41 / 130
秋祭り
8
しおりを挟む
「今日の鶏肉はレモンとバジル風味か。いや、肉体労働の後の食事は実に美味い」
屈託なくロドニーの持ってきた弁当にかぶりつくノエルは、年齢相応の青年の顔に戻って、健康的な食欲を取り戻していた。
「おかわりありますよ、ノエル様」
1週間前にこの温室に倒れ込んでしまってから、ノエルは、深く己の事を考えた。
己の事など考える余裕すらなかったこの数年。いや、本当は生まれてから一度も、己のことなど考えた事はなかったのかもしれない。
(神仙ユリは開花し、エリクサーは完成した。もうユージニア王女の命は危ぶまれる事はなく、王家も、実家も、神殿も、私を丁重に扱う。これが私の求めていたことだったはずだ)
だが、ノエルは幸せではなかった。
エリクサーを完成させた瞬間から手のひらを返したように扱いを変え、だが結局前と同じくノエルを利用する事だけしか考えていない連中に、ノエルは心の底から愛想が尽きたのだ。
(こんな連中から評価されたいと苦しんでいたとは、私こそ何たる愚か者だったのだろうか)
渇望していた全てが満たされた今。だがなぜ幸せではないのだろうか。
ノエルは深く、深く考えた。行き着いた結論は、たった一つだった。
(俺が欲しいものは、ベスだ。ベスと、ベスが整えてくれる空間)
ベスが温室にいた頃、凄まじい仕事の重圧で押し潰されそうだったノエルは、それでもこの温室で幸せだった。
ドラがいて、すみれが咲いていて、薬草が育って、ナナちゃんがぶらぶら貴重な実を食い散らかしている、この温室が。どの植物の小さな声も、ベスが聞き取って、叶えてくれる。
どの命も大切に、平等に伸び伸びしているこの空間。
その真ん中で、光に満ちたこの空間で、ベスが笑顔で振り向いてくれる。
ー何もかも、満たされていたー
ノエルはふわりと近くの薬草に鑑定魔法をかけた。
「B級」
エズラの弟子の、草魔法の専門家の世話ようには良い状態ではない。
だが、ノエルは草魔法を使う気も、エズラの弟子を呼び戻す気もなかった。
(俺の手で、温室を整える)
ノエルは、生まれて初めて自分が心から望むものを手に入れようとしているのだ。
たとえそれが他人からすれば、愚かしい事であっても、ノエルはもう迷わない。
「所でいつまでこうしてる気ですかノエル様?」
ロドニーが適当にそのあたりの花を摘んで、子供がするようにその蜜を吸っていた。
ノエルは植物の世話をしながらぶっきらぼうに答えた。
「いつまでも、だ。俺のせいで命の危機に瀕していた王女はお目覚めになった。これ以上は俺はもう、何かを急ぐ必要もないし、何かを必死で求める必要もない。俺はもう、この国には十分尽くしたはずだ」
「まさかその若さで引退するおつもりですか?」
ロドニーが心配そうに尋ねる。
「勤めは果たしたから、解放してくれと俺は言っているのに、あいつらが辞めさせてたまるかと押しかけてくるんだ。まだ俺に働かせるつもりらしい」
ノエルはこの温室にしばらく篭るとすぐに、紙魔法と通信魔術を使って、各方面に辞任状を送りつけていた。
議会も学会も、医局はもとより、侯爵家への絶縁状、魔術協会からの脱退。
自宅の使用人には十分な退職金と紹介状を渡して、仕事を辞してもらった。
こうして改めて辞任状や退会の手続きなどを書いて身辺整理をしてみると、自分が気がつかない間にどれほどにつまらない組織や派閥などに雁字搦めになっていたのか、失笑が漏れる。
(全てが、少しでもあんな連中に認めてもらいたかったが為かと思うと、なんという時間の無駄遣いだったものだ)
その後のこの騒ぎだ。
