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オルヘルスは少し考えて、現実的に精霊がいるなんて到底思えず苦笑して答える。
「私はお伽噺だと思ってますわ」
「そうか。私も昔はそうだった。もしも、本当にいるのだと言われたとしても信じなかったろう。だが、今は違う。私は君を見ていて精霊は本当にいるのだとそう思うようになった」
オルヘルスはそれを遠回しな褒め言葉なのだと受け取り、少し照れながら答える。
「ありがとうございます。でしたら、私も精霊がいるのだと信じますわ」
それを受けてグランツは満面の笑みを返した。
そうして午前中はずっと庭園で過ごし、昼食を取るために王宮へ移動した。
植物研究所の庭園もとても素晴らしいものだったが、王宮にある庭園も趣が違っていてとても美しかった。
「素晴らしい庭師がいるのですね」
「まぁね。ブラムはここの庭師としてもう四十年働いているんだが、彼には植物の気持ちがわかるのではないかと思うときがある」
「まぁ、そうなんですの? 一度お会いしてみたいですわ」
「一度と言わず、毎日のように会えるようになる。君はそのうちここに住むのだから」
その台詞を聞いて、思わずグランツの顔を見上げた。するとその視線に気づいたグランツは、オルヘルスを見つめ返すとにっこりと笑って言った。
「どうした? 本当のことだ」
まだ王太子殿下と結婚するという実感がなかったのだが、それを聞いて突然自分が王妃になるかもしれないのだと実感し少し緊張しながら庭を眺めた。
「オリ、緊張しているのか? 心配ない。君のことなら父も母も大歓迎だろうからな」
オルヘルスはなんとか笑顔を作る。
「そうだとよろしいですわね」
グランツは緊張をほぐすように数回、オルヘルスの頭にキスをすると腰にてを回し歩き始めた。
「少しだけ建物のことを説明しよう。だが、覚えるのはゆっくりで構わない」
「わかりましたわ、よろしくお願いいたします」
そうしてエスコートされ中庭に行く途中、部屋の配置など大まかな説明をしてくれた。それを聞きながら、今さらながらとんでもないことになってしまったと内心動揺していた。
本当に自分に王妃が務まるのだろうか? もう一度婚約について考え直してもらえないだろうか?
そう思いながら、説明してくれているグランツの横顔を見つめた。
中庭に出ると、豪奢な天蓋の下にテーブルとクッションの効いた椅子が準備されており、そこへ促されて座ると間もなく食事が運ばれてきた。
食事はどれもこれも趣向を凝らしたものばかりで、味もさることながら見た目もとても素晴らしいものばかりだった。
「庭もお食事も、とても素晴らしいものばかりですわ」
「食事は君の口にも合ったようだな」
「はい。特に私の好きな食材ばかりでしたので、とても楽しませていただきましたわ」
「そうだろう、君のために考え抜かれたメニューだ。以前から準備していてよかった」
婚約の話が出たのは一昨日のことである。以前からと言うのは多少オーバーだと思いながら、オルヘルスは準備してくれたことが素直に嬉しくて微笑んで返す。
「私のために準備してくださったなんて、とても光栄ですわ。そのお気持ちに感謝いたします」
すると、グランツは少し照れ臭そうに視線を逸らして言った。
「これぐらいは当然のことだ」
「それでも、ありがとうございます」
「そうか」
そうして二人はしばらく見つめ合ったのち、ふっと微笑んだ。
午後もグランツとお茶を楽しみ、夕方からグランツに外せない用事があるとのことで、この日はそれでお開きとなり屋敷まで送ってもらった。
エントランスでグランツがオルヘルスの手をいつまでも離さないので、オルヘルスはなにか話さなくてはと話題をふる。
「今日はとても楽しかったですわ。それにしても夕刻からお忙しいですのに、屋敷まで送ってくださってありがとうございました」
そう言うと、グランツは少し真面目な顔をした。
「あの令嬢がこの屋敷に居座っていないとは限らない。そんな場所へ君を一人で帰すなんてできないと昨日も言っただろう?」
そう答えると、思い立ったように言った。
「やはり護衛を増やすべきだったな。ステフやイーファがいるからと油断していた」
