悪役令嬢だとわかったので身を引こうとしたところ、何故か溺愛されました。

香取鞠里

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 そんなある日。

 騎士団として王宮を訪れた際に、私は王宮の敷地内で見てしまった。


「殿下、好きです。殿下との婚約が決まりそうで嬉しいです」


 サクラがキラキラとした瞳で殿下を見つめ、甘えるような声で言って、殿下の手を握っている。

 胸がズキンとえぐられるようだった。

 しかし、


「すまない。私には、以前から心を寄せている彼女がいる。君は確かに私の婚約者候補として最有力候補のように言われているが、私は君との婚約は考えていない」


 殿下ははっきりとそう告げた。

 サクラは顔を真っ赤にして顔を下に向けた。

 殿下がこちらに歩いてくる。逃げ場がない。

 どうしよう。まさかここで見られてたと思われちゃうかな。実際に見ていたのだけれど。

 殿下は私に気づくなり驚いたような表情を浮かべるとともに、私の頭を愛でるように撫でた。


「お疲れさま、マリエッタ」

「殿下」


 殿下が去ったあと、殺気を感じて振り返ると、サクラが私を睨み付けていた。

 また、私はサクラにハメられて、酷い末路をたどるのだろうか。

 サクラの性格が変わっているとは思えない。

 そして、何もわからないサクラに優しく接していたのだろう殿下に、サクラが恋心を向けるのは無理のないことだ。きっとそれは今回も同じだということだろう。



 そうしているうちに、殿下の意思を尊重する形で、正妻は私に決まった。

 サクラは、幸福の女神として王宮内の役職についた。


 正妻として王宮に入ってからは、騎士を辞めた私は王宮内の仕事を受け持つようになった。

 そんなある日のことだ。


「マリエッタ様、いくら正妻だからってこの対応はあんまりだと思います」

「……え」


 顔を上げると、しかめっ面のサクラが立っていた。


「ごめんなさい。確認させてもらえるかしら?」


 受け取ると、全く見覚えのない書類に、適当なことが書き込まれていた。


「あの、これ、私のものではありませんか……」

「正妻だからって、嘘吐かないでくださらない? 王宮中のみんな迷惑してるんだから」

 ……え?

 何となく嫌な空気を感じて顔を上げると、サクラのそばにいる伯爵や子爵も何となく不快そうな顔で目を見合わせている。


「わ、私は、自分のやるべきことはちゃんとしているわ! こんなの、誰かのでっち上げよ!!」

「逆ギレ? このことは、殿下にもお伝えさせていただきます」

 そんな……!

 一体、何が起こっているの……?

 明らかに何か良くないことが起こっているのに、一度目の人生とシナリオが変わってしまったから、どうなるかわからない。

 やはり私は、バッドエンドを迎える運命なのだろうか。
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