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〈フレデリック/しろさん編〉
第九話 3
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『しっかり者のフラップと、お調子者のブリーチ。
中身はちがえど、ふたりでひとり。たがいにないものを持っている。』
**************************************
「ワォーウッ! へへっ、ブリーチさまの参上だぁ! おどろいただろ」
両手を交互に上へつきあげながら、躍るようにアピールするブリーチ。
彼はいつにもまして上機嫌な様子でニカニカ笑っていた。
「これって、どういうこと!?」と、ユカが言った。
「どうもこうもないぜ、ユカちゃん。つまり、こういうことさ。
オレさまは消えてなかったってハナシ! ワゥッ!」
ブリーチは、ユカの顔の前まで飛んできて、両手を腰にそえた。
「もしかして、これもフリーナのスパークのおかげ?」
「えっ、ウソ――ッ!?」フリーナが両手をほほに当てている。
「アタシの電気って、こんなことまでできちゃうの?」
「まったく、キミというやつは神秘的、あっいや――」
フレディがあわてて言葉をあらためた。
「おそろしいやつだな。ぼくにもわけが分からない」
「なになに」タクが面白そうにふみこんできた。
「なんでちょっとはずかしそうなの?
さっきから、フリーナがそばにいると様子が変だよね」
「あの、それはだね、その、いろいろと――」
フレディは、フリーナのすがたをチロチロと見ていた。
明らかに、フリーナから突然の告白をうけたことを気にしている。
「わかった! チューしたいんだろ! チュー!」
ジュンが突拍子もないことを言いだし、フレディはぎょっとした。
「えっ、チュー?」フリーナが反応する。
「いやーん、いまここでやるのは、その――まいっちゃうなあ」
フリーナがむずがゆそうに体をひねる様子を、
フレディはどぎまぎしながらながめていた。
「ああもう、よけいなハナシはいいから!」ブリーチが大声でさえぎる。
「とにかく、今日からオレたちは――ああ、オレとフラップはって意味な――
さっきみたいに自由に入れかわることができるようになったみたいなんだ。
ほら、こーんなふうに!」
ブリーチの体が、赤色の光の渦につつまれた。
一瞬ののち、光のなかから現れたのは、フラップだった。
「――あはは。まあ、こういう具合でして」
フラップは、なんだか複雑な顔をしていた。
うれしいような、こまったような、自分でも何がなにやらという様子だった。
「お、おどろいたのう!」わしは、いつの間にか腰をぬかしていた。
「どこまでも不思議な連中じゃな、ドラギィというやつは!」
わしが話すあいだにも、フラップがまた白い光につつまれ、
ブリーチと入れかわった。ブリーチは、フリーナのそばへ行ってこう言った。
「ありがとな。お前は一生の恩じんだぜ」
「ワゥ!? ああ、そう……えへへへっ」
フリーナがでろんと笑った。
理屈なんてなんにも分かっていないだろうに、えらく吞気なやつである。
「あんたもありがとな! あんたがいなかったら、オレは生まれなかったんだ」
「――いま、わしに言ったのか? ふっ、やっとありがたみを理解したか。
せっかくひろった命なんじゃ。なにか異変を感じたら、すぐに言うんじゃぞ」
赤い光が渦まいて、またフラップに変わった。ちょっと疲れた顔だった。
「わふぅ。勝手に入れかわらないでくださいよ、もう」
*
これからうさみ町へ帰るのは、時間がかかりそうだった。
なにしろ、ドラギィたちはもう大きくなるエネルギーもなく、
町で食料を調達しようにも、この深夜の時間ではどの店も閉まっている。
しかし、子どもたちはもしもの時に備えて、腕に『チヂミバンド』をつけていた。
小さくなってドラギィたちに乗れば、なんとか空を飛んで家に帰れそうだ。
わしはフラップに抱っこしてもらえばすむこと――不本意だったけれども。
ただひとつ、大変だったのはフラップのことだった。
彼はレンを背中に乗せて飛んでいたのだが、
その間じゅう、ブリーチが何度も勝手に入れかわってきた。
「ワゥ―ッ! やっぱり気分がいいぜ、生きていられるってのは。
これからはオレとお前、ふたりの力でもり上がっていこうぜ!」
「も、もり上がるって――ぼくはそういうの得意じゃないですよ。
キミみたいに、おいそれと大さわぎできない性格なんですから」
「つれないやつだなあ。いいか、オレはお前で、お前はオレなんだ。
心ひとつ変われば、お前だってオレみたいに熱くなれるんだぜ」
「熱くなって、レンくんのお部屋をちらかすんですか?