誰一人、ノエルが何を望んでいるかなどを心にかけるものなどいない。ノエルから何が搾り取れるか。それだけだ。
ベスは何もノエルに求めなかった。ただただノエルの心と体が望むことを聞いてくれていた。
「‥この魔術院はどうするつもりですか」
ノエルが唯一、辞職の願いを出していなかったのは、この魔術院の責任者の立場だ。
ノエルの血肉を分けた子供のようなこの大切な魔術院の存在。そして、魔術院の面々。
魔術院の皆は、ノエルに何も言わない。
どれほどノエルが厳しい年月を一人で耐えてきたのかを、つぶさに横で見守ってきたのだ。
ただ、温室に引きこもるノエルに時々こうやって、順番に差し入れをするだけだ。
ノエルはため息をつく。
「‥ここだけは流石に惜しいが、ナーランダにでもくれてやるよ。お前達を決して悪いようにはしないはずだ」
「これまでの全てを手放して、これからノエル様はこれからどうするんですか? ユージニア王女は、それからベスは、どうするんですか?」
ロドニーは真剣な顔をして、聞いた。
「王女とは、元々家の都合で結ばれた縁だ。お目覚めになった今、平民になる私を許していただくしか、ない。それに、俺の心には王女以外の人が住んでしまっている。そんな不誠実な男の元に嫁ぐなど、あの方こそ不幸だというもの」
赤茶色いおさげが、ノエルの心に眩しく輝く。
「ノエル様‥」
「ベスには本当に悪い事をした。俺の早とちりで酷い目に合わせた上に、俺の心が弱いがために、俺はベスを傷つけた。もしも許されるのであれば、俺はこの手でこの温室を整えて、ベスに見てほしいんだ。そして、ベスに本当の俺を受け入れて欲しいと望んでいる」
ノエルは薬草についていた、てんとう虫を大切そうに捕まえた。
「なあロドニー。俺は理解したんだ。なぜベスの温室はあれほど心地よく、あれほど素晴らしいのか。ベスは緑の指を持っている。ベスの温室は、ベスの心と魂の表れだ。だからこそあれほど美しく、あれほど心地よい。俺は緑の指は持たないが、俺の精一杯の誠実な心で、この温室を整えてみる。そして、俺の心をベスに見て欲しいんだ」
「もし俺の整えた温室をベスに愛してもらえるなら、俺はベスに、伝えたい事がある」
急に二人は、頑強に構築された結界の一部が壊れる気配を感じ取った。
ノエルとロドニーは攻撃体制に入る。
ノエルが構築した結界は、国境に使われている種類のものと同じほどの頑強なものだ。
これを一部であっても壊すことができる人間は、限られている。
(王族・・)
ノエルは唇を噛む。
「お前達はそこで待っていなさい」
二人の侍女を結界の外で待たせて、一人の若い女性が何事もないかのように、ノエルの構築した国境レベルの頑強さの結界の中に入ってくる。
「ユージニア王女」
第三王女ユージニア。ノエルの婚約者。
ノエルとロドニーは、魔術師の最敬礼を、とった。
屈託なくロドニーの持ってきた弁当にかぶりつくノエルは、年齢相応の青年の顔に戻って、健康的な食欲を取り戻していた。
「おかわりありますよ、ノエル様」
1週間前にこの温室に倒れ込んでしまってから、ノエルは、深く己の事を考えた。
己の事など考える余裕すらなかったこの数年。いや、本当は生まれてから一度も、己のことなど考えた事はなかったのかもしれない。
(神仙ユリは開花し、エリクサーは完成した。もうユージニア王女の命は危ぶまれる事はなく、王家も、実家も、神殿も、私を丁重に扱う。これが私の求めていたことだったはずだ)
だが、ノエルは幸せではなかった。
エリクサーを完成させた瞬間から手のひらを返したように扱いを変え、だが結局前と同じくノエルを利用する事だけしか考えていない連中に、ノエルは心の底から愛想が尽きたのだ。
