死んでるはずの私が溺愛され、いつの間にか救国して、聖女をざまぁしてました。

みゅー

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第四十六話

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 マユリの店を出たところでコリンが言った。

「アザレ、お腹すかないか? せっかく外にでたことなんだし、ランチでもどうかな?」

 断る理由もないので行くことにした。

 街中を歩いていると、すれ違う人々がアザレアに気づき、先日の洞窟事故についてのお礼を言われた。

 コリンについて行くと、以前カルとも来たことのある中央通りの食堂に連れてこられた。アザレアはコリンに言った。

「以前、カルと来たことがありますわ」

 するとコリンは頷く。

「騎士団長の奥方が働いてる店だから、君を連れてくるなら、ここが一番安全だろうね」

 窓際の席に案内され、以前アザレアにオニオングラタンスープを奢ってくれた店員さんがやってきて、コン! と勢いよく水の入ったコップをテーブルの上に置いた。コリンはその店員に挨拶した。

「ミナさん、お久しぶりです」

 ミナはコリンを見て言う。

「久しぶりだね、で、今日は何にする?」

 そう言ったあと、アザレアとコリンを交互にみると、アザレアに視線を戻す。

「なんだい? 聖女様もやるねぇ」

 ミナはニヤリと笑う。アザレアは誤解されたことが恥ずかしくて、違いますのにー! と思いながらも、どう返したら良いかわからず下を向いた。

 そうしているとミナはかまわず、おすすめメニューを読み上げはじめた。ここのおすすめは間違いないことを前回来たときに学習していたので、アザレアは今回もおすすめを頼んだ。

 ミナがテーブルから離れて行ったので、小声でコリンに質問する。

「もしかして、あの方が騎士団長の奥様でらっしゃるの?」

 コリンはミナの方をちらりと見ると頷いた。

「そうだよ、騎士団長がミナさんに惚れ込んで、ここに毎日通って口説いたんだそうだよ。騎士団長が何回もその話をして惚気るもんだから、騎士団の連中はみんな知ってるよ」

 アザレアは思わずミナさんの後ろ姿を目で追っていた。そして、ふとコリンがじっと自分を見ていることに気がついた。

「なんですの?」

 と言うとコリンは微笑む。

「うん、これってデートかな? って思って」

 アザレアは、間髪いれずに答える。

「違います。ただのランチです」

 コリンは苦笑する。

「とりつく島もないね」

 そして続ける。

「ごめんね、アザレは俺のこと兄のように慕ってくれていたのに、俺は昔からアザレのことそんな目で見てた」

 と、コリンが言ったところで、テーブルの上にドン! と、ミートローフがのせられる。

「ハイ! お待ちどう! 本日おすすめミートローフだよ!!」

 ひときわ大きな声でミナさんが言った。驚いてミナを見ていると、コリンは苦笑した。

「ミナさん、タイミング悪すぎです」

 と言うと、ミナは笑って言った。

「なーに言ってんだい。聖女様を口説くのにこんな食堂使うあんたが悪いのさ!」

 そう言ったあと、アザレアを見て言う。

「ねぇ、聖女様。女にはムードってのが大事だよねぇ。こんなところで口説くのはうちのぼんくら亭主ぐらいだと思ってたよ」

 コリンは申し訳なさそうに頭を掻いた。

 ミートローフをいただいたあと、ミナさんがスフレとお茶を持ってきてくれた。

「聖女様はいつも忙しいんだろ? たまにはお茶でも飲んでゆっくりしないとね!」

 そう言うと、ウインクして去っていった。

 聖女様と呼ばれるのは抵抗があるが、以前と同じように接してくれることはありがたかった。

 お茶をいただいて一息ついたところで、コリンに訊く。

「そう言えば、シモーヌから今までもわたくしに護衛がついていたって聞いたのだけど、コリンはなにか知ってる?」

 コリンは頷く。

「君がロングピークからお忍びで城下町に来はじめた頃、伯父上は鉱山へ行っていたから動くことができなかっただろう? だから王宮の方で護衛してもらうことになったんだ。と言うか、お忍びで君が城下町に来ているのに気づいたのも、王宮の方だった。それでこっそりね」

 そう言うとコリンは申し訳なさそうに苦笑した。お忍びでマユリのところに出かけていたのが、最初から全部ばれていたと言うことになる。アザレアは恥ずかしさと、それらを隠されていたことに少し落ち込んだ。

 するとコリンはアザレアの様子を見て取ると言った。

「すまないね、君には自由に動いてもらいたいのと、そうしてもらう必要があったんだ。君の命を守るために、護衛しながら色々探る目的もあったからね。だからなにも知らないでいてもらった方がこちらとしても都合が良かった。ただ、アザレを囮にしてしまう形になるのを、殿下は最後まで反対したようだけど。せめて自身で護衛したかったようだね。流石に毎度君が城下町に出没する度に、殿下自身が動く訳にもいかなかったから、それは諦めたみたいだけど」

 そう言うと、コリンはだされたスフレをひとくち口にいれた。

 アザレアはその話を聞いていて気になることが一つあった。

「コリンはなぜそんなに詳しく知ってますの? この件についてコリンも何か関わってますの?」

 そうアザレアが訊くと、コリンは微笑む。

「そうだね、これでも俺も一応ケルヘール家を継ぐかもしれない人間だ。こういうことは身内の信頼できる人間が動いた方がいいだろう? だから、俺もその件に関わることになった」

 アザレアはそこで気づく。

「今もコリン以外に護衛がいますの?」

 コリンは頷くと、周囲を見ていった。

「もちろん。特にここ、まんぷく亭はミナさんもいるし、最近はアザレ護衛の詰所みたいになっている。それと会話は聞かれていないから安心して。プライベートは守らないとね」

 そう言うと、コリンはお茶をひとくち飲んだ。アザレアは知らなかったことだらけで、驚きの連続だった。全く怒っていない、と言えば嘘になる。

 だが、王宮もリアトリスも公爵や騎士団も、そしてカルも、その誰もがアザレアのことを必死に守りたい。そう思ってくれていたことだけは確かだ。

 アザレアは、自分を取り巻く周囲の人々に感謝せねばならないと改めて思った。

 その後ミナの厚意に甘えて、ゆっくりお茶を楽しむと、まんぷく亭を後にした。
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