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第四十三話
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ドレスが仕上がったとファニーから連絡があった。予定より早く仕上がったのは、デザインを一任してくれたお陰だとのことだった。アザレアはさっそくファニーにドレスを見せてもらうことにした。
そのドレスは、ネイビーカラーのマントのようなAラインのスクープネックがついているマーメイドラインのドレスで、よく見ると濃紺の宝石が大量に散りばめられていた。恐らくサファイアだろう。
ネックは取り外しが可能となっていて、カラーの裾の部分はレースになっていた。カラーの部分にも濃紺の宝石が散りばめられている。アザレアはシックでとても気に入った。
「素敵ですね、とても気に入りました。本当にファニーさんに任せておけば間違いないですね。ありがとう」
そうお礼を言うと、ファニーさんはニンマリ笑う。
「ご令嬢のドレスに関しては殿下とも話し合ったんだよね~、殿下にもお礼言っといて。それにしても作るの楽しかった~。逆にこんな仕事くれてご令嬢には感謝しかないよ」
そう言って満足そうに微笑んだ。
あっという間にパレード当日は訪れた。早朝から湯浴みをし、全身オイルマッサージされ準備に追われた。
シラーとシモーヌに手伝ってもらいマーメイドドレスを身に着けて待機室へ移動したところに、フランツを伴ったカルがアザレアの待機室を訪ねてきた。
「やあ」
そう言って入ってくると、フタリともしばらく無言でアザレアを見つめ頷いた。カルが微笑んで言った。
「君は何をしなくても美しいから、逆にシンプルなドレスの方が、その美しさがより際立って見えて素晴らしいね」
後ろに控えているフランツも、それに同意するかのように大きく頷いている。カルはリボンタイに、黒のチョッキ、刺繍と装飾を施されたモーニングコートという正装で、フランツは燕尾服を着ていた。
どちらも眩しいぐらいに格好良かった。アザレアは二人を見ると言った。
「ふたりとも本当に素敵ですわ」
するとカルはアザレアに近づく。
「実は君に渡したいものがあってきたんだ」
そう言って、ブラックダイヤが二つついた花モチーフの腕輪を出すと、アザレアの左腕に着けた。
そしてカルは自身の左手に着けたお揃いの腕輪をアザレアに見せて言った。
「これは身を護る魔力が付与されている。イヤリングは外れてしまうし、この前の崩落事件でこわれてしまったからね。とにかく出来上がりがこのパレードに間に合って良かった」
そして、カルは楽しそうに言う。
「簡単には外れないようになってるから、安心して」
アザレアはお揃いなのが恥ずかしくなり、カルの顔を見ることができず胸の辺りを見つめた。そしてふとコートのボタンホールに、みすぼらしいアンモビウムのドライフラワーが一輪挿してあるのに気がついた。
一瞬なぜこんな花を? と思ったが、その花がアザレアが昔カルにあげた花だと気づいた。だが、どう考えてもそんな花を、この大舞台で王太子殿下が挿しているのは場違いである。
アザレアは慌てて、その花に手を伸ばした。
「カル、この花はだめですわ!」
そう言うと、カルはイタズラっぽく笑って言う。
「なぜ?」
カルはボタンホールからその花を取ると、アザレアの手に届かないよう上に持ち上げた。アザレアはそれを追って手を伸ばす。
カルは楽しそうに更に上にその花を掲げ、アザレアも更に手を伸ばすと、突然カルはアザレアの腰をガッチリ抱える。
「君からこんなに迫られるのは、悪くないね」
気がつけばカルの顔が面前にあり、今にも唇が触れそうだった。ビックリして爪先立ちしていた体のバランスが崩れた。
そのままカルに抱きつく形になった。その一瞬、カルの唇とアザレアの唇が軽く触れる。カルはそのままギュッとアザレアを抱きしめるとフランツを見つめて言った。
「これで君が僕の物だって、誰かさんは理解できたかな?」
アザレアは恥ずかしいのと、罪悪感とないまぜになってしまって、しばらく顔をあげることもできなかった。なんとか平静を取り戻して顔を上げる。
「イタズラしてはいけません。それよりとにかくその花は駄目ですわ」
カルは上機嫌で微笑む。
「君が言うならしょうがない。それにこの花は君との思い出の花だしね、僕一人で愛でるとするよ」
そう言って、花に愛おしそうにキスをする。
「だが着けていく飾りがないと困るね」
アザレアは少し迷ったのち、カルから体を離すと、自分のフラワーホルダーとスターチスの花を自分の胸から外し、カルの胸に着けた。
それはカルの服装に合っていて、最初からこれが狙いだったのではないかと思った。
カルはアザレアの額にキスをし微笑んだ。
「ありがとう。君だと思って大切にする。では僕は先に行ってくるよ」
そう言って、フランツを伴って部屋を出ていった。
しばらくして、今度は栞奈が訪ねてきた。栞奈は無作法に勝手に部屋に入ると、アザレアを上から下まで眺める。
「うわっ、なにそのドレスめっちゃダサ! 地味! なんだ、ちょっと心配してたけど、心配して損した。貴女も自分の立場をわきまえたってことね」
どうやらアザレアのドレスを確認しにきたようだ。そんな栞奈は白いレースたっぷりのウェディングドレスのような格好をしている。
このドレスでカルと並べばカルの服装も相まってまるで結婚式のように見える。おそらく聖女もそれを狙ったものだと思われた。
しかし通常このパレードで聖女が身にまとうのは、アゲラタムの準備する白の祭服に金のストラと決まっている。
アザレアはあまりのことに沈黙してしまった。
栞奈はそんなアザレアの様子を都合よく解釈したようだった。
「どお? 素敵でしょ? このドレス。あなた、悔しいんでしょう。今になって私のパレードに出ようなんて差し出がましいことしたのを後悔したって、遅いんだから。可哀想だけど、公開処刑させてもらうわね。そうやって私との差に悔しがればいいのよ」
そう言って、意気揚々去っていった。
その後アザレアは気を取り直して、用意されていたアレキサンドライトのフロントレットと、ドレスのカラーを装着した。そのとき、外から大きな歓声が上がった。
きっとカルにエスコートされ聖女のお披露目が始まったのだろう。アザレアは、栞奈のパレードに参加しなければならないことを心底憂鬱に思った。
そのドレスは、ネイビーカラーのマントのようなAラインのスクープネックがついているマーメイドラインのドレスで、よく見ると濃紺の宝石が大量に散りばめられていた。恐らくサファイアだろう。
ネックは取り外しが可能となっていて、カラーの裾の部分はレースになっていた。カラーの部分にも濃紺の宝石が散りばめられている。アザレアはシックでとても気に入った。
「素敵ですね、とても気に入りました。本当にファニーさんに任せておけば間違いないですね。ありがとう」
そうお礼を言うと、ファニーさんはニンマリ笑う。
「ご令嬢のドレスに関しては殿下とも話し合ったんだよね~、殿下にもお礼言っといて。それにしても作るの楽しかった~。逆にこんな仕事くれてご令嬢には感謝しかないよ」
そう言って満足そうに微笑んだ。
あっという間にパレード当日は訪れた。早朝から湯浴みをし、全身オイルマッサージされ準備に追われた。
シラーとシモーヌに手伝ってもらいマーメイドドレスを身に着けて待機室へ移動したところに、フランツを伴ったカルがアザレアの待機室を訪ねてきた。
「やあ」
そう言って入ってくると、フタリともしばらく無言でアザレアを見つめ頷いた。カルが微笑んで言った。
「君は何をしなくても美しいから、逆にシンプルなドレスの方が、その美しさがより際立って見えて素晴らしいね」
後ろに控えているフランツも、それに同意するかのように大きく頷いている。カルはリボンタイに、黒のチョッキ、刺繍と装飾を施されたモーニングコートという正装で、フランツは燕尾服を着ていた。
どちらも眩しいぐらいに格好良かった。アザレアは二人を見ると言った。
「ふたりとも本当に素敵ですわ」
するとカルはアザレアに近づく。
「実は君に渡したいものがあってきたんだ」
そう言って、ブラックダイヤが二つついた花モチーフの腕輪を出すと、アザレアの左腕に着けた。
