大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生

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第五章〜南北大戦争〜

第37話 敵艦長の反乱

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大和が全門斉射を行った次の瞬間、航空隊に無数の礫が襲い掛かり、次々と戦闘機が爆散、火達磨となって海に向かって落ちて行く。
未来のレーダーを搭載されている今の大和は、敵航空機の未来位置算出能力は格段に上がっており、更に敵航空機は複葉戦闘機だったため、三式弾は航空隊に甚大な被害をもたらすことになる。

「馬鹿な!?」

戦闘機が次々と火達磨になって落ちていくのを見て、ディシュは声を上げた。
だが、これだけでは終わらない。

ドォーン!!

前方に展開していた装甲艦が、突如爆発し呆気なく沈んでいく。
そしてそれに続くよう、次々と装甲艦や快速帆船が沈んでいく。

「なっ、何故だ!何故ヤツらは砲撃ができて、我々は出来ていないのだ!?」

次々と前方の艦艇が沈んでいくのを見て、ディシュのようにハイエルは、声を大にして驚いた。

(やはりこうなったか……!)

ディシュとハイエルが驚く中、大和の恐ろしさを知っているウルフは、一方的に圧倒される事態を予想していたため、それほど驚いていなかった。
戦闘機が砲撃で撃破されるのは、想定外だったようだが……
そして大和が、再び航空隊に向けて三式弾を一斉射。
シュヴァルツの戦闘機は避けようと試みるが、砲撃の方が早く、再び編隊に礫が襲いかかり、更に戦闘機が墜落していく。
運良く、大和などに接近出来たとしても、高射砲や機関銃の攻撃を受け、まるでハエたたきのように落とされていく。

「……」

次々と沈んでいく味方艦、墜落されていく戦闘機、虚しく散っていく仲間達の命をただ見守るしかできない自分に、ウルフは怒りを覚える。

「ハンクティル司令長官!ご指示を!!」

「はっ?…なっ……に、逃げろ!残存艦艇を囮にして、今すぐ逃げろ!!」

出来ることをしようと、ウルフはハイエルに指示を仰ぐが、敵に恐怖したハイエルは、ウルフに味方を囮にして、全力で逃げるよう伝えてくる。

(もう、我が祖国は無能しかいないのか…!)

ハイエルの対応に、ウルフは祖国であるシュヴァルツに失望する。
同じよう慢心していたシュルクでさえ、艦隊の指揮をとり、最後は自分の責任を負うためにも、一矢報いるために突撃して散って行った。だがハイエルはどうだ。自身の保身に走るだけではなく、味方を盾にしようとする始末だ。

(コイツらではもうダメだ…)

狼狽える無能な指揮官共ハイエルとディシュを見て、ウルフはこれ以上仲間の命が無駄に散っていくのを防ぐため、行動に出ることにする。

「おい!何をしている!早くにげ…」

汗を流しながら、逃げるよう催促してくるハイエルに、ウルフは拳銃を突きつける。

「黙れ、無能めが…」

「き、貴様ぁ!軍法会議だぞ!?」

自分に拳銃が突きつけられていることに驚きながら、ハイエルはウルフを怒鳴りつけるが、ウルフは臆することなく、ハイエルに拳銃を突きつける。

「おい!さっさとこの馬鹿を取り抑えろ!」

自分もやばいと思ったのか、ディシュは艦橋に居る者達に、ウルフを取り抑えるよう命じた。

「……はっ…」

ディシュの命令に、一人の海兵が返事を返し、そしてディシュを取り抑えた。

「いだだだだ!貴様何をする!?」

「慢心をした上に、大和の力を見るやいなや、逃げようとする馬鹿を捕まえただけです」

押さえつけられながら叫ぶディシュに、海兵はディシュを強く抑え付ける。
ディシュを抑えつけた海兵含め、ベリアンの乗組員全員が、ウルフ同様今回の作戦に否定的で、艦橋に居た者は、ハイエル達の無能っぷりも見ていたため、マトモなウルフに加担することにしたのだ。

「…これより、艦隊司令長官並びに、陸軍航空参謀長を更迭!海空特別編成艦隊の指揮は、私が執る!」

ウルフは声を大にして、ハイエルとディシュの更迭、並びに指揮権の掌握を宣言した。

「おい何をする!!」

「貴様ら、タダではすまんぞ!!」

艦橋に入ってきた海兵が、ハイエルとディシュを連れていく。
そして、ハイエル達が居なくなり、海空特別編成艦隊の指揮権を掌握したウルフは、航空隊と艦隊に指示を飛ばす。

「航空隊、攻撃中止!今すぐ引き返せ!艦艇は降伏旗を上げよ!!全員、死にたくなければ、早くしろ!!」

ウルフは航空隊には帰投命令を、艦隊には降伏旗を掲げるように、何度も全員に伝えた。





「敵戦闘機、引き上げていきます」

敵戦闘機の引き上げていくのを確認し、大和の第一艦橋の緊張は少し解れる。

「動かないな…」

光太郎は油断することなく、敵艦隊の動きを注意していた。

「あっ…山本司令長官、敵艦隊白旗を上げました!」

双眼鏡で敵艦隊を見ていた乗組員の一人が、敵艦が白旗を上げるのを確認が出来た。

「白旗を上げている敵艦一隻、こちらに向かってきます…艦首に指揮官らしき者が居るため、恐らく和解を求めているのかと…」

「分かった。警戒態勢のまま各員待機、私が会おう」

指揮官らしき者が艦首に立って、一隻の戦艦が迫ってくるのを見た光太郎は、その指揮官と話を行うことにした。
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