絶対いやです! ワンッ!」
「へへっ、オレはお前とちがって、火だってちゃんとふけるんだぜ。
なんだったら、コツを教えてやってもいいんだけどなあ」
「ありがたい申し出ですけど、あんまり勝手に入れかわらないでくださいよ。
知らないあいだにオネショしてるとか、いやですからね」
「ガウ――ッ! だれがオネショするんだ。バッカにすんな!」
おかげで、レンの尻の下では、
白と赤の光がせわしなく明滅する光景がずっとつづいていた。
まったく仲がいいのか、悪いのか、おかしな連中だ。
しっかり者のフラップと、お調子者のブリーチ。
中身はちがえど、ふたりでひとり。たがいにないものを持っている。
そして、わしはこの結末を心から嬉しく思っている。
わしの作った薬と、わしのうっかりからはじまった、今回の大事件。
わしは、自分の発明のせいでだれかが不幸になったりしないよう、
日ごろから細心の注意をはらっている。
そんな日々の努力が、今回もわしを裏切ることはなかった。
ああ、嬉しくないわけがない。わしは世界一ハッピーなネズミである。
中身はちがえど、ふたりでひとり。たがいにないものを持っている。』
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「ワォーウッ! へへっ、ブリーチさまの参上だぁ! おどろいただろ」
両手を交互に上へつきあげながら、躍るようにアピールするブリーチ。
彼はいつにもまして上機嫌な様子でニカニカ笑っていた。
「これって、どういうこと!?」と、ユカが言った。
「どうもこうもないぜ、ユカちゃん。つまり、こういうことさ。
オレさまは消えてなかったってハナシ! ワゥッ!」
ブリーチは、ユカの顔の前まで飛んできて、両手を腰にそえた。
「もしかして、これもフリーナのスパークのおかげ?」
「えっ、ウソ――ッ!?」フリーナが両手をほほに当てている。
「アタシの電気って、こんなことまでできちゃうの?」
「まったく、キミというやつは神秘的、あっいや――」
フレディがあわてて言葉をあらためた。
「おそろしいやつだな。ぼくにもわけが分からない」
「なになに」タクが面白そうにふみこんできた。
「なんでちょっとはずかしそうなの?
さっきから、フリーナがそばにいると様子が変だよね」
「あの、それはだね、その、いろいろと――」
フレディは、フリーナのすがたをチロチロと見ていた。
明らかに、フリーナから突然の告白をうけたことを気にしている。
「わかった! チューしたいんだろ! チュー!」
ジュンが突拍子もないことを言いだし、フレディはぎょっとした。
「えっ、チュー?」フリーナが反応する。
「いやーん、いまここでやるのは、その――まいっちゃうなあ」
フリーナがむずがゆそうに体をひねる様子を、
フレディはどぎまぎしながらながめていた。
「ああもう、よけいなハナシはいいから!」ブリーチが大声でさえぎる。
「とにかく、今日からオレたちは――ああ、オレとフラップはって意味な――
さっきみたいに自由に入れかわることができるようになったみたいなんだ。
ほら、こーんなふうに!」
ブリーチの体が、赤色の光の渦につつまれた。
一瞬ののち、光のなかから現れたのは、フラップだった。
「――あはは。まあ、こういう具合でして」
フラップは、なんだか複雑な顔をしていた。
うれしいような、こまったような、自分でも何がなにやらという様子だった。
「お、おどろいたのう!」わしは、いつの間にか腰をぬかしていた。
「どこまでも不思議な連中じゃな、ドラギィというやつは!」
わしが話すあいだにも、フラップがまた白い光につつまれ、
ブリーチと入れかわった。ブリーチは、フリーナのそばへ行ってこう言った。
「ありがとな。お前は一生の恩じんだぜ」
「ワゥ!? ああ、そう……えへへへっ」
フリーナがでろんと笑った。
理屈なんてなんにも分かっていないだろうに、えらく吞気なやつである。
「あんたもありがとな! あんたがいなかったら、オレは生まれなかったんだ」
「――いま、わしに言ったのか? ふっ、やっとありがたみを理解したか。
せっかくひろった命なんじゃ。なにか異変を感じたら、すぐに言うんじゃぞ」
赤い光が渦まいて、またフラップに変わった。ちょっと疲れた顔だった。
「わふぅ。勝手に入れかわらないでくださいよ、もう」
*
これからうさみ町へ帰るのは、時間がかかりそうだった。
なにしろ、ドラギィたちはもう大きくなるエネルギーもなく、
町で食料を調達しようにも、この深夜の時間ではどの店も閉まっている。
しかし、子どもたちはもしもの時に備えて、腕に『チヂミバンド』をつけていた。
小さくなってドラギィたちに乗れば、なんとか空を飛んで家に帰れそうだ。
わしはフラップに抱っこしてもらえばすむこと――不本意だったけれども。
ただひとつ、大変だったのはフラップのことだった。
彼はレンを背中に乗せて飛んでいたのだが、
その間じゅう、ブリーチが何度も勝手に入れかわってきた。
「ワゥ―ッ! やっぱり気分がいいぜ、生きていられるってのは。
これからはオレとお前、ふたりの力でもり上がっていこうぜ!」
「も、もり上がるって――ぼくはそういうの得意じゃないですよ。
キミみたいに、おいそれと大さわぎできない性格なんですから」
「つれないやつだなあ。いいか、オレはお前で、お前はオレなんだ。
心ひとつ変われば、お前だってオレみたいに熱くなれるんだぜ」
「熱くなって、レンくんのお部屋をちらかすんですか?
絶対いやです! ワンッ!」
「へへっ、オレはお前とちがって、火だってちゃんとふけるんだぜ。
なんだったら、コツを教えてやってもいいんだけどなあ」
「ありがたい申し出ですけど、あんまり勝手に入れかわらないでくださいよ。
知らないあいだにオネショしてるとか、いやですからね」
「ガウ――ッ! だれがオネショするんだ。バッカにすんな!」
おかげで、レンの尻の下では、
白と赤の光がせわしなく明滅する光景がずっとつづいていた。
まったく仲がいいのか、悪いのか、おかしな連中だ。
しっかり者のフラップと、お調子者のブリーチ。
中身はちがえど、ふたりでひとり。たがいにないものを持っている。
そして、わしはこの結末を心から嬉しく思っている。
わしの作った薬と、わしのうっかりからはじまった、今回の大事件。
わしは、自分の発明のせいでだれかが不幸になったりしないよう、
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