旦那様は私より幼馴染みを溺愛しています。

香取鞠里

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 彼に幼馴染みがいることを知ったのは、私と婚約してからのことだった。

 特別気にしていたわけではなかった。

 けれど、結婚してからもこの状況が続くのはちょっとおかしいのではないかと思う。

「ジャック、やほ~」

 軽いテンションで家の敷居をまたいで入ってきたのは、私の旦那様のジャックの幼馴染みのシェリーだ。

 金髪にブルーの瞳が美しい、私の二つ歳上のジャックと同じ二十五歳だ。

「シェリー、どうした?」

「この前の注文の品、持ってきたわよ。ジャックの大好物のグラタンパイ」

「おお、ありがとう。やっぱりグラタンパイはシェリーのが一番だからな。おーい、リリー。シェリーがグラタンパイを持ってきてくれたぞ。お前もこっちに来て一緒に食べようじゃないか」

「……はい」

 ジャックには大切にされていると思う。

 シェリーがいるからといって、私のことが除け者扱いされるわけではないし。

 私の話だって聞いてくれる。

 けれど、思うのだ。これは本当にジャックのことを信じていいのかと。

 結婚してまだ1ヶ月だというのに、すでに家に入り浸っているシェリー。

 何なら、決して嫉妬などではなく、私よりもシェリーといるときの方がジャックは楽しそうに見えるのだ。

 私と結婚したのは家同士が決めたからだけど、本当はジャックはシェリーと一緒になる方が良かったのではないかとか、本当はシェリーのことが好きじゃないのかとか。

「リリー、頬にグラタンパイついてるぞ」

 ジャックの手が私の頬に触れる。

 それを見て、シェリーはおかしそうに笑った。

「あらあら新婚さんはお熱いこと」

「うらやましい?」

「そうね」

 そんな目の前でかわされる会話を聞いていると、全て私の勘違いなのではないかと思ってしまって、ジャックの本心なんて聞けない。


 シェリーは昼食にグラタンパイを届けてくれたあと、就寝直前まで一緒に過ごした。

 ジャックが在宅の日は常にそうだ。

 ジャックが不在の日でさえ、外で会ってるらしいから、やっぱり二人の関係は異常なように思う。

 ベッドの中でジャックに抱かれる。

「リリー」

 かわされる口づけに激しく求められる身体。

 考えすぎなのかもしれない。

 けれど、私はどんなに激しくジャックに抱かれても、日を追うごとにジャックの気持ちを疑っていた。

 シェリーとジャックの関係を疑っていた。

 そんなある日のことだった。
 ジャックが浮気していると人づてで聞いたのは……。
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