DRAGGY!ードラギィ!ー【フラップ編(リライト)2/18連載開始!】

Sirocos(シロコス)

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〈フロン編〉

13『赤黄青の不思議なコウモリ、がんばる』③

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 ――汝、フラップよ。炎を力をもって、わが氷の檻に捕らえし者を救い出せ。

   早くせねば、お前の大切な友人が凍えてしまうぞ。


「ゼェ、ゼェ……。分かってますよう。ちょっと、ゼェ、休憩してるんです」

 フラップの前にも、やっぱり巨大黒金魚は立ちはだかりました。
ただ、今目の前にいるのは、ドラギィたちが最初に会った巨大黒金魚でした。
その額の球体に閉じこめているのが、レンだと分かったからです。

 しかも、レンを閉じこめている緑色の球体は、
黒金魚の出した試練とやらのせいで、冷たく輝くような氷の膜におおわれていて、
おまけに、時間が経つとどんどん氷の厚さが増していくようでした。

 これがフラップにとって、いったいどれだけ過酷なことか。

 もちろんフラップは、炎を吹いて氷を溶かしつくし、
球体の中からレンを救い出そうとしました。
しかし、フラップは少しだけ炎を吹けるようにはなったものの、
まだ火力が心許こころもとないし、わずか数秒間しか火を吹けません。
休み休み炎を吹きつけても、焼け石に水――いいえ、氷石に火でした。

(いったい、どうしたらいいんだろう……どうしたら)

 まさに大ピンチです。
フラップは、今日ほど、自分の出来損ないぶりを思い知らされた日はありません。
大切な友だち一人、氷の中から救い出せないで、何が赤いドラギィでしょう。

(泣いちゃダメだ。泣いたら……何もできなくなっちゃう)

 心を強く持つことが、ドラギィにとって何より大事なのだと、
スカイランドのスクールで散々教わりました。
ですからフラップは、必死に考えました。どうすればあの氷を破れるのか。




〈――いいかな、フラップ。口から火を吹くのが難しい時は、
口以外をうまく使って炎の力を活用するんだ〉




 昔フロン先生が、そう教えてくれた時のことを、ふと思い出しました。
まるで小さな魔法が、フラップの頭の中に降りそそいだみたいに。




〈キミは、ドラギィの炎は口から出すのが当たり前だと思っているだろう。
でも、そうじゃないんだよ。炎は、身体の至るところから出せるんだ。
しかも、それは時に、口から吹くよりも簡単な場合がある。
これは、子どものドラギィの間ではあまり知られていないことなんだよ。
まあでも、卒業試験では、口から吹く事が課題とされているけれどね〉




「裏技だ」フラップは、小さくつぶやきました。
「フロン先生から、裏技みたいなのを教えてもらったことがあったっけ」

 でも、先生が実演してくれたわけではありません。
学校では教わらない炎の裏技を、はたして半人前のフラップができるでしょうか。

(考えてもしょうがないや! とにかくやってみよう!)

 フラップは、身体の中のにあたる、炎を生み出す器官に意識を注ぎ、
灼熱のパワーを練り出しました。
そのパワーを、口のほうではなく、試しに両手へと流しこんでみます……。
すると、自分の両手がみるみる、竜の炎に触れたみたいに熱くなり、
次第に、本当の炎をまとったような光に包まれていくのが分かりました。
フラップはレッド種です。火を吹くのが下手だとはいえ、
炎の熱のあつかい方は生まれた頃から本能で覚えていたようです。

「これで氷が溶かせるか、やってみよう……いくぞーーっ!!」

 フラップは氷の檻に飛びこんでいくと、その冷たい表面に両手を突きます。
すると、フラップの熱意のこもったような両手の熱気で、
氷の檻が大量の水滴を垂らしながら、ウソのような早さで溶けていきました。

「すごい! ぼくの中に、こんな底力が……!」

 フラップは、溶けてなくなってゆく厚い氷の膜を見つめました。
自分の持つ炎の力を、こんなふうにして利用するなんて思いもしませんでした。


 ピカーーッ!!


 フラップの両手から、太陽のようなまばゆい光が広がり、
視界を真っ白に染め上げていきました。
すべての氷が溶けた勢いで、大爆発が起きたわけではありません。
痛みはなく、身体中が祝福の光に包まれているような気がします。
フラップは、自分の置かれている状況を忘れて、
ほっとしながら光に身を預けていました。

「フラップ!」

 光のむこうから呼びかける声がしました。
今までに何度も何度も聞いた、この優しい男の子の声だけはすぐに分かりました。

「ああ、レンくぅーーん!」

 光のむこうから、レンがゆっくりと飛んできたのです。
まるでゆったりと風に乗って流れるように、満面の笑顔を浮かべて。

「助かったよ! ありがとう! さすがフラップだね」

「いやあ、ぼくは、その……ぼくは……!」

 照れくさい気持ちと、信じられない気持ちで、
フラップはどんな顔をすればいいのか迷ってしまいました。
それでも、レンを自分の胸に受け止めるためにシロクマサイズになった時には、
フラップもこれ以上ないくらいの笑顔となったのです。

 フラップとレンは、思いがけない試練に打ち勝った喜びに、
強く抱きしめ合いました。
 
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