28 / 38
28 イサールは……
しおりを挟む翌日の早朝、庭では帰国の準備をしている二コラ達がいた。
「あ、おはよー、レイ」
ぐっすり眠ったのか、二コラはすっきりした顔でレイに言った。
一方でレイは眠れなかったのか、眠そうな顔をしている。
「レイ、どうしたの? なんだか、疲れてるけど」
二コラは心配そうに言い、傍にいたイサールもどうしたんだろうか? という顔でレイを見つめる。しかし、レイは二コラに恐る恐る尋ねた。
「二コラ……お前のお母さんって、もしかしてエルマン?」
レイが尋ねると二コラはきょとんっとした顔で「そうだよ。今頃わかったの?」とあっさりと答えた。だが、まさかの答えにレイは言葉を返せなかった。
「ほんと、レイってば気が付いてなかったんだねー。ま、僕は父様似らしいから」
「でも! エルマンは男だろ!?」
「そうだよ? でも僕の母様」
二コラはにっこりと笑って言った。
……まさかフェインの言っていた事が本当だったなんて!
レイは昨夜フェインから聞いた話を思い出した。
フェインの話では、銀竜を竜国の竜人が神聖なものとして見るのは、珍しい銀色だという事もあるが。
それと同時に、銀竜だけが男女の性別関係なく子供を孕ませられるから、だった。
まさか! と信じられなかったが、こうして二コラを前にレイは信じるしかなかった。
「男同士で子供ができるのか……」
という事は……ルークも? と考えたが、そこへ会話を見守っていたイサールがレイに声をかけた。
「レイ様、我々はそろそろ」
「えー、もう出なきゃいけないのー?!」
二コラが声を上げたが、イサールは「今出ないと野宿することになりますよ。それに今回はレイ様の送り迎えをするだけ、という約束だったでしょう?」と二コラを宥めた。
二コラは不服そうだったが「はーい」と大人しく返事をし、イサールはレイに視線を戻した。
「レイ様、色々とありがとうございました」
イサールは深々と頭を下げてお礼を言った。その態度にレイも身を正す。
「あ、いえ、こちらこそ。送っていただき、ありがとうございました」
レイが言うとイサールは頭を上げ、それからマスクの下でにっこりと笑った。
「いえ、本当にありがとうございました。レイ様」
イサールは、まるでレイにとても大きな恩があるかのように言い、レイは内心首を傾げつつ「は、はぁ」と間抜けた返事をした。
……なんだろう? イサールさん。何か俺に言いたげな? でも、何かした覚えないし。
レイは答えが見つからず、その内にイサールは二コラに「じゃあ、二コラ様。行きましょうか」と言い、二コラは「はーい」と素直に答えた。
そして二人は庭の広場に戻り、レイが心の中で首を傾げている間に竜国に戻る為、竜の姿に変わった。
『じゃあ、レイ。またね』
『失礼いたします。レイ様』
ニコラとイサールはそう言い残し、翼をはためかせ、空へ飛んだ。
でもその時だった。
レイはイサールの湖水のような瞳を見て、ようやく気が付いた。イサールのその目がルークによく似ている事に。
そして、全てのピースが突如として頭の中で嵌っていった。
ルークの母親の墓がない事。
イサールが昔命を狙われ大怪我をしてマスクをしている事。
銀竜は性別関係なく子を伴侶に孕ませられる事。
そしてルークと同じ瞳のイサールの存在。
何よりレイに向けられたお礼の言葉。
この全てを合わせてできる答えがレイの頭に浮かんだ。
「イサール! 貴方は本当はルークの!」
レイはそこまで言いかけたが、竜達の翼音でその声はかき消されてしまった。
だが確証のない確信に、レイは微笑んだ。
……そうか、そう言う事だったのか。よかったな、ルーク!
