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秋祭り
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「チェンジリングだと??」
ノエルは己の背中を走る脂汗を感じていた。
「だから精霊の言葉のない言葉が聞こえるし、話せるのさ。いまだにベスは人の言葉は得意でないだろう」
さも当たり前の事のように、オベロンは言った。
「人の言葉を覚えてしまったチェンジリングは、普通精霊の言葉を忘れてしまうのだけどもね。あの娘の育ての親は、言葉を失った人間だっただろう。人間の世界で子供になるまで成長しながらも、人間の言葉に触れずにいたために、人間でありながら、精霊の言葉も解すままで成長したのさ」
ノエルはようやく、ベスの緑の指の秘密を理解した。
そして、ベスの前にいると、なぜあれほど心地よいのか。
なぜ温室の全ての命は、ベスの前であれほど幸せそうなのかを。
ベスは、温室の命の声の全てに直接耳を澄まして、そしてあの美しい心で受け止めて、その手で返してくれるのだ。
ベスは人の言葉を必要としない。人の言葉に迷わされない。
ノエルは懐かしい、優しいベスの笑顔を思い出し、涙があふれそうになる。
ーそして、とても重要な事に気がついた。
「オベロン。・・まさか、妖精王の代替わりに人の手が必要だから、チェンジリングを・・」
オベロンはゆっくり微笑むと、悪びれる事もなく、言った。
「ああ、ノエルは本当に頭がいいね。そうだよ」
「妖精王の代替わりには人の手が必要になる。攫った子供はベスで何人目だろうかね。前の代替わりは変わり者の魔女が世話した命だったけれど、そうそう変わり者の魔女というのも出てこない。精霊界に人間の子供を攫ってくる方が早いと、妖精達が勝手にあちこちから攫ってくるんだよ。」
「・・妖精達が攫ってきた、他の子供達は一体どうした」
ノエルは、震える声を抑えて、怒りを込めてオベロンに問いただす。
「そう怒るものではないよ、ノエル。妖精達は気まぐれだ。気が向いた時にしか攫ってこないよ。ベスの他に攫ってきた子供は皆、そのまま精霊の世界で寿命を迎えるが、稀に精霊の世界から逃げて、人間に戻ったものもいる。どの子供も私の役には立たなかったがね」
ノエルはカッと、頭に血がのぼる。
歴史上、大勢のチェンジリングの犠牲者と思われる行方不明の子供が存在する。
思わず反射的に攻撃魔法を錬成し、オベロンに向けた。
「・・お前達の勝手で、攫われた人間の子供の人生を、、攫われた子供の親の心を考えた事はあるのか!!!!!」
オベロンはみじろぎもせずに、指を少し動かすと、ノエルは攻撃魔法ごと温室のはじまで衝撃波で吹き飛ばされた。
「うわああああ!!!!!」
ドン、と強く壁に打ちつけられて、ノエルは強く頭を打って、地面に倒れた。
地面に臥しているノエルに、オベロンは言った。
「そんな事は瑣末な事だよ。お前達だって、動物を使役したり、子を産ませ、それを殺して食したりするだろう。我々よりもタチが悪いよ。チェンジリングによって野蛮な人間の世界から、精霊の世界に入れてやるのだ。子供は大切に扱われるし、人の世の醜さからも、苦しみからも悲しみからも自由となる。ノエルよ。人の世の苦しみは、お前もよく知っているはずだろう」
オベロンの、白目のない真っ黒な虚空のような両方の目に見据えられると、ノエルの過去も未来も、そして今も、全てを見透かされている気分になる。
ノエルは返す言葉もなかった。
「‥ゴホ、ゴホ、はあ、はあ、ベスを、はあ、これからどうするつもりだ」
オベロンは機嫌良さそうに言った。
「どうにもしないよ。あの娘は妖精王の代替わりを成功させた、恩人だ。精霊の世界で、特別な待遇を持って迎えられる。あの娘はオベロンの愛し児となり、寿命が尽きるまで精霊の世界で大切に扱われる。・・ああ、そろそろ愛し児を迎えに行かないと。ほんのすぐそこに、あの娘の気配を感じる」
「ゲホ・・ま、ゲホ・・まさかベスが、王都にいるのか??」
次の瞬間、カッと王都の空全体に黄金色の魔力の稲光が走り、王都を巡らせる王の結界の魔力が、いきなり全て、塗り替えられた。大きな魔力の大放出に、魔術院のあちこちの結界や魔術がぐにゃりと歪みだしているのが見える。
「ギええええ!!なななななに!!!ノエル様、何が起こってるんですか!!」
半分失神状態から、ようやく意識が回復したらしいロドニーが、気の毒な事にまた失神寸前で腰を抜かしている。どうやら今度はちょっと失禁しているらしく、ノエルはそっと見ないふりをしてやる。
ノエルにはこの魔力には覚えがあった。口の中を切ったらしい。口の端から垂れる血を拭いながら、ノエルは呟いた。
「ユージニア殿下・・・」
秋祭りで、ノエルを全てから解放する。
そうあの王女は確かにノエルに宣言した事を思い出す。
「おお! 人間の世界でも王の代替わりか。これは実に面白い」
はははは、と嬉しそうに大きくオベロンは笑い、その衝撃波で温室はたってもいられないほどの風が吹き荒ぶ。
オベロンは高く舞い上がると、大きくその羽をはためかせて、光の粒を四方に発生させて、温室を満たした。
温室の中はオベロンの発生させた光の粒で時空が歪み、ノエルは目が回って時空の歪みに体が吸い込まれていくが、その力の強さに何の抵抗すらできない。
「さあ精霊の道を開いた。ベス、こちらに歩いておいで」
ノエルは己の背中を走る脂汗を感じていた。
「だから精霊の言葉のない言葉が聞こえるし、話せるのさ。いまだにベスは人の言葉は得意でないだろう」
さも当たり前の事のように、オベロンは言った。
「人の言葉を覚えてしまったチェンジリングは、普通精霊の言葉を忘れてしまうのだけどもね。あの娘の育ての親は、言葉を失った人間だっただろう。人間の世界で子供になるまで成長しながらも、人間の言葉に触れずにいたために、人間でありながら、精霊の言葉も解すままで成長したのさ」
ノエルはようやく、ベスの緑の指の秘密を理解した。
そして、ベスの前にいると、なぜあれほど心地よいのか。
なぜ温室の全ての命は、ベスの前であれほど幸せそうなのかを。
ベスは、温室の命の声の全てに直接耳を澄まして、そしてあの美しい心で受け止めて、その手で返してくれるのだ。
ベスは人の言葉を必要としない。人の言葉に迷わされない。
ノエルは懐かしい、優しいベスの笑顔を思い出し、涙があふれそうになる。
ーそして、とても重要な事に気がついた。
「オベロン。・・まさか、妖精王の代替わりに人の手が必要だから、チェンジリングを・・」
オベロンはゆっくり微笑むと、悪びれる事もなく、言った。
「ああ、ノエルは本当に頭がいいね。そうだよ」
「妖精王の代替わりには人の手が必要になる。攫った子供はベスで何人目だろうかね。前の代替わりは変わり者の魔女が世話した命だったけれど、そうそう変わり者の魔女というのも出てこない。精霊界に人間の子供を攫ってくる方が早いと、妖精達が勝手にあちこちから攫ってくるんだよ。」
「・・妖精達が攫ってきた、他の子供達は一体どうした」
ノエルは、震える声を抑えて、怒りを込めてオベロンに問いただす。
「そう怒るものではないよ、ノエル。妖精達は気まぐれだ。気が向いた時にしか攫ってこないよ。ベスの他に攫ってきた子供は皆、そのまま精霊の世界で寿命を迎えるが、稀に精霊の世界から逃げて、人間に戻ったものもいる。どの子供も私の役には立たなかったがね」
ノエルはカッと、頭に血がのぼる。
歴史上、大勢のチェンジリングの犠牲者と思われる行方不明の子供が存在する。
思わず反射的に攻撃魔法を錬成し、オベロンに向けた。
「・・お前達の勝手で、攫われた人間の子供の人生を、、攫われた子供の親の心を考えた事はあるのか!!!!!」
オベロンはみじろぎもせずに、指を少し動かすと、ノエルは攻撃魔法ごと温室のはじまで衝撃波で吹き飛ばされた。
「うわああああ!!!!!」
ドン、と強く壁に打ちつけられて、ノエルは強く頭を打って、地面に倒れた。
地面に臥しているノエルに、オベロンは言った。
「そんな事は瑣末な事だよ。お前達だって、動物を使役したり、子を産ませ、それを殺して食したりするだろう。我々よりもタチが悪いよ。チェンジリングによって野蛮な人間の世界から、精霊の世界に入れてやるのだ。子供は大切に扱われるし、人の世の醜さからも、苦しみからも悲しみからも自由となる。ノエルよ。人の世の苦しみは、お前もよく知っているはずだろう」
オベロンの、白目のない真っ黒な虚空のような両方の目に見据えられると、ノエルの過去も未来も、そして今も、全てを見透かされている気分になる。
ノエルは返す言葉もなかった。
「‥ゴホ、ゴホ、はあ、はあ、ベスを、はあ、これからどうするつもりだ」
オベロンは機嫌良さそうに言った。
「どうにもしないよ。あの娘は妖精王の代替わりを成功させた、恩人だ。精霊の世界で、特別な待遇を持って迎えられる。あの娘はオベロンの愛し児となり、寿命が尽きるまで精霊の世界で大切に扱われる。・・ああ、そろそろ愛し児を迎えに行かないと。ほんのすぐそこに、あの娘の気配を感じる」
「ゲホ・・ま、ゲホ・・まさかベスが、王都にいるのか??」
次の瞬間、カッと王都の空全体に黄金色の魔力の稲光が走り、王都を巡らせる王の結界の魔力が、いきなり全て、塗り替えられた。大きな魔力の大放出に、魔術院のあちこちの結界や魔術がぐにゃりと歪みだしているのが見える。
「ギええええ!!なななななに!!!ノエル様、何が起こってるんですか!!」
半分失神状態から、ようやく意識が回復したらしいロドニーが、気の毒な事にまた失神寸前で腰を抜かしている。どうやら今度はちょっと失禁しているらしく、ノエルはそっと見ないふりをしてやる。
ノエルにはこの魔力には覚えがあった。口の中を切ったらしい。口の端から垂れる血を拭いながら、ノエルは呟いた。
「ユージニア殿下・・・」
秋祭りで、ノエルを全てから解放する。
そうあの王女は確かにノエルに宣言した事を思い出す。
「おお! 人間の世界でも王の代替わりか。これは実に面白い」
はははは、と嬉しそうに大きくオベロンは笑い、その衝撃波で温室はたってもいられないほどの風が吹き荒ぶ。
オベロンは高く舞い上がると、大きくその羽をはためかせて、光の粒を四方に発生させて、温室を満たした。
温室の中はオベロンの発生させた光の粒で時空が歪み、ノエルは目が回って時空の歪みに体が吸い込まれていくが、その力の強さに何の抵抗すらできない。
「さあ精霊の道を開いた。ベス、こちらに歩いておいで」
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