大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生

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第九章〜世界大戦〜

第119話 桜花艦隊敗北

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特務爆撃機ヨルムンガンドから落とされた爆弾は、高魔導爆裂弾と呼ばれる大型爆弾だった。
この爆弾は、帝国空軍ロイヤルエアリアル魔導超爆裂砲ノヴァフレイムカノンの代わりとして開発した新型爆弾で、威力は魔導超爆裂砲ノヴァフレイムカノンの100分の1まで落ちているが、それでも十分な破壊力を有している。
そんな爆弾が今、三つに分かれた桜花艦隊を範囲に入るようにして落とされた。

カッッッ!!!ドォーーンッ!!!!!!!

海面から10mの辺りで、起爆した高魔導爆裂弾は、大きな爆発音と共に眩い光を放ち、遅れて爆風が発生する。
更に爆裂弾の内部には、直径7cmの鉄の玉がこれでもかと詰められていたため、更に被害が拡大することになる。





「キャァ!」

船体が大きく揺れ、艦橋の防弾ガラスが艦橋内に飛び散る。

「…じょ、状況報告…っ!」

倒れた千夏は、身体の上に振って来たガラス片を落としながら、ユキに状況を尋ねた。

『自立迎撃機、全機墜落。遠隔操作型迎撃機との通信途絶。右舷対空兵装機能停止。第一主砲旋回不可能。第二副砲応答なし。右舷レーダー破壊』

千夏の質問に、ユキは次々と高魔導爆裂弾によって、紀伊が受けた被害を上げていく。

「他の艦は!?」

『確認できる被害としては…むつの後部甲板に被弾現在炎上中、磯風の主砲大破……そして、浜風が転覆、沈んでいってます…』

ユキは悔しがりながら、確認できる被害を上げていく。

「……救命艇を出して、救命活動急いで!」

『了解しました』

唇をかみしめながら、千夏は救命活動を頼み、ユキは救命艇を出すことにした。

「……まるで、戦術核兵器ね…」

艦隊に被害を出した高魔導爆裂弾の威力を見て、千夏は握り拳を作りながら、爆弾を落とし終えて、悠々と帰還していくヨルムンガンドを見つめた。





大和第一艦橋。
爆風に煽られ船体は大きく揺れたものの、魔導防壁により爆風や鉄の玉による被害は出ていなかった。

「状況、報告…!」

壁に手を付けながら立ち上がっている光太郎は、艦橋に居る者達に状況を尋ねた。

「大和、被害確認できず。魔導防壁で防ぎ切った模様…」

「ながと側面が貫徹、晴天は魔導防壁展開不可能とのことです」

光太郎の元に次々と被害報告が入ってくる。

「…他の部隊はどうなっている?」

「少しお待ち下さい!」

光太郎からの質問に、通信長は他の艦艇と連絡を取り始める。

「……紀伊部隊、被害が甚大な模様。後方部隊、信濃が艦首、レーダー、前方甲板に被害あり、現在応急修理中とのことです…!」

暫くしたのち、通信長から分けた艦艇達の被害報告が入ってくる。
報告を聞き、大和第一艦橋には重苦しい空気が流れ始める。そんな中、光太郎は口を開いた。

「……最後まで付き合ってくれるな?」
ッ!!ハイ!!!

乗組員達に向かって、そう言うと、言葉の意味を瞬時に理解した乗組員達は、目付きを変えて元気の良い返事をした。
返事を聞いた光太郎は笑みを浮かべ、行動に移ることにした。

「通信長、被害がまだマシな戦闘艦艇は誰だ?」

「こんごうであります!」

「よし。こんごうとの回線を繋げ」

「はっ!」

偶然にも大和の右側に居たことで、他と比べて被害マシなこんごうに、光太郎は回線を繋げさせる。

「こちら大和、こんごう聞こえるか?」

回線を繋げ、光太郎はこんごうに問いかける。

『こちら、こんごう。どうした?』

光太郎の問いかけに、春菜が答える。

「これより、旗艦をこんごうに移し、山稜、お前に艦隊の指揮をお前に託す」

『はぁ!?』

光太郎からの言葉に、春菜は困惑する。

『何を言って…!』

「例の爆弾により、我が艦隊の被害は無視できないレベルだ…敵艦があと数隻ならともかく、数的優位は向こうだ…ここは一度体勢を整えるため、撤退する必要がある…だが、それを連中が逃すわけがない…だからこそ、本艦はこれより囮なり、残存艦艇が逃げる時間を作る!幸いにも大和は魔導防壁があるからな、単艦でもそれなりに戦えるはずだ」

困惑している春菜に、光太郎は旗艦をこんごうに移す理由などを話した。
そこに、

「敵艦隊動き出しました!」

離れていた敵艦隊が動き出したという報告が入る。

「…聞いたか?迷っている時間はもうない…帰ってきたら、なんでも言うこと聞いてやるから、ここは貸しとして頼まれてくれ!」

『…………分かりました。これより、こんごうは大和から旗艦を引き継ぎ、桜花艦隊を撤退させます……』

「それじゃあ、頼むぞ…」

春菜は渋々光太郎の頼みを了承し、光太郎は一言かけてから通信を切った。

「……機関出力最大!大和はこれより囮になる!!」

帽子を深く被り直した艦長からの命令が降り、大和は魔導防壁を展開したまま、最大戦速で動き出した。





「……馬鹿っ………」

通信が切れ、静まり返るこんごうの艦橋内にて、光太郎から艦隊指揮権を移乗された春菜は、小さくそう呟いた。

「大和…動き出しました……」

大和が動き出した報告を聞き、春菜は大和に対して敬礼した後、桜花艦隊に命令を出す。

「桜花艦隊、全艦に告ぐ!大和が囮となっている間、我が艦隊は現海域から離脱する!反転180度、全艦最大戦速で現海域から離脱!!」

桜花艦隊司令長官からの命令が発令され、桜花艦隊はその命令通りに、離脱するため第一艦隊を背にして、セレーネ大陸に向けて動き出した。
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