(こんな連中から評価されたいと苦しんでいたとは、私こそ何たる愚か者だったのだろうか)
渇望していた全てが満たされた今。だがなぜ幸せではないのだろうか。
ノエルは深く、深く考えた。行き着いた結論は、たった一つだった。
(俺が欲しいものは、ベスだ。ベスと、ベスが整えてくれる空間)
ベスが温室にいた頃、凄まじい仕事の重圧で押し潰されそうだったノエルは、それでもこの温室で幸せだった。
ドラがいて、すみれが咲いていて、薬草が育って、ナナちゃんがぶらぶら貴重な実を食い散らかしている、この温室が。どの植物の小さな声も、ベスが聞き取って、叶えてくれる。
どの命も大切に、平等に伸び伸びしているこの空間。
その真ん中で、光に満ちたこの空間で、ベスが笑顔で振り向いてくれる。
ー何もかも、満たされていたー
ノエルはふわりと近くの薬草に鑑定魔法をかけた。
「B級」
エズラの弟子の、草魔法の専門家の世話ようには良い状態ではない。
だが、ノエルは草魔法を使う気も、エズラの弟子を呼び戻す気もなかった。
(俺の手で、温室を整える)
ノエルは、生まれて初めて自分が心から望むものを手に入れようとしているのだ。
たとえそれが他人からすれば、愚かしい事であっても、ノエルはもう迷わない。
「所でいつまでこうしてる気ですかノエル様?」
ロドニーが適当にそのあたりの花を摘んで、子供がするようにその蜜を吸っていた。
ノエルは植物の世話をしながらぶっきらぼうに答えた。
「いつまでも、だ。俺のせいで命の危機に瀕していた王女はお目覚めになった。これ以上は俺はもう、何かを急ぐ必要もないし、何かを必死で求める必要もない。俺はもう、この国には十分尽くしたはずだ」
「まさかその若さで引退するおつもりですか?」
ロドニーが心配そうに尋ねる。
「勤めは果たしたから、解放してくれと俺は言っているのに、あいつらが辞めさせてたまるかと押しかけてくるんだ。まだ俺に働かせるつもりらしい」
ノエルはこの温室にしばらく篭るとすぐに、紙魔法と通信魔術を使って、各方面に辞任状を送りつけていた。
議会も学会も、医局はもとより、侯爵家への絶縁状、魔術協会からの脱退。
自宅の使用人には十分な退職金と紹介状を渡して、仕事を辞してもらった。
こうして改めて辞任状や退会の手続きなどを書いて身辺整理をしてみると、自分が気がつかない間にどれほどにつまらない組織や派閥などに雁字搦めになっていたのか、失笑が漏れる。
(全てが、少しでもあんな連中に認めてもらいたかったが為かと思うと、なんという時間の無駄遣いだったものだ)
その後のこの騒ぎだ。
誰一人、ノエルが何を望んでいるかなどを心にかけるものなどいない。ノエルから何が搾り取れるか。それだけだ。
ベスは何もノエルに求めなかった。ただただノエルの心と体が望むことを聞いてくれていた。
「‥この魔術院はどうするつもりですか」
ノエルが唯一、辞職の願いを出していなかったのは、この魔術院の責任者の立場だ。
ノエルの血肉を分けた子供のようなこの大切な魔術院の存在。そして、魔術院の面々。
魔術院の皆は、ノエルに何も言わない。
どれほどノエルが厳しい年月を一人で耐えてきたのかを、つぶさに横で見守ってきたのだ。
ただ、温室に引きこもるノエルに時々こうやって、順番に差し入れをするだけだ。
ノエルはため息をつく。
「‥ここだけは流石に惜しいが、ナーランダにでもくれてやるよ。お前達を決して悪いようにはしないはずだ」
「これまでの全てを手放して、これからノエル様はこれからどうするんですか? ユージニア王女は、それからベスは、どうするんですか?」
