死んでるはずの私が溺愛され、いつの間にか救国して、聖女をざまぁしてました。

みゅー

文字の大きさ
46 / 66

第四十四話

しおりを挟む
 シラーがアザレアを呼びに来たので、部屋を出る。するとフランツとコリンが立って待っていた。コリンはアザレアの姿を観ると微笑む。

「久しぶりだね、元気にしてたか?」

 そう言ったかと思うと首を振る。

「そうじゃないな、アザレ、会いたかった」

 コリンはそんなことを言うタイプではないので面食らって顔を見つめた。

「アザレ、俺はいつまで君のお兄さんでいなければならないんだ?」

 そう言うと、アザレアの手を取り手の甲にキスをした。とそこにフランツが待ったをかける。

「コリウス、君は後から出てきてふてぶてしいな」

 アザレアの腕を取って、コリンから引き離した。コリンは苦笑いをする。

「確かにね、でもそんなことはアザレが決めることだろう。遅いも早いもないさ。俺だって諦めてないからね。それに……」

 そう言うと、アザレアに向き直る。

「正式に王宮からアザレの護衛の任命をされているしね、これからは堂々とそばにいられるよ」

 フランツはアザレアとコリンの間に割って入り、アザレアを背中に隠す。

「貴様に護衛されたら逆に危険だ。このことは後で父上と相談する」

 コリンは笑う。

「王宮からの任命だからね、簡単に覆すことはできないと思うけど。それより、もうそろそろ行かないとまずいのでは?」

 アザレアは慌てた。

「お二人がわたくしとパレードをご一緒しますの? なら、早く参りましょう」

 そう言うと、二人とも苦虫を噛み潰したような顔をして首を振った。そしてフランツが言う。

「僕たちではありません。とりあえず、行けばわかります」

 二人はアザレアを王宮のエントランスまでエスコートし、そこで待つように指示すると後ろに控えた。どういうことなのかと待っていると、二階から国王陛下が現れ微笑む。

「アザレア、私では不満かもしれないが行こうか」

 そう言って、アザレアの手を取ると門まで続くレッドカーペットの上を歩き出した。アザレアは混乱しつつも、なんとかこの大役をはたさねばと自分を落ち着かせる。

 門の周囲に集まった観衆が『わっ!』と沸き、アザレアを見ようと押し合い圧し合いしている民衆を、兵士達が必死に抑えている。

「聖女様!」

「女神様だ!!」

「ありがたい、ありがたい」

 泣き出している者までいて、アザレアは聖女ではないのに。と、申し訳ない気持ちになった。

 アザレアの後ろにはフランツとコリンが続いて歩いている。そのまま門まで歩いてゆくと、そこに赤いクラミスを羽織ったカルがこちらを向いて立っていた。

 一緒にいるはずの栞奈かんなはどうしたのかと目を凝らして見ると、遥か彼方の前方に教会の司祭達一団とその中をゆく馬車があり、その馬車に乗っているようだった。

 国王陛下はカルの前までアザレアをエスコートすると

「未來の国王、若き王子に宮廷魔導師を託すとする!!」

 そう声高らかに言って、アザレアの手をカルに託した。すると一層民衆が沸き歓喜した。アザレアは、とんでもない展開に気を失いそうになるのを必死にこらえた。

 そして、門の前に止めてあるオープン馬車にカルのエスコートで乗車した。聖女すらオープン馬車でないのに、まるで主役のようではないか。

 しかも馬車の側面には王宮の紋章まで入っている。アザレアはカルに小声で若干避難するように言う。

「この馬車はどういうことですの?」

 そう聞くと、カルはアザレアを見て微笑む。

「聖女の馬車は教会が、君の馬車は王宮が準備した。宮廷魔導師なのだから王宮が君の馬車の準備をするのは当然だと思う。それに聖女のドレスを見たかい? あのドレスではアゲラタムもオープン馬車に聖女を乗せる訳にはいかなかったのだろう」

