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第六十話
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チューザレ大司教と聖女の一件が片付いたが、アザレアにはやり残していることがあった。
奈落を塞ぐことだ。
それはアザレアにしかできないことだった。
この話題はなるべく避け、結界石がまだ大丈夫なのだから、わざわざ危険を侵して奈落を塞ぐ必要はない。皆そんな空気を漂わせていた。
それでも将来を考えたら塞げる時に塞ぐべきなのだろう。だがそれは当然危険を伴い、命を落とす可能性もある。みんなはきっと反対するに違いなかった。
その話をカルにする決意をし、アザレアは執務室のドアを叩いた。中に入るとカルとフランツが書類と格闘していた。カルは入口に立つアザレアの姿を目にとめると微笑む。
「アズ、どうしたんだ?」
そう言うと、手に持っていた読みかけの書類を机に置く。
「二人とも少し話したいことがありますの。お時間はありますかしら?」
そう言うと、二人ともなんの話だか察しがついたのか、緊張した面持ちになった。
「わかった、今、話を聞こう。座って」
カルがそう言うと、フランツがアザレアにソファに座るように促した。アザレアはソファに腰掛けると早速本題に入る。
「奈落のことですわ」
カルはやっぱり、という顔をしたのち残念そうな顔をしたが、フランツは憤っているようだった。
「私にできるなら、塞ぐのを試してみたいのです」
カルはフランツに向かって言った。
「フランツ、少し席を外してくれ」
フランツは苦い表情をすると書類を置き、部屋を出ていった。
カルは真剣な眼差しをアザレアに向けると言った。
「命に変えても奈落を塞ぐ、それが君の希望なんだろう?」
そしてつらそうな顔をすると、続けて言った。
「その気持ちを曲げるつもりもない。お妃教育だってなんだって、一度こうと決めたらやり抜く、君はそういう人だ。分かっている」
アザレアがカルを説得しようと口を開けると、カルがそれを制した。
「私は君の意志を尊重したい。それを諦めさせたら君を愛する資格はないと思っている。君を全力で支える。そんな存在でいたい。それに私は君を絶対に守り抜くよ」
そういうと立ち上がり、アザレアの前に跪いた。そして手を取る。
「そのかわり絶対に生きて帰って来てくれるね?」
そう言って瞳の奥をずっと見つめた。
「約束します、絶対にカルを残して死んだりなんかしません」
するとカルは立ち上がり、アザレアの頬を撫で言った。
「ありがとう」
そして、アザレアを包み込むように強く強く抱き締めた。アザレアもカルを強く抱き締め返す。アザレアはカルの胸の中で、カルの心臓が早鐘のように鼓動しているのを感じた。しばらくしてカルは口を開いた。
「本当はこのまま胸の中に閉じ込めて、何処へも行けないようにしたいよ」
と、つらそうに言った。
「なぜ君は時空魔法を使えるんだろう。なぜ他でもなく君なんだ。なぜ君が奈落を塞がなければならないんだ」
そして、そっと体を離すと言った。
「だがそれが君なんだ。時空魔法が使えることも、奈落を塞ごうとしていることも、全て含めて君なんだ。だから私はそれを受け入れたい」
アザレアはカルの顔を見上げていった。
「我が儘を言ってごめんなさい。我が儘を聞いてくれてありがとう」
その後、みなで奈落を塞ぐための作戦が練られた。
奈落は、ちょうどケルヘール家の領地の結界を出たところにあった。お陰で誰に遠慮することなく研究棟を立てることができた。
奈落を塞ぐために全魔力を使用出きるよう、それ以外での魔力の使用は極力抑えなければならなかった。
ヒュー先生とも協力し、奈落の近くへ行く時に必要な飛散粒子を無効化する魔石、粒子無効魔石の必要数、その耐久時間などが話し合われた。
一番の問題はアザレアの魔力が高すぎて影響を受けやすいことだった。その他の貴族たちも魔力の高い者たちばかりだ。結界石を用いて結界外へ出るとしても、奈落から一番近い場所に出て、粒子無効魔石を設置するのは、かなりリスクの伴うものだった。
「僕がやります」
フランツが手を上げた。
「魔力のない僕が、適任でしょう」
そう言うと微笑む。
「このような形で、僕が役に立てるとは思いませんでした」
カルはしばらくフランツを見つめる。
「いいのか?」
フランツは微笑む。
「危険はありますが、死地に赴くわけではありません。大丈夫です。やらせてください」
とカルを見て頷いた。
奈落を塞ぐことだ。
それはアザレアにしかできないことだった。
この話題はなるべく避け、結界石がまだ大丈夫なのだから、わざわざ危険を侵して奈落を塞ぐ必要はない。皆そんな空気を漂わせていた。
それでも将来を考えたら塞げる時に塞ぐべきなのだろう。だがそれは当然危険を伴い、命を落とす可能性もある。みんなはきっと反対するに違いなかった。
その話をカルにする決意をし、アザレアは執務室のドアを叩いた。中に入るとカルとフランツが書類と格闘していた。カルは入口に立つアザレアの姿を目にとめると微笑む。
「アズ、どうしたんだ?」
そう言うと、手に持っていた読みかけの書類を机に置く。
「二人とも少し話したいことがありますの。お時間はありますかしら?」
そう言うと、二人ともなんの話だか察しがついたのか、緊張した面持ちになった。
「わかった、今、話を聞こう。座って」
カルがそう言うと、フランツがアザレアにソファに座るように促した。アザレアはソファに腰掛けると早速本題に入る。
「奈落のことですわ」
カルはやっぱり、という顔をしたのち残念そうな顔をしたが、フランツは憤っているようだった。
「私にできるなら、塞ぐのを試してみたいのです」
カルはフランツに向かって言った。
「フランツ、少し席を外してくれ」
フランツは苦い表情をすると書類を置き、部屋を出ていった。
カルは真剣な眼差しをアザレアに向けると言った。
「命に変えても奈落を塞ぐ、それが君の希望なんだろう?」
そしてつらそうな顔をすると、続けて言った。
「その気持ちを曲げるつもりもない。お妃教育だってなんだって、一度こうと決めたらやり抜く、君はそういう人だ。分かっている」
アザレアがカルを説得しようと口を開けると、カルがそれを制した。
「私は君の意志を尊重したい。それを諦めさせたら君を愛する資格はないと思っている。君を全力で支える。そんな存在でいたい。それに私は君を絶対に守り抜くよ」
そういうと立ち上がり、アザレアの前に跪いた。そして手を取る。
「そのかわり絶対に生きて帰って来てくれるね?」
そう言って瞳の奥をずっと見つめた。
「約束します、絶対にカルを残して死んだりなんかしません」
するとカルは立ち上がり、アザレアの頬を撫で言った。
「ありがとう」
そして、アザレアを包み込むように強く強く抱き締めた。アザレアもカルを強く抱き締め返す。アザレアはカルの胸の中で、カルの心臓が早鐘のように鼓動しているのを感じた。しばらくしてカルは口を開いた。
「本当はこのまま胸の中に閉じ込めて、何処へも行けないようにしたいよ」
と、つらそうに言った。
「なぜ君は時空魔法を使えるんだろう。なぜ他でもなく君なんだ。なぜ君が奈落を塞がなければならないんだ」
そして、そっと体を離すと言った。
「だがそれが君なんだ。時空魔法が使えることも、奈落を塞ごうとしていることも、全て含めて君なんだ。だから私はそれを受け入れたい」
アザレアはカルの顔を見上げていった。
「我が儘を言ってごめんなさい。我が儘を聞いてくれてありがとう」
その後、みなで奈落を塞ぐための作戦が練られた。
奈落は、ちょうどケルヘール家の領地の結界を出たところにあった。お陰で誰に遠慮することなく研究棟を立てることができた。
奈落を塞ぐために全魔力を使用出きるよう、それ以外での魔力の使用は極力抑えなければならなかった。
ヒュー先生とも協力し、奈落の近くへ行く時に必要な飛散粒子を無効化する魔石、粒子無効魔石の必要数、その耐久時間などが話し合われた。
一番の問題はアザレアの魔力が高すぎて影響を受けやすいことだった。その他の貴族たちも魔力の高い者たちばかりだ。結界石を用いて結界外へ出るとしても、奈落から一番近い場所に出て、粒子無効魔石を設置するのは、かなりリスクの伴うものだった。
「僕がやります」
フランツが手を上げた。
「魔力のない僕が、適任でしょう」
そう言うと微笑む。
「このような形で、僕が役に立てるとは思いませんでした」
カルはしばらくフランツを見つめる。
「いいのか?」
フランツは微笑む。
「危険はありますが、死地に赴くわけではありません。大丈夫です。やらせてください」
とカルを見て頷いた。
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