そしてカルは自身の左手に着けたお揃いの腕輪をアザレアに見せて言った。
「これは身を護る魔力が付与されている。イヤリングは外れてしまうし、この前の崩落事件でこわれてしまったからね。とにかく出来上がりがこのパレードに間に合って良かった」
そして、カルは楽しそうに言う。
「簡単には外れないようになってるから、安心して」
アザレアはお揃いなのが恥ずかしくなり、カルの顔を見ることができず胸の辺りを見つめた。そしてふとコートのボタンホールに、みすぼらしいアンモビウムのドライフラワーが一輪挿してあるのに気がついた。
一瞬なぜこんな花を? と思ったが、その花がアザレアが昔カルにあげた花だと気づいた。だが、どう考えてもそんな花を、この大舞台で王太子殿下が挿しているのは場違いである。
アザレアは慌てて、その花に手を伸ばした。
「カル、この花はだめですわ!」
そう言うと、カルはイタズラっぽく笑って言う。
「なぜ?」
カルはボタンホールからその花を取ると、アザレアの手に届かないよう上に持ち上げた。アザレアはそれを追って手を伸ばす。
カルは楽しそうに更に上にその花を掲げ、アザレアも更に手を伸ばすと、突然カルはアザレアの腰をガッチリ抱える。
「君からこんなに迫られるのは、悪くないね」
気がつけばカルの顔が面前にあり、今にも唇が触れそうだった。ビックリして爪先立ちしていた体のバランスが崩れた。
そのままカルに抱きつく形になった。その一瞬、カルの唇とアザレアの唇が軽く触れる。カルはそのままギュッとアザレアを抱きしめるとフランツを見つめて言った。
「これで君が僕の物だって、誰かさんは理解できたかな?」
アザレアは恥ずかしいのと、罪悪感とないまぜになってしまって、しばらく顔をあげることもできなかった。なんとか平静を取り戻して顔を上げる。
「イタズラしてはいけません。それよりとにかくその花は駄目ですわ」
カルは上機嫌で微笑む。
「君が言うならしょうがない。それにこの花は君との思い出の花だしね、僕一人で愛でるとするよ」
そう言って、花に愛おしそうにキスをする。
「だが着けていく飾りがないと困るね」
アザレアは少し迷ったのち、カルから体を離すと、自分のフラワーホルダーとスターチスの花を自分の胸から外し、カルの胸に着けた。
それはカルの服装に合っていて、最初からこれが狙いだったのではないかと思った。
カルはアザレアの額にキスをし微笑んだ。
「ありがとう。君だと思って大切にする。では僕は先に行ってくるよ」
そう言って、フランツを伴って部屋を出ていった。
しばらくして、今度は栞奈が訪ねてきた。栞奈は無作法に勝手に部屋に入ると、アザレアを上から下まで眺める。
「うわっ、なにそのドレスめっちゃダサ! 地味! なんだ、ちょっと心配してたけど、心配して損した。貴女も自分の立場をわきまえたってことね」
どうやらアザレアのドレスを確認しにきたようだ。そんな栞奈は白いレースたっぷりのウェディングドレスのような格好をしている。
このドレスでカルと並べばカルの服装も相まってまるで結婚式のように見える。おそらく聖女もそれを狙ったものだと思われた。
しかし通常このパレードで聖女が身にまとうのは、アゲラタムの準備する白の祭服に金のストラと決まっている。
アザレアはあまりのことに沈黙してしまった。
栞奈はそんなアザレアの様子を都合よく解釈したようだった。
「どお? 素敵でしょ? このドレス。あなた、悔しいんでしょう。今になって私のパレードに出ようなんて差し出がましいことしたのを後悔したって、遅いんだから。可哀想だけど、公開処刑させてもらうわね。そうやって私との差に悔しがればいいのよ」
そう言って、意気揚々去っていった。
その後アザレアは気を取り直して、用意されていたアレキサンドライトのフロントレットと、ドレスのカラーを装着した。そのとき、外から大きな歓声が上がった。
きっとカルにエスコートされ聖女のお披露目が始まったのだろう。アザレアは、栞奈のパレードに参加しなければならないことを心底憂鬱に思った。
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