 前方に王宮騎士団、後方にフランツとコリンを伴い国王、皇后両陛下に見送られながらゆっくりと馬車は動き出した。アザレアは民衆に手を振りながら小声でカルに訊く。

「聖女とご一緒しなくてよろしかったんですの?」

 カルも民衆に手を振りながら小声で答える。

「聖女と一緒に出るとは言ったが、一緒にパレードに参加するとは言ってないよ、それになぜ僕がアゲラタムの馬車に乗らないといけないんだ?」

 そのとき沿道から会話が聞こえた。

「見て見てお二人の衣装、赤や青に変化してとても神秘的。まるでアザレア公爵令嬢の瞳のようね」

 慌てて自分のドレスを見ると、日が当たっている部分が赤くなっていた。驚いてカルを見上げる。

「気がついた? 君と揃いで僕のクラミスも陽の光を浴びると赤くなる布とアレキサンドライトを使っていて、日に当たると赤くなる仕掛けだ。アレキサンドライトは君を意味する宝石だから、ふんだんに使ったよ」

 と言った後イタズラっぽく笑った。

「それに私は、聖女から衣装の色やデザインの指定はされたが、装飾品の指定はなかったからね、クラミスぐらいは自由にさせてもらったよ」

 沿道の民衆はあきらかに聖女ではなく、アザレアの方に向かって聖女様と叫んでいる。

 先日のミツカッチャ洞窟の件が尾を引いているのだろう。頭が痛い。

 聖女の馬車は大通りを抜けると左に曲がり職人通りを通って教会に戻るルートを取ったが、アザレア達の馬車は右に曲がり住宅街を通って王宮に戻るルートを取った。

 これは集まる民衆を分断する目的であったが、民衆達がほとんどアザレアの馬車を追いかけて来てしまい、意味をなさなかった。

 聖女の馬車は後ろ姿も寂しく、アゲラタムの協会に戻って行った。

 住宅街に入ると人々が通りに花びらを撒いてくれた。思わずカルに言った。

「素敵な演出ですわ、カルありがとう」

 すると、カルは首を振る。

「これは私はお願いしてないよ。きっと君に助けられた人達の計らいだろう。君は皆に愛されているってことだろう。それだけの行いをしたのだから素直に喜べばいい」

 そう言われてアザレアは感極まって泣いてしまった。泣きながら懸命に皆に手を振る。

「ありがとう!」

 それを見ていた沿道の人々も泣き始めてしまうのだった。

 王宮に戻ると馬車を降り、なおもアザレアの名を呼ぶ民衆に振り替えって手を振って答えた。アザレアはカルに言う。

「こうして皆に感謝を言えるなら、パレードも悪くありませんわね」

 そう言って微笑む。カルはそんなアザレアをじっと見つめ言った。

「そんな君だから一緒に歩んで行きたいと思う」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

子供が可愛いすぎて伯爵様の溺愛に気づきません!

屋月 トム伽
恋愛
私と婚約をすれば、真実の愛に出会える。 そのせいで、私はラッキージンクスの令嬢だと呼ばれていた。そんな噂のせいで、何度も婚約破棄をされた。 そして、9回目の婚約中に、私は夜会で襲われてふしだらな令嬢という二つ名までついてしまった。 ふしだらな令嬢に、もう婚約の申し込みなど来ないだろうと思っていれば、お父様が氷の伯爵様と有名なリクハルド・マクシミリアン伯爵様に婚約を申し込み、邸を売って海外に行ってしまう。 突然の婚約の申し込みに断られるかと思えば、リクハルド様は婚約を受け入れてくれた。婚約初日から、マクシミリアン伯爵邸で住み始めることになるが、彼は未婚のままで子供がいた。 リクハルド様に似ても似つかない子供。 そうして、マクリミリアン伯爵家での生活が幕を開けた。

聖女の任期終了後、婚活を始めてみたら六歳の可愛い男児が立候補してきた!

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
23歳のメルリラは、聖女の任期を終えたばかり。結婚適齢期を少し過ぎた彼女は、幸せな結婚を夢見て婚活に励むが、なかなか相手が見つからない。原因は「元聖女」という肩書にあった。聖女を務めた女性は慣例として専属聖騎士と結婚することが多く、メルリラもまた、かつての専属聖騎士フェイビアンと結ばれるものと世間から思われているのだ。しかし、メルリラとフェイビアンは口げんかが絶えない関係で、恋愛感情など皆無。彼を結婚相手として考えたことなどなかった。それでも世間の誤解は解けず、婚活は難航する。そんなある日、聖女を辞めて半年が経った頃、メルリラの婚活を知った公爵子息ハリソン(6歳)がやって来て――。

