大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生

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第六章〜新たな世界〜

第57話 姫君の決断

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「どうも、遅れてすみません」

シンシアが目覚めてから十数分後、公務を途中で終わらしてきた光成が、春菜や護衛を引き連れて、シンシアの病室にやってきた。

「私はこの日丸国首相、竹田光成であります」

「初めまして竹田首相。私はソウィエル王国第二王女、シンシア・S・ソウィエルです。このような状態で挨拶して申し訳ございません…」

「いえいえ、お構いなく」

二人は顔を合わせながら、互いの自己紹介を行う。
自己紹介を行い、光成は光太郎が持ってきた丸椅子に座り、ベットで上半身だけ起こしているシンシアと目線を合わせる。

「では、単刀直入にお聞きします。お話は聞いているかもしれませんが、ここは貴女方が居た世界ではございません…これから先、どうするおつもりですか?」

「…」

光成の質問に、シンシアは黙り込む。

「我々の国で暮らしてもらっても構いません。船をお譲りして、新天地を目指すのもよろしいでしょう。我々としては、貴女方を奴隷などのように扱うつもりは無いと、理解して欲しいのです」

光成はシンシア達を別世界の者だからといって酷い扱いを行うことは無いと、シンシアに伝える。

「少々お時間をくださいませんか?乗組員達とお話がしたいのです」

「無論構いません。皆が納得するまで、じっくりとお話ください」

シンシアの頼みに、光成は快く引き受けた。

「ありがとうございます。竹田首相…」

光成が頼みを引き受けてくれたことに、シンシアは頭を下げて礼を述べる。

「連絡将校として山本司令長官を残します。方針が決まり次第、山本司令長官にお伝えください…それでは、失礼致します」

光成は連絡将校として光太郎を残すと伝えた後、春菜達を引き連れて、病室を後にした。

「……山本司令長官、皆がいる場所に案内してくれますか…?」

早めに今後のことを決めるために、シンシアは乗組員達が運ばれた病室に向かうことにする。

「分かりました。ではこちらへ」

乗組員達がいる病室までの案内を頼まれた光太郎は、その事を快諾した。

「アーミヤ、肩を貸してちょうだい…」

「分かりました」

シンシアはアーミヤの肩を借りながらベットから立ち上がり、光太郎と雷の後に着いて行く。





光太郎達に案内され、乗組員達が休養している病室に着いたシンシアは、アーミヤが皆の顔が見えるよう椅子を用意し、その椅子に座った。

「…まず最初に、皆様に謝罪致します。私めのせいで、こんな事態になってしまい、申し訳ございません…」

椅子に座ったシンシアは、皆に向けて頭を下げながら謝罪する。

「頭上げてくだせぇ、シンシア様…」

「…」

一人の声が聞こえ、シンシアは頭を上げるのと同時に、声が聞こてえてきた方を見る。
声が聞こえてきた先には、頭と左眼右腕に包帯を巻いたモートルトが居た。

「俺たちは死を覚悟して、貴女を船で運ぶ任務を引き受けたんだ…それを謝られちゃあ、死んで逝った者達の立つ瀬がねぇ。貴女がドーンッと構えてくれりゃあ、彼奴らも守ってよかったと、喜ぶさ…!だから、自分のせいなんて、言わんでくだせぇ」

モートルトはニヤリと笑みを浮かべながら、シンシアに自分達の意思を伝える。
他の乗組員達もその通りだと頷く。

「シンシア様…我々護衛の者達は、貴女様に忠誠を誓っております。例え火の中、水の中、どのような場所でもお供致します……だから、そう自分を責めないでください…」

モートルトに続き、アーミヤが護衛達を代表して、意志を伝える。

「皆さん…ありがとうございます……」

皆の意志を聞き、シンシアは嬉しさのあまり、泣き始める。

「良かったッッッ!!」

光太郎は無言で、貰い泣きし始めた雷の溝に拳を入れて強制的に黙らせる。

「……それで皆さん…今後ことで、相談があります」

雷が無言でのたうち回る中、シンシアは涙を拭き取り、気持ちを切り替える。

「私としては、この日丸国に住み、できるだけ恩返しをしたいと思っているのですが…それで良いですか……?」

シンシアは皆に日丸国への恩返しを提案する。

「ハハッ!姫様がそう言ってんだ、反対する奴はいませんて!なぁお前ら!」
ソノトオリデス!!

「我々はシンシア様について行くだけです…」

シンシアの提案に、乗組員達と護衛の者達全員が、賛成する。

「…皆様……誠にありがとうございます…」

皆が賛成してくれる嬉しさに、シンシアは深々と頭を下げて礼を述べた。

「……では、全員がこの日丸国に住み、働くということでよろしいでしょうか?」

無言で話を聞いていた光太郎は、シンシアに今後のことについて再確認する。

「はい、竹田首相にそうお伝えください」

「分かりました。では、私はこのことを竹田首相にお伝えしてきます」

「ありがとうございます…」

光太郎は殴られた箇所を摩っている雷を連れ、光成にシンシア達が決めたことを報告するため、病室を後にした。





その後、シンシア達の意志を聞いた光成は、彼女らが日丸国に滞在することを承認し、衣食住の保証を確約した。
無論、タダではなく、見返りとして乗組員達は海軍に所属することになり、アーミヤ達王宮魔導師達は魔導炉などの開発に従事することになった。一方、シンシアは幼いながらも、光太郎や光成などの軍人に怯えない精神の強さ、話術の上手さを買われ、日丸国の外務大臣に任命された。
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