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どうしたらいいのだろう……?
私が悩んでいると、仲良くしている使用人ジュリアが心配そうに問いかけてきた。
「マリエッタ様、どうされましたか?」
「……あ。ううん、何でもないわ」
「そんなことありません。最近、顔色もよろしくなければ、食欲もないじゃないですか」
ジュリアは中年の使用人だ。私の細かい表情の変化まで見ていてくれて、まるで母親のような存在だ。
そう指摘されると、私は思わず苦笑いを浮かべた。
「……ひょっとして、ここ最近王宮内の空気がおかしいことと何か関係ありますでしょうか?」
ジュリアも、王宮内の異様な空気に気づいていたようだ。
私が、仕事をいい加減にする正妻だと。
殿下は私に何も言ってこないが、きっと耳に届いているのだろう。
「ジュリア……」
私は、明らかに誰かの陰謀にはめられているとしか思えない、身に覚えのない悪事を次々に被せられていることを告げた。
「私、本当に、そんなことしていないの……」
私の話を静かに聞いていたジュリアは、私を落ち着かせるように背に手を当ててくれた。
「大丈夫です。マリエッタ様には殿下がついていらっしゃるじゃないですか。それに、私も。私も少し、王宮内の使用人にいろいろ聞き込んでみます」
「……ありがとう」
このときの私は、決してジュリアに悩みを打ち明けたからといって、何かが変わるなんて思っていなかった。
けれど、それから1ヶ月もしないうちに殿下がものすごい形相で私の部屋に飛び込んできた。
「マリエッタ、今まですまなかった。ようやく、君を苦しめている者を突き止めた」
「……え?」
「あの、神の女神のサクラだ。どこが女神だ」
殿下は、今まで見たことがないくらいに憤慨しているようだ。
殿下によると、サクラが裏で画策して、周りの私のアンチと協力して、私を悪役に仕立て上げようとしていたそうだ。
殿下が私を選んだことが気にくわないからだそうだ。つまりは、サクラの嫉妬によるものだ。
一度目の人生で経験したシナリオとは違うものの、サクラの本質は同じようだ。
すると、これまで頭を抱えていたのが嘘のように、私自身の中にも怒りがわき起こる。
……許せない。
「大丈夫だ。マリエッタ。サクラや、その協力者には、適切な処罰を与える」
そして、殿下はすぐにサクラとその協力者に国外追放の罰を与えた。
一度目の人生で、私が受けた罰と同じだ。
国外追放されると、命に保証はない。
あのときの苦しさを知っているからこそ、同情からサクラたちへの罪悪感のようなものは、おかしなことにゼロではない。
けれど、殿下には気にしなくていいと言ってもらえて気が楽になった。
晴れて、私は平和な王宮生活を取り戻し、現陛下のあとを次ぐ形で、殿下は陛下に、私は二度目の人生では正式な王妃になった。
これからは、悪役令嬢としてじゃなく、私の人生を生きよう。後悔のないように……。
(おしまい)
私が悩んでいると、仲良くしている使用人ジュリアが心配そうに問いかけてきた。
「マリエッタ様、どうされましたか?」
「……あ。ううん、何でもないわ」
「そんなことありません。最近、顔色もよろしくなければ、食欲もないじゃないですか」
ジュリアは中年の使用人だ。私の細かい表情の変化まで見ていてくれて、まるで母親のような存在だ。
そう指摘されると、私は思わず苦笑いを浮かべた。
「……ひょっとして、ここ最近王宮内の空気がおかしいことと何か関係ありますでしょうか?」
ジュリアも、王宮内の異様な空気に気づいていたようだ。
私が、仕事をいい加減にする正妻だと。
殿下は私に何も言ってこないが、きっと耳に届いているのだろう。
「ジュリア……」
私は、明らかに誰かの陰謀にはめられているとしか思えない、身に覚えのない悪事を次々に被せられていることを告げた。
「私、本当に、そんなことしていないの……」
私の話を静かに聞いていたジュリアは、私を落ち着かせるように背に手を当ててくれた。
「大丈夫です。マリエッタ様には殿下がついていらっしゃるじゃないですか。それに、私も。私も少し、王宮内の使用人にいろいろ聞き込んでみます」
「……ありがとう」
このときの私は、決してジュリアに悩みを打ち明けたからといって、何かが変わるなんて思っていなかった。
けれど、それから1ヶ月もしないうちに殿下がものすごい形相で私の部屋に飛び込んできた。
「マリエッタ、今まですまなかった。ようやく、君を苦しめている者を突き止めた」
「……え?」
「あの、神の女神のサクラだ。どこが女神だ」
殿下は、今まで見たことがないくらいに憤慨しているようだ。
殿下によると、サクラが裏で画策して、周りの私のアンチと協力して、私を悪役に仕立て上げようとしていたそうだ。
殿下が私を選んだことが気にくわないからだそうだ。つまりは、サクラの嫉妬によるものだ。
一度目の人生で経験したシナリオとは違うものの、サクラの本質は同じようだ。
すると、これまで頭を抱えていたのが嘘のように、私自身の中にも怒りがわき起こる。
……許せない。
「大丈夫だ。マリエッタ。サクラや、その協力者には、適切な処罰を与える」
そして、殿下はすぐにサクラとその協力者に国外追放の罰を与えた。
一度目の人生で、私が受けた罰と同じだ。
国外追放されると、命に保証はない。
あのときの苦しさを知っているからこそ、同情からサクラたちへの罪悪感のようなものは、おかしなことにゼロではない。
けれど、殿下には気にしなくていいと言ってもらえて気が楽になった。
晴れて、私は平和な王宮生活を取り戻し、現陛下のあとを次ぐ形で、殿下は陛下に、私は二度目の人生では正式な王妃になった。
これからは、悪役令嬢としてじゃなく、私の人生を生きよう。後悔のないように……。
(おしまい)
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