聖女を騙った少女は、二度目の生を自由に生きる

夕立悠理
恋愛
 ある日、聖女として異世界に召喚された美香。その国は、魔物と戦っているらしく、兵士たちを励まして欲しいと頼まれた。しかし、徐々に戦況もよくなってきたところで、魔法の力をもった本物の『聖女』様が現れてしまい、美香は、聖女を騙った罪で、処刑される。  しかし、ギロチンの刃が落とされた瞬間、時間が巻き戻り、美香が召喚された時に戻り、美香は二度目の生を得る。美香は今度は魔物の元へ行き、自由に生きることにすると、かつては敵だったはずの魔王に溺愛される。  しかし、なぜか、美香を見捨てたはずの護衛も執着してきて――。 ※小説家になろう様にも投稿しています ※感想をいただけると、とても嬉しいです ※著作権は放棄してません

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです

白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。 ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。 「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」 ある日、アリシアは見てしまう。 夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを! 「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」 「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」 夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。 自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。 ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。 ※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

混血の私が純血主義の竜人王子の番なわけない

三国つかさ
恋愛
竜人たちが通う学園で、竜人の王子であるレクスをひと目見た瞬間から恋に落ちてしまった混血の少女エステル。好き過ぎて狂ってしまいそうだけど、分不相応なので必死に隠すことにした。一方のレクスは涼しい顔をしているが、純血なので実は番に対する感情は混血のエステルより何倍も深いのだった。

【完結】偽物聖女は冷血騎士団長様と白い結婚をしたはずでした。

雨宮羽那
恋愛
 聖女補佐官であるレティノアは、補佐官であるにも関わらず、祈りをささげる日々を送っていた。  というのも、本来聖女であるはずの妹が、役目を放棄して遊び歩いていたからだ。  そんなある日、妹が「真実の愛に気づいたの」と言って恋人と駆け落ちしてしまう。  残されたのは、聖女の役目と――王命によって決められた聖騎士団長様との婚姻!?  レティノアは、妹の代わりとして聖女の立場と聖騎士団長との結婚を押し付けられることに。  相手のクラウスは、「血も涙もない冷血な悪魔」と噂される聖騎士団長。クラウスから「俺はあなたに触れるつもりはない」と言い放たれたレティノアは、「これは白い結婚なのだ」と理解する。  しかし、クラウスの態度は噂とは異なり、レティノアを愛しているようにしか思えなくて……?  これは、今まで妹の代わりの「偽物」として扱われてきた令嬢が「本物」として幸せをつかむ物語。 ◇◇◇◇ お気に入り登録、♡、感想などいただければ、作者が大変喜びます! モチベになるので良ければ応援していただければ嬉しいです♪ ※いつも通りざまぁ要素は中盤以降。 ※完結まで執筆済み ※表紙はAIイラストです ※アルファポリス先行投稿(他投稿サイトにも掲載予定です)

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

転生したら悪役令嬢だった婚約者様の溺愛に気づいたようですが、実は私も無関心でした

ハリネズミの肉球
恋愛
気づけば私は、“悪役令嬢”として断罪寸前――しかも、乙女ゲームのクライマックス目前!? 容赦ないヒロインと取り巻きたちに追いつめられ、開き直った私はこう言い放った。 「……まぁ、別に婚約者様にも未練ないし?」 ところが。 ずっと私に冷たかった“婚約者様”こと第一王子アレクシスが、まさかの豹変。 無関心だったはずの彼が、なぜか私にだけやたらと優しい。甘い。距離が近い……って、え、なにこれ、溺愛モード突入!?今さらどういうつもり!? でも、よく考えたら―― 私だって最初からアレクシスに興味なんてなかったんですけど?(ほんとに) お互いに「どうでもいい」と思っていたはずの関係が、“転生”という非常識な出来事をきっかけに、静かに、でも確実に動き始める。 これは、すれ違いと誤解の果てに生まれる、ちょっとズレたふたりの再恋(?)物語。 じれじれで不器用な“無自覚すれ違いラブ”、ここに開幕――! 本作は、アルファポリス様、小説家になろう様、カクヨム様にて掲載させていただいております。 アイデア提供者:ゆう(YuFidi) URL:https://note.com/yufidi88/n/n8caa44812464

処理中です...