DRAGGY!ードラギィ!ー【フラップ編(リライト)2/18連載開始!】

Sirocos(シロコス)

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〈フロン編〉

13『赤黄青の不思議なコウモリ、がんばる』①

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 こうして、黒金魚事件は世間に知られることもなく、幕を閉じました。
レンとユカ、そしてドラギィたちに囲まれた、ヨシとルドルフとその手下たちは、
言うまでもなく悔しがって、座りこんだままじっとこちらをにらみつけていました。
(猫の手下たちは、逃げたドラギィたちを見つけるために、
だれがどこを探すかを決めるのにもたついて、
ずっと張り合いをしていたようなのです。なんだかかわいいですね)

「……なんや知らんけどお前ら、仲直りできたみたいなや。ホンマよかったわ」

 ルドルフは言葉とは裏腹に、渋い表情をして言いました。

「けど、ワイらのほうはこのザマや。今日のところは負けってことにしたるさかい、
次はこうはいかへんってことをよぅ覚えとけ」

「「「にゃーーー」」」手下たちがふてぶてしい顔で泣きました。

 けれど、ただひとりだけこの結果を受け入れられずにいました。

「……まだ終わってないぞ」

 ヨシは、まだレンとドラギィたちに挑みかかりたい様子でした。

「もう終わったんだって。少なくとも今日は」レンはさらりと言い返します。
「くろさま(ルドルフ)と手下の子たちは、これでも白旗上げてるのに。
まだやるって言うんなら、フリーナにスパークしてもらっちゃうけどな」

「アタシの電気は、元気もりもりの電気だヨ!
ま、アンタはどうなっちゃうか知らないけどネ」

 フリーナが両手を腰にすえて、『アンタ』なんて呼び方をするのは、
相当相手のことを嫌に感じている場合だけでした。

 ヨシにとって、これは屈辱でした。
フレドリクサスはおろか、どのドラギィも得られず、
しかもレンとのはじめての取っ組み合いでは力の差で負けてしまったのです。
油断しなければ……ふいうちさえ食らわなければ、こうはならなかったのに。

「どうしてキミに負けたのか、分からないな」

「オレ、お前にないものを持ってるから。……言うと恥ずかしいけど」

「へぇ? キミにあって、ぼくにないもの、ねぇ」

 ここで、フラップがズバリ言いました。
「それは、大好きな友達のことですよ! ぼくには分かります」

 ――少し、まわりの温度が下がってしまったような気がしました。
全員の視線が、フラップひとりに集中しています。
フラップは、この妙な空気になんだか気まずくなって、急ぎ弁解しました。

「……ぼく、変なこと言ってませんよう!」

「ああ、たしかに言ってない。言わなくてもよかっただけで」

 と、真面目に答えたのは、フレディでした。

「ヨシくんを笑わせるつもりで言ったのなら、別だがね」

「…………」

 意外なことに、ヨシがうつむいて、考えこんでいるように見えました。

 ヨシに、これといって連れ立っている友達が一人もいないことは、
レンもユカも知っている事でした。もちろん、ドラギィたちも知っています。

だから、ヨシのこの反応は、みんな意外に思ったのです。

でもそれは、ヨシが『友達』というものを、
スマホの電卓アプリよりも必要のないものだと思っていると、
日頃から感じていたからなのでした――。


 ゴゴゴゴゴゴ……。ゴゴゴゴゴゴゴォ……。


 どこからか、地鳴りのような低く重たい音が響いてきました。
地震でしょうか? でも、地面がグラグラと揺れるような感覚はありません。
音だけが……ゴツゴツとしたこの小さな孤島が割れるような音だけが、
寄せては返すさざ波のように、一行に重たくのしかかってきます。





 そして次の瞬間、あたりはフッ……と真っ暗になりました。





 突然のことでした。空の上からでもなく、足元からわき上がるのでもなく、
一行が集まる場所の中心から闇が……暗黒が広がったのです。何の前触れもなく。

「わわっ、なんだ!?」

 残されたのは、ドラギィたちだけでした。
他のみんなは、まるで闇そのものに飲みこまれてしまったかのように、
跡形もなく姿を消していました。

「レンくんたちが消えちゃったよ!」

「ナニ? ねぇ、これナニ……?」

 フラップとフリーナは、おびえながらあたりをキョロキョロ見回しました。
レンたちだけではありません。まわりの景色もなくなっています。
見上げれば空の青さもなく、太陽の光も閉ざされていました。


