死んでるはずの私が溺愛され、いつの間にか救国して、聖女をざまぁしてました。

みゅー

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第四十八話

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「まず、ことの発端だが、アゲラタムのとある人物から『横領が行われているかもしれない』と言う密告を受けたことから始まった。これは以前君が王宮で倒れて寝込んでしまうよりずっと前の話だ」

 そう言うと、フランツに向かって言う。

「あの書類をここに」

 フランツは奥から二枚の書類を持ってくると、応接セットの机に並べて見せた。アザレアはその書類を覗き込んだ。

 書類は、教会に寄せられた市民からの寄付金と王宮からの助成金を、地方の孤児院へ送金する許可証だった。二枚とも同じ内容で王宮と教会の承認印、真ん中に割印があった。

 見た感じこの書類自体になんらおかしなところはなかった。アザレアは、書類から顔を上げる。

「この書類がどうしましたの?」

 カルは苦い顔をした。

「この書類はなんらおかしなところがない。それが問題でね。これが本物だとしたら、正規のルートで同じ孤児院へ何度も教会から助成金の許可が出ていることになる。もちろん、公平を期すためにそういったことがないよう、王宮で許可をだす前に、審査をしてから印を押す。たがらこんなことはあり得ないはずだ。だが、事実として送金の許可証が何度も発行されていた。密告してきた人物も、そこがおかしいと気づいて王宮にこの書類を持ち込んだ」

 アザレアは、驚いて訊いた。

「もしかして、王宮に共犯がいると言うことですの?」

 そう訊くと、カルは首を振る。

「徹底的に精査したが、アゲラタムと関わりのあるような人物は王宮にいなかった。それに王宮にいる使用人は、意図している訳ではないが世襲で代々仕えている者が多い。例えばシモーヌは筆頭執事のホルンストの孫だし、僕の乳母はホルンストの娘だ。君の侍女のシラーも、ホルンストの孫だよ。将来、王宮に君を迎え入れるにあたって、王宮から信頼できる人物を、ということで送ったんだ。あぁ、シラーの預かり知らぬところで勝手に王宮が行ったことだ、秘密にしていたと彼女を責めないでやってくれ」 

 そう一気に言うと、カルは一呼吸おいた。 

「そんな感じでね、王宮には疑いをかけられる人物の方が少ない。国庫担当部門もほとんど身元の明らかな人物ばかりでね。それにそこそこ地位の在るものばかりだからね、横領をしてもデメリットの方が大きい」

 アザレアは頷いて話の先を促した。

「では、王宮の関わり無しにこの書類はどうやって手にいれたのか? そう考えたとき、そんなことはどうやっても不可能だと判断した。そこでこの書類は偽造されたもの、と言う結論に至った。調べてみれば、この孤児院への送金許可証にサインをしているのは、毎回チューザレだった。彼が関わっているのは明白だろう。そこで彼を調べたがなかなか尻尾を出さない。やっとのことで、この巧妙に作られた承認印を偽造したと思われる職人に行き当たった」

 カルがそう言った瞬間、思わずアザレアは叫ぶ。

「マユリさんは違いますわよ!!」

 カルは笑った。

「確かに彼は違うね。逆にこういった物を作れる人物に心当たりがないか? と、尋ねて捜査に協力してもらってたぐらいだしね」

 それを聞いてアザレアはほっとした。あれだけの腕前があれば、マユリなら簡単に偽造印を作ることができてしまうだろう。疑いをかけられてもおかしくはない。ほっとしているアザレアを見てカルは言った。

「良かったね、君はあのジュエリー職人と仲良しだから、彼が犯人ならショックを受けるところだった」

 そして、微笑む。

「私も彼には随分お世話になっているから、彼が犯人だなんて考えたくもないな」

 アザレアは答える。

「ですわね、彼にはいつもお世話になりっぱなしですわ」

 しばらくお互いに微笑みあった。

「さて、本題に戻そう」

 カルは話しを続けた。

「マユリ達の協力もあって最近になってやっとそれらしき職人を見つけたんだが、話を聞く前に突然姿を消してしまった。それとチューザレを調べているうちに、怪しいと思われる行動が他にもあった」

 そう言うと、フランツに向かって言った。

「説明してくれ」

 フランツは一礼するとアザレアに向かって説明する。

「アザレア様が殿下の謁見に来て、僕の目の前で初めて瞬間移動したあの日、あの場にもう一人それを見ていた人間がいました」

 アザレアはそれを受けて驚く。

「まさか……」

 フランツは頷く。

「そう、チューザレです。彼はアザレア様の後方でそれを見ていた。アザレア様が僕の目の前から消えたとき、チューザレは真っ青な顔になり僕と目が合うと一礼して、慌てて帰って行きました。その数日後です『結界石に決定的な兆候が現れたので、聖女召喚の必要がある』とアゲラタムから報告があったのは。僕は不思議に思いました。神官には人の属性能力を読む力があります。更には目の前でその力を使ったアザレア様をを見たのですから、アザレア様が時空魔法を使えると分かったでしょう。ならばもう少し聖女の召喚を待つべきなのに、なぜそんなに聖女召喚の儀式を焦るのか」

 そう言われてアザレアは、一つおや?  と思うところがあったので質問した。

「時空魔法が使えるなら、聖女の召喚を待つと言うのはどういう理由からですの?」

 フランツはそれを受けて答える。

「これは部外秘なので、アザレア様が知らなくて当然なのですが、アゲラタムの教会に唯一残されている文献に、遥か昔に時空魔法を使える者が奈落を塞いだ。と言う記述が残っているのです。ですが、実際問題として奈落は塞がっていないのですから、信憑性は低いかもしれませんが」

 確かにそんな話は初耳だった。講義でも聞いたことがなく、おそらくヒュー先生も知らない事実なのだろう。アザレアが難しい顔をしたせいかフランツが慌てて言った。

「まだ、これに関しては本当になにも分かっていない段階ですので、アザレア様に話すのは差し控えていました。申し訳ありません」

 そう言って頭を下げた。

「フランツが頭を下げる必要はありませんわ。話を続けてくださって大丈夫です」

 そう言って、アザレアは微笑むと、それを見てフランツも微笑み話を続ける。

「奈落にしても、時空魔法にしても、現状なにも分かっていない状況なのですから、検証してから聖女を召喚しても問題はないはずなのです」

 それに次いでアザレアは言う。

「では、チューザレ大司教はどうしても聖女が必要な理由があって、召喚を急いだのではないか? と言うことですのね?」

 そう訊くと、フランツは頷く。

「そうです。明らかに怪しいチューザレの動きを、僕はずっと追っていました。すると、チューザレがケルヘール家のロングピークの屋敷に、自分の息のかかった者を何人か送り込んでいることがわかりました。僕はケルヘール公爵と密に連絡をとり、貴女が鉱山に行っている間に、そのチューザレ大司教の息のかかった者たちを排除しました」

 確かに、鉱山からロングピークに帰ってきたとき、随分使用人が減ったと感じたのを覚えている。フランツは続ける。

「おそらく横領のことと言い、貴女の暗殺の件と言い、裏で糸を引いているのはチューザレで間違いありません。それと、この前のミツカッチャ洞窟崩落事件も」

 それを聞いてアザレアは、背筋がゾッとした。
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