「殿下?! でも、相手は令嬢ですわ。たぶんお父様もお兄様もそれで油断したのだと思いますし、なにもそこまでしなくても……」
「君は優しいな。だが、君は王妃となる。令嬢一人の侵入を防げないような場所はとても危険だ」
「言われてみれば、確かにそうですわね。私の考えが少々浅かったようですわ」
そう答えると、グランツは微笑みオルヘルスの頬をなでる。
「急に環境が変わるのだから、戸惑うのも無理はない。それに、しばらく君と会えないから心配で仕方がないんだ」
「そうなのですか?」
「やらなくてはならない仕事がある。それを片付けたらまたどこかへ出かけよう」
「はい、楽しみにお待ちしています」
「また会おう」
オルヘルスは去って行くグランツの姿が見えなくなるまで見送った。
それから数日、グランツが言ったとおり誘いはなかったが、その変わりにプレゼントの山が毎日のように届けられた。
ドレスは室内用からお出かけ用、それに寝衣や肌着など様々な小物まですべて揃っていた。
それらに合わせる宝飾品も届き、オルガはそれらを見ては毎日のようにはしゃいでいた。
「こんな一級品初めて見ました。ドレスも何もかもすごいです! 流石王太子殿下からのプレゼントは違いますね!」
「そうね、私もこんなにクラリティの高い宝石は、滅多に見ないわ」
そう言ってプレゼントされた宝飾品を見ていたとき、ひとつだけかなり質の悪い石を使ったネックレスが目に入った。
「このネックレス、デザインは素敵ですけれど他のものとだいぶ違うわね。石も小さいし」
オルヘルスがそう呟くと、オルガが横からそのネックレスを覗き込む。
「本当ですね、でもデザインが気に入ったとか、この石がとても稀少価値の高いものなのかもしれませんよ?」
「そうね、確かにとても可愛らしいデザインですもの」
そう言ってネックレスケースから取り出すと、鏡の前で胸元に合わせてみせた。
「オルガ、次に殿下と出かけるときにこのネックレスをして行くわ。合わせてドレスも選んでちょうだい」
「はい! わかりました」
オルガは早速ドレスの整理を始めた。
「私はお伽噺だと思ってますわ」
「そうか。私も昔はそうだった。もしも、本当にいるのだと言われたとしても信じなかったろう。だが、今は違う。私は君を見ていて精霊は本当にいるのだとそう思うようになった」
オルヘルスはそれを遠回しな褒め言葉なのだと受け取り、少し照れながら答える。
「ありがとうございます。でしたら、私も精霊がいるのだと信じますわ」
それを受けてグランツは満面の笑みを返した。
そうして午前中はずっと庭園で過ごし、昼食を取るために王宮へ移動した。
植物研究所の庭園もとても素晴らしいものだったが、王宮にある庭園も趣が違っていてとても美しかった。
「素晴らしい庭師がいるのですね」
「まぁね。ブラムはここの庭師としてもう四十年働いているんだが、彼には植物の気持ちがわかるのではないかと思うときがある」
「まぁ、そうなんですの? 一度お会いしてみたいですわ」
「一度と言わず、毎日のように会えるようになる。君はそのうちここに住むのだから」
その台詞を聞いて、思わずグランツの顔を見上げた。するとその視線に気づいたグランツは、オルヘルスを見つめ返すとにっこりと笑って言った。
「どうした? 本当のことだ」
まだ王太子殿下と結婚するという実感がなかったのだが、それを聞いて突然自分が王妃になるかもしれないのだと実感し少し緊張しながら庭を眺めた。
「オリ、緊張しているのか? 心配ない。君のことなら父も母も大歓迎だろうからな」
オルヘルスはなんとか笑顔を作る。
「そうだとよろしいですわね」
グランツは緊張をほぐすように数回、オルヘルスの頭にキスをすると腰にてを回し歩き始めた。
「少しだけ建物のことを説明しよう。だが、覚えるのはゆっくりで構わない」
「わかりましたわ、よろしくお願いいたします」
そうしてエスコートされ中庭に行く途中、部屋の配置など大まかな説明をしてくれた。それを聞きながら、今さらながらとんでもないことになってしまったと内心動揺していた。
本当に自分に王妃が務まるのだろうか? もう一度婚約について考え直してもらえないだろうか?
そう思いながら、説明してくれているグランツの横顔を見つめた。
中庭に出ると、豪奢な天蓋の下にテーブルとクッションの効いた椅子が準備されており、そこへ促されて座ると間もなく食事が運ばれてきた。
食事はどれもこれも趣向を凝らしたものばかりで、味もさることながら見た目もとても素晴らしいものばかりだった。
「庭もお食事も、とても素晴らしいものばかりですわ」
「食事は君の口にも合ったようだな」
「はい。特に私の好きな食材ばかりでしたので、とても楽しませていただきましたわ」
「そうだろう、君のために考え抜かれたメニューだ。以前から準備していてよかった」
婚約の話が出たのは一昨日のことである。以前からと言うのは多少オーバーだと思いながら、オルヘルスは準備してくれたことが素直に嬉しくて微笑んで返す。
「私のために準備してくださったなんて、とても光栄ですわ。そのお気持ちに感謝いたします」
すると、グランツは少し照れ臭そうに視線を逸らして言った。
「これぐらいは当然のことだ」
「それでも、ありがとうございます」
「そうか」
そうして二人はしばらく見つめ合ったのち、ふっと微笑んだ。
午後もグランツとお茶を楽しみ、夕方からグランツに外せない用事があるとのことで、この日はそれでお開きとなり屋敷まで送ってもらった。
エントランスでグランツがオルヘルスの手をいつまでも離さないので、オルヘルスはなにか話さなくてはと話題をふる。
「今日はとても楽しかったですわ。それにしても夕刻からお忙しいですのに、屋敷まで送ってくださってありがとうございました」
そう言うと、グランツは少し真面目な顔をした。
「あの令嬢がこの屋敷に居座っていないとは限らない。そんな場所へ君を一人で帰すなんてできないと昨日も言っただろう?」
そう答えると、思い立ったように言った。
「やはり護衛を増やすべきだったな。ステフやイーファがいるからと油断していた」
「殿下?! でも、相手は令嬢ですわ。たぶんお父様もお兄様もそれで油断したのだと思いますし、なにもそこまでしなくても……」
「君は優しいな。だが、君は王妃となる。令嬢一人の侵入を防げないような場所はとても危険だ」
「言われてみれば、確かにそうですわね。私の考えが少々浅かったようですわ」
そう答えると、グランツは微笑みオルヘルスの頬をなでる。
「急に環境が変わるのだから、戸惑うのも無理はない。それに、しばらく君と会えないから心配で仕方がないんだ」
「そうなのですか?」
「やらなくてはならない仕事がある。それを片付けたらまたどこかへ出かけよう」
「はい、楽しみにお待ちしています」
「また会おう」
オルヘルスは去って行くグランツの姿が見えなくなるまで見送った。
それから数日、グランツが言ったとおり誘いはなかったが、その変わりにプレゼントの山が毎日のように届けられた。
ドレスは室内用からお出かけ用、それに寝衣や肌着など様々な小物まですべて揃っていた。
それらに合わせる宝飾品も届き、オルガはそれらを見ては毎日のようにはしゃいでいた。
「こんな一級品初めて見ました。ドレスも何もかもすごいです! 流石王太子殿下からのプレゼントは違いますね!」
「そうね、私もこんなにクラリティの高い宝石は、滅多に見ないわ」
そう言ってプレゼントされた宝飾品を見ていたとき、ひとつだけかなり質の悪い石を使ったネックレスが目に入った。
「このネックレス、デザインは素敵ですけれど他のものとだいぶ違うわね。石も小さいし」
オルヘルスがそう呟くと、オルガが横からそのネックレスを覗き込む。
「本当ですね、でもデザインが気に入ったとか、この石がとても稀少価値の高いものなのかもしれませんよ?」
「そうね、確かにとても可愛らしいデザインですもの」
そう言ってネックレスケースから取り出すと、鏡の前で胸元に合わせてみせた。
「オルガ、次に殿下と出かけるときにこのネックレスをして行くわ。合わせてドレスも選んでちょうだい」
「はい! わかりました」
オルガは早速ドレスの整理を始めた。
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