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〈フロン編〉
13『赤黄青の不思議なコウモリ、がんばる』②
しおりを挟む(だれか、だれか助けてくれ!)
フレディは半べそをかきそうになりながら、無我夢中で叫びました。
どうしてぼくらがこんな目に……そんなことを思っているうちに、
フレディは自分の身体の回転がだんだんおさまってくるのが分かりました。
ようやく、バッと翼を広げて体勢を整えると、すでに灰色の風からぬけていて、
目の前には、あの巨大な黒金魚の姿がありました。
まわりを見ると、フラップとフリーナの姿がありません。
どうやら他の二匹は違う場所へ連れ去られたようです。
そして、前に浮かんでいる巨大黒金魚の額のところを見ると、
緑色の球体の中に、別の子どもが寝かされていました。
ヨシです。間違いありません。レンではありません。
二人がすり替えられたと言うことでしょうか。それとも、
先ほどの巨大黒金魚が言ったように、これが別の巨大黒金魚になるのでしょうか。
――汝、フレドリクサス。わが怒り心頭の姿を見てもなお、
この少年を救い出さんとする意志があるか!
巨大黒金魚の身体が、頭といわずヒレと言わず、
全身が燃えるようなオレンジ色へと変色していくではありませんか。
黄緑だった二つの目が、気味の悪い毒のような紫色になり、
その両目の下には、先ほどまではなかった大きな口がバックリと、
ナイフで切り裂かれたみたいに開いていきます。
その中にはギラギラとした危険実のある鋭い歯が。
ギャアアア―――ッ!!
巨大黒金魚が、かん高い雄叫び声を上げました。
恐ろしい顔は、わけの分からない強い圧力を放っていて、
狂気じみており、そして――フレディの精神を激しく揺さぶってきます。
これまで経験してきた恐ろしい出来事、不安、封印していた嫌な記憶。
それらすべてを、次々と脳裏によみがえらせるものがありました。
フレディはたちまちすくみ上がり、石のように硬直しました。
(いけない! まるで、おびえさせ術にかけられてしまったみたいだ)
それは、大人のドラギィがたまに使う上級術の一つでした。
フレディは、何かの間違いだと思いつつ、
巨大黒金魚の妖怪のような顔から目を背け、
恐ろしさでじわじわと涙腺が崩壊してくるのを感じました。
(だめだ! 黒金魚が言っただろう。これは、試練なんだ!)
ふいに、頭の中にいるもうひとりの賢いフレディが、
そんなふうに心の中に語りかけてくるような気がしました。
そうです。これは、ただの試練なのです。こんなことで怖がっていたら、
いつまで経っても、ちっとも前に進めないじゃありませんか。
「ヨシくん……!」
フレディは、勇気を奮い立たせ、再び黒金魚と向き合いました。
ヨシにはたしかにひどい目にあわされましたが、
同じく生みの親を亡くした者同士――
彼との特別な繋がりを感じているのは、今でも同じでした。
助けないわけにはいきません。泣いてなんていられません。
だって、自分は賢いドラギィなのですから。
「ヨシくん、待ってろよ。今……今行くぞ……!」
フレディは翼に力をこめて、大きく羽ばたきました。
*
一方、フリーナも嵐の空の真ん中で、
他の二匹と離れ離れにさせられていました。
目の前に悠然と待ち構える、新たな巨大黒金魚。その額の部分には、
同じく緑色の球体に囚われの身になった、ユカが眠っていました。
「アンタ、いい加減にしてヨーッ!」
フリーナは、巨大黒金魚に激怒していました。
握った拳を振り上げつつ、おさえきれない感情でスパークを起こしかけています。
「ユカちゃん! 目を覚ましてよう~!」
何度も声をかけてみましたが、声に気づいて目を覚ます気配はありません。
あの球体は防音壁……つまり内部にはなんの音も届かないのでしょうか?
――汝、フリーナよ。われが捕らえし少女を救いたくば、
この光の印を雷のヤリでつらぬき、檻を開放してみせよ!
ユカの頭上に、大きな円で囲まれた雷マークが浮かび上がりました。
まるで立体映像で映し出されたみたいに。
――なお、空から雷を呼びよせることは、断固禁ずる。
よいか、『雷のヤリ』だ! 汝にはできるはずである!
「雷のヤリ!?」フリーナは頭を抱えました。
「なんだかよく知らないけどサ、あの術はコントロールがいるんだよう!
アタシ、まだ一度もうまくできたことないのに」
でも、つべこべ言っている暇はありません。
まだうまくできた試しがないだけで、しっかりと集中してやれば、
雷の力を束ねて、手に持つことのできる雷のヤリを作れるかもしれません。
自信はクッキーのかけらほどもありませんが。
「とにかく、やるしかないよネ。ぐぬぬぬ……!」
フリーナは、前に伸ばした両手に気持ちを集中させて、
全身に流れる電気のパワーを両手の先に流しこみました……が、
なかなか思い通りには行きません。流しこんだ力は、
たちどころに身体の中へと逆流して、あっちへこっちへ逃げ回るのです。
(えっと……『雷活用学』の授業で、どんなコツを教わったっけ。
たしか電気で何かものを作るには、頭の中に……あーん、なんだっけ!)
フリーナは、イエロー種だけが教わっていたスクールの授業を、
なけなしの記憶力を振りしぼるようにして思い出していました。
いつものフリーナなら、考えがとっちらかってしまうせいで、
すぐに投げやりになっていたでしょう。
でも今は、先ほどルドルフたちに捕まる直前に受けた妙な一撃のおかげで、
いつもと違ってなぜだか頭が、すっきりと冴えわたっていました。
(思い出した! 線をイメージするんだった!
集めたい場所に、電気を流しこむための見えない線。
それを足の裏から手のひらまで張りめぐらせるみたいにして……)
イメージした途端、自分でもびっくりするほどうまくいきそうでした。
身体から練り出した電気の力が、大人しく言うことに従って、
どんどん手のひらへと集中していくのが分かります。
「あわわわっ! これはちょっと……大きすぎカモ」
時間もかかりつつできあがったのは、
ギザギザといびつな形をした、金にまばゆく輝く一本のヤリ!
電気そのものですが、手に持って握ることのできる一本の物体なのです。
ただ……陸上競技で使うヤリと同じくらいの長さになってしまいましたから、
これは仔犬サイズには手に持つのも一苦労。
体内に残ったわずかなエネルギーで、むくっと大型犬サイズになると、
フリーナは、大切な友達であるユカの頭上で輝く雷マークをじっと見つめます。
「はじめてできたよ、雷のヤリ!
待っててね、ユカちゃん。絶対に助けてあげるから!」
片手に雷のヤリを構えながら、生まれながらに備わったドラギィの精神力で、
雷のマークを狙いすまし、一心に自分のすべてを捧げます。
「そぉれぇーーっ!!」
フリーナの投げた雷のヤリが、弧を描いて飛んでいきました。
※本日はもう一話あります!→
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