ロドニーは真剣な顔をして、聞いた。
「王女とは、元々家の都合で結ばれた縁だ。お目覚めになった今、平民になる私を許していただくしか、ない。それに、俺の心には王女以外の人が住んでしまっている。そんな不誠実な男の元に嫁ぐなど、あの方こそ不幸だというもの」
赤茶色いおさげが、ノエルの心に眩しく輝く。
「ノエル様‥」
「ベスには本当に悪い事をした。俺の早とちりで酷い目に合わせた上に、俺の心が弱いがために、俺はベスを傷つけた。もしも許されるのであれば、俺はこの手でこの温室を整えて、ベスに見てほしいんだ。そして、ベスに本当の俺を受け入れて欲しいと望んでいる」
ノエルは薬草についていた、てんとう虫を大切そうに捕まえた。
「なあロドニー。俺は理解したんだ。なぜベスの温室はあれほど心地よく、あれほど素晴らしいのか。ベスは緑の指を持っている。ベスの温室は、ベスの心と魂の表れだ。だからこそあれほど美しく、あれほど心地よい。俺は緑の指は持たないが、俺の精一杯の誠実な心で、この温室を整えてみる。そして、俺の心をベスに見て欲しいんだ」
「もし俺の整えた温室をベスに愛してもらえるなら、俺はベスに、伝えたい事がある」
急に二人は、頑強に構築された結界の一部が壊れる気配を感じ取った。
ノエルとロドニーは攻撃体制に入る。
ノエルが構築した結界は、国境に使われている種類のものと同じほどの頑強なものだ。
これを一部であっても壊すことができる人間は、限られている。
(王族・・)
ノエルは唇を噛む。
「お前達はそこで待っていなさい」
二人の侍女を結界の外で待たせて、一人の若い女性が何事もないかのように、ノエルの構築した国境レベルの頑強さの結界の中に入ってくる。
「ユージニア王女」
第三王女ユージニア。ノエルの婚約者。
ノエルとロドニーは、魔術師の最敬礼を、とった。
804
あなたにおすすめの小説
美人同僚のおまけとして異世界召喚された私、無能扱いされ王城から追い出される。私の才能を見出してくれた辺境伯様と一緒に田舎でのんびりスローライ
さくら
恋愛
美人な同僚の“おまけ”として異世界に召喚された私。けれど、無能だと笑われ王城から追い出されてしまう――。
絶望していた私を拾ってくれたのは、冷徹と噂される辺境伯様でした。
荒れ果てた村で彼の隣に立ちながら、料理を作り、子供たちに針仕事を教え、少しずつ居場所を見つけていく私。
優しい言葉をかけてくれる領民たち、そして、時折見せる辺境伯様の微笑みに、胸がときめいていく……。
華やかな王都で「無能」と追放された女が、辺境で自分の価値を見つけ、誰よりも大切に愛される――。
【完結】旦那様、どうぞ王女様とお幸せに!~転生妻は離婚してもふもふライフをエンジョイしようと思います~
魯恒凛
恋愛
地味で気弱なクラリスは夫とは結婚して二年経つのにいまだに触れられることもなく、会話もない。伯爵夫人とは思えないほど使用人たちにいびられ冷遇される日々。魔獣騎士として人気の高い夫と国民の妹として愛される王女の仲を引き裂いたとして、巷では悪女クラリスへの風当たりがきついのだ。
ある日前世の記憶が甦ったクラリスは悟る。若いクラリスにこんな状況はもったいない。白い結婚を理由に円満離婚をして、夫には王女と幸せになってもらおうと決意する。そして、離婚後は田舎でもふもふカフェを開こうと……!
そのためにこっそり仕事を始めたものの、ひょんなことから夫と友達に!?
「好きな相手とどうやったらうまくいくか教えてほしい」
初恋だった夫。胸が痛むけど、お互いの幸せのために王女との仲を応援することに。
でもなんだか様子がおかしくて……?
