死んでるはずの私が溺愛され、いつの間にか救国して、聖女をざまぁしてました。

みゅー

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第四十五話

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 パレードが終わり王宮の自室に戻ると、アザレアは妙な達成感を味わっていた。寝衣に着替えるとベッドに寝転がり左腕の腕輪を見つめた。

 考えてみればパレード中手を振っていたので、国民はカルとアザレアがお揃いの腕輪をしていることに気がついたに違いなかった。

 それに栞奈かんなは今日のパレード、どう感じただろう? などと、とめどもないことをあれこれ考えた。

 今日は最後の最後まで忙しい一日だったが、みんなと触れあえる時間が取れたし、その点実りのある充実した一日だったことには間違いなかった。アザレアは、疲れから気がつくと深い眠りに落ちていた。



 聖女のパレードが終わり、高等科入学までは、特に大きな祭事や公務もないため、講義に専念できる環境となった。講義に専念すると言っても、ヒュー先生はのんびりした性格なので、久々にゆったりとした時間が流れた。

 そんな中、アザレアはマユリに作成をお願いしていた箱の進捗を確認するため、空いた時間にマユリのところに行くことにした。

 だが、以前のようにこっそり出かけるわけにはいかず、コリンを伴わなければならなかった。

 アザレアの部屋から出て、左手にある廊下の並びの部屋に、コリンの詰め所が設けられることになった。今後出かけるときは、こちらに声をかけて出かけなければならない。

 面倒だと思う反面、本来はおいそれと外出できる立場ではないので、声をかけさえすれば出かけられるこの環境に感謝せねばならなかった。

 アザレアは時空魔法の使い手なので、どんなに制限しても簡単に一人で外に出られるのだから、王宮の方も妥協したのだろう。

 外出時、特に国王陛下やカルに許可を取る必要はないそうだ。カルにもらったペアの腕輪があるので、アザレアの居場所を調べようと思えば把握は簡単にできるからとのことだった。

 この腕輪で窮屈な気もするが、逆に腕輪がなければ自由に外出できなかったかもしれない。


「コリンに出かけることを伝えてもらえるかしら?」

 アザレアがシモーヌに言うと、シモーヌは笑顔になる。

「今までも隠れて護衛がついていたとはいえ、表立って護衛がいないのは不安でしたから、コリウス様にお嬢様を表立って護衛していただければ、より安心ですね」

 そう言うと、部屋を出ていった。アザレアは新たな情報に呆然とした。今まで誰にも知られずに出かけられていると思っていたが、そうではなかったらしい。

 命を狙われているのだから、当然と言えば当然なのだろうが、カルやフランツ、リアトリスがアザレアの知らないところで動いていることはどれほどあるのだろう? そんなことを考えた。

「アザレ? 大丈夫か?」

 声をかけられハッとして見ると、部屋の入り口にコリンが立っていた。アザレアは慌てて椅子から立ち上がるとコリンに向かって言う。

「呼び付けておいてごめんなさい、ぼんやりしてしまいましたわ」

 コリンは微笑む。

「いや、最近君は忙しかったから疲れたのだろう、それに俺にだけはそんなに気を使わないでくれ。君がいつでも甘えられる存在でいたいからね。言葉使いだって昔のようにしてほしい」

 アザレアはコリンにこういう女性的な扱いを受けることに慣れていないので、ムズムズした。思わず下を向くとコリンはクスクス笑う。

「君の反応は昔から可愛らしいな、殿下の婚約者候補になどならなければもっと早くにハッキリ伝えていたよ、君が好きだってね」

 ドキリとして顔を上げると、コリンは手を差し出した。

「さぁ、君の行きたいところにお供する」

 そう優しく囁いた。後ろで、シラーとシモーヌがキャーキャー黄色い声を出していた。

 魔法で移動するのに、コリンと手を繋ぐとコリンがアザレアを制した。

「アザレの移動用に、以前君が作った魔石をケルヘール公爵から預かっている。君の魔力を極力使わせたくないからね。じゃあ何処へ行きたいか教えてくれるか?」

 アザレアが職人通りのジュエリー職人のマユリの工房をリクエストすると、

「わかった、任せてくれ」

 そう言って、コリンは魔石を使った。

 アザレアがマユリの工房にくるのは久しぶりだった。ミツカッチャ洞窟の事故以来だろうか? 

 店内に入ると、いつものようにノクサがソファに座っている。ノクサは人の気配に振り返り、アザレアが来たことに気づくと叫んだ。

「聖女様!」

 そして駆け寄り、アザレアの前に跪くと、ドレスの裾にキスをした。

 アザレアは慌ててノクサの肩に手を置くと言った。

「ノクサさん、やめてください。私は聖女じゃありません。それに当然のことをしただけです。お願いですから顔を上げてください」

 そう言って、顔を上げるよう促すとノクサはやっと顔を上げた。

「アゲラタムがなんと言おうと、私にとって貴女は聖女様なのです。感謝の言葉しかありません」

 と、泣き出す。アザレアはしゃがみ、ノクサと目線を合わせる。

「それならひとつ、私のお願いを聞いて下さい。今まで通り接していただけないでしょうか?」

 ノクサはとんでもないと言ったが、しばらく話して説得すると、なんとか納得してもらえた。だが、アザレアを聖女様と呼ぶことは頑として譲らなかった。

 そうこうしていると、カウンターからマユリが出てきた。

「爺さんなにやってんだ? お嬢ちゃんを困らせるなよ。お嬢ちゃんは箱のことで来たんだろ? できてるぜ」

 マユリはいつもと態度が変わらないので、アザレアはほっとした。

 さっそく箱を見せてもらう。金属製で縦二十センチ、横三十センチ程。表面は細かな細工とブラックダイヤが、ミステリーセッティングと言う、モザイク細工のようにはめ込まれている。

「やっぱりマユリさんにお願いして良かったです。完璧ですね、素晴らしいです!」

 そう言って受けとると、マユリは少し照れたように微笑む。

「いやぁ、こっちこそお嬢ちゃんの持ってくる仕事は俺の創作意欲をそそる物ばかりだから、楽しいぜ。それにしてもよくこんな細工思いつくもんだ」

 そう言ったあと、護衛のコリンの方を見る。

「それにしてもお嬢ちゃん、やっと護衛をつけることにしたんだな。これで一安心ってもんだ。そもそも貴族様で護衛もつけねぇなんて、お嬢ちゃんくらいだったからな」

 と言って豪快に笑う。そして、真顔になると言った。

「そういやぁ、近頃ここいらも物騒でよ。職人がいなくなったりとかの行方不明事件とかもあったし、気を付けろよ」

 そう言うと、アザレアの着けている腕輪に気づいて言った。

「おっ! お嬢ちゃん、その腕輪着けてくれてんだな。よかったぜ」

 アザレアは顔を上げて訊く。

「これ、マユリさんの作品でしたの?」

 マユリは歯を見せニカッと笑うと答える。

「おうよ、その腕輪を作り始めたときに、王子が宝飾品製作の依頼をしにきてよ。それ見てえらく気に入ったってんで、頼み込まれてな。譲ったんだよ。パレードでお嬢ちゃんが着けてくれてるの見て俺は誇らしかったぜ」

 アザレアはカルがマユリのところに来ているのは知らなかったので、少し驚いた。そして、やはりあのパレードでカルとアザレアが揃いの腕輪をしているのは、国民に知れ渡ってしまったかもしれないと思った。

 アザレアは気を取り直して、改めて箱をまじまじ見る。ダイヤの接着面が全く見えず、隙間なく綺麗に並べられている。本当に素晴らしい出来栄えだった。この技術がここまで完璧にできるのは、おそらくこの国ではマユリただ一人ではないだろうか。

 これだけ宝石を隙間なく綺麗に並られれば、時空魔法の負荷に耐えられる。

 もう一度マユリにお礼を言い、支払いを済ませ、ノクサさんに挨拶をすると、アザレアは店を出た。

 
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