レイは美しく飛ぶ竜達の姿をいつまでも眺めて、青い空を仰いだ。
だがファウント王国に戻ったレイの体に異変が起きたのは、それから数か月後の事だった。
136
あなたにおすすめの小説
りんご成金のご令息
けい
BL
ノアには前世の記憶はあったがあまり役には立っていなかった。そもそもあまりにもあいまい過ぎた。魔力も身体能力も平凡で何か才能があるわけでもない。幸いにも裕福な商家の末っ子に生まれた彼は、真面目に学んで身を立てようとコツコツと勉強する。おかげで王都の学園で教育を受けられるようになったが、在学中に両親と兄が死に、店も乗っ取られ、残された姉と彼女の息子を育てるために学園を出て冒険者として生きていくことになる。
それから二年がたち、冒険者としていろいろあった後、ノアは学園の寮で同室だった同級生、ロイと再会する。彼が手を貸してくれたおかげで、生活に余裕が出て、目標に向けて頑張る時間もとれて、このまま姉と甥っ子と静かに暮らしていければいいと思っていたところ、姉が再婚して家を出て、ノアは一人になってしまう。新しい住処を探そうとするノアに、ロイは同居を持ち掛ける。ロイ×ノア。ふんわりした異世界転生もの。
他サイトにも投稿しています。
[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった
ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン
モデル事務所で
メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才
中学時代の初恋相手
高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が
突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。
昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき…
夏にピッタリな青春ラブストーリー💕
【完結】どいつもこいつもかかって来やがれ
pino
BL
恋愛経験0の秋山貴哉は、口悪し頭悪しのヤンキーだ。でも幸いにも顔は良く、天然な性格がウケて無自覚に人を魅了していた。だがしかし、男子校に通う貴哉は朝起きるのが苦手でいつも寝坊をして遅刻を繰り返していた。
夏休みを目の前にしたある日、担任から「今学期、あと1日でも遅刻、欠席したら出席日数不足で強制退学だ」と宣告される。
それはまずいと貴哉は周りの協力を得ながら何とか退学を免れようと奮闘するが、友達だと思っていた相手に好きだと告白されて……?
その他にも面倒な事が貴哉を待っている!
ドタバタ青春ラブコメディ。
チャラ男×ヤンキーorヤンキー×チャラ男
表紙は主人公の秋山貴哉です。
BLです。
貴哉視点でのお話です。
※印は貴哉以外の視点になります。
いきなり有能になった俺の主人は、人生を何度も繰り返しているらしい
一花みえる
BL
ベルリアンの次期当主、ノア・セシル・キャンベルの従者ジョシュアは頭を抱えていた。自堕落でわがままだったノアがいきなり有能になってしまった。なんでも「この世界を繰り返している」らしい。ついに気が狂ったかと思ったけど、なぜか事態はノアの言葉通りに進んでいって……?
青い薔薇と金色の牡丹【BL】
水月 花音
BL
ある日、異世界で目覚めた主人公。
通じる言葉、使える魔法…
なぜ自分はここに来たのか。訳がわからないまま、時間は過ぎていく。
最後に待ち受ける結末とは…
王子様系攻め×綺麗系受け
【8話完結】いじめられっ子だった俺が、覚醒したら騎士団長に求愛されました
キノア9g
BL
いじめられ続けた僕は、ある日突然、異世界に転移した。
けれど、勇者として歓迎されたのは、僕を苦しめてきた“あいつ”の方。僕は無能と決めつけられ、誰からも相手にされなかった。
そんな僕に手を差し伸べてくれたのは、冷酷と恐れられる騎士団長・ジグルドだった。
なのに、あいつの命令で、僕は彼に嘘の告白をしてしまう――「ジグルドさんのことが、好きなんです」
それが、すべての始まりだった。
あの日から彼は、僕だけをまっすぐ見つめてくる。
僕を守る手は、やさしく、強くて、どこまでも真剣だった。
だけど僕には、まだ知られていない“力”がある。
過去の傷も、偽りの言葉も超えて、彼の隣にいてもいいのだろうか。
これは、いじめられっ子の僕が“愛されること”を知っていく、嘘と覚醒の物語。
全8話。
触れるな危険
紀村 紀壱
BL
傭兵を引退しギルドの受付をするギィドには最近、頭を悩ます来訪者がいた。
毛皮屋という通り名の、腕の立つ若い傭兵シャルトー、彼はその通り名の通り、毛皮好きで。そして何をとち狂ったのか。
「ねえ、頭(髪)触らせてヨ」「断る。帰れ」「や~、あんたの髪、なんでこんなに短いのにチクチクしないで柔らかいの」「だから触るなってんだろうが……!」
俺様青年攻め×厳つ目なおっさん受けで、罵り愛でどつき愛なお話。
バイオレンスはありません。ゆるゆるまったり設定です。
15話にて本編(なれそめ)が完結。
その後の話やら番外編やらをたまにのんびり公開中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる