DRAGGY!ードラギィ!ー【フラップ編(リライト)2/18連載開始!】

Sirocos(シロコス)

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〈フレデリック/しろさん編〉

第十話 3

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    『「おぬしがのぞみさえすれば、想像そうぞうするこころうしないさえしなければ、
          世界は無限むげんに広がってゆくのじゃ。」』

**************************************

 その後、ユカ、ジュン、タクにもそれぞれ事情じじょうがあるらしく、
三人はそれぞれ自分の家にっていった。

 わしとドラギィたちは、レンといっしょにかれ部屋へや移動いどうして、
この日の学校がっこう宿題しゅくだいを見てやったり、フリーナののうトレを手伝てつだったり、
部屋へやらばったわしやドラギィたちの掃除そうじしたりした。
そしてレンが夕食ゆうしょくあみをすませに出ていったあと、
まどそとには無数むすう星明ほしあかりがひろがっていた。
わしはレンのつくえの上でネズミパッドを操作そうさして、
れいのようにブリーチにまつわるデータのまとめを見ていた。

「わぉ――ん! またオレのち~!」

 なにやらレンのベッドがさわがしい。
フラップと入れかわったネズミサイズのブリーチが、フリーナと相撲勝負すもうしょうぶして、
フリーナをまくらがしいてあるほうへばしたのだ。

「わふっ、わふっ! ちょっとは手加減てかげんしてヨ。アタシ、女の子なんだからぁ」

 ふたりの勝負を見ていたフレディが、不平ふへいをもらすフリーナにこう言った。

かれはキミよりも一回り小さいサイズで勝負してる。
これで十分にハンデをもうけているはずなんだがね」

「それもそうなんだケド!
フレディ、ぼんやり見てないでもっとアタシを応援おうえんしてヨ~」

「あ、いや……まあ、それも、そのとおりだね」

 どうあがいてもブリーチが勝つと分かっているはずなのに、
フレディはそう答えた。彼女にいきなり告白こくはくされたことがいているらしい。
まだ彼の返事へんじをだれもいていないがな――あのフリーナでさえも。

「それにしてもブリーチ、キミはフラップの時とはまるで雲泥うんでいだな。
勝負ごとにはいつもパワー全開ぜんかいだ」

当然とうぜんだろ~。こいつはずっと自分の力をおさえてるんだ。
だから、オレがこうして力いっぱいあそんでないと、
こいつは本来ほんらいよりも筋力きんりょくがおとろえて、こまったことになるんだ」

 すると、赤い光のうずがまいて、ブリーチとフラップが入れかわった。

「べつに、いまにはじまったことでもないですし、
何かこまったことになるんなら、とっくになってますよ。
火ふき能力のうりょくのほかに問題もんだいがおこるのだけは、カンベンしてほしいです」

「あのサ、あのサ」フリーナが手を上げた。
「火で思い出したんだケド、どうしてブリーチは火をふくと、
体が赤くなるのカナ? それも、フラップとはちがう赤色にサ」

「データを見て分かったんじゃが」わしは操作をやめて会話かいわ参加さんかした。
「あれは、レッド種本来しゅほんらい毛色けいろなんじゃろ? おぬしの毛色とはかなりちがったな。
それがブリーチというもう一つのすがたの中、ほのおによってあの色にそまる。
本来あるべきレッド種の毛色がうきぼりにされるようになったと」

「――そう、みたいですね」フラップがはずかしそうにもじもじした。

「ならば、いまの背中せなか毛色けいろはなんじゃ? ピンクっぽい赤というか。
いままで、その色こそがレッド種のあかしだと思っとったんじゃが。
――フラップよ、もしも理由りゆうを知っておるのなら、聞かせてくれんかのう?
もちろん、さしつかえがなければじゃが」

「それは、あのう――その――」

 すると、フレディとフリーナが彼のそばにいって、こう言った。

「フラップ、ぼくとしては、思いきって話してみればいいと思うんだが」

「そうだヨ。べつにバカにされちゃうわけでもないんだし」

「――そう、だよね」

 フラップは、すうっといきをすいこんで、真実しんじつをうちあける準備じゅんびをした。

「あ、あのですね、ぼくのお父さんはふつうのレッド種なんです。
一族でもとくに強い火をふけるドラギィのひとりとして、もてはやされてます。
一方で、お母さんはですね、あの、じつは――その――」


 コンコン、コココン!


 部屋のドアをノックするおとがした。
これは、レン本人が部屋に入ってくることを知らせる、合図あいずだった。

「みんな、ただいま。――あれ、なんか話でもしてた?」

 レンが入ってくると、わしらはいっせいに彼の顔を見上げた。

 その時、フラップの体が白く光って、ブリーチに入れかわった。

「ガウッ! へへへっ、フレディがこないだ、
つくえの上でうっかりションベンもらしたって話だよな?」

「えっ!? そんなんウソでしょ?」レンはとんでもなさそうな顔をした。

「ちがう、ちがう!」フレディは両手の肉球にくきゅうをふり回した。
「ブリーチ、きたないぞ。だれがションベンなんてもらすもんか!」

「ホントのことだぜ~。フリーナもバッチリ見てたよな?」

「ええっ、アタシも!?」

 フリーナの反応はんのうを見て、フレディはいか爆発ばくはつした。

「いい加減かげんなことを言ってると、水鉄砲みずでっぽうをお見舞みまいするぞ!」

「へへーっ、やれるもんならやってみな!」

「アタシ、フレディのおしっこなんて見てないもん~っ!」

 ブリーチのせいで、大事だいじ情報じょうほうを聞きそびれてしまった。
わしは、あきれてひたいに手を当てた。
フレディのおしっこについての件は、彼が机の上にすわっているあいだ、
故郷ふるさとをこいしがるあまりなみだをこぼしすぎて、おしりまでびしょれになったことだ。
まあ、ブリーチがそれをネタにしたがるのも分からなくはないけど。