 完全に真っ暗闇の中。上も下も、右も左も、一切が消えてなくなりました。


 フリーナがつぶやきます。「これって、裏側の世界のワナ?」

「分からない」フレディが震えながら答えます。
「まさか、あのくろさまだか、デンガナだかよく分からない猫の仕業なのか?」

 三匹が強い不安にさいなまれていると、
突然、暗闇のむこうから人を呼ぶ声が聞こえてきました。

「ヨーシー! おぉーい、返事せえー!」

 ルドルフの声でした。どうやら彼はまだ、闇に飲まれていないようです。

「どどど、どないなっとんねん、この真っ暗! みんなどこやねん!
こんなん知らんわ……だれの仕業やねんいったい」

 彼の声に混じって、手下の猫たちがにゃあにゃあと不安そうに
鳴き立てる声もしてきます。この闇は、彼らでも想定外だったようです。


 ゴゴゴゴゴゴゴォ……!


 また地鳴りの音です。先ほどよりも近くなっているようでした。
本当に地鳴りの音なのでしょうか?
なんだかまるで、生きて何かがうごめいているような……。





 フゥッ……! 暗闇が去りゆき、あたりはまた明るくなりました。





 先ほどまでとは、景色が様変わりしていました。
レンとユカは、いません。ヨシもいません。さらにルドルフとその手下たちも。

 空は暗く重たい雲におおわれ、
湿り気をおびた潮風が激しく孤島を吹き荒らしていたのです。
岩の間から、白波が高々と打ち寄せていました。


 それから、暗い空のむこうから何かが飛んできたのです。
とても巨大なもの……黒くて丸い頭と、
幽霊のボロ布のように揺らめく長い尾びれ。

 そんな、あれはまさか……ドラギィたちは目を疑いました。





 その巨大な黒いものとは、まぎれもなく黒金魚でした。





 黒金魚の正体は、
空飛ぶ乗り物に乗ったルドルフの手下たちが化けたもののはずでした。
ドラギィたちはそれを知っています。
ただ、少し様子が違っているのが、ヒレの縁が青色に光っているところです。
丸い頭の部分にも、青い光の斑点があるのが見えました。
その様子は、まるで深海魚のようです。

 しかも、黒金魚の頭に、二つの目がありました。
閉じていたその両目は、ドラギィたちの姿を認めてまぶたをゆっくりと見開き、
気味の悪いヘビのような黄色い目で、こちらを見下ろしてきます。


「ひいぃ!」案の定、フレディが悲鳴を上げました。



 巨大な黒金魚はフラップたちを見下ろし、
次の瞬間、地鳴りにも似た低く重々しい声を発しました。


 ――われらは、この海を治めし、黒金魚!


「「「へ?」」」

 ドラギィたちは、ポカンとしました。
あの黒金魚は、自分で自分を『黒金魚』だと名乗ったのです。
なんだか……おかしな感じがしてなりません。


 ――なんじら、三匹の若きドラギィたちよ。

   愛する人間たちの身は、われらがあずかった!


「あずかったって……ああっ!」

 フラップは指をさしました。
黒金魚の額に当たるであろう場所に、緑色の球体が貼りついているのが見えます。
その中に、三匹は今たしかに見たのです――レンの姿を。

 レンは、緑の球体の中で浮き沈みしながら、
見えないイスに座っているみたいにじっとしていました。
眠っているのでしょうか? まぶたを閉じてうつむいています。

「レンくぅ~~~~~ん!!」

 フラップが呼びかけても、返事はありません。


 ――取り戻したくば、これから与える試練を乗り越えてみせよ!


「シレン~!?」フリーナはがく然としました。
「ちょっと~! いったいどういうつもりナノ~?」

「ちょっと待ってくれ!」フレディが叫びました。
「今、と言ったよな? ということは――」


 ――いかにも! われらは三匹である! 汝らと同じくな。

   さあ、時間が押している! 試練をはじめようぞ!




 ビュオオオォォォォ~~~~!!

 出しぬけに、ドラギィたちの足元から強烈な風が巻き起こり、
三匹はたちまち空中へと押し上げられていきました。


「「「わああぁぁぁぁぁ~~~~!!」」」


 三匹を無理やりに空へと連れ去った風は、
みるみるうちにその勢いを増していって、渦を巻きながらしだいに大きくなり、
やがて、岩の孤島を丸ごと飲みこむほどの大竜巻へと変化しました。

 一寸先すら見えなくなるような、灰色の激しい風。
耳をつんざくような甲高い音に包まれながら、
三匹はバラバラになって、ぐるぐる、ぐるぐる、めちゃくちゃに振り回されました。
縦にぐるぐる、横にぐるぐる、ななめにぐるぐる……。
もう、どっちが空でどっちが海なのか、見当もつかなくなりました。
 
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