不器用で一途な夫と前世の記憶が甦ったサバサバ妻の、すれ違い両片思いのラブコメディ。
※5/19〜5/21 HOTランキング1位!たくさんの方にお読みいただきありがとうございます
※他サイトでも公開しています。
【12月末日公開終了】有能女官の赴任先は辺境伯領
たぬきち25番
恋愛
辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26)
ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。
そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。
そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。
だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。
仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!?
そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく……
※お待たせしました。
※他サイト様にも掲載中
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない
朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。
実は家事万能な伯爵令嬢、婚約破棄されても全く問題ありません ~追放された先で洗濯した男は、伝説の天使様でした~
空色蜻蛉
恋愛
「令嬢であるお前は、身の周りのことは従者なしに何もできまい」
氷薔薇姫の異名で知られるネーヴェは、王子に婚約破棄され、辺境の地モンタルチーノに追放された。
「私が何も出来ない箱入り娘だと、勘違いしているのね。私から見れば、聖女様の方がよっぽど箱入りだけど」
ネーヴェは自分で屋敷を掃除したり美味しい料理を作ったり、自由な生活を満喫する。
成り行きで、葡萄畑作りで泥だらけになっている男と仲良くなるが、実は彼の正体は伝説の・・であった。
夫に顧みられない王妃は、人間をやめることにしました~もふもふ自由なセカンドライフを謳歌するつもりだったのに、何故かペットにされています!~
狭山ひびき
恋愛
もう耐えられない!
隣国から嫁いで五年。一度も国王である夫から関心を示されず白い結婚を続けていた王妃フィリエルはついに決断した。
わたし、もう王妃やめる!
政略結婚だから、ある程度の覚悟はしていた。けれども幼い日に淡い恋心を抱いて以来、ずっと片思いをしていた相手から冷たくされる日々に、フィリエルの心はもう限界に達していた。政略結婚である以上、王妃の意思で離婚はできない。しかしもうこれ以上、好きな人に無視される日々は送りたくないのだ。
離婚できないなら人間をやめるわ!
王妃で、そして隣国の王女であるフィリエルは、この先生きていてもきっと幸せにはなれないだろう。生まれた時から政治の駒。それがフィリエルの人生だ。ならばそんな「人生」を捨てて、人間以外として生きたほうがましだと、フィリエルは思った。
これからは自由気ままな「猫生」を送るのよ!
フィリエルは少し前に知り合いになった、「廃墟の塔の魔女」に頼み込み、猫の姿に変えてもらう。
よし!楽しいセカンドラウフのはじまりよ!――のはずが、何故か夫(国王)に拾われ、ペットにされてしまって……。
「ふふ、君はふわふわで可愛いなぁ」
やめてえ!そんなところ撫でないで~!
夫(人間)妻(猫)の奇妙な共同生活がはじまる――
前世の記憶を取り戻した元クズ令嬢は毎日が楽しくてたまりません
Karamimi
恋愛
公爵令嬢のソフィーナは、非常に我が儘で傲慢で、どしうようもないクズ令嬢だった。そんなソフィーナだったが、事故の影響で前世の記憶をとり戻す。
前世では体が弱く、やりたい事も何もできずに短い生涯を終えた彼女は、過去の自分の行いを恥、真面目に生きるとともに前世でできなかったと事を目いっぱい楽しもうと、新たな人生を歩み始めた。
外を出て美味しい空気を吸う、綺麗な花々を見る、些細な事でも幸せを感じるソフィーナは、険悪だった兄との関係もあっという間に改善させた。
もちろん、本人にはそんな自覚はない。ただ、今までの行いを詫びただけだ。そう、なぜか彼女には、人を魅了させる力を持っていたのだ。
そんな中、この国の王太子でもあるファラオ殿下の15歳のお誕生日パーティに参加する事になったソフィーナは…
どうしようもないクズだった令嬢が、前世の記憶を取り戻し、次々と周りを虜にしながら本当の幸せを掴むまでのお話しです。
カクヨムでも同時連載してます。
よろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる