死んでるはずの私が溺愛され、いつの間にか救国して、聖女をざまぁしてました。

みゅー

文字の大きさ
55 / 66

第五十三話

しおりを挟む
 アザレアはカルの質問に答えるため説明し始めた。

「ここ数ヶ月の間、昼夜絶えず、ありとあらゆるものに毒物スキャンを行いながら生活してまいりましたわ」

 カルは頷くと言った。

「毒殺される可能性があったことを考えれば当然だろうね」

 アザレアも頷き、続ける。

「そのスキャン魔法も、以前は水魔法のみで行なう魔法でしたわ。でもずっとスキャン魔法を使い続けたことで、全属性を使用して、意識せずとも魔法を発動し続けることができるようになりましたの」

 カルは人差し指と中指を額にあて、眉根にシワを寄せると目を閉じ唸った。

「君が凄いことは知っていたが……」

 そう言ったあと、顔を上げにこりと微笑む。

「わかった。もう、君については通常の常識範囲内では考えないことにする」

 アザレアもそれを受けてにこりと笑って答える。

「ありがとうございます」

 そして話を続ける。

「最近では感覚的に、どこにどの様な物質がどのくらいあり、その物質構成や物質量なども、簡単に読み取ることができるようになりましたわ。でも、その調子でスキャンを続けますと、情報量が多すぎてしまいますでしょ? なので自然と必要なことだけスキャンできるようになりましたの。これは全て無意識で行っていたものですから、わたくし自身、この能力で飛散粒子を測定できるかもしれない、と言うことに気づくのが遅れてしまいましたわ」

 そう言うと、カルはアザレアの顔を穴が空きそうなほど見つめる。

「本当に君にはかなわないな、他にも何か能力を隠していそうだね」

 そう言われて、アザレアは少し考えるとカルを真っ直ぐ見た。

「もし、本当にモンスターが飛散粒子なら、わたくし無効化できるかもしれませんわ」

 その言葉に、カルは笑顔のまま固まった。そのとき、アザレアの後ろからコリンの声が聞こえた。

「殿下、失礼致します」

 アザレアは振り返ろうとしたが、カルはアザレアに視線を向け、手を軽く挙げてその動きを制した。そしてそのままコリンに視線を戻す。

「何か報告か?」

 そう尋ねる。コリンは答える。

「結界の消失した地点に小さな結界石の配置が終わりました。確認したところ、一時的に結界の穴を塞ぐことができたとのことです。それに病人も治療が功を奏し、次々に意識を取り戻し始めました」

 カルは頷く。

「わかった、報告ご苦労。もう下がっていい」

 そう言って、コリンに向かって手で払うような仕草をした。

 コリンの立ち去る足音が消える前に、カルがコリンを呼び止めた。そして、テーブルに右手で頬杖をついて笑みを浮かべる。

「先日はアズの護衛で、大分世話になったみたいだね。ご苦労だった」

 そう言うと、左手の人差し指でテーブルをトントンと叩きながら言った。

「だが、行動を起こす時は自分の身辺にも十分注意しなければね。護衛もできまいよ」

 しばらく沈黙があり、アザレアは張りつめた空気の中、静かにコリンの返事を待った。すると、やっとコリンが返事をした。

「ご忠告肝に銘じます。僭越ながら、私からも一言よろしいでしょうか?」

 カルは一瞬眉根にシワを寄せ返事をする。

「あぁ」

 その返事を受けて、コリンはカルに優しく諭すように言った。

「花は世話をしなければ枯れてしまいます。水をあげすぎても、です」

 カルは鼻で笑う。

「お前はその花の世話をするふりをして、自ら手折ろうとしていたくせに。笑えるな」

 しばらくの沈黙の後、コリンは

「失礼します」

 と言って去っていった。あまりにも険悪な雰囲気にアザレアは訊いた。

「カルとコリンはケンカでもしてますの?」

 カルは声を出して笑った。

「彼とは昔ちょっとね」

 そう言うと、苦笑しながら肩をすくめる。

「君には隠し事はしない。と言ったから話すが、僕の14歳の誕生会の時だ。あの誕生会の日、暗黙の掟で私の愛する女性には誰も手を出さなかった。だが、一人だけその掟を破った者がいた、それがコリウスだ。彼は私が見ているのを分かっていて、僕をみてニヤリと笑うと、堂々とその女性をダンスに誘った。あれは彼なりの宣戦布告だったのだろう」

 そう言うと、アザレアを見つめた。アザレアはあの誕生会でそんなことがあったのかと驚いた。

「そうでしたの、知りませんでしたわ」

 そうして他人事のようにカルを見つめ返していたが、その女性とは自分のことだと気づくと、その瞬間、思わずカルから視線を外す。

 そんな様子を見てカルは楽しそうに、両手で頬杖をついてアザレアを見つめたまま言う。

「何度も言うが君は本当に可愛いね。早く君が私だけのものになればいいのに」

 微笑むと話を続ける。

「さて、どうやら結界の消失した部分の一時的な補修は完了したみたいだし、君の言っていたアドバイス通りの治療の効果も出たようだ。あとは君とヒュー先生と僕とで根本的な解決策を考えなければね」

 立ち上がりアザレアの横に立ち手をさしのべて言った。

「では宮廷魔導師様、行きましょう」 

 アザレアはその手を取った。

 現場はヴィバーチェ公爵領の外れの農村地帯にあった。アザレアの瞬間移動の魔石がなければ、移動だけでも数十日かかったかもしれない。

「対応が遅れれば、もっと甚大な被害が出ていただろう。君の作ってくれた魔石で迅速に騎士団小隊の派兵と、調査団と治療班を現場に送りこむことができた。これだけとっても、君の力がいかに国に貢献しているかが分かるね」

 そう言って微笑むと、簡素な小屋へ案内した。

「調査のための急拵きゅうごしらえの粗雑な小屋で、居心地は悪いだろうが勘弁して欲しい」

 そう言うと苦笑した。が、この短時間で小屋を建ててしまうとは、騎士団の技術力の高さが伺えた。

 小屋の中に入ると、他の研究者らしき人物と、書類を覗き込みながら議論しているヒュー先生が目に入った。先生はこちらに気づくと言った。

「お、真打ち登場だねぇ、待ってました」

 そして手を広げたあと、右手を胸に当て左手を腰の後ろにあてて一礼した。それを見た他の研究者たちも慌てて頭を下げる。アザレアも慌てる。

「辞めてください、皆さんあの、違いますの。ヒュー先生がわたくしの師匠ですの」

 そう言って、カルの後ろに隠れた。その場にいた全員が声を出して笑い、一瞬場がなごんだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

子供が可愛いすぎて伯爵様の溺愛に気づきません!

屋月 トム伽
恋愛
私と婚約をすれば、真実の愛に出会える。 そのせいで、私はラッキージンクスの令嬢だと呼ばれていた。そんな噂のせいで、何度も婚約破棄をされた。 そして、9回目の婚約中に、私は夜会で襲われてふしだらな令嬢という二つ名までついてしまった。 ふしだらな令嬢に、もう婚約の申し込みなど来ないだろうと思っていれば、お父様が氷の伯爵様と有名なリクハルド・マクシミリアン伯爵様に婚約を申し込み、邸を売って海外に行ってしまう。 突然の婚約の申し込みに断られるかと思えば、リクハルド様は婚約を受け入れてくれた。婚約初日から、マクシミリアン伯爵邸で住み始めることになるが、彼は未婚のままで子供がいた。 リクハルド様に似ても似つかない子供。 そうして、マクリミリアン伯爵家での生活が幕を開けた。

聖女の任期終了後、婚活を始めてみたら六歳の可愛い男児が立候補してきた!

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
23歳のメルリラは、聖女の任期を終えたばかり。結婚適齢期を少し過ぎた彼女は、幸せな結婚を夢見て婚活に励むが、なかなか相手が見つからない。原因は「元聖女」という肩書にあった。聖女を務めた女性は慣例として専属聖騎士と結婚することが多く、メルリラもまた、かつての専属聖騎士フェイビアンと結ばれるものと世間から思われているのだ。しかし、メルリラとフェイビアンは口げんかが絶えない関係で、恋愛感情など皆無。彼を結婚相手として考えたことなどなかった。それでも世間の誤解は解けず、婚活は難航する。そんなある日、聖女を辞めて半年が経った頃、メルリラの婚活を知った公爵子息ハリソン(6歳)がやって来て――。

聖女を騙った少女は、二度目の生を自由に生きる

夕立悠理
恋愛
 ある日、聖女として異世界に召喚された美香。その国は、魔物と戦っているらしく、兵士たちを励まして欲しいと頼まれた。しかし、徐々に戦況もよくなってきたところで、魔法の力をもった本物の『聖女』様が現れてしまい、美香は、聖女を騙った罪で、処刑される。  しかし、ギロチンの刃が落とされた瞬間、時間が巻き戻り、美香が召喚された時に戻り、美香は二度目の生を得る。美香は今度は魔物の元へ行き、自由に生きることにすると、かつては敵だったはずの魔王に溺愛される。  しかし、なぜか、美香を見捨てたはずの護衛も執着してきて――。 ※小説家になろう様にも投稿しています ※感想をいただけると、とても嬉しいです ※著作権は放棄してません

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです

白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。 ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。 「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」 ある日、アリシアは見てしまう。 夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを! 「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」 「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」 夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。 自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。 ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。 ※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

混血の私が純血主義の竜人王子の番なわけない

三国つかさ
恋愛
竜人たちが通う学園で、竜人の王子であるレクスをひと目見た瞬間から恋に落ちてしまった混血の少女エステル。好き過ぎて狂ってしまいそうだけど、分不相応なので必死に隠すことにした。一方のレクスは涼しい顔をしているが、純血なので実は番に対する感情は混血のエステルより何倍も深いのだった。

【完結】偽物聖女は冷血騎士団長様と白い結婚をしたはずでした。

雨宮羽那
恋愛
 聖女補佐官であるレティノアは、補佐官であるにも関わらず、祈りをささげる日々を送っていた。  というのも、本来聖女であるはずの妹が、役目を放棄して遊び歩いていたからだ。  そんなある日、妹が「真実の愛に気づいたの」と言って恋人と駆け落ちしてしまう。  残されたのは、聖女の役目と――王命によって決められた聖騎士団長様との婚姻!?  レティノアは、妹の代わりとして聖女の立場と聖騎士団長との結婚を押し付けられることに。  相手のクラウスは、「血も涙もない冷血な悪魔」と噂される聖騎士団長。クラウスから「俺はあなたに触れるつもりはない」と言い放たれたレティノアは、「これは白い結婚なのだ」と理解する。  しかし、クラウスの態度は噂とは異なり、レティノアを愛しているようにしか思えなくて……?  これは、今まで妹の代わりの「偽物」として扱われてきた令嬢が「本物」として幸せをつかむ物語。 ◇◇◇◇ お気に入り登録、♡、感想などいただければ、作者が大変喜びます! モチベになるので良ければ応援していただければ嬉しいです♪ ※いつも通りざまぁ要素は中盤以降。 ※完結まで執筆済み ※表紙はAIイラストです ※アルファポリス先行投稿(他投稿サイトにも掲載予定です)

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

転生したら悪役令嬢だった婚約者様の溺愛に気づいたようですが、実は私も無関心でした

ハリネズミの肉球
恋愛
気づけば私は、“悪役令嬢”として断罪寸前――しかも、乙女ゲームのクライマックス目前!? 容赦ないヒロインと取り巻きたちに追いつめられ、開き直った私はこう言い放った。 「……まぁ、別に婚約者様にも未練ないし?」 ところが。 ずっと私に冷たかった“婚約者様”こと第一王子アレクシスが、まさかの豹変。 無関心だったはずの彼が、なぜか私にだけやたらと優しい。甘い。距離が近い……って、え、なにこれ、溺愛モード突入!?今さらどういうつもり!? でも、よく考えたら―― 私だって最初からアレクシスに興味なんてなかったんですけど?(ほんとに) お互いに「どうでもいい」と思っていたはずの関係が、“転生”という非常識な出来事をきっかけに、静かに、でも確実に動き始める。 これは、すれ違いと誤解の果てに生まれる、ちょっとズレたふたりの再恋(?)物語。 じれじれで不器用な“無自覚すれ違いラブ”、ここに開幕――! 本作は、アルファポリス様、小説家になろう様、カクヨム様にて掲載させていただいております。 アイデア提供者:ゆう(YuFidi) URL:https://note.com/yufidi88/n/n8caa44812464

処理中です...