「部屋で水鉄砲だけはやめろって……」

 ドラギィたちがおにごっこで大さわぎしているあいだ、
レンはふうとためいきまじりにつくえのイスに座って、わしにこんな質問しつもんをした。

「しろさん、キミが人間に変身へんしんできるってことが今回分かったけどさ」

「うむ」

「ぶっちゃけいって、そのすがたと人間のすがた、どっちがき?」

 ――すこし間があいた。
それから気まぐれに、ひとつレンをおどろかせようと思った。
わしは机の上からぴょーんとジャンプして、光をまとった。
そして数秒すうびょうののちに、あの人間の青年せいねんのすがたへと変身した。

 草色くさいろのワイシャツとグレーのスラックス、
ネズミ語翻訳機能ごほんやくききのうつきのピンクのネクタイ、
そして丈長たけなが白衣はくいをまとったわし。うーむ、まさに擬人化ぎじんかフレデリック!

「アウッ! しろちゃんがまた人間に変身したー!」

 フリーナが空中で反応はんのうした。

「でも、今見るとちょっとかっこいいカモ。こらまて、ブリーチ~っ!」

 どうやら変身したわしを見ても、もう不愉快ふゆかいではないらしい。
裏世界でつのらせた怒りは、完全かんぜんにどこかへし飛んでしまったのだ。
どうもフリーナのことだけは理解りかいいつかない。

「――レンは、どっちだと思う?」

 わしは、レンのベッドにどうどうと腰かけた。

「どっちって――オレは、人間のすがたの方が好きかな、とか?」

「それは、おぬしの感情かんじょうがまざっておる可能性かのうせいが高いのう」

 わしはピンクのネクタイがすこしたるんでいるのに気がつき、
両手でぴんとととのえてみせた。

「じゃあ、実際じっさいどうなのさ」レンはちょっとむくれながら聞いた。

「それは、いまのわしにも分からんのう。
生まれ持ったネズミの体も、かみにあたえられた人間の体も、
長い探求たんきゅうの旅のなかでおおいに役立やくだってきた。ただそれだけじゃ」

「じゃあさ」レンがつづけて聞いてきた。
「フラップとブリーチ、どっちのほうが好き? オレはフラップが好きかな」

 わしに聞き返されるのを見越みこして、先手せんてをうったようだ。

「ふうむ。わしは断然だんぜん、ブリーチしじゃ!
あいつはわしの分身ぶんしんみたいなもんじゃからなあ。よい友人ゆうじんになれそうじゃし。
わしはブリーチにめられた力を、徹底的てっていてきに解き明かしてやるつもりじゃ!」

 子どもみたいに体をゆらしながら、
にぎったこぶしを交互こうごにつきあげるわしを見て、レンが「ふふっ」と笑った。

「うん、どうした?」

 レンは、くるりと体のむきを変えて、もたれの上に両腕りょううでをおいた。

「しろさんいま、すごく楽しそうにしてるなって。
そしたら、はじめてしろさんと会った時のことを思い出してさ。
なんかなつかしくなっちゃって――思いかえせば、
今日までいろんな冒険ぼうけんしてきたなあ」

「わしも、こんなにドラギィがえるとは思わなんだぞ。
一度、過去かこのドラギィたちの研究データを見返してみるかのう?
今までとはまたちがった見え方になるじゃろう。
レンもいっしょにどうじゃ?」

「まあ、気がむいたらね。
これからも、面白おもしろいことがいっぱいきたらいいなあ」

「そりゃあ、起こるじゃろう。わしとドラギィたちがいるかぎりな!
レンよ、世界は目に見えるものだけではないことは分かっておるじゃろう。
むしろ、おぬしがのぞみさえすれば、想像そうぞうするこころうしないさえしなければ、
世界は無限むげんに広がってゆくのじゃ。いつ、いかなる時もな」

 にぎやかで、とてもおだやかな夜だった。どの世界での思い出にもけていない。
たのしい仲間なかまがいる――それだけで、どんな世界の夜でも、
心の中にあたたかく光かがやく青春せいしゅん平和へいわのワンシーンが生まれていく。


 ――いろいろとあったが、
今回はわしのミスが思いのほかドラギィ研究の進展しんてんにつながった。
レンの部屋にも、ブリーチのという新しい仲間がくわわり、
今までよりもいっそうニギヤカになったのは目にもあきらかだ。
おそらくほかにもべつのドラギィがやってくる可能性かのうせいはあるが、
今はじっくりと過去かこのドラギィ共棲記録きょうせいきろくをふり返ってみようと思う。

 ここまで長大ちょうだい文章記録ぶんしょうきろくとなってしまったが、
最後さいごまでんでくれた貴君きくんには心から感謝かんしゃ言葉ことばをのべておきたい。
どうも、ありがとう!

――そしてかなうなら、これからのドラギィ研究をしすすめるべく、
わがフレデリック・ラボにカンパのご協力きょうりょくをおねがいしたい。
いまなら天竺てんじくチーズ試食ししょくサービスも実施中じっしちゅうである!

 では、さらば。またいずれ。


                             次章へ続く――
 
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