをつげて、ただひとり旅に出た。
終わりのない、外の世界をめぐる冒険の旅にな。
宝珠の力をひきだす呪文は、あの白い鳥が教えてくれた。
その呪文は、すでにわしの心の中にうかんでいるはず――
ただそれを力強くとなえればよいと……!」
『ひらめきワープで、ディスカバリー! わしを導け、未知なる世界へ!』
――わしここで、自分語りをいったん終わりにした。
うっかり芝居がかってしまった部分もあった。
ドラギィと子どもたちは退屈のあまりだらけてしまうかと思ったが、
みんな思いのほかわしの話に聞き入っていた。
「なんかさ」レンが口をひらいた。
「ものすごくデタラメっぽい話だったし。全部ホントのことなの?」
「ホントの話じゃ」わしは鼻高々に答えてみせた。
「バッカみてえ」ジュンはそういって、チーズパイの一切れに手をのばした。
「それで、さっき話に出てきたその、白い鳥だっけ?」タクが質問する。
「その子がもってきた宝珠っていうのが、さっきのバッジの」
「そのとおり。なくさないようにバッジに埋めこんだ。
あの鳥が何者だったのかはいまだに分からんが、
いつかきっと、その正体をつきとめたいと思っておる」
「わたしは信じるよ」ユカがにこりとして言った。
「しろさんのお話、もっと聞きたくなっちゃった」
「わふっ。ぼくも信じます!」フラップが耳をぴょこっとさせて言った。
「よく分からないところはありましたけど、ロマンを感じましたから。
外の世界かあ……ぼくたちのほかにもドラギィが住んでるのかなあ」
「気になることがあんだけど」ジュンが軽く手を上げた。
「今までオレらがあってきた、あのへんな黒猫たちだけどさー、
あいつらって長い旅の途中で出会ったんだろ?」
「そのとおりじゃ。ルドルフとビオラ博士……。
ここ数十年、顔をあわせていなかったが、ふたりともまったく変っとらん。
ルドルフは、まあ……はじめて遭遇した時はただの野良猫と変わらんかったがな」
「それがどうして、因縁の相手になったのさ?」と、タクが聞いた。
「おそいかかってきたところを、わしがジマンの発明品で撃退してやってから、
やつはわしに強い執着心をいだくようになった。
そしてあろうことか、いろんな世界に現れては、
珍生物コレクターとか名乗ってわしの前に立ちはだかり、
大事なふしぎ研究の邪魔ばかりしてきたものじゃ。
まあ、たいした敵ではないので、いつも適当にあしらってきたが。
しかし、ビオラ博士のほうは謎だらけじゃ。
いつのころからか、ルドルフのかたわらに現れるようになり、
やつのコレクション活動や、わしとの小競りあいを手伝うようになったのじゃ。
わしとならび立つほどのすぐれた頭脳と科学力をひっさげてな」
「ぼくからもおたずねしてもいいだろうか」フレディが肉球を広げていった。
「フレデリック博士が千年も歳をとらない理由は分かったとして、
いまだ千年以上も旅を続けている理由が、いまいちピンと来ないんだ。
ただ漫然と、いろんな世界のふしぎを解き明かしているのか?
キミのことだ、そういうわけでもないんだろ?」
「――おぉう」
わしは物事の核心をかぎつけられた衝撃のあまり、二ッとした。
「それをいまここで話してやってもよいのじゃが、
なんというか――おぬしたちに聞かせるにはまだ早すぎると思うのじゃ。
それに、わしもしゃべりつかれた。話はまた今度ということにしてくれい」
いつかきっと、その正体をつきとめたいと思っておる。」』
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わしは、コホンとせきばらいをしてから、
客人たちにむかってこんなふうに語りはじめた――。
「――はるか時空のかなた、とある平和な世界。
野生の大家族の一員として生まれたわしは、とても頭のよい父親をもった。
父は巣の外からガラクタなどを持ちこんできては、
大家族の暮らしをよくするためのからくり作りにはげんでおったのじゃ。
幼かったわしは、そんな父の影響をうけて、自分も物づくりの道に入った。
しかし、どうやらわしの中にねむっていた才能は、
そこで大輪の花を咲かせてしまったらしい。
わしはまたたく間に父をこえ、ネズミ界にその名をとどろかす大発明家となった。
それからわしは、物づくりだけでなく、
さまざまな科学的分野にも興味を持つようになったのじゃ。
エネルギー工学、物理学、薬学、素材工学――まあ、いろいろじゃな。
――しかし、わしはそれだけで飽きたらなかった。
純粋無垢な心をもっていたわしは、もっともっと外の分野――
生き物の手では触れられない世界の不思議に興味をもつようになった。
たとえば、目に見ることのできない世界――異世界というものに。
ああ、いま思えば、青二才のあわい幻想じゃったわ。
いまこうして見ている世界、ひげ先で感じている世界は、はたしてこれだけか。
あの夜空のむこう側に、星の数ほどの別世界が広がっているのなら、
ぼくはそのすべてに足をふみ入れてみたい。
そこで、まだだれも知らない光景や、神秘的なパワーの存在を見つけたい。
そして、世界のどんな秘密も解き明かせる、ふしぎ研究家として旅をしてみたい。
――天は、わしの切なる願いをかなえてくれたにちがいない。
ある日のこと、わしのもとに一羽の白い鳥が舞いおりてきた。
その鳥は、首の根元に美しい首かざりをつけておった。
首かざりには、目にもあざやかな七色にかがやく宝珠が――」
『あなたの願いを聞いて、やってきました。
この首かざりの宝珠を取ってください。
この宝珠には、世界のカベを越える力があります』
「その鳥から宝珠をうけとった後、鳥はかがやかしい翼を広げて飛び上がり、
霧のように消えうせてしもうた。
――わしは確信した。あの鳥の言うことは本当で、
この世界の外には、無限のかなたに散らばる未知の数々があるのだと。
そして、わしがこの手にさずかった宝珠には……!
わしはいてもたってもいられず、
家族に別れをつげて、ただひとり旅に出た。
終わりのない、外の世界をめぐる冒険の旅にな。
宝珠の力をひきだす呪文は、あの白い鳥が教えてくれた。
その呪文は、すでにわしの心の中にうかんでいるはず――
ただそれを力強くとなえればよいと……!」
『ひらめきワープで、ディスカバリー! わしを導け、未知なる世界へ!』
――わしここで、自分語りをいったん終わりにした。
うっかり芝居がかってしまった部分もあった。
ドラギィと子どもたちは退屈のあまりだらけてしまうかと思ったが、
みんな思いのほかわしの話に聞き入っていた。
「なんかさ」レンが口をひらいた。
「ものすごくデタラメっぽい話だったし。全部ホントのことなの?」
「ホントの話じゃ」わしは鼻高々に答えてみせた。
「バッカみてえ」ジュンはそういって、チーズパイの一切れに手をのばした。
「それで、さっき話に出てきたその、白い鳥だっけ?」タクが質問する。
「その子がもってきた宝珠っていうのが、さっきのバッジの」
「そのとおり。なくさないようにバッジに埋めこんだ。
あの鳥が何者だったのかはいまだに分からんが、
いつかきっと、その正体をつきとめたいと思っておる」
「わたしは信じるよ」ユカがにこりとして言った。
「しろさんのお話、もっと聞きたくなっちゃった」
「わふっ。ぼくも信じます!」フラップが耳をぴょこっとさせて言った。
「よく分からないところはありましたけど、ロマンを感じましたから。
外の世界かあ……ぼくたちのほかにもドラギィが住んでるのかなあ」
「気になることがあんだけど」ジュンが軽く手を上げた。
「今までオレらがあってきた、あのへんな黒猫たちだけどさー、
あいつらって長い旅の途中で出会ったんだろ?」
「そのとおりじゃ。ルドルフとビオラ博士……。
ここ数十年、顔をあわせていなかったが、ふたりともまったく変っとらん。
ルドルフは、まあ……はじめて遭遇した時はただの野良猫と変わらんかったがな」
「それがどうして、因縁の相手になったのさ?」と、タクが聞いた。
「おそいかかってきたところを、わしがジマンの発明品で撃退してやってから、
やつはわしに強い執着心をいだくようになった。
そしてあろうことか、いろんな世界に現れては、
珍生物コレクターとか名乗ってわしの前に立ちはだかり、
大事なふしぎ研究の邪魔ばかりしてきたものじゃ。
まあ、たいした敵ではないので、いつも適当にあしらってきたが。
しかし、ビオラ博士のほうは謎だらけじゃ。
いつのころからか、ルドルフのかたわらに現れるようになり、
やつのコレクション活動や、わしとの小競りあいを手伝うようになったのじゃ。
わしとならび立つほどのすぐれた頭脳と科学力をひっさげてな」
「ぼくからもおたずねしてもいいだろうか」フレディが肉球を広げていった。
「フレデリック博士が千年も歳をとらない理由は分かったとして、
いまだ千年以上も旅を続けている理由が、いまいちピンと来ないんだ。
ただ漫然と、いろんな世界のふしぎを解き明かしているのか?
キミのことだ、そういうわけでもないんだろ?」
「――おぉう」
わしは物事の核心をかぎつけられた衝撃のあまり、二ッとした。
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なんというか――おぬしたちに聞かせるにはまだ早すぎると